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ブラッククィーン編
レインマンは雨男?
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その日は運良く夜遅くでも宿を取れた。200cとなかなか高額であったが、旅の疲れを癒すのに今夜ぐらいテントは避けたかったので、背に腹はかえられぬと、泊まった宿は『メイドインヘブン』
総コンクリート打ちっぱなしのお洒落な外観内観だ。この作りは住居にはあまり適さないのだが、贅沢は言えない。にしても『失楽園』から『天国』とは何の冗談か。
あくる日は早朝からトレーニングを開始した。街中の散策も兼ねて、30キロの背嚢を背負って軽めのジョグを始める。
出た宿は街の南側。この辺り商業施設が多く、南西側は様々な物販屋台が立ち並ぶマーケット。南東側は飲食店や風俗街が多い歓楽街。北西側は居住区、北東側は農業区と工業区が大河に沿って隣接している。どちらも堀を超えて外側にも広がっている。
大河からは、用水路が街中に引かれ、網の目の用に大小の水路があちこちにある。
水の都か、行ったことないけど、ベニスもこんな感じなのかな。
走っていてよく見かけるのが子供達の姿だ。アスファルトではオアシス付近でしか見られなかった子供達が、ここでは農業区や工業区、商業区に多くいる。農業区にいるのはどうやら農業の手伝いらしい。家の子供が外の子供かはわからないが、朝早くから結構な事だ。
他にいる子達は何をしているのだろうか?しゃがみこんでいる子達が多い。そして、何かを探して拾っている。
薬莢……か。薬莢拾って、集めているのか。
気になって近づいて見ると、皆んな様々な空薬莢を集めているのだ。
空薬莢なんて、どうするんだ…?流行ってるのか?俺のガキの頃は王冠や牛乳キャップの蓋とか日本酒の栓なんか集めるの流行ったな。あれ集めて色んなゲームをしたもんだ。
王冠はおはじきみたいに指で弾いたり、牛乳キャップはメンコだったな。日本酒の栓は独楽にして対戦してたな。懐かしいな。薬莢では何ができんだろうな?
“錫乃介様、おそらくあれは換金用。リロード用に売るのでしょう。そんな浮ついた理由ではなさそうですよ”
おっと、生きる為だったか失礼失礼。そりゃそうだな。平和じゃ無い、学校無い、おそらく金もない、子供の仕事も無い、下手すりゃあ親もいない、皆んな生きるのに必死だな。
ドン!
キャッ!
「メロディちゃん!」
バラララ……
と、よそ見をしながら走っていたせいで、ぶつかってしまったのは、まだ幼い女の子だった。
「ご、ごめん!」
「メロディちゃん大丈夫?」
と、駆け寄り、抱き起す。
一緒に歩いていた、同い年くらいの男の子も心配そうに覗き込む。
まだ5~6歳だろうか、薄い赤毛の髪で、着古して継ぎ当てがわりのパッチワークだらけのワンピースを着ている。
立ち上がらせて砂埃を払ってやる。
「ごめんね、よそ見してた……頭とか打ってない?痛いところない?」
「ちょっと痛いけど、でもアタシの薬莢……ぐすっ」
彼女が向いた方向には沢山の薬莢が転がっていた。
「す、すぐ拾うからね、泣かないでね」
「ぐす、ヒック」
「僕も拾うよ!」
男の子が手伝ってくれるのは嬉しいが、こんなところを他の人に見られたら、怪しいおじさん通報されちゃう。
「「「「こらーー!」」」」
もう、見られたーー!
「メロディを泣かせたな!」
「なんだあのおじさん」
「やっちまおうぜ」
「剣のサビにしてくれる!」
背中から聞こえる叫び声の持ち主はこちらもまだ幼い4人の男の子達だった。皆んな7~8歳くらいだろうか。皆んな手に薪ざっぽを持っている。
「ま、まて、悪かっ……ぶへっ!」
謝る間もなく先頭の男の子から飛び蹴りを鳩尾にくらい、地面に倒れる。
その後はもうアレだ。『ドラえもん』でのび太がジャイアンにボッコボコにされると砂煙で見えなくなるじゃん。そんで、煙が晴れると、ズタボロになったのび太が地面に倒れてるアレですよ。まんまアレでした。
ちょ、やめ!
ふべっ!
どこなぐっ…そこ駄目!
駄目だって!
ドリルすな!
乳首ドリルすな!
薪ざっぽでボッコボコに殴られた後、俺は子供達に土下座していた。
薪ざっぼとは!手に持ちやすくした木の棒である!子供達にとっては、エクスカリバーになったりゲイボルグになったり、またある時はライフルになったりする便利な道具なのだ!
「すんませんでした!以後気をつけます!ちゃんと前見て、信号は赤で渡りません。横断歩道は手を上げて渡ります!」
「何言ってかわかんねーよおっさん」
「よわっちぃな~おじさん」
「頭がたけーんだよ」
「また、つまらぬものを……」
「皆んな、それよりメロディちゃんの薬莢拾ってあげて」
メロディちゃんと一緒に歩いていた、色素の薄いボサボサヘアーの男の子が間に入ってくれた。彼もそして4人のバーサーカー達も皆んな着古して、継ぎ当てばかりのボロ服をきている。
袋にされる前に言って欲しかったなーそのセリフ。
「そうだな」
「こんなボロぞーきんより」
「そっちが先だな」
「今度は峰打ちではすまさん」
仕方がないので、痛む身体さすりながら薬莢を探す。
「おじちゃん、皆んながごめんね」
と、メロディという可愛いらしい声で謝ってきた。
え、ええ子や~天使のようじゃの~
「ど、どってことないよ、こんくらい」
こんな幼い子なのに、気遣い出来るなんてなぁ。
「あ、またオッサンが」
「メロディと話してる」
「こりねぇーな!」
「試し切りに丁度良い」
「す、すんませーん!」
ーー成る程、この子は皆んなのアイドルか。
と、捜索開始から小一時間で沢山の薬莢が集まった。
「じゃあピートいつもみたいに数えてみて」
4人のリーダーっぽい子が、メロディちゃんと一緒に歩いていた男の子に言う。
この優しそうな男の子はピートか。
「任せて、98個あればオーケーだから」
と、布袋を広げてその中に皆んな薬莢をザーーッと入れていく。
ピートはずっと袋の口を見たままだ。
「おっさんのも早く入れろよ」
「は、はい、すいません!」
言われるがままに俺もザーーーッと入れる。
「105個!元々98個落としたのに105個だから増えちゃったみたいだね!良かったねメロディちゃん」
錫乃介が薬莢を入れ終わるとピートはニコリと笑ってメロディに言った。
「わ!ほんと!ありがとう皆んな!」
「いいってことよ」
「こんなのなー」
「どってことねーよ」
「朝飯前よ」
「礼には及ばないよ」
「「「「何で、おっさんまで入ってんだよ!」」」」
「ひゃあ!すんません調子乗りました!
あ、あのところで、今ので薬莢数えられたんですか?」
「へっへーん!ピートはな、どんなもんでもすぐに数えちまう能力持ってんだぜ!豆とか掴んで皿にバッと広げただけでその数当てちまうんだから。なーー!」
リーダー格の男の子は、ピートの肩を組んで、誇らしげに言う。
「う、うん、なんかわかっちゃうんだ。たぶん今の薬莢も間違ってないよ」
少し照れながら言うピートはやたら可愛いい。
「あ、あのさ、おじさんが確認してみていい?もし当たってたら、この砂糖豆あげるから」
ちょっと好奇心が湧いてきたので、携帯食用のお菓子で釣ってみる。
前の時代だったら完全にお巡りさんのお世話になるな。
「え!本当?メロディちゃん良い?」
「うん良いよ。皆んなで食べよ!」
ピートがメロディちゃんに聞くと快諾してくれた。もう、食べられる気でいるのか。まぁ外れてもあげるけどさ。
1、2、3、4……52、53、54……85、86……103、104、105。
マジかよ。当たってる。
「な!合ってるだろ!おっさん砂糖豆くれよ!」
「お、おうほらこれ」
「「「わーーーい」」」
と言って、子供達はどっかに走り去って行った。
ふぅ、えらい目にあった。でも、面白いもん見れたな。凄いなぁ、電脳とかではなさそうだったが。
“おそらくサヴァン症候群です”
『レインマン』か。
“はい。発達障害や自閉症を持つ者に稀にみられる、人並み外れた能力の持ち主。あの子は速算力や数の把握が極度に優れているのでしょう。電脳の私ですら前もって意識しなければ、落とした薬莢などと言う予測しづらい物の数をあそこまで瞬時に数えるのは、至難の技です”
ナビですら、か。
その後、錫乃介はバイクの給油を済ませ、朝屋台の朝食を食べ、この街のハンターユニオンへと向かうのだった。
残金7,800
ナビ、この街物価高くない?
“税金ですよ”
成る程ね。
総コンクリート打ちっぱなしのお洒落な外観内観だ。この作りは住居にはあまり適さないのだが、贅沢は言えない。にしても『失楽園』から『天国』とは何の冗談か。
あくる日は早朝からトレーニングを開始した。街中の散策も兼ねて、30キロの背嚢を背負って軽めのジョグを始める。
出た宿は街の南側。この辺り商業施設が多く、南西側は様々な物販屋台が立ち並ぶマーケット。南東側は飲食店や風俗街が多い歓楽街。北西側は居住区、北東側は農業区と工業区が大河に沿って隣接している。どちらも堀を超えて外側にも広がっている。
大河からは、用水路が街中に引かれ、網の目の用に大小の水路があちこちにある。
水の都か、行ったことないけど、ベニスもこんな感じなのかな。
走っていてよく見かけるのが子供達の姿だ。アスファルトではオアシス付近でしか見られなかった子供達が、ここでは農業区や工業区、商業区に多くいる。農業区にいるのはどうやら農業の手伝いらしい。家の子供が外の子供かはわからないが、朝早くから結構な事だ。
他にいる子達は何をしているのだろうか?しゃがみこんでいる子達が多い。そして、何かを探して拾っている。
薬莢……か。薬莢拾って、集めているのか。
気になって近づいて見ると、皆んな様々な空薬莢を集めているのだ。
空薬莢なんて、どうするんだ…?流行ってるのか?俺のガキの頃は王冠や牛乳キャップの蓋とか日本酒の栓なんか集めるの流行ったな。あれ集めて色んなゲームをしたもんだ。
王冠はおはじきみたいに指で弾いたり、牛乳キャップはメンコだったな。日本酒の栓は独楽にして対戦してたな。懐かしいな。薬莢では何ができんだろうな?
“錫乃介様、おそらくあれは換金用。リロード用に売るのでしょう。そんな浮ついた理由ではなさそうですよ”
おっと、生きる為だったか失礼失礼。そりゃそうだな。平和じゃ無い、学校無い、おそらく金もない、子供の仕事も無い、下手すりゃあ親もいない、皆んな生きるのに必死だな。
ドン!
キャッ!
「メロディちゃん!」
バラララ……
と、よそ見をしながら走っていたせいで、ぶつかってしまったのは、まだ幼い女の子だった。
「ご、ごめん!」
「メロディちゃん大丈夫?」
と、駆け寄り、抱き起す。
一緒に歩いていた、同い年くらいの男の子も心配そうに覗き込む。
まだ5~6歳だろうか、薄い赤毛の髪で、着古して継ぎ当てがわりのパッチワークだらけのワンピースを着ている。
立ち上がらせて砂埃を払ってやる。
「ごめんね、よそ見してた……頭とか打ってない?痛いところない?」
「ちょっと痛いけど、でもアタシの薬莢……ぐすっ」
彼女が向いた方向には沢山の薬莢が転がっていた。
「す、すぐ拾うからね、泣かないでね」
「ぐす、ヒック」
「僕も拾うよ!」
男の子が手伝ってくれるのは嬉しいが、こんなところを他の人に見られたら、怪しいおじさん通報されちゃう。
「「「「こらーー!」」」」
もう、見られたーー!
「メロディを泣かせたな!」
「なんだあのおじさん」
「やっちまおうぜ」
「剣のサビにしてくれる!」
背中から聞こえる叫び声の持ち主はこちらもまだ幼い4人の男の子達だった。皆んな7~8歳くらいだろうか。皆んな手に薪ざっぽを持っている。
「ま、まて、悪かっ……ぶへっ!」
謝る間もなく先頭の男の子から飛び蹴りを鳩尾にくらい、地面に倒れる。
その後はもうアレだ。『ドラえもん』でのび太がジャイアンにボッコボコにされると砂煙で見えなくなるじゃん。そんで、煙が晴れると、ズタボロになったのび太が地面に倒れてるアレですよ。まんまアレでした。
ちょ、やめ!
ふべっ!
どこなぐっ…そこ駄目!
駄目だって!
ドリルすな!
乳首ドリルすな!
薪ざっぽでボッコボコに殴られた後、俺は子供達に土下座していた。
薪ざっぼとは!手に持ちやすくした木の棒である!子供達にとっては、エクスカリバーになったりゲイボルグになったり、またある時はライフルになったりする便利な道具なのだ!
「すんませんでした!以後気をつけます!ちゃんと前見て、信号は赤で渡りません。横断歩道は手を上げて渡ります!」
「何言ってかわかんねーよおっさん」
「よわっちぃな~おじさん」
「頭がたけーんだよ」
「また、つまらぬものを……」
「皆んな、それよりメロディちゃんの薬莢拾ってあげて」
メロディちゃんと一緒に歩いていた、色素の薄いボサボサヘアーの男の子が間に入ってくれた。彼もそして4人のバーサーカー達も皆んな着古して、継ぎ当てばかりのボロ服をきている。
袋にされる前に言って欲しかったなーそのセリフ。
「そうだな」
「こんなボロぞーきんより」
「そっちが先だな」
「今度は峰打ちではすまさん」
仕方がないので、痛む身体さすりながら薬莢を探す。
「おじちゃん、皆んながごめんね」
と、メロディという可愛いらしい声で謝ってきた。
え、ええ子や~天使のようじゃの~
「ど、どってことないよ、こんくらい」
こんな幼い子なのに、気遣い出来るなんてなぁ。
「あ、またオッサンが」
「メロディと話してる」
「こりねぇーな!」
「試し切りに丁度良い」
「す、すんませーん!」
ーー成る程、この子は皆んなのアイドルか。
と、捜索開始から小一時間で沢山の薬莢が集まった。
「じゃあピートいつもみたいに数えてみて」
4人のリーダーっぽい子が、メロディちゃんと一緒に歩いていた男の子に言う。
この優しそうな男の子はピートか。
「任せて、98個あればオーケーだから」
と、布袋を広げてその中に皆んな薬莢をザーーッと入れていく。
ピートはずっと袋の口を見たままだ。
「おっさんのも早く入れろよ」
「は、はい、すいません!」
言われるがままに俺もザーーーッと入れる。
「105個!元々98個落としたのに105個だから増えちゃったみたいだね!良かったねメロディちゃん」
錫乃介が薬莢を入れ終わるとピートはニコリと笑ってメロディに言った。
「わ!ほんと!ありがとう皆んな!」
「いいってことよ」
「こんなのなー」
「どってことねーよ」
「朝飯前よ」
「礼には及ばないよ」
「「「「何で、おっさんまで入ってんだよ!」」」」
「ひゃあ!すんません調子乗りました!
あ、あのところで、今ので薬莢数えられたんですか?」
「へっへーん!ピートはな、どんなもんでもすぐに数えちまう能力持ってんだぜ!豆とか掴んで皿にバッと広げただけでその数当てちまうんだから。なーー!」
リーダー格の男の子は、ピートの肩を組んで、誇らしげに言う。
「う、うん、なんかわかっちゃうんだ。たぶん今の薬莢も間違ってないよ」
少し照れながら言うピートはやたら可愛いい。
「あ、あのさ、おじさんが確認してみていい?もし当たってたら、この砂糖豆あげるから」
ちょっと好奇心が湧いてきたので、携帯食用のお菓子で釣ってみる。
前の時代だったら完全にお巡りさんのお世話になるな。
「え!本当?メロディちゃん良い?」
「うん良いよ。皆んなで食べよ!」
ピートがメロディちゃんに聞くと快諾してくれた。もう、食べられる気でいるのか。まぁ外れてもあげるけどさ。
1、2、3、4……52、53、54……85、86……103、104、105。
マジかよ。当たってる。
「な!合ってるだろ!おっさん砂糖豆くれよ!」
「お、おうほらこれ」
「「「わーーーい」」」
と言って、子供達はどっかに走り去って行った。
ふぅ、えらい目にあった。でも、面白いもん見れたな。凄いなぁ、電脳とかではなさそうだったが。
“おそらくサヴァン症候群です”
『レインマン』か。
“はい。発達障害や自閉症を持つ者に稀にみられる、人並み外れた能力の持ち主。あの子は速算力や数の把握が極度に優れているのでしょう。電脳の私ですら前もって意識しなければ、落とした薬莢などと言う予測しづらい物の数をあそこまで瞬時に数えるのは、至難の技です”
ナビですら、か。
その後、錫乃介はバイクの給油を済ませ、朝屋台の朝食を食べ、この街のハンターユニオンへと向かうのだった。
残金7,800
ナビ、この街物価高くない?
“税金ですよ”
成る程ね。
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