異世界転生(仮タイトル)

きこり

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第17話「お勉強」

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※完全な勉強回です。読まなくても本編には影響は無いです。
削除する回の予定でしたが、近代魔法の勉強への触りとして16話に続けて投稿しておきます。
こんな勉強をしますよと言う回だけなので、苦痛を感じたら読むのを止めて下さい。

ーーーーー

黒髪をオールバックでキメたナイスミドルなおじさんが挨拶をしてくれる。


「初めまして。ジャン・シルヴェストセイジ男爵の執事をしておりますロバート・ストラーザンと申します」

「こちらはご子息で長男、ロレイン・ロバルデューでございます」

「よろしく」

そう言って手を出す黒髪イケメンな爽やかお兄さん。メガネがあればとても似合いそう。姉ちゃんがちょっと照れている

「エルです。まだ1学生です」

俺は睨みつけながら握手する。永遠のライバルな予感がした

「エディ」

そう名乗り精いっぱい手を握った・・・3歳の握力では何の効果も無かった

「こちらは長女のセレスティア・ロバルデューです」

「よ、よろしく。セレスと呼んで」

兄の服を掴んでいた手を離し、こちらに手を伸ばす黒髪少女。何か懐かしい気持ちになった。
姉と俺の順で握手をする。ロランは面識がある様で、挨拶は無かった

そしてロバートさんの授業が始まる。1刻(約2時間)を共用語の授業に使い、半刻を近代魔法の基礎に当てる。
・・のだが、なかなか始まらない。他に勉強に来た子供達がロレインに次々挨拶をしてくるのだ。

仕方なくロバートさんは貴賓用の個室を借りた。本来は予約制だがさすが領主の執事である。

「そう言えばりょうしゅの子供がここにいていいの?」

聞いてみた

「護衛は十分足りております。心配は要りませんよ」

(何処に居るのか分からない。まあ心配要らないなら良いか)

そうして共用語の授業が始まった。


ーーーーー


驚いた

共用語も発音にすると、言葉の意味が分かってしまうのだ。

(エルフの言語と言い、何でだろう?もしかして神様が何とかしてくれたのか?)

※です

なるべく気付かれない様に勉強する。領主の兄妹は元々勉強してたので最初は問題無い。
姉ちゃんは苦労してるのでロランがサポートをしていた

なので変に気付かれずに文字を覚えて行く・・

ロバートさんは時計を見ながら休憩を挟む。およそ30分勉強して5分休憩な感じだ。
そして共用語の時間は終わった

「エディ坊ちゃんは見事ですな。誰よりも早く覚えられるかも知れません」

(まあ文字だけだし)

「エディ、すごい」

姉ちゃんは驚いた様な顔をしている

「エディ天才?」

ロランに天才と言われるのは心苦しい・・言語だけチートだし。
そう、俺にもチートがあった。言語と言うチートが

「これは立場を変わって欲しいぐらいだね」

とロレイン。領主の子なんて嫌ですから
セレスは復習をしていた。生真面目な子だな

そしてロバートさんが仕切る

「あと10分休んだら近代魔法に入りましょう」

「いいよ」

ロランも返事した

ふむ。近代魔法か

「どんなことするの?」

「座学よ」

やる事は一緒だが、違うのはこの世界に無い『概念』を勉強する事だった

さまざまな元素、さまざまな法則、そして膨大な種類の方程式。
その存在が当たり前だと自覚できるまで説明をする。答えを求める事はしなかった。

小学生にいきなり前世の中学~大学の数学や化学で何をするのか教える様な物だ。
元素や方程式等が『存在する』と言う事をまず自覚させる。

俺は一部しか知らないが、前世でそうした物を学んだ。だが姉とロレイン兄妹は相当苦労している。

助け舟を出す。ペンを持ちあげ机の上に落とした。全員が注目する

「これもほうそく?」

「ええ、引力よ。日常で見る何気ない事象は法則の上に成り立ってると思って良いわ」

姉も聞く

「風が強かったりするのも?」

「突き詰めれば、きちんと法則に従ってるわよ」

「へえ~」

ロレインも聞く

「引力って重力じゃないの?」

「重力って何だと思う?」

「えーと。この星に引っ張られる力。それがあるから地面を歩いたり、重さがあるのかと・・」

「半分正解」

「ええー」

「この星が引っ張る力が引力。でもそれだけだと地面に押し潰されるわ。
慣性があるから地面を歩いたり重量があったりするの。それが重力」

「かんせい?」

「この星で言えば遠心力ね。引力にも慣性にも法則があるのよ」

(何か懐かしいなあ)

「そしてそれを方程式で表せる事が出来る。それが近代魔法に繋がるの」

「それじゃ、ドラゴンの重力魔法は引力と慣性を利用した魔法ですか?」

「慣性のみね。巨体なのに自在に飛び、ものすごいスピードを出す。
遠心力を魔力で再現しているからよ」

「どらごんってまほうつかうの?」

「ええ」「そうだよ」

(ふーむ)

「でもそれってきんだいまほうみたいだね」

「ほぼ同じと思っていいわ。ドラゴンは自然現象その物だから」

なるほど。前世の物語や伝説でも、自然災害と同等に扱われてる理由が分かった気がする

ん?そうなるとこの世界か他の世界のドラゴンが前世の世界に伝わっている?
と言う事は、逆バージョンの転生者も居るって事なのかな?

転生者ね・・

「アオキはどらごんを懲らしめたんだよね?」

「そうね」

「どうやったの?」

「近代魔法も自然現象よ。単純にドラゴンを上回れば良いだけなの」

「たとえば?」

「そうね・・地面に落とすならドラゴンの慣性を上回る引力を与えれば良いだけ」

(簡単に言うけどそれって魔法陣に膨大な魔力がいるよね?)

「ブレスも簡単よ。種類によるけど火ならドラゴンの酸素を上回る二酸化炭素を与えるだけ」

(二酸化炭素の消火器か。それもロランぐらいじゃないと無理だよね?)

「水とかは?」

「もっと簡単ね。瞬時に蒸発する熱を与えるだけよ」

(それって核とかのレベルじゃね?)

ロレインが質問する

「ブレスって勢いがすごくないですか?」

「そうでも無いよ。風だけなら多くみても台風ぐらい。所詮ドラゴンが吐く息だからね」


ドラゴンをそこいらの獣の様に扱うロランに対して、ロレイン兄妹と姉ちゃんは唖然としていた。
ふと見るとロバートさんも同じ顔をしていた


ーーーーー


授業が終わり皆で色々話をする。まずロバートさん

「これは・・割り当てる時間を変える必要がありそうですな」

「そうでも無いよ?最初は近代魔法がどんな物か知る事だから」

ロレインも続く

「近代魔法を知ると言う事は、原理を知るって事でしょうか?」

「そう思ってていいよ」

姉ちゃんは漠然とだが核心を突く

「それって世界を知る事?」

ロランは頷く

「世界は全て計算出来るわ。魔獣もね」

ロレインは一つの答えに辿り着く

「魔獣を超えるには計算で上回れば良いって事ですか?」

「そうよ。4人とも知っている話しなら・・・ワイバーン」

4人で頷く

「アオキはどうやって地面に落としたと思う?」

ロレインがどや顔で答える

「引力ですね!」

「ちがーう」

「ええ・・」

「慣性を使わないワイバーンは気圧で引力に逆らってるのよ。鳥に似た魔法ね」

(羽の上側の気圧が低いんだっけ?魔法で再現してるって事?)

「ワイバーンは磁場を感知して自分の位置、方向を判断しているの」

(あー、想像できた)

「アオキは磁気嵐を使ったのよ」

「磁気?磁石の事ですか?」

姉ちゃんが尖った質問をする

「じゃあ磁石があったらワイバーンは落ちるの?」

「磁石は・・たぶん思ってる磁石では無理ね」

「そう・・」

「うーん・・今は星自体が磁石と思えば良いよ。電気で詳しく話すから」

「知ってます。南極と北極の間に磁場が流れてるんですよね」

ロレインはよく勉強している様だ

「そう。この星の上では方向が決まっているわ。でも磁気嵐を使えば崩せるよ」

「ワイバーンは方向が分からなくなる?」

「上下もね。あとは万有引力の法則に従うだけよ」

ロバートさん含めて全員が頷く。ワイバーンの例えは分かりやすかった

ーーーーー

姉が質問する

「どうしてワイバーンが磁場を使うって分かるの?」

「アオキの観察で調べられたけど、近代魔法でも分かるよ」

「ほんと!」

「ただし、解剖学の分野になるから習うのはまだ先ね」

「解剖・・・」

ロレインが質問する

「ロランは解剖やったの?」

「嫌って程にね」

俺も質問する

「ひとは?」

「犯罪者の解剖に付き合わされたわ」

「「「「・・・・・」」」」

「無理かも」

「私も」

姉ちゃんとセレスは諦め気味

「ぼくもむり」

(カエルが限界だ)

「ロレインは出来そう?」

「獣の解体はした事があります。それだけではダメですか?」

「様々な種類の生物、構造、部位、器官、臓器、細胞を知る事が必要よ」

「無理です」

「まあ、これは後回しでも良いわね」

ロランはノートに色々書き込みをしている。授業の手順を決めている様だ。
そして一息つく

「ふう~。教えるのって結構大変ね」

「そうでしょう?」

そう言いながらロバートさんは全員に紅茶を入れる

「のんでいいの?」

「貴賓室は大丈夫ですよ」

「エディ、明日だけ休みにしてもらっていい?」

「どうしたの?」

「ちょっと指南書を見直したいの」

「うん」

「必要な分は屋敷にある指南書をお貸ししますと男爵より伺っております」

「ほんと?1~3と、27と36、53の6冊良いかしら?」

「分かりました」

(飛んでるな)

「ずいぶんとぶね」

「法則に関連性があるのよ」

(すげえ、全部記憶してるのか?)


そうして今日の授業は終わった。姉ちゃんはぐったりしていた

「ねえちゃんだいじょうぶ?」

「大丈夫じゃないかも?」

「エディは割と平気よね?」

ロランは感心している

「んー、よくわかんなかったから?」

誤魔化したが、ロバートさんには通じなかった

「割と質問をされていたし、誘導も巧くしていましたな」

ロレインも続く

「エディは理解が早そうだね。知識は既に僕より上なのかも知れないよ」

(確かにそうかも知れない。てか40年ほど前世で生きたし)

さすがに領主の関係者は鋭い

セレスはちょっと拗ねたような感じだった。年下の俺が褒められたのが悔しいのかな?
まあすぐに追いつかれるさ。概念として知っているだけで、計算は高校の授業すら忘れている

そして帰宅する。姉ちゃんはロレイン兄妹と結構仲良くなっていた。一緒に苦労したからだろう。



俺は、なんかセレスに敵対心を向けられてる気がするが、気のせい?
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