砂漠と鋼とおっさんと

ゴエモン

文字の大きさ
上 下
239 / 262
砂漠と餓鬼と塵芥編

砂漠と餓鬼と塵芥26

しおりを挟む
 アクタからお小遣いを貰い三人を見送ったヤーテは入国管理ゲートで勤務を開始し、今は休憩中であったた。少々精神がおかしくなっていた事に気づかなかった彼だが、毎日の職場に戻ったせいか落ち着きをみせていた。たまに駄々をこねる旅行客や妙なそぶりのトレーダーなどはいるが、そんなものはいつものことで突っぱねてしまうか、厳重な検査をすればよいだけだ。もう二度と買収なんかには巻き込まれないぞと彼は決心していた(現金除く)。
 日も完全に落ちて大地が保っている熱が放射されていく。荒野の世界は寒暖差が激しい。あと1~2時間もすれば寒さを感じ始めることだろう。
 今夜の食事は何かな? 今日は、いや昨日から色々ありすぎて何も食べてない。最後に食べたのは昨日の昼飯だ。衛士達で交代で作っているまかない飯だ。何食べたっけ? そうだ、マヨネーズとケチャップとマスタードがたっぷりのった魚肉ソーセージのホットドッグ一つだけだ。パンの表面がカリカリしてて美味かったな。そうだ今休憩中だしおやつで食べよう。
 そんな事を思い炊事場に向かおうと席を立ったヤーテの元に一本の通信が入った。

 “非常招集。緊急ゲートを封鎖し現在当番の衛士を残してその他の衛士は全て屯所に戻るように。非常招集。緊急ゲートを封鎖し現在当番の衛士を残してその他の衛士は全て屯所に戻るように” 


 ヤーテはその場で膝を突きこの世の全てを恨んだ。


 ◇    ◇    ◇    ◇    ◇


「な、簡単に侵入できたろ」


 USSの西側ハイウェイ建つ20メートル程はあろうかというコンクリートの壁は一部がオジサンの無反動砲によって破壊された。アクタ達はそこを通り難なくシュレッダーの城に向かう。

「西側のハイウェイからコンクリ壁を無反動砲でぶち破るとは思わなかったぞ。お前本当はテロリストなんじゃないか?」

「あーそういえば、そんな疑いかけられたことある」

「オジサンテロリストだったの?」

「疑いだよ! 主に俺の連れが新宿ってところで暴れまわってて、俺はただの付き添いだったの! テロリストはそいつ!」

「テロリストの付き添いってそれもうテロリストじゃないの?」

「そーかもしんない!」

「じゃあ僕もここでテロリストの勉強するね!」

「せんでいい。お前アクタの教育に悪いぞ」

「だってこれからやろうとしてるのもテロリストみたいなもんじゃん」

「──否定はできんな」

 その時密林に似た園内から銃声が聞こえる。だがその着弾はまるで関係ないところだった。

「おっとここでもセキュリティ生きてるぞ。ただなんか変だな。侵入者として感知してるようだが、明後日の方向むいてるぞ。おっさん暗視スコープは持ってるか?」

「あるぜ。そうだアクタがこれ着けろ。そんでダーと連携してセキュリティを潰していくんだ」

「わかった!」
 ダーお願いね!

 “木端がやるようなつまらん役目を我にさせおってからに……” 

 11時の方向から何かワラワラ来てる!

 “ボッキーマンだな映画シュレッダーのマスコット的なキャラだ。そら!” 

 それから2時から操り人形みたいのが来てる。あれもセキュリティロボかな? 

 “ピノキオーガだな。それもシュレッダーのキャラだ” 

 アクタが暗視スコープで視認し、それに反応してダーが重機関銃で撃ち抜いていく連携で、障害をものともせずに二台の武装車両はシュレッダー城へとたどり着く。
 もっともスムーズに来れた一番の理由は固定砲台のセキュリティ兵器がことごとくターゲットであるアクタ達を捉えられずに無力化されたことにある。どれもことごとくあらぬ方向を向いていたからだ。

 さあ城に侵入しようというその時、少し離れた所から突如として銃声と砲撃音の嵐が始まった。

「なんだ? なんかエントランスの方でなにか起きてるな」

「まるで戦争だな。なんだかよくわからんが巻き込まれる前に終わらせよう」

 シュレッダー城裏手に車を置きそのままキャスト用出入口から入っていく三人であった。


 ◇    ◇    ◇    ◇    ◇


 突如として開園したテーマパークは砲撃と銃声のセレモニーから始まった。最盛期の頃は園内のシーンに合わせて雰囲気を盛り上げるために配置されたマスコットキャラの石像や恐竜のオブジェ、翼竜のアトラクションにアヌビスの巨像、近未来をイメージしたガジェットやジェットコースターが今や外敵排除用のセキュリティへと外観はそのままに成り代わっていた。園内を闊歩していたキャラクター達は演ずるキャストの人間からアンドロイドに変わっていた。
 しかしこのセレモニーはアクタ達に向けられたものではない。正面入口巨大な地球のオブジェがあるエントランスには武装衛士が集合し突入をしかけていた。カメラがハッキングされている今、独立したアンドロイド以外のセキュリティ兵器は役にたたず、ただ侵入者排除のために明後日の方向に砲撃や銃撃を繰り返していた。
 ジュラシックアースの住人ティラノザウルスやラプトルはそのまま固定砲台としての役割を全うできずに爆破され、機関銃を持ったミニヨンク達はパワードスーツの重武装衛士によって一掃され、ササミストリートのエロモやビックリバード、ボッキーモンスターの自爆特攻は一斉掃射で次々と消し飛んで行った。
 
「タレコミでは監視カメラは麻痺、セキュリティレベルは最低のまま固定されている。今がテロリストを捕える千載一遇のチャンスだ! 行けぇ!!」

 隊長が鼓舞する近くでこの戦いの場に駆り出されたヤーテも頑張っていた。二徹目が始まりさらにほとんど食べていないフラフラの身体で彼はシンガポール軍の正式採用小銃であるSAR21を担ぎ、わけのわからん人形達と戦っていた。

 もうテロリストなんてどうでもいいよ……
 早く寝かせてくれよ……
 腹減ったよ……
 もういっそのことテロリストにやられて名誉の負傷でもして戦線離脱したいよ……
 あ、それいいかも!

「ムッ! でかいのが来るぞ! 気をつけろヤーテ!」

 隊長らしき声が聞こえる。

 よし! これだ! これでやられたふりして戦線離脱! しばらく傷病手当に休暇のゲットチャンス! と思って隊長を見れば、指をさされた方向は自分の上空だった。 
 上を見上げれば、元米軍ヘリMH-53ペイブロウからロボットスタイルに空中でトランスフォームする大型セキュリティロボの姿であった。その着地点は……


 あれ、これって傷病手当から恩給にレベルアップしちゃうやつ?
 でも……
 それはやだな──


 ヤーテは上空に向かってSAR21から5.56ミリ弾を弾倉が空になるまで撃ち続けるのだった。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

絶世のディプロマット

一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。 レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。 レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。 ※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~

ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。 対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。 これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。 防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。 損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。 派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。 其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。 海上自衛隊版、出しました →https://ncode.syosetu.com/n3744fn/ ※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。 「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。 →https://ncode.syosetu.com/n3570fj/ 「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。 →https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

蒼海の碧血録

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年六月、ミッドウェー海戦において日本海軍は赤城、加賀、蒼龍を失うという大敗を喫した。  そして、その二ヶ月後の八月、アメリカ軍海兵隊が南太平洋ガダルカナル島へと上陸し、日米の新たな死闘の幕が切って落とされた。  熾烈なるガダルカナル攻防戦に、ついに日本海軍はある決断を下す。  戦艦大和。  日本海軍最強の戦艦が今、ガダルカナルへと向けて出撃する。  だが、対するアメリカ海軍もまたガダルカナルの日本軍飛行場を破壊すべく、最新鋭戦艦を出撃させていた。  ここに、ついに日米最強戦艦同士による砲撃戦の火蓋が切られることとなる。 (本作は「小説家になろう」様にて連載中の「蒼海決戦」シリーズを加筆修正したものです。予め、ご承知おき下さい。) ※表紙画像は、筆者が呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)にて撮影したものです。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

処理中です...