砂漠と鋼とおっさんと

ゴエモン

文字の大きさ
上 下
82 / 261
終わる終わる詐欺 大人って汚いよね編

オッサンの喋ってる話は三分の一聞いとけば大体オッケー

しおりを挟む
「クソォォォォォォォォ!なんで十階で止まるんだよっ!」

 「アミンさんメンテナンスが甘いんじゃないですか?」

 「何年か前にしてたはずなんだがなぁ。まぁ、俺の担当じゃねえし知らねえよ」

 「あのさ、止まった場所フロア前じゃないからドアからは出れないよ」

 「シンディちゃん大丈夫。ジャパーンのエレベーターには必ず天井に救出口の設置が義務付けられているから。おいデカブツおふたりさん、天井のパネル外してみて」

 「んだよ、ここまで来て!戦いが終わっちまうじゃねえか!」

 「こいつ本当に戦闘狂だな。大丈夫か?」

 「大丈夫大丈夫。見た目はゴリラだけど、心はワニで知能はサメ、腕力はクマだから」

 「ただの猛獣じゃねえか。一つも大丈夫じゃねえよ」

 「ぶっ!」


 錫乃介とアミンのやりとりに思わず笑いを堪えるシンディを他所に、パネルを外して天井から脱出して、一つ上階の十一階の扉をこじ開け、急いで一階にたどり着く頃にはとっくに戦闘は終わっていた。
 山下の仲間達が幹部連中の武装を解除し、一人も死者を出さず、両者共に軽傷者のみで済んでいた。

 
 「くっそ!チクショウ!ご苦労さんよお前ら」

 「なんか、すまねえな山下さん。でもまるで歯応えはありませんでしたぜ。それよりそこのバリケードが壊されちまいましてね、さっきのボンクラ共より手強い奴らが来ちまいます」


 山下はコルトレーンの指を指す方向に目をやるとバリケードによって塞がれていたはずが破壊され新宿西口のバスターミナル付近が露出していた。そこには既にプラントノイドがワラワラ集まって来ている。

 
 「へっへっへっ……、少しは楽しめそうじゃないか」

 「街娘に襲いかかろうとするならず者とか無法者って感じだな。その後すぐに、ペシってやられるんだけど」


 舌舐めずりをしながらミニガンを起動させると甲高い音をたて六連装銃身の回転が始まり、山下の仲間達やアミンも戦闘体制に入る。

 
 「アンタはいかないのか?」

 「脳筋軍団だけで充分だろ?それよりバリケード直さなきゃ」

 「まあ確かに」

 「シンディちゃんは?」

 「アタシは近接戦闘型だし」

 「格闘タイプも暴れている様だけど?」

 「アイツら暴れたいだけなんだよ」

 「もう充分暴れたろ」

 「さっき歯応えが無いって言ってた」

 「全員戦闘狂か、救いようが無いな……」


 そうこうしていると、別のエレベーターからサロットル、エヴァ、シェスクが降りてくる。


 「お、来た来た。サロットル、そこでふん縛っている腰抜け幹部とさ、下の階にも正規兵が似たような感じでゴチャッといるから、バリケードの修復させろよ」

 「私は今指導者を追われた身だからな。エヴァ頼むぞ」

 「なんか釈然としないけど、了解」

 「使えない幹部は置いといて、先ずは正規兵の所に行きましょう。侵入者達と和解した事と、現状を説明して戦線に復帰してもらいます」

 シェスクの説明に頷きながら、二人は再度エレベーターに向かう。
 
 「にしても、この決して少なくない人数を武装解除させたのか……しかも殺さずに、恐ろしいな貴様らは」

 サロットルは一箇所にまとめられた凡そ100人近くの幹部達に歩み寄りながら見回して呟く。

 「あのデカイのはもちろんだが、他の奴らも充分人外なんだよ。まともな俺を一緒にしないでくれ」

 さてそれはどうだかな、と笑うサロットルは幹部達の前に立つ。


 「さぁ、私を排除した同志達諸君、今の気分はどうかな?」
 
 サロットルからは何の感情も探れないな。極めてドライだな。それに比べて幹部共は、憎しみ……いや違うな。怯え、恐怖、哀願、それらがごっちゃ混ぜになってる表情だな。

 “クーデターしましたからね。このまま、全員殺処分されてもおかしくありませんよ”

 もう、生かしておいても害悪しか残さない様な面してるしな。実際殺さずにしといたら、こんなトラブル起こすわけだし。さて、サロットルさんはどうするのかね~。

 “錫乃介様だったらどうします?”

 ん~外に放り出すかな。後はプラントノイドに任せる。あの人数処分する手間も惜しいよ。

 “無駄に年食ってるから、労働力としても期待できませんからね”


 た、頼むサ、サロットル!命だけは
 私はアイツに騙されていたいんだ!
 そうだ、エヴァに騙されていただけだ!
 私は何もしていないぞ!
 わ、私は巻き込まれただけだ!
 おまえ、言い逃れか!
 貴様こそ、隙あらばと狙ってただろ!
 減刑を要求する!


 「何なのコイツら?」

 「シンディちゃん、あんまり見ない方が良いよ。こんなのばかりが大人だとは思って欲しくないね」

 「大丈夫だよ、慣れてるから」

 「なら良いけど」

 「錫乃介で」

 「何でだよ!」


 あ~、もう焼き払いてえなコイツら。
 
 “錫乃介様の方が我慢できそうも無いですね”

 「まったく醜いったらありゃしねえ。生き方に美学も何も感じねえんだよこいつら」

 「錫乃介の言う事がまともに聞こえる」

 「余計なお世話だよ」


 烏合の衆の騒音をしばし無言で俯瞰していたサロットルだったが、地下からやってきた正規兵達が到着してバリケードを組み始めると踵を返し、やはり戻って来ていたエヴァとシェスクに何事か伝えていた。
 そして錫乃介達に向かって来ると腹を括ったのか、意を決した表情で口を開く。

 
 「錫乃介。君達に見せたいものがある。着いて来てくれ」

 それだけ言うと、まだプラントノイドと戦闘中の状況を他所に、その場を後にするサロットルであった。

 
 「おいおい、アイツ等はほっとくのか?」

 錫乃介はアゴで烏合の衆を指す。

 「まさか。それも含めて来てもらいたい」

 「てめぇちょっと体育館の裏来いよぉ、的な展開はヤメテね」

 「何だそれは?」

 「いえ、なんでもありません。シンディちゃん頼りにしてるからね」

 「頼りにならない大人だな」

 「おっさん頼りにしちゃ駄目だよ。ロクな奴いないんだから」

 「知ってる」

 「俺の事見ないで」


 錫乃介とシンディはサロットルに連れられて、新宿の地下奥深くへと潜って行くのであった。


 もう、何処へ向かってるか俺わかっちゃったもんね。

 “新宿の深部と言えば、ですからね”
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...