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ドブさらいの錫乃介漫遊記
古代の遠距離通信は案外馬鹿にできない
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そして翌日
「え、乗船OK? 俺まだ書類も何にも出してないですよ?」
受付で“アイアコッカさんに会いに来たドブさらいの錫乃介でーす!”と言ったら、すんなりアイアコッカの待つ部屋へ通された。
挨拶もそこそこにサンドスチームに乗りたい理由と経緯を掻い摘んで話す。廃ビル13号棟のあった新宿には人が住み、資源が豊富であるからハンターユニオン支部を出すべきであり、創設の交渉をするために本部のあるサンドスチームに乗り込みたい事を話す。
すると、アイアコッカは“そういうことでしたら……”とアッサリと乗船許可を出してくれたのだ。
「確かにどこの輩とも知れぬ奴でしたら、そう簡単には乗船許可は出せませんよ。
でもね錫乃介さん、貴方はこの街の英雄の1人で、先日はパンツァーイーターも討伐したビッグネームですよ。ややこしい身元確認や手続きは必要ありませんよ」
パンツァーイーターはフライングオクトパスに次ぐ賞金首であり、これを討伐したのは、表向きには廃墟回収屋の女王マリーという事になっていた。マリーは元々複数の二つ名を持つ有名な人間であり、パンツァーイーターを倒したことは他のハンター達からしたら、“遂にやったか!” とか “流石マリーだ” といった評価がされていた。
その裏で“ドブさらいの錫乃介”が活躍した事は一般的にあまり知られていなかったが、ユニオン内部や軍では錫乃介が関わっていた事は既に有名な話になっていた。
「ふぁーっ⁉︎ せっかく推薦文とか用意して、タヌ山の奴どうイビるか楽しみにしてたのに」
「支部長をイビる?」
「まぁ、それはこっちのことで」
ジョドーからの推薦文を持ち、これからどう支部長をイビって説得して乗船許可を出させるか楽しく計画を立てていた錫乃介には、拍子抜けであった。
しかし、正面のデスクに座る大柄な人物はポルトランド軍部の実質的トップであるアイアコッカ中将である。そもそもそんな重要人物にアポも無しに会えている事自体特別扱いされている事に未だ気付いていないのが、この男の抜けている所でもある。
「乗船券は手にこのマイクロバーコードを埋め込むスタンプを押す事で登録されます。そうすれば乗れますが、1番の問題は……」
重厚なデスクの引き出しから小さな銃のような形状のスタンプを取り出し、錫乃介の右手にプスっと押す。
「サンドスチームが今どこだか分からないとか?」
「そういう事です。サンドスチームの航海巡路はありますが、衛星も通信も使えない世の中では今どこにいるのか把握出来ないんですよ。おそらくこの辺りか? くらいです」
「言われてみればそうですね。古代シルクロードや大航海時代みたいなもんで、いつキャラバンとか船が着くかなんてわかりゃしないですよね」
「そうです。それでも古代はまだ良い方で狼煙や手旗信号、早馬で遠距離の高速通信をしていたそうですが、それも中継地点があってのことです。現代の様に機獣や銃器で武装した野盗が跋扈する世の中では、中継地の保守存続もままなりませんから、簡単な通信手段は斥候による先触れくらいが、関の山なんですよ」
「野盗は昔もいただろうけど機獣はなぁ。小型だったらまだ良いけど、戦車砲撃ってくる大型な奴とか、空からバルカン砲撃ってくる奴とか中継地点一つ一つ要塞にしなきゃ耐えられないレベルですからね」
「そういことなんです」
「その航海巡路って見せてもらえますか?待ってるより、こちらから出向いていきますよ」
“ええ、コレです”と言ってノート程のタブレットに地図が表示される。錫乃介の時代にあったような精巧な地図ではなく、山や川や谷がイラスト調の手書きで書かれた味わいのあるものである。サンドスチームの巡回路以外は省略されているので、世界地図というより、電車の路線図に近いかもしれない。
まるで中世の古地図みたいだな。おっ大河の下流は海あってそこも通るのか。ってことはあれ水陸両用かよ。たしかに本体は船っぽいけどよ……すげぇの作ったなポラリスの奴。
“ポルトランド、セメントイテン、モールタール、アスファルト……コークス、アントラキノン、コールタール……マダックス、ノーラン、グラビン……サンノヘ、キリキリ、フーチュウ……ハンニャン、シャオプー、クーニャン……マカゼン、タルマック、そしてまたポルトランドで一周ですか”
これがこの世界の主要都市ってとこか。全部で100ヶ所くらい?
“88ヶ所ですね”
四国お遍路かよ。
「ありがとうございます。で、今どの辺と思われますか?」
タブレットを返しながら中将に尋ねる。地図データはナビが電脳の外部記憶野に入れておいた。
「なんとも言えませんがノーラン、グラビン辺りではないでしょうか?」
「距離感がわかりづらいですけどポルトランドを起点にすると、およそ半分位でしょうか?」
「そうですね、あと10ヵ月くらいすればまたポルトランドにやって来るとは思います。だいたい一年半から二年くらいの周期で都市を周っているので。ただ天候や機獣の影響などで遅れる事は多々ありますので一概には言えないんですが」
「そんなには待てねぇな」
「市場の方がトレーダーやハンターが多く出入りするので行かれてみては?情報の正確さはともかくとして新鮮ですよ」
「そうですね。お忙しい中どうもお世話になりました
「いえいえ、こちらこそ錫乃介さんのご活躍これからも期待してますよ」
「いえいえ、ただのおっさんですよ……ちょっとだけ優秀な、ね」
錫乃介が口端を上げてニヤッと笑うと、アイアコッカはハハハと乾いた笑いをあげていた。
ポルトランド市場
白、黒、黄色、赤、青、緑色と様々な肌の色をした人種がごった返す市場。義手義足、義眼豊胸擬似チン○。戦いにより欠損部位を埋めるために義体にしているだけではなく、ファッションで義体に換装している者も多くいる。戦いのために脳と消化器意外を戦闘用ボディにしているラオウ山下みたいな者も少なくない。この時代、生身のボディにこだわるよりも、義体の方が生き残り易いのは否定できない事実であり、特に危険が伴うトレーダーやハンターは当たり前の用に身体を換装している。
あちこちの屋台やバラック小屋では、自動小銃や軽機関銃がい草もどきのゴザに並び、パンツァーファウストやRPGといったロケット弾がビニール傘の様に大きな丸瓶に立てられ、手榴弾や対戦車地雷がバーゲンセールの如くドラム缶に積まれて売られている。
道は比較的広いため、時折ターレットトラックが走り、それを避ける様に人の波が割れて行く。たまに喧嘩の声や銃声が聞こえるが気にするものは誰もいない。
錫乃介がこの市場で買い物しつつの聞き込みをして1時間程が経った。
いや~聞き込みしても答えは変わらないねぇ。今行程半分くらいじゃないの? ってことくらいだね。
“しかたありませんね、一つ一つ街を遡って行きますか、それとも待ちます?”
待つのはなぁ、ここで乗船して支部創設交渉中にその新宿通り過ぎて、はい、また来年なんて馬鹿馬鹿しいでしょ。やっぱり早目がいいよ、こういう目の上のたんこぶ的な案件って。
巨体が多く行き交う雑踏のなか、一際存在感のある巨人がいた。迷彩タンクトップにカーゴパンツでノシノシと歩く姿に誰もがその道をゆずる。その一歩後ろでは赤茶のロングヘアを後ろで纏めた隻眼の美少女が追随する。
巨人は錫乃介を見つけると、美少女にサムズアップの親指で錫乃介を指して合図をする。
え?という顔をするも美少女はすぐさま悪戯っ子の笑みを浮かべ、影の様に錫乃介に近づき、正面に回るや否や渾身の掌底を腹に叩き込む。
錫乃介が吹き飛び、市場に混乱が起きる光景を想像するが、意外にも辺りは静かなまま錫乃介は吹き飛ぶ事なく、美少女の腕を掴んでいた。
「おいおい、いきなりご挨拶じゃないかと思ったらシンディちゃん? 久しぶりじゃないのって、程でもないか」
「へぇ、やっぱり新宿の時はワザとくらってたんだ……なんか詐欺師に騙された気分」
「なんだよ突然、いきなり現れて悪者扱いって。それよりアレだろ俺に惚れて恋しくて会いに来たんだろ、抱きしめてや、ブゴォォォ!!!」
両手を広げて無防備になったその刹那錫乃介は路上を吹き飛ぶ。行き交う人は皆器用に避け、何事も無かった様に市場を歩く。
「ホラ、今のはワザと喰らったじゃん……」
ワンインチ掌底の構えを崩してシンディは呟いた。
「ワザとじゃねぇし! だいたい、人に掌底叩き込んでから自信喪失するのやめてよね! なんで殴られてる俺の方が酷い奴みたいな言い草なの⁉︎」
路上で大の字に寝て叫んでる錫乃介を覗き込むのは、見慣れた顔の巨人だった。以前の赤いソフトモヒカンは無くなり、黒い五分刈りで厳つさがより増している。
「よぉ、錫乃介。また一つ大金星付けたそうじゃねえか」
「耳が早ぇな、脳筋ゴリラ」
「そら、話聞かせろ、飲み行くぞ」
五分刈り巨人ーーラオウ山下は唐突に錫乃介の腕を掴んで立たせ、そのまま腕を引っ張り飲食店街に向けて歩み始める。
「あのさ、飲みに行くのはかまわねぇけど、せめて腕掴むのシンディちゃんに代わってくんない?」
その声は虚しく市場の雑踏に消えゆくのであった。
ちなみにシンディの最初の掌底を防げたのはナビのサポートがあったからだ。正体不明の者から突如として攻撃されるのを、瞬時に察知したナビがいたからこそ防げたのである。
2発目はシンディと判明したためと、殺気を感じられなかったこともあり、ナビがサポートしなかったので、錫乃介はそのままマトモに喰らったというわけである。
別に実力を隠してるわけではないのだ。シンディは誤解しているようだが。
残金10,580c
「え、乗船OK? 俺まだ書類も何にも出してないですよ?」
受付で“アイアコッカさんに会いに来たドブさらいの錫乃介でーす!”と言ったら、すんなりアイアコッカの待つ部屋へ通された。
挨拶もそこそこにサンドスチームに乗りたい理由と経緯を掻い摘んで話す。廃ビル13号棟のあった新宿には人が住み、資源が豊富であるからハンターユニオン支部を出すべきであり、創設の交渉をするために本部のあるサンドスチームに乗り込みたい事を話す。
すると、アイアコッカは“そういうことでしたら……”とアッサリと乗船許可を出してくれたのだ。
「確かにどこの輩とも知れぬ奴でしたら、そう簡単には乗船許可は出せませんよ。
でもね錫乃介さん、貴方はこの街の英雄の1人で、先日はパンツァーイーターも討伐したビッグネームですよ。ややこしい身元確認や手続きは必要ありませんよ」
パンツァーイーターはフライングオクトパスに次ぐ賞金首であり、これを討伐したのは、表向きには廃墟回収屋の女王マリーという事になっていた。マリーは元々複数の二つ名を持つ有名な人間であり、パンツァーイーターを倒したことは他のハンター達からしたら、“遂にやったか!” とか “流石マリーだ” といった評価がされていた。
その裏で“ドブさらいの錫乃介”が活躍した事は一般的にあまり知られていなかったが、ユニオン内部や軍では錫乃介が関わっていた事は既に有名な話になっていた。
「ふぁーっ⁉︎ せっかく推薦文とか用意して、タヌ山の奴どうイビるか楽しみにしてたのに」
「支部長をイビる?」
「まぁ、それはこっちのことで」
ジョドーからの推薦文を持ち、これからどう支部長をイビって説得して乗船許可を出させるか楽しく計画を立てていた錫乃介には、拍子抜けであった。
しかし、正面のデスクに座る大柄な人物はポルトランド軍部の実質的トップであるアイアコッカ中将である。そもそもそんな重要人物にアポも無しに会えている事自体特別扱いされている事に未だ気付いていないのが、この男の抜けている所でもある。
「乗船券は手にこのマイクロバーコードを埋め込むスタンプを押す事で登録されます。そうすれば乗れますが、1番の問題は……」
重厚なデスクの引き出しから小さな銃のような形状のスタンプを取り出し、錫乃介の右手にプスっと押す。
「サンドスチームが今どこだか分からないとか?」
「そういう事です。サンドスチームの航海巡路はありますが、衛星も通信も使えない世の中では今どこにいるのか把握出来ないんですよ。おそらくこの辺りか? くらいです」
「言われてみればそうですね。古代シルクロードや大航海時代みたいなもんで、いつキャラバンとか船が着くかなんてわかりゃしないですよね」
「そうです。それでも古代はまだ良い方で狼煙や手旗信号、早馬で遠距離の高速通信をしていたそうですが、それも中継地点があってのことです。現代の様に機獣や銃器で武装した野盗が跋扈する世の中では、中継地の保守存続もままなりませんから、簡単な通信手段は斥候による先触れくらいが、関の山なんですよ」
「野盗は昔もいただろうけど機獣はなぁ。小型だったらまだ良いけど、戦車砲撃ってくる大型な奴とか、空からバルカン砲撃ってくる奴とか中継地点一つ一つ要塞にしなきゃ耐えられないレベルですからね」
「そういことなんです」
「その航海巡路って見せてもらえますか?待ってるより、こちらから出向いていきますよ」
“ええ、コレです”と言ってノート程のタブレットに地図が表示される。錫乃介の時代にあったような精巧な地図ではなく、山や川や谷がイラスト調の手書きで書かれた味わいのあるものである。サンドスチームの巡回路以外は省略されているので、世界地図というより、電車の路線図に近いかもしれない。
まるで中世の古地図みたいだな。おっ大河の下流は海あってそこも通るのか。ってことはあれ水陸両用かよ。たしかに本体は船っぽいけどよ……すげぇの作ったなポラリスの奴。
“ポルトランド、セメントイテン、モールタール、アスファルト……コークス、アントラキノン、コールタール……マダックス、ノーラン、グラビン……サンノヘ、キリキリ、フーチュウ……ハンニャン、シャオプー、クーニャン……マカゼン、タルマック、そしてまたポルトランドで一周ですか”
これがこの世界の主要都市ってとこか。全部で100ヶ所くらい?
“88ヶ所ですね”
四国お遍路かよ。
「ありがとうございます。で、今どの辺と思われますか?」
タブレットを返しながら中将に尋ねる。地図データはナビが電脳の外部記憶野に入れておいた。
「なんとも言えませんがノーラン、グラビン辺りではないでしょうか?」
「距離感がわかりづらいですけどポルトランドを起点にすると、およそ半分位でしょうか?」
「そうですね、あと10ヵ月くらいすればまたポルトランドにやって来るとは思います。だいたい一年半から二年くらいの周期で都市を周っているので。ただ天候や機獣の影響などで遅れる事は多々ありますので一概には言えないんですが」
「そんなには待てねぇな」
「市場の方がトレーダーやハンターが多く出入りするので行かれてみては?情報の正確さはともかくとして新鮮ですよ」
「そうですね。お忙しい中どうもお世話になりました
「いえいえ、こちらこそ錫乃介さんのご活躍これからも期待してますよ」
「いえいえ、ただのおっさんですよ……ちょっとだけ優秀な、ね」
錫乃介が口端を上げてニヤッと笑うと、アイアコッカはハハハと乾いた笑いをあげていた。
ポルトランド市場
白、黒、黄色、赤、青、緑色と様々な肌の色をした人種がごった返す市場。義手義足、義眼豊胸擬似チン○。戦いにより欠損部位を埋めるために義体にしているだけではなく、ファッションで義体に換装している者も多くいる。戦いのために脳と消化器意外を戦闘用ボディにしているラオウ山下みたいな者も少なくない。この時代、生身のボディにこだわるよりも、義体の方が生き残り易いのは否定できない事実であり、特に危険が伴うトレーダーやハンターは当たり前の用に身体を換装している。
あちこちの屋台やバラック小屋では、自動小銃や軽機関銃がい草もどきのゴザに並び、パンツァーファウストやRPGといったロケット弾がビニール傘の様に大きな丸瓶に立てられ、手榴弾や対戦車地雷がバーゲンセールの如くドラム缶に積まれて売られている。
道は比較的広いため、時折ターレットトラックが走り、それを避ける様に人の波が割れて行く。たまに喧嘩の声や銃声が聞こえるが気にするものは誰もいない。
錫乃介がこの市場で買い物しつつの聞き込みをして1時間程が経った。
いや~聞き込みしても答えは変わらないねぇ。今行程半分くらいじゃないの? ってことくらいだね。
“しかたありませんね、一つ一つ街を遡って行きますか、それとも待ちます?”
待つのはなぁ、ここで乗船して支部創設交渉中にその新宿通り過ぎて、はい、また来年なんて馬鹿馬鹿しいでしょ。やっぱり早目がいいよ、こういう目の上のたんこぶ的な案件って。
巨体が多く行き交う雑踏のなか、一際存在感のある巨人がいた。迷彩タンクトップにカーゴパンツでノシノシと歩く姿に誰もがその道をゆずる。その一歩後ろでは赤茶のロングヘアを後ろで纏めた隻眼の美少女が追随する。
巨人は錫乃介を見つけると、美少女にサムズアップの親指で錫乃介を指して合図をする。
え?という顔をするも美少女はすぐさま悪戯っ子の笑みを浮かべ、影の様に錫乃介に近づき、正面に回るや否や渾身の掌底を腹に叩き込む。
錫乃介が吹き飛び、市場に混乱が起きる光景を想像するが、意外にも辺りは静かなまま錫乃介は吹き飛ぶ事なく、美少女の腕を掴んでいた。
「おいおい、いきなりご挨拶じゃないかと思ったらシンディちゃん? 久しぶりじゃないのって、程でもないか」
「へぇ、やっぱり新宿の時はワザとくらってたんだ……なんか詐欺師に騙された気分」
「なんだよ突然、いきなり現れて悪者扱いって。それよりアレだろ俺に惚れて恋しくて会いに来たんだろ、抱きしめてや、ブゴォォォ!!!」
両手を広げて無防備になったその刹那錫乃介は路上を吹き飛ぶ。行き交う人は皆器用に避け、何事も無かった様に市場を歩く。
「ホラ、今のはワザと喰らったじゃん……」
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「ワザとじゃねぇし! だいたい、人に掌底叩き込んでから自信喪失するのやめてよね! なんで殴られてる俺の方が酷い奴みたいな言い草なの⁉︎」
路上で大の字に寝て叫んでる錫乃介を覗き込むのは、見慣れた顔の巨人だった。以前の赤いソフトモヒカンは無くなり、黒い五分刈りで厳つさがより増している。
「よぉ、錫乃介。また一つ大金星付けたそうじゃねえか」
「耳が早ぇな、脳筋ゴリラ」
「そら、話聞かせろ、飲み行くぞ」
五分刈り巨人ーーラオウ山下は唐突に錫乃介の腕を掴んで立たせ、そのまま腕を引っ張り飲食店街に向けて歩み始める。
「あのさ、飲みに行くのはかまわねぇけど、せめて腕掴むのシンディちゃんに代わってくんない?」
その声は虚しく市場の雑踏に消えゆくのであった。
ちなみにシンディの最初の掌底を防げたのはナビのサポートがあったからだ。正体不明の者から突如として攻撃されるのを、瞬時に察知したナビがいたからこそ防げたのである。
2発目はシンディと判明したためと、殺気を感じられなかったこともあり、ナビがサポートしなかったので、錫乃介はそのままマトモに喰らったというわけである。
別に実力を隠してるわけではないのだ。シンディは誤解しているようだが。
残金10,580c
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