砂漠と鋼とおっさんと

ゴエモン

文字の大きさ
上 下
100 / 262
マリーゴールドから“悲しみ“と“絶望”の花言葉が無くなった日

飲み過ぎて路上で寝るのは若いうちでやめとけよ おっさんになるとシャレにならん

しおりを挟む
 あークッソ!ほんっと、アイツと飲むとロクな事にならねえんだよ。

 
 ロボオと不本意にも合流し、それならばと、錫乃介が閃いた事をロボオに提案して餌で釣って承諾させた後、アフロ店主とお店の女の子も一緒になって酒を飲み始め、ドンちゃん騒ぎになってその後の事は良く覚えていない。
 そして何故かハンターユニオンのハンガーにある鉄骨やらドラム缶やらが転がっている廃材置き場で、寒さに震えて目が覚めた。


 大丈夫だろうなアイツ、飲み過ぎで忘れてないよな……


 “新宿で一生タダ酒が飲める権利ですから、忘れないでしょう。それにしても良いタイミングでロボオ様に会いましたね”

 良いんだか、悪いんだかな。



 昨夜錫乃介が閃いた事。新宿の交易に関する事だった。その件をロボオにやらせようと思い提案したが渋られた。当たり前だ。わざわざ新宿まで行かねばならないのは面倒であるし、そもそもロボオはアスファルトのユニオンの職員であるから、そんな余計な仕事をやる義務は無いのだ。
 そこで錫乃介がサロットルと口約束している新宿のラウンジで一生タダ酒を飲める権利を譲ると言ったら、喜び勇んで快諾してくれた。
 ロボオからは新宿にハンターユニオンの支部を創設すべきと提案された。
 成る程確かにハンターを呼び込みプラントノイド狩りをさせ、その上資源の回収までさせれば産業化は捗る事この上ない。その場合、利益配分や権利関係をどうするかの問題が出てくるが、そんな物はそれこそサロットル達幹部に任せれば良い。今は何より実働部隊だ。現場で動ける人間をかき集めなければ巨大事業は進まない。金勘定と交渉事はお偉方の仕事だ。
 そこで支部創設なんてどうすれば良いのかロボオに聞くと、流石にそれは管轄外だからよくわからない。おそらく本部がやる事だろうと。じゃあ本部は何処にあるのか聞くと、サンドスチームだと言う。あんな移動要塞が本部とは思わなかったが、もしかして軍隊の本部もあるのかと聞けばあるらしい。なお、軍隊の場合は本部ではなく司令部だと訂正された。
 

 「ただ、ユニオン本部へ働きかけるとなると一職員の私では……せめて支部長クラスにならないと」

 「う~ん、ここの支部長にお願いするのは死んでも嫌だし、今日顔面にタブレット叩きつけたとこだしなぁ。おっと、適任者思い出した」

 「矢破部ですか? ヘッドですか?」

 「いやいや、それよりもっと良い人材だよ……」

 …………


 と、この辺り迄はしっかり記憶しているが、気づいたら隣に店員の女の子にお酌されているし、アフロも一緒になって飲んでいるし、場面場面を思い出しはするが、その後はよくわからない。
 

 “明け方まで飲んで女の子はとっくに帰ってさぁ店閉まい、ってなってロボオ様はユニオンの寮にいるからそこまで錫乃介が送る、と言ってユニオンに辿り着いた所で二人とも力尽き、通行の邪魔だったので職員に廃材置き場に捨てられて今に至ります”

 そっか、良かった良かった。まだ常識の範囲内だ。

 “どこがですか。凍死するかもしれないんですよ”

 目覚めたら知らない男の足を枕にして寝てるよりマシだ。
 あん? って事はそこに転がってるドラム缶は……

 “ロボオ様です”

 そっか、とロボオを蹴り起こして施設内に入り、ロボオが使ってる部屋のコンクリート床に転がってタブレットを借りて色々閃いた事を書き込みをし再び寝た。起きた時にはもう夕暮れだった。


 クッソ、身体いてぇな。なんで打ちっぱなしコンクリートなんだよ……
 

 理不尽な怒りが込み上げるがどうしようも無い。
 いつまでも職員じゃない人間が寮内に居るのはあまり宜しくないということでユニオンを出る。
 そのまま近くの空き地にテントを張ってから、サウナに行って汗を流す。
 二日酔いの時はサウナに限る。頭が吹っ飛びそうになるくらい気持ちが良くなる(作者注:二日酔いの時は体内の水分が極端に低下している為、サウナなんかに入ると熱中症や脳梗塞のリスクが爆上げしてそのまま天に召される可能性もありますので真似しないように!)。
 食欲は無いのでサウナで販売していた冷たいラッシーを飲む。ラッシーを飲んだらカレーが食べたくなったので、屋台でチャパティとダールタドカという豆カレーを買って、テーブル代わりになっているケーブルドラムで食す。
 ヒヨコ豆とかレンズ豆がたっぷり入っていてクミン、クローブ、シナモン、カルダモン、などなどスパイスの香りが食欲をそそる。このカレーだけでも栄養価は抜群だが結構辛い。チャパティは薄いプレーンのピザみたいなものだ。これをカレーに付けて食べると丁度良い。


 あー、二日酔いにはインドカレーだな。スパイスが身に染みる。ラッシーも最高だな。

 “あの、もうお金がありませんよ。明日はいい加減働いて下さい”

 んな事わかってるけどよ~ジャノピーはまだ修理中だし、どうやって稼ぐよ?
 
 “とりあえずユニオン行って野良犬退治でもゴミ拾いでもドブ掃除でもして下さい”

 はぁ~またそっからか。

 “ロボオ様は新宿に向けて出発しましたが、上手く行くと良いですね”


 いくさ。USDビル内のプランテーション。あの技術はこの辺りに無い。あれだけの施設に勝る農場も無い。屋内プランテーションの技術者も居ない。
 なら、そのノウハウを売ればいい。何も植物資源の産業化を待つ必要は無いんだ。


 そう、錫乃介が昨夜思いついたのは、新宿USDビルで見た屋内プランテーションだった。
 新宿では農産物を始め鶏肉鶏卵それらの加工品等、意外な程に食材が充実していた。過去には飢餓に苦しんでいた時代もあったらしいが、サロットルの改革によって慢性的な飢餓からは脱却。地下に住む底辺の住民達も飢えないように食料品の配給を可能にした。
 農産物だけではなく、畜産物やその加工品まで屋内施設でやるノウハウは間違い無く他の街でも需要があるものだった。
 更には新宿のプランテーションで作られた産物や、前時代より大量に残る服飾品や宝飾品も直接交易品にした方が良いかもしれない事も含め、プラントノイドの排除をする前でも、すぐに現金化出来る可能性がある事柄を二日酔いながら書き留めたタブレットをロボオに渡していた。



 そして俺はというと、ポルトランドへ行く為の路銀稼ぎだわ。

 “前みたいにキャラバンがあれば良いのですが、そうタイミングは良く無いでしょうしね。ポルトランドへ向かうのは矢張りジョドー様ですか?”

 そ、困った時のジョドえもんさ。


 テーブルドラムの真ん中では煌々とオイルランプが光り、二日酔いから持ち直してきてニヒルにニヤつく錫乃介の顔を照らす。その灯に誘われ様々な虫が集まって来ていた。


 残金50c
 
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

絶世のディプロマット

一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。 レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。 レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。 ※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~

ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。 対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。 これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。 防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。 損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。 派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。 其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。 海上自衛隊版、出しました →https://ncode.syosetu.com/n3744fn/ ※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。 「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。 →https://ncode.syosetu.com/n3570fj/ 「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。 →https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

蒼海の碧血録

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年六月、ミッドウェー海戦において日本海軍は赤城、加賀、蒼龍を失うという大敗を喫した。  そして、その二ヶ月後の八月、アメリカ軍海兵隊が南太平洋ガダルカナル島へと上陸し、日米の新たな死闘の幕が切って落とされた。  熾烈なるガダルカナル攻防戦に、ついに日本海軍はある決断を下す。  戦艦大和。  日本海軍最強の戦艦が今、ガダルカナルへと向けて出撃する。  だが、対するアメリカ海軍もまたガダルカナルの日本軍飛行場を破壊すべく、最新鋭戦艦を出撃させていた。  ここに、ついに日米最強戦艦同士による砲撃戦の火蓋が切られることとなる。 (本作は「小説家になろう」様にて連載中の「蒼海決戦」シリーズを加筆修正したものです。予め、ご承知おき下さい。) ※表紙画像は、筆者が呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)にて撮影したものです。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

処理中です...