異世界転生(仮タイトル)

きこり

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第18話「日常」

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授業二日目の朝。ロランに抱きついたまま目を覚ます。ロランの胸を枕にして寝ていた様だ

(どう言う状況?)


昨夜を思い出す。食後にいつも通り3人で湯あみをしていた。そこから記憶が無い

(疲れてて寝ちゃったのか?3歳であの勉強はやっぱりきついか・・)

(でもなんでロランが居るの?)

ロランは姉が使う予定だった部屋に入居している。なので俺と姉ちゃんは一緒に寝てるが今日はロランも居た。
ベッドが狭いので起き上がる

外はまだ薄暗い。顔を洗いリビングに行くとパパが朝食を食べていた

「おはようエディ。今日は早いな」

「なんか目がさめた。パパはおしごと?」

「ああ、炭の方がずいぶん減ったからね、これから炭焼きだよ」

パパの食事を見る

「パパが作ったの?」

「早くからエルザに負担をかけたくないしね」

(やさしいなパパ)

「そうそう。今日から上水道の工事が始まるからね。エディが居る間はお風呂の方も工事が始まるよ」

「おふろつけるの?」

「ママの時は要らないって言ったけど、ロランが入居して5人になったからジャンが配慮してくれたんだ」

まあロランは年頃の女性だし、普通のお洒落な女の子なら毎日入りたがる物である。

「たぶん1カ月ぐらいかかるかな?」

「おふろでそんなにかかるの?」

「水道の方が大変だし、人手が無いからね」

「まちに人おおいよ?」

「職人さんがほとんど国の事業に参加しているんだ」

(ふーむ。公共事業って奴か)

「国のしごとって何してるの?」

「道路だよ」

(どこの世界でも一緒だな)

「新しい道路を作っているんだよ。各領地から王都まで最短距離の道と、各領地を繋ぐ環状道路だね」

この国の土地は全て国の物であり、領地主が管理をする。
徴税、インフラ、林業、農業は領主の仕事であり、エディット達は業務委託を受けている。

「トンネルと橋がとても増えるから、排水の関係で職人を殆ど取られてるんだ」

「へえー」

そうしてパパの食事が終わり、食器を洗うのを手伝う

「エディはご飯どうする?」

「ママが起きてからでいい」

そしてパパは出発した。暇なのでポルを見に行く
一瞬起きたがロランじゃないので2度寝する。俺も2度寝しよう

ベッドに戻る。ロランと姉ちゃんの間に入ると、速攻で姉ちゃんの抱き枕となった

ーーーーー

目が覚めた。ロランも姉ちゃんもすでに部屋に居ない
リビングに行くと、ママが朝食を作り終えていた。

姉ちゃんとロランは楽しそうに会話しながらリビングに入って来る。
姉妹にしか見えない。どうやらポルの面倒を見て居た様だ

(なんか幸せだなあ。神様ありがとう)

辛かった前世の記憶があるのに、幸せしか感じられない。おそらく神様の配慮だろうと想像する
食事をしているとドアがノックされた。

「ごめんください」

「あー、はいはい」

ママが玄関に向かう

「今頃誰だろう?」

と姉ちゃん

「すいどー屋さんかな?おふろ付けるんだって」

「エディよく知ってるね」

「朝おきてパパにきいた」

「そうだったの?」

「湯あみも結構楽しいのにね」

ロランは湯あみが気に入ってた様だ。いや、俺はお風呂が良い


何故って?


姉ちゃんは大好きだが家族なのもあり肉体的な意識は無かった。だがロランは違う。

湯あみだと色々な所が良く見えて困るのだ


ーーーーー


食事と洗濯が終わり、ママと姉ちゃんは仕事と学塾に向かった。ロランと掃除をする
ほぼ毎日しているので手早く終える。風呂場を見に行った

あの小太りの冒険者が居た

「おにいさん、ぼうけんしゃじゃないの?」

「冒険者は副業だよ。本業は水道屋の方だ」

寸法を測り、墨出しをしている。やり方が前世とよく似ていた

「この辺りは削ってしまった方が良いな・・」

ぶつぶつ言いながら仕事を進める

(水道屋なのに冒険者か・・ほんとに冒険者の街なんだな)

彼は小太りだが非常に運動神経が良い。あの地龍の時も彼を見て前世のカンフー映画を思い出したのだ。
そう、あの動けるデ○だ。

(そう言えば彼も新婚の旦那さんを狙っていたな)

聞いてみる

「・・・彼女いないの?」

腹が揺れた

そして黙々と仕事を続ける。触れない事にした

ーーーーー

外を見に行く。まさかこの世界で見る事になるとは思いもしなかった

(あれ、どう見てもユンボだよね?)

近くに見に行く。魔道具のショベルカーである。しかし小さい

(あー、軽トラに積める奴だこれ)

前世の建設機械やトラックを思い出す。そのユンボで道の隅に溝を掘っていく

(水道のパイプを埋めるのかな?)

作業を眺めているとユンボのバケットが石に当り、ひっくり返りそうになる。
操縦者は座席を飛び出し、綺麗に着地を決めた。慣れている様だ。

ユンボを起して作業を続ける

(あっ)

また石に当たり、ひっくり返りそうになる。そしてジャンプをして着地を決めた

(何かのアトラクション?)

前世の遊園地を思い出した

(これじゃ1カ月かかるよね?)

家に戻った


ーーーーー


ロランと国語の勉強を終え、業者さんに図書館へ行くと伝える。
そうしたらまだ午前中なのに仕事を切り上げて帰って行く。

(この世界の仕事ってこんななの?)

そして図書館で、共用語と近代魔法の勉強を終える。

領主の息子で長男のロレインはさすがに頭が良い。9歳なのもあり飲み込みがとても速い。
妹で長女のセレスは5歳ながら天才肌がある。特に俺に後れを取ると悔しそうな顔をする。

前世でもそうだった。天才と言えるレベルになると試験で2番や3番の成績だと泣いて悔しがるのだ。

近代魔法は必要となる概念を一通り教え、明日から本格的に始まる。
とは言え、難しいので時間は少ししか割り当てない。姉が年齢的に耐え辛いのだ。

ロランは指南書を見せながら説明した。

「明日から3巻と27巻ね。3巻は元素で27巻は電気の事が中心になっているの。これを覚えると他が楽よ」
「36巻は引力に関する事で、商会の魔法士には絶対に必要な所。53巻は電磁波なの。」

ロレインが質問する

「電気、引力、電磁波は関係があると言う事ですか?」

「そう、基本的に星を参考にするからね。星の引力があるから電気が発生する。
電気があるから磁場も発生する。これは電磁石に繋がるの」

「お父さんが開発している発電所ですね?」

「そう。実用化はまだ先になるけど、完成は約束されてるわ」

(この世界にも電気の時代が来るのか)


姉が質問する

「この星に電気があるってどうして分かるの?」

「物事はまず仮説から考えるの。そうして実験をする。
電磁石を理解できれば、似た働きをしている星の中で何が起こっているのか分かるの」

「へえー」

「理解出来れば、近代魔法で電気を操る事もできるよ」

「何ができるの?」

「ロレインとセレスなら、6600ボルトぐらいの電気を操作できるわ」

「ぼると?」

「それは明日。エルとエディなら、400ボルトも無いかな?しかも一瞬ね」

「それってどれぐらいなの?」

「人が浴びれば一瞬動けなくなる。これは個人差もあるわね」

(もしかして実験をするのかな?)

小学生の時、みんな大好きだったなあと思いながら楽しみにする。

ロレインが再び質問する

「他に電気を発生させる方法は何ですか?」

「嵐の時とか見れるわよ?」

「雷!」

「気象はまだ先・・と言うか間に合わないかも?」

「間に合わないとは?」

「ロレインは11になる年に王都の学園に行くでしょ?」

「あー」

「エルも、もし学園に行くならそこまでになるわね」

「えー。冒険者をするー」

セレスが驚く

「え?お姉ちゃん冒険者になるの?」

(お姉ちゃん?)

何だよ、俺には睨みつけるのにこの扱いの違いは?

ーーーーー

そうして毎日、共用語と近代魔法の授業を受ける。雨の日も風の日も、学塾が休みの日も図書館に足を運ぶ。
ロランの説明は分かりやすかった。行き詰った時も俺がヒント的な質問をして切り抜けた。


「ろらんって先生にむいてるきがするね」

「そお?」

今は二人で話している。姉ちゃんは一人で馬の世話をすると言って頑張っている。

「うん、わかりやすい」

「でもエディもすごいね。3人にどう伝えたら良いか分からない時、いつも助けてくれるでしょ?」

「ねえちゃんにはかしこくなって欲しいんだ。もし王都にいってもはずかしくないように・・」

「十分頭が良いわよ?エディもね」

「ろらんのおかげだよ?」

「そお?じゃあ褒めて」

(はい?)

とりあえず立ち上がってロランの頭を撫でる。そうするとキス待ちの体勢になる

(俺からキスしろと?)


まあ今更である

そういう関係では無いと思いながらキスをした。
嬉し恥ずかしそうなロランを見てて、不思議に思う

ロランを見てるとよく分からない時がある。カッコいいお姉さんだったり、ずぼらなお嬢さんだったり。
そして俺と歳がそう変わらない様な幼稚な女の子だったり・・

姉が戻って来て疑問の答えが出ないまま、3人で夕食の準備をする。今日はママの帰りが遅いのだ


今日は3月末日。俺の3歳の誕生日まであと10日


ーーーーー


領主Side

執事を務めるロバート・ストラーザンが授業を終え、領主の屋敷に戻って来る

「ただいま戻りました」

ジャン・シルヴェストセイジは読んでいた書類の束を下ろす

「お疲れ、進捗の方はどうだ?」

「見事な物ですよ。天才魔法士ですら1冊30日と言われた指南書が10日程ですな。
まさかロランに教師の才能があるとは思ってもいませんでした」

「あれは本物の天才だからな。アルファティも勿体ない事をしたもんだ」

「いまだにメンツに拘る貴族は多いですからな」

「一番大事なのは領地の発展だろうに」

「やはりこのまま囲いますか?」

「エディには犠牲になってもらうが、電力網の完成が10年早まるだろう」

「エディ坊ちゃんは満更でもない感じですよ?」

「そうなのか?やはり二人の組み合わせは精神的な相性が良いのかも知れんな」

「エディ坊ちゃんをそれだけ大人と見なしますか?」

ジャンは書類の中からエディ個人の調査票を出す

「ああ。歳相応でもあるが、お互い肉体と精神の年齢が合っていない。
エディに同年代の伴侶は無理だろう。それはロランも同じだ」

「ふむ。それなら坊ちゃんをしっかりと守る必要がありますな」

「姉の方もな。エディは姉に依存している。万が一の事があれば精神が壊れるぐらいにな」

そう言い書類に目を戻す

「まだ動きませんか?」

「ああ。ドレイクとフロストも、これ以上は工期を延ばせないと泣きついてきた」

「さすがに完成間近で放置は出来ませんしな・・下水道も発注しますか?」

「今更だな。逆にエディットに怪しまれる」

「やはり家の方には襲ってきませんか」

「奴らも調べてるだろう。エディットは魔法使い潰しで名が通ってるからな」

「はっはっ、エルザもロバルデューの恐怖の代名詞ですしな」

「街に来てくれたら早いんだが」

「山狩りしますか?フェルヴが位置を抑えてるのでしょう?」

「こちらも気づいていると教える様な物だ。一人でも逃がしたら絶対難癖をつけてくるぞ」


頭を抱える領主と執事であったが、偶然にもエディの誕生日に事件が起きる事になる


ーーーーー

エルザ。エディットの妻で2児の母。専業冒険者時代は恐怖の象徴でもあった。

他領地で問題を起した他国の貴族を捕えた冒険者達の中に、たまたまエルザが居た。
権力を盾に、解放するよう冒険者達に迫り騒ぎ立てる貴族達。

あまりにうるさいと、エルザは彼らの口を糸と針で縫いつけた。
そしてやってきた国の役人と領主、貴族の国の代表者がその惨状を見て震え上がる。

エルザは平然と縫いつけた糸を唇ごとハサミで切る。

「騒いだらまた縫うわよ?」

大事にしたくない役人と見なかった事にする領主、ロバルデューの冒険者に関わりたくない代表者。
裏で彼らはトラブルは無かった事にし、さっさとこの問題を片づける。

そしてエルザの名声?は他国に広まって行った。

約1年後、エルザの銀板の申請が宮廷に届く。役人は絶対国際問題を起すと思い却下した。
エルザは国際問題を理由に銀板を却下された冒険者である。
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