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サンドスチーム編
トムソンガゼル無双
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「ほうほうなるほど。要は自分達の住処を街として人間達に認可してもらい、駆除討伐の対象から外して欲しいと。その上でできる事ならば文化的な経済的な交流も望んでいると」
目の前に座る機獣犬は、抑揚のある鳴き声で語るように吠える。ナビの同時通訳により会話が可能になったことから、錫乃介は思いもよらず人生において始めて動物(機獣)と会話する事になっている。
「そうだ。我々が今住処にしている場所は元々人間の街だったところだ。しかし、あの発電所というのか、それが人間に発見されてからは執拗に狙われている。我々自身にもそうだが、その設備確保に賞金がかかっているらしいワン」
三頭のリーダー的な存在なのか、雑種に見える犬は愛くるしくお尻でクルリンとしている尻尾をフリフリしながら喋っている。背中には型式は不明だが50~60ミリの無反動砲と思われる連装砲塔。身体のベースは柴犬なのだろう、尻尾を始め毛並みはその特徴を残しているが、毛色は砂漠迷彩だった。しかし何よりもその体高は柴犬のそれではなく、世界一大きい犬、チベタンマスティフを凌ぐ大きさを誇っていた。
クソッ、パッと見可愛くてモフモフしてぇが怖くて近寄れねぇ。何より威圧感がパねぇな……
「ん~率直に言ってサクッと解決できる問題じゃねぇな。賞金の取り下げ自体はそこまで難しくはないが額にもよるな。いくらかわかるか?」
「ウチが潜入調査した時は、発電所の確保とウチらの駆除で500万cの値がつけられていたニャン」
柴犬の頭上で香箱座りをする猫がニャァニャアと鳴き声で語る。この猫も雑種だ。砂猫がベースなのか体高は家猫より一回り小さいが毛の長さは普通の猫と変わらない。毛色はキジトラを薄くした様な柄で砂漠に適応した色といえる。
コイツはどう見てもただの猫だな。喋るけど。クソッ可愛いな、とっ捕まえてムシャムシャして猫吸いしてぇ。ところで語尾にワンとかニャンとか入れてるのはナビのアドリブか?
“そうです。動物との会話っていったらこれですよね”
わかってるじゃないか。
「なかなか高額だな。取り下げ依頼は難しそうだ。なにより発電所ってだけで賞金がついてなくても価値があるからな。取り下げたとこらで根本の解決にはならねえか。しかもアンタら機獣はご存知の通り存在自体が金になるからな」
「そこをさぁ、ダンナにどうにかならないかって相談なわけよ。ダンナだけにそうダンナってな、ウヒャヒャヒャヒャヒャ!! トム」
うっぜぇなコイツ……なぁ、今ナビ通訳してないよな。
“はい、このトムソンガゼル、普通に喋ってました、日本語で”
ヘラヘラ笑うトムソンガゼルは通常のトムソンガゼルに比べ二回りほど大きい。奈良の鹿くらいといった方がわかりやすいか。背中にはマシンガンのトンプソンを二丁、両サイドの横腹にも二丁、計六丁のサブマシンガンが搭載され、なかなかの火力をもっていそうだ。
「なんでお前だけ普通に喋れてんの?」
「アッシはねほら首太目っしょ、だから声帯だかなんだかが、あーしてこーしてで喋れるんすよトム。知らんけど。でも、結構練習したんすよ~、発生練習とかアーとかウーとかやって、人間の残した映画とかアニメとか見て超練習したんすよトム。なんで、その練習の成果を見て欲しいんすよトム。あー本日は晴天なり、トムソンガゼルネタやりまーす。
なぁ、俺たちの名前の由来知ってる?
いや、知らんけど。
探検家トムソンさんが見つけたからだって。
単純過ぎだろ。もう少し捻れよヒューマン。
でもさ、そんなのまだ良い方で、俺らの親戚でドルカスガゼルってのがいるんだ。
わかったアイドルオタクのカスなガゼルだろ。
ちげぇよ、ひど過ぎだろ、生きる資格ねえよそのガゼル。そんでよドルカスって何か調べたらガゼルのギリシャ語だってのよ。
は? ガゼルガゼルってわけ? 頭わりぃなヒューマンは。そもそもガゼルってなんだよ?
“カモシカ”だってさ。
鹿かよ、俺たち牛の仲間なんだけどなぁ。
いや、カモシカも牛族なんだ。
じゃあ鹿なんてつけんなよ。
そいつらもまだ良い方でさ。
まだ居んのかよ、ヒューマンの被害者。
甲状腺ガゼルってのがいんだよ。
何だよ、甲状腺って体内器官じゃねえか。そんなの名前にすんなよ。
しかもさ、その由来ってのが繁殖期に甲状腺が腫れ上がることからきてんだって。
ひでぇネーミングセンスだな。自分達に置き換えてみろっての。“チン○勃起人間”とか“乳首ピン立ち原人”とか名付けてるようなもんだぞ。わかってんのか、自重しろよヒューマン」
「なぁ、これまだ続くの?」
「こっから盛り上がるんすよ!」
「俺審査員だったらとっくにカーンって鐘鳴らしてるよ」
「そ、そんなトム!」
「それからそのとってつけた様な語尾やめろ。つける時とつけない時とブレブレだし」
「アニマルキャラといったら語尾に付けるもんじゃないですかトム!」
「お前のはいらねぇんだよ。こいつ無視して話進めるぞ」
「ふむ、そうするワン」
「それが良いニャン」
「ひ、ひどい!」
「トムは護衛のため連れて来ただけニャン。ここはお前のクソ面白くも無い聞くだけで耳が壊死して病気になりそうなネタの披露場所じゃないニャン。人間ならわかってくれるって豪語してたけど、やっぱり呆れて怒りが込み上げてるだけニャン。ネズミ追いかけて助走付きのダッシュで壁に頭ぶつけてピヨピヨひよこ出して気絶してるだけの方がまだ笑いがとれるニャン」
「トムとジェリーじゃん。面白そう、やってみて」
「やんないっす! トムは草食っす! ネズミ追いかける意味ないっす!」
「けっ! 汚れもできねぇのかよ。トムソンガゼルの癖に」
「残念でしたぁ! アッシはトムソンガゼルから進化したトンプソンガゼルなんですぅ!」
「黙れ、お前はさっさと外で見張りでもしてろニャン」
「ちっ! 後で吠え面かくなよ。思い出し笑いしたその時がオイラの真の勝利だからなトム」
捨て台詞を残したトムは廃ビルから出て行くと、やっとこ夜の静けさが辺りを包む。どっと疲れが出た錫乃介は、再びお茶を淹れるためにお湯を沸かし始めた。
「……話を戻したいのだがいいかなワン?」
「さっさとしてくれ。俺はティータイム中だったんだ」
「難題だということはわかっている。そしてすぐに解決できることでもないということも。だが、何事も一つ一つ一歩一歩進んでいかなくては始まらないのだ。人間と友好をとか我々に権利をとかそういうお花畑な事を言っているのではい。これは種族をかけた生存競争なのだ。競争だからといって殺し合いや戦争だけが全てを決めるわけではないだろうワン?」
「ああそうだが人間、特に大衆はそこまで利口か些か問題あるがね。人間同士でさえ、まずは戦いで相手を殴りつけて屈服させ、それから圧倒的な兵力で言うことをきかしてから、ようやく文化だ経済だってのが始まってるのは歴史が証明してる。今だって世界が破滅したから収まってるようなものの、街中ではしょっちゅう小競り合いしてんだ。つまるところ交流もったところで現状変わらない恐れもあるぜ」
「初めは対等な付き合いなぞ期待してはいないさ。そもそも、そこのガゼルは置いといて犬や猫は人間の保護下にいたからこそ種族として繁栄したのは皆承知している。愛玩や労働力、そして家畜や食料としてもなワン」
「そういう機獣が集まってできた街ってわけか。犬猫だけじゃないんだろ?」
「そうだ、様々な種がいる。皆電脳を持ち高度な知恵を持った機獣だ。自分で言うのも何だがなワン」
「一つ聞きたいんだが、その高度な知恵を持った機獣と、無差別に襲ってくるような機獣の差はなんだ?」
「簡単なことニャン。電脳を使いこなせるかどうか、それだけニャン」
巨大柴犬の頭に乗る猫は自分の身体をグルーミングしながら答える。
「昔の人間だって電脳までいかないにしても、スマホとかパソコンとか無限の可能性を秘めたマシンを持ってたのに、100%機能を使いこなしてた人間なんて殆どいないニャン。ABJM超共形場理論を唱える人間がいる反面、塩分濃度の計算すら出来ないバカもいるニャン。それと一緒ニャン」
「あ、それちょっと耳が痛い。ってかなんだよその理論聞いたことねえよ」
“錫乃介様に理解させるまで20年くらいかかります”
あ、そ、なら良いよ。それにしても、なかなか面白い話じゃないか。人間は知恵を身につける方向に進化をした。それはまた身体能力の退化とも言える。つまり頭と体は反比例しているんだ。こいつらおそらく身体能力は機獣化によって大幅に向上し、さらに電脳を身につけ人間に並ぶ知能もその手にした。
この生存競争……人間の分がだいぶ悪いんじゃないのぉ?
「……よし、手を貸そう。100%じゃないが街として認可される方法はある」
「本当かワン!」
「ああ、サンドスチームってのがあってな、人間社会の根底を管理して支ているこの世界の方舟みたいなもんなんだ。俺は今これを目指して旅しているんだけど、上手いこと言ってそのサンドスチームの経由地にしてもらうんだ。どうなるかわからんけど、やってみる価値はあるぜ」
「凄いニャン。人間に相談してまさか1人目で協力者が出るなんて驚いたニャン」
「まぁまぁ、俺が詐欺師じゃねえって補償はないんだ。駄目元くらいに思っておきな」
「その時はその時だ。では、早速我々の街に……」
「まぁ、焦るな。俺のティータイムはまだ終わってないんだ」
“あそこまで考えてこの選択をしますか”
ちょっくら世界を滅ぼす魔王気分? だいたいこんなのが原因で人間滅ぶ事になっても、それが世界の選択だよ。どうせその頃俺もうこの世にいないだろうし。
“それはそうですけど”
だいたい物理も頭もかなわない様な種族が出てきてるんだからさ、今のうちに友好政策とっておいたほうがいいでしょ。立場は逆転するかもしれないけどね。あ、その行く末ちょっと見てみたいわぁ。
“トリックスターにでもなるつもりですか”
道化師となるか墓掘り人となるか……そんな大それたもんじゃねえよ、ワンニャンパラダイスみたいな世界って憧れね?
“そっちが本音でしたか”
目の前に座る機獣犬は、抑揚のある鳴き声で語るように吠える。ナビの同時通訳により会話が可能になったことから、錫乃介は思いもよらず人生において始めて動物(機獣)と会話する事になっている。
「そうだ。我々が今住処にしている場所は元々人間の街だったところだ。しかし、あの発電所というのか、それが人間に発見されてからは執拗に狙われている。我々自身にもそうだが、その設備確保に賞金がかかっているらしいワン」
三頭のリーダー的な存在なのか、雑種に見える犬は愛くるしくお尻でクルリンとしている尻尾をフリフリしながら喋っている。背中には型式は不明だが50~60ミリの無反動砲と思われる連装砲塔。身体のベースは柴犬なのだろう、尻尾を始め毛並みはその特徴を残しているが、毛色は砂漠迷彩だった。しかし何よりもその体高は柴犬のそれではなく、世界一大きい犬、チベタンマスティフを凌ぐ大きさを誇っていた。
クソッ、パッと見可愛くてモフモフしてぇが怖くて近寄れねぇ。何より威圧感がパねぇな……
「ん~率直に言ってサクッと解決できる問題じゃねぇな。賞金の取り下げ自体はそこまで難しくはないが額にもよるな。いくらかわかるか?」
「ウチが潜入調査した時は、発電所の確保とウチらの駆除で500万cの値がつけられていたニャン」
柴犬の頭上で香箱座りをする猫がニャァニャアと鳴き声で語る。この猫も雑種だ。砂猫がベースなのか体高は家猫より一回り小さいが毛の長さは普通の猫と変わらない。毛色はキジトラを薄くした様な柄で砂漠に適応した色といえる。
コイツはどう見てもただの猫だな。喋るけど。クソッ可愛いな、とっ捕まえてムシャムシャして猫吸いしてぇ。ところで語尾にワンとかニャンとか入れてるのはナビのアドリブか?
“そうです。動物との会話っていったらこれですよね”
わかってるじゃないか。
「なかなか高額だな。取り下げ依頼は難しそうだ。なにより発電所ってだけで賞金がついてなくても価値があるからな。取り下げたとこらで根本の解決にはならねえか。しかもアンタら機獣はご存知の通り存在自体が金になるからな」
「そこをさぁ、ダンナにどうにかならないかって相談なわけよ。ダンナだけにそうダンナってな、ウヒャヒャヒャヒャヒャ!! トム」
うっぜぇなコイツ……なぁ、今ナビ通訳してないよな。
“はい、このトムソンガゼル、普通に喋ってました、日本語で”
ヘラヘラ笑うトムソンガゼルは通常のトムソンガゼルに比べ二回りほど大きい。奈良の鹿くらいといった方がわかりやすいか。背中にはマシンガンのトンプソンを二丁、両サイドの横腹にも二丁、計六丁のサブマシンガンが搭載され、なかなかの火力をもっていそうだ。
「なんでお前だけ普通に喋れてんの?」
「アッシはねほら首太目っしょ、だから声帯だかなんだかが、あーしてこーしてで喋れるんすよトム。知らんけど。でも、結構練習したんすよ~、発生練習とかアーとかウーとかやって、人間の残した映画とかアニメとか見て超練習したんすよトム。なんで、その練習の成果を見て欲しいんすよトム。あー本日は晴天なり、トムソンガゼルネタやりまーす。
なぁ、俺たちの名前の由来知ってる?
いや、知らんけど。
探検家トムソンさんが見つけたからだって。
単純過ぎだろ。もう少し捻れよヒューマン。
でもさ、そんなのまだ良い方で、俺らの親戚でドルカスガゼルってのがいるんだ。
わかったアイドルオタクのカスなガゼルだろ。
ちげぇよ、ひど過ぎだろ、生きる資格ねえよそのガゼル。そんでよドルカスって何か調べたらガゼルのギリシャ語だってのよ。
は? ガゼルガゼルってわけ? 頭わりぃなヒューマンは。そもそもガゼルってなんだよ?
“カモシカ”だってさ。
鹿かよ、俺たち牛の仲間なんだけどなぁ。
いや、カモシカも牛族なんだ。
じゃあ鹿なんてつけんなよ。
そいつらもまだ良い方でさ。
まだ居んのかよ、ヒューマンの被害者。
甲状腺ガゼルってのがいんだよ。
何だよ、甲状腺って体内器官じゃねえか。そんなの名前にすんなよ。
しかもさ、その由来ってのが繁殖期に甲状腺が腫れ上がることからきてんだって。
ひでぇネーミングセンスだな。自分達に置き換えてみろっての。“チン○勃起人間”とか“乳首ピン立ち原人”とか名付けてるようなもんだぞ。わかってんのか、自重しろよヒューマン」
「なぁ、これまだ続くの?」
「こっから盛り上がるんすよ!」
「俺審査員だったらとっくにカーンって鐘鳴らしてるよ」
「そ、そんなトム!」
「それからそのとってつけた様な語尾やめろ。つける時とつけない時とブレブレだし」
「アニマルキャラといったら語尾に付けるもんじゃないですかトム!」
「お前のはいらねぇんだよ。こいつ無視して話進めるぞ」
「ふむ、そうするワン」
「それが良いニャン」
「ひ、ひどい!」
「トムは護衛のため連れて来ただけニャン。ここはお前のクソ面白くも無い聞くだけで耳が壊死して病気になりそうなネタの披露場所じゃないニャン。人間ならわかってくれるって豪語してたけど、やっぱり呆れて怒りが込み上げてるだけニャン。ネズミ追いかけて助走付きのダッシュで壁に頭ぶつけてピヨピヨひよこ出して気絶してるだけの方がまだ笑いがとれるニャン」
「トムとジェリーじゃん。面白そう、やってみて」
「やんないっす! トムは草食っす! ネズミ追いかける意味ないっす!」
「けっ! 汚れもできねぇのかよ。トムソンガゼルの癖に」
「残念でしたぁ! アッシはトムソンガゼルから進化したトンプソンガゼルなんですぅ!」
「黙れ、お前はさっさと外で見張りでもしてろニャン」
「ちっ! 後で吠え面かくなよ。思い出し笑いしたその時がオイラの真の勝利だからなトム」
捨て台詞を残したトムは廃ビルから出て行くと、やっとこ夜の静けさが辺りを包む。どっと疲れが出た錫乃介は、再びお茶を淹れるためにお湯を沸かし始めた。
「……話を戻したいのだがいいかなワン?」
「さっさとしてくれ。俺はティータイム中だったんだ」
「難題だということはわかっている。そしてすぐに解決できることでもないということも。だが、何事も一つ一つ一歩一歩進んでいかなくては始まらないのだ。人間と友好をとか我々に権利をとかそういうお花畑な事を言っているのではい。これは種族をかけた生存競争なのだ。競争だからといって殺し合いや戦争だけが全てを決めるわけではないだろうワン?」
「ああそうだが人間、特に大衆はそこまで利口か些か問題あるがね。人間同士でさえ、まずは戦いで相手を殴りつけて屈服させ、それから圧倒的な兵力で言うことをきかしてから、ようやく文化だ経済だってのが始まってるのは歴史が証明してる。今だって世界が破滅したから収まってるようなものの、街中ではしょっちゅう小競り合いしてんだ。つまるところ交流もったところで現状変わらない恐れもあるぜ」
「初めは対等な付き合いなぞ期待してはいないさ。そもそも、そこのガゼルは置いといて犬や猫は人間の保護下にいたからこそ種族として繁栄したのは皆承知している。愛玩や労働力、そして家畜や食料としてもなワン」
「そういう機獣が集まってできた街ってわけか。犬猫だけじゃないんだろ?」
「そうだ、様々な種がいる。皆電脳を持ち高度な知恵を持った機獣だ。自分で言うのも何だがなワン」
「一つ聞きたいんだが、その高度な知恵を持った機獣と、無差別に襲ってくるような機獣の差はなんだ?」
「簡単なことニャン。電脳を使いこなせるかどうか、それだけニャン」
巨大柴犬の頭に乗る猫は自分の身体をグルーミングしながら答える。
「昔の人間だって電脳までいかないにしても、スマホとかパソコンとか無限の可能性を秘めたマシンを持ってたのに、100%機能を使いこなしてた人間なんて殆どいないニャン。ABJM超共形場理論を唱える人間がいる反面、塩分濃度の計算すら出来ないバカもいるニャン。それと一緒ニャン」
「あ、それちょっと耳が痛い。ってかなんだよその理論聞いたことねえよ」
“錫乃介様に理解させるまで20年くらいかかります”
あ、そ、なら良いよ。それにしても、なかなか面白い話じゃないか。人間は知恵を身につける方向に進化をした。それはまた身体能力の退化とも言える。つまり頭と体は反比例しているんだ。こいつらおそらく身体能力は機獣化によって大幅に向上し、さらに電脳を身につけ人間に並ぶ知能もその手にした。
この生存競争……人間の分がだいぶ悪いんじゃないのぉ?
「……よし、手を貸そう。100%じゃないが街として認可される方法はある」
「本当かワン!」
「ああ、サンドスチームってのがあってな、人間社会の根底を管理して支ているこの世界の方舟みたいなもんなんだ。俺は今これを目指して旅しているんだけど、上手いこと言ってそのサンドスチームの経由地にしてもらうんだ。どうなるかわからんけど、やってみる価値はあるぜ」
「凄いニャン。人間に相談してまさか1人目で協力者が出るなんて驚いたニャン」
「まぁまぁ、俺が詐欺師じゃねえって補償はないんだ。駄目元くらいに思っておきな」
「その時はその時だ。では、早速我々の街に……」
「まぁ、焦るな。俺のティータイムはまだ終わってないんだ」
“あそこまで考えてこの選択をしますか”
ちょっくら世界を滅ぼす魔王気分? だいたいこんなのが原因で人間滅ぶ事になっても、それが世界の選択だよ。どうせその頃俺もうこの世にいないだろうし。
“それはそうですけど”
だいたい物理も頭もかなわない様な種族が出てきてるんだからさ、今のうちに友好政策とっておいたほうがいいでしょ。立場は逆転するかもしれないけどね。あ、その行く末ちょっと見てみたいわぁ。
“トリックスターにでもなるつもりですか”
道化師となるか墓掘り人となるか……そんな大それたもんじゃねえよ、ワンニャンパラダイスみたいな世界って憧れね?
“そっちが本音でしたか”
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