197 / 262
おまけ
おまけ 俺たちの旅はこれからだ!
しおりを挟む「は? いやですよ。 やっと帰って来たのに、何言ってるんですか? しばらくこの辺でゆっくりするんですから」
──金もないのに?
「いいんですよ。人間はね、立って半畳寝て一畳って言いましてね、生きていくには必要以上の物は必要ないんですよ。まぁ酒と女と美味い飯は俺の人生には必要だけど。もうアホみたいに危険なことしないと決めたんですよ」
だいたいさ──と、激安酩酊酒ハッピーに口に運び話しを続ける。
「ポルトランドからリボルバまで街8個。たったの8個。これだけで俺どんだけ死にそうな目にあったと思います? 『100万回生きたぬこ』って作品あるじゃないですか。100万じゃ足りないよですよ、そんな任務。100万は言い過ぎかもしれないけど。『スーパーマルオ』ってゲームあるじゃん? そうそうマルオ君が栗棒とか野虚野虚とかを蹂躙していくゲーム。あれで無限アップとかあるじゃないですか。知らない? まぁそういうのがあるんですよ残機を増やすテクが。それでも絶対足りないですし。ってか、どう例えようと俺の命一個ですし。残りの街80ヶ所周ってってそれ死刑宣告じゃん。四国八十八ヶ所巡りすれば極楽浄土ってありますけど、極楽なんて贅沢言わないし、この世が地獄でもいいから、俺残りの人生程々に稼いでグルメと色欲にまみれた生活したいですね」
──もちろんタダで行けというわけではない。
「上級ハンターに対してはそれなりの用意があると? ジャイロキャノピーねぇ。仰る通りあれも長旅でだいぶガタが来て無理させてますからね。なんせ、あれくらいしか買う金なかったからな。まぁ今も対して変わらないですがね」
──装甲車でも戦車でも好きな物を選べばいい。最新型の電脳が内蔵されたタイプもある。改造も思いのままだ。
「それはなかなか心を揺さぶられますね。しかし、俺はここ最近の旅で嫌というほど思い知らされているんですよ。バチバチに武装した戦車でも一歩間違えばそのまま棺桶に早変わりだってね」
──その通りだ。最強の戦車など存在しない。ではもう一つとっておきの提案をしよう。
「何を言われたって動かないっすよ。元来俺はものぐさ坊主なんですから」
男は欠伸をひとつすると不真面目極まりない態度でハッピーに口をつけた。
──君は各街に────を作りたいらしいな。
その言葉に男は反応してしまった。いや表情などは変えていない。ただ、いつもどんな相手にでも飄々とした態度と会話で返す男は、このときばかりは口をつぐんでしまった。
なぜ、この眼の前の人物はそれを知っている?
沈黙の間と場は問いかけに対する肯定以外のなにものでもないことを表していた。空間は静まり緊張と張り詰めた空気が展開される。
「誰から聞きました?」
口にしていたハッピーを刃を潰した巨大丸鋸テーブルに置くと、始めて男は話しをまともに聞く態度をとることを示すために廃材で組まれたベンチにもたれかけ足を組んだ。
──組織の情報網を舐めてもらっては困る。
「たいしたものですね、確かに舐めていたかもしれないな。で、それがどうかしましたか?」
会話の主導権を奪われたのを感じながらも務めて平静を装い、男は眼の前の人物のに対して虚勢をはる。だがそれは文字通り虚しい態度にしか映らなかった。
その人物は表情を崩すことなく変えることなく淡々と言葉を続けた。
──もし、そのための資金が必要経費として出資されるとしたら?
男は虚勢で出していた軽薄な表情を変え、開く音が聞こえるかの様にまぶたを見開き、テーブルの上のハッピーを端にていねいにおいてから、空いた隙間に両手を組み身を乗り出した。
「気が変わりました。最大限の協力を約束します。サンドスチームが無き今、物資に移動に情報に今や秩序なきこの荒れ果てた世界で困苦にあえぐ民衆は沢山います。そんな人達を私は無視出来ない。その事実にたった今私は考えがいたりました。いえ、決してその誘いに乗るわけではありません」
──わかってるさ。君は人情に厚い男だと耳にしている。
「そうでしょう、そうでしょう。一つだけこちらから要求したいんですがね」
──何かな?
「新しい車を新調する気はないので俺のジャノピーをカスタムして欲しい。命を預けられるのはアイツだけだなんで」
ほう──
「火力と装甲、エンジン回りを上げといてください。細かいところは『鋼と私』に一任します」
──いいだろう。では、話しは決まりだ。これが契約書だ。
「《89の街を周り軍とユニオン、マフィアの現状調査報告。及び通信妨害の原因と思われるエアビーの共生元、量子コンピュータの探査と破壊》 破滅した世界を生きる民衆を救うために、そのリクエスト引き受けた!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ヘッヘッヘ、タヌ山に代わった新しい支部長はなかなか話しがわかるじゃねぇか。
ポルトランドハンターユニオン支部長タヌ山タヌキックは裏帳簿の不正をマリーはじめ錫乃介やキルケゴールにことあるごとにつつかれる心労により多臓器不全おこし引退、 “もうヤダ!” と捨て台詞を残しポルトランドから私財と家族を連れて逃亡、支部長は新たな人物と交代していた。
“何が、民衆を救うため、ですか”
え? 民衆のためだよ?
“この契約書の一文は? “
[各街に現地妻を作るための費用を必要経費として認める]
ほら、昔の日本でも偉い人達って自分の愛人を秘書にしたり名目社員にしたりして経費使ってるじゃん。あれと一緒だよ。仕事はちゃんとやるって。
“まったく……まぁ今回はタダ働きにならなさそうですからいいですけどね”
そういうこと。オラ、ワクワクすっぞ!
“ムラムラの間違いじゃないですかね……”
なんでもいいんだよ、やる気になったんだから。さ、俺たちの旅はこれからだ!!
1
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
絶世のディプロマット
一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。
レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。
レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。
※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。
異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~
ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。
対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。
これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。
防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。
損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。
派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。
其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。
海上自衛隊版、出しました
→https://ncode.syosetu.com/n3744fn/
※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。
「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。
→https://ncode.syosetu.com/n3570fj/
「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。
→https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/sf.png?id=74527b25be1223de4b35)
日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
蒼海の碧血録
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年六月、ミッドウェー海戦において日本海軍は赤城、加賀、蒼龍を失うという大敗を喫した。
そして、その二ヶ月後の八月、アメリカ軍海兵隊が南太平洋ガダルカナル島へと上陸し、日米の新たな死闘の幕が切って落とされた。
熾烈なるガダルカナル攻防戦に、ついに日本海軍はある決断を下す。
戦艦大和。
日本海軍最強の戦艦が今、ガダルカナルへと向けて出撃する。
だが、対するアメリカ海軍もまたガダルカナルの日本軍飛行場を破壊すべく、最新鋭戦艦を出撃させていた。
ここに、ついに日米最強戦艦同士による砲撃戦の火蓋が切られることとなる。
(本作は「小説家になろう」様にて連載中の「蒼海決戦」シリーズを加筆修正したものです。予め、ご承知おき下さい。)
※表紙画像は、筆者が呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)にて撮影したものです。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる