砂漠と鋼とおっさんと

ゴエモン

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砂漠と餓鬼と塵芥編

砂漠と餓鬼と塵芥34

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 体長13メートル体重9トン体高6メートル頭蓋1.5メートル、鋭いナイフのような歯は最大30センチ。異常に発達した後肢は時速最速50キロ。視覚・聴覚・嗅覚などの発達した五感。暴君、暴竜、竜王、獣脚類最強、様々な異名を馳せる陸生肉食動物史上最大級の恐竜ティラノサウルスレックス。オジサン達の前に立ち塞がったのは他でもないその暴君であった。もちろんそれらデータは本物のTレックスの話。眼の前の存在はUSS園内を賑わす一体なのであるから、今まで出てきたモニュメントやセキュリティロボと諸条件は同じ。ガワだけのハリボテ械獣であると男達の電脳は瞬時に判断。

 “驚くのは後、最大火力による先制攻撃” 

 “お坊っちゃま、男を見せる時ですよ” 

 “デシェ!” 

 三体の電脳が三者一様の反応を示す。呆気にとられていた主達は瞬時に気を取り直し主砲のトリガーを引く。

 オジサンの武装バイクからは106ミリ連装無反動砲が。
 レシドゥオスのトヨタハイラックスからは主砲M20 75mm無反動砲が。
 タコ坊主の武装ゴーカートからはs-18/1100対戦車ライフル20ミリが。
 距離わずか100メートル。外れるはずもない近距離からの一斉射撃。空気がビリつく雄叫びにそれをかき消す爆発音。
 全弾命中か。
 爆煙と埃煙が膨れあがり対象をつつみ込む。

 やったか! などと煙が晴れるのを待つつもりは毛頭ない。射撃と同時にアクセルを全開にし、ベタ踏みし、最大速度で暴竜に向かって突き進み、オジサンは新型ブローニングの12.7ミリ弾を、レシドゥオスも副砲STK 50MGの12.7ミリ弾、オドパッキはs-18/1100の20ミリ弾を浴びせながら後ろへ回り込む。
 長い尾が振り払われ街路樹や土産物屋の残骸が吹き飛ばされる。

 106ミリの砲弾が自動装填される。
 車体を止める。
 500ミリの鋼板さえも撃ち抜く成形炸薬弾をモロに喰らってもなお動きを止めない暴君Tレックスの背に砲口を向ける。
 身体の四割を占める頭部が振り向き、再び轟く咆哮で湖面が空気が空間がビリビリと震える。
 追撃の斉射。
 レシドゥオス、オドパッキもそれに続く。

 違和感。

 爆発の距離がおかしい。
 近距離。
 まさか。


「ナビ! もしかしてあのトカゲやろう──」

 “砲弾を迎撃してる可能性があります” 

「んな馬鹿な!」

 脳内会話をしてる余裕がない。オジサン虎の子の106ミリ砲を迎撃する!? この近距離で!? そんな話聞いたことない⁉
 混乱する頭を振りレシドゥオス、オドパッキに後退の信号。チカチカと高速に点滅する投光器。三者の車両が急発進する。
 武装バイクの全方位カメラで目標を確認する。
 雄叫びをあげる口の中に見える砲口を確認。しかしそれは穴が空いている通常の砲ではなかった。

 “戦術高出力迎撃レーザーシステム。イスラエルが開発した対ミサイルレーザー迎撃システム『Iron Beam』を元にコンパクト化された、スクラッチ前当時の最先端防衛システムです。シンガポール海軍フォーミダブル級フリゲートに搭載されていた防衛装備ですね” 

「ちょっと大きいトカゲのくせにハイスペック過ぎぃ!!」

 全速で走りながら恐竜に負けじと叫ぶオジサン。

“オドパッキ様から信号です。お前が変なフラグ立てるからだろ” 

「んなこと言ったって、こんなスーパーティラノ知るか!」

 “レシドゥオス様からです。オドパッキ、お前さっき恐竜に食われた方がマシだった言ってたな。今がそのチャンスじゃないか? だそうです” 

「いいこと言うなボンボンが! フラグ立てたのはお前じゃねーか、囮になれよタコ坊主!」

 “貴様ら後で憶えてろよ、だそうです” 


 カチカチカチカチ三者の間で罵詈雑言の点滅の嵐が巻き起こる。しかしこの事態をどう収集するのか三者は混乱の最中頭をフル回転させていた。主に電脳が。

 “オドパッキ様の20ミリではそもそも効かなかったようですから、装甲も厚いようです。走る速度もこちらと同じくらい。なぜ、たかだかUSS内でこんな進化を遂げたのかわかりませんが、流石は暴虐の王ですね” 

「そんなことどうでもいいよ! どうすりゃいいんだよ!」

 “衛士隊と合流しましょう。衛士隊のパワードスーツ隊に囮になってもらい、こちらの106ミリと、レシドゥオス様の75ミリ砲、対戦車ミサイル、手投げ弾、その他ありったけの火力で集中砲火、ですかね” 

「その作戦、いつ、誰が、どうやって、奴らに説明するの!?」

 “それはもう信号機でチカチカやりながら行けば誰かしらの電脳が読み取ってくれるでしょう” 

「それって、ぶっつけ本番って言わない?」
 
 “いつもやってることでしょう” 

 「たしかーに。納得した」


 と言ってるうちに、もう衛士隊がいるエントランス正面大通り。取り急ぎ立てた作戦ともいえない作戦を投光器でチカチカしながら走る。 
 雄叫びが耳に入っていた衛士隊はすでに臨戦態勢に入っていた。
 投光器の情報を読み取る隊長。
 散開の合図をし、オールドアメリカンな街に散る衛士隊。
 誰かが指揮するでもなく、暴竜討伐作戦が今始まる。



 ◇    ◇    ◇    ◇    ◇


 その頃シュレッダー城では。


「オ、オジサン達が!」

「ちょっとこれは相手が悪そうね……」


 あ、あれ、わ、私フラグ立てた……?

 事態悪化に焦る二人をよそに、娘っ子が一人モニターを覗いて汗ばむ姿があった
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