25 / 262
アスファルト編
叫喚地獄
しおりを挟む
次の日からエシャロットは資源維持のため暫くお休みすることにしたので、オアシス行軍を2周したのち、ランドマインアントを20体収穫、ドンキーホームに納品して仕事、帰宅というローテーションが4日続いた。
そんなある日の夜、ドンキーホームの一室で2人の男が世間話の様に気さくな感じで会話をしていた。
「やぁ、矢破部。また密偵が出たみたいだね」
「あぁ、最近執拗にこの辺りを探っていたのが丸分かりの末端だろうから、始末したがな。3ヶ月前のスカウトの件からきな臭くなると思っていたが、その後動きなし。だがここ数日チョロチョロ目につく。またぞろ動き出したようだな。隣町、コンクレットの様子は?」
「うん、デイビッドによると完全に落ちているようだね。あそこは元々受電量は少なかったし、防衛力も弱かったから、仕方ないところはあるけど」
「とは言え、このままにしておく訳にはいかないだろう?」
「当然。だけど、まずはこの街の防衛配備の強化だ。面倒だなぁ」
「倦まず弛まずコツコツ兵器や物資を揃えて置いてよく言う」
「これらは商品なんだけなぁ」
「一国を落とすだけのな」
「扱う人が足りないけどね」
「輜重・兵站・情報統括担当のヘッドでも人材は手が回らないか。だが、1人薹は立ってるが活きがいいのがいるな」
「錫乃介か。頭は悪いがメンタルは強い。兵器の扱いも慣れているし、最近身体も鍛えているようで、ガタイも良くなってきた」
「最適じゃ無いか」
「彼、2,020年の人間でね。何の因果か知らないが、この時代に飛ばされてきたらしい。そんな人間を闘いに巻き込むのはどうも哀れでね」
「人道的な内容の話に聞こえるが、突拍子も無い事言ったな。どういうことだ?」
「言葉のままだよ。錫乃介は過去から、ーーグラウンドスクラッチ以前、彼曰く2,020年の日本から、この時代この街に飛ばされて来てるんだ」
「確かなのか?」
「見なよ、この古銭と財布」
と言ってショーケースに並べられているコインと財布は、とても130年以上の前の物とは思えない良い保存状態だ。特に財布は先程まで使っていたかの様な質感だ。
「コレクターでも無い人間が、さも日常的に使ってますという手付きで、ケツのポケットからこれを取り出して、文無しだから買ってくれって言ってきたんた。
拾ったとは言ってたけど、そんな訳無いだろう?どこの品質保全倉庫からこれだけ盗んで来たんだ?どこの、普段から130年以上も前の物を日常的に、使えもしないコインを入れた財布を使用しているコレクターから奪って来たんだ?どう考えても、過去から持って来たとしか思えない状態なんだよ。その時の言動も含めてね」
「ふむ謎の男だな」
「そう謎なんだ。でもそれだけだ。彼自身はまだ短い付き合いだが裏表ない人間だよ」
「随分と買ってるな」
「ごめん訂正する。裏表とかそんな立ち回りができるほど器用でも、頭が良いわけでも、計算高い訳でも無い。何でもかんでも言い値で買ったり売ったりしてる。交渉の“こ”の字も知らない、実直といえば聞こえが良い馬鹿だ」
「随分と貶すな」
「話を戻すと、そんな馬鹿を巻き込むのは可哀想だなって思ってるのさ」
「その言われようの方が可哀想だ」
そんなこんなで4連勤最終日、給与を貰って明日はトレーニングもリクエストも休む完全フリーの日と決めた錫乃介は、懐も温かい今晩はとことん食って飲むぞと夜の街に繰り出した。
軍資金9,010
まずは飯と屋台市場でアレコレ食べる。ピロシキ、唐揚げ、ピザ、焼鳥、タコス、ビーフン、餃子にハンバーグ。最近トレーニングで身体はデカくなり、食べる量もどんどん増えている。代謝が落ちる年頃なのに、健康的にコレで良いのか?
腹が膨れたら、節約の為に手を出していなかったBARに繰り出す。
錫乃介はBARが好きだ。色んな酒を飲みながら、そこで見知った人と飲み友達になり、次から次の店へとハシゴ酒はしょっちゅうしたものだった。
だが、この世界に来てからは、金も無いし生きていくだけで精一杯だった。何とか金銭的にはようやく余裕ができ、食事以外にも娯楽を1つ増やしても罰は当たるまい。
そんな事で歩き回って目に付いた一軒のBAR。店名は『雨炎火先処(うえんかせきしょ)』勿論バラック小屋だ。
物々しいネーミングセンスだな。こーいうヤバそうな名前の店って良くも悪くも個性的なんだよな。入ってみよう。
“いいんですか?雨炎火先処って、旅人に酒を飲ませ酔わせて金品を盗んだ者、象に酒を飲ませて暴れさせて、多くの人間を殺傷した者が落ちる地獄の事ですよ”
……地獄の名前なのはわかった。そして前者な、これはわかる。旅人に酒飲まして盗むってな。介抱ドロみたいな。これはよくいるやつだ。だが後者は何だ?象に酒飲まして人殺す?レア過ぎだろ!そんな人材の受け皿も地獄はあるのかよ!日本に何人いるんだよ!インド、アフリカだってそうはいねーよ。
“昔はいたんでしょうね”
いや、いねーだろ。
ちなみにどんな地獄なんだ?
“Wikiより説明しますね。
赤く焼けて炎を発する石の雨が罪人たちを撃ち殺す。また、溶けた銅とハンダと血が混ざった河が流れており、罪人たちを押し流しながら焼く。全身から炎を発して燃え盛る巨大象がいて罪人を押しつぶす。
だそうです”
だからなんで象なんだよ。象じゃ無くても良いだろ閻魔様。
ともかく俄然興味もったわ。入ろ。
分厚い鋼板の扉を開け中に入ると、様々なお酒のボトルが並び、そのバックから青白い鈍い光りが照らす。マスターらしき男は見上げる様な大男で白シャツにベスト、スキンヘッドにティアドロップのサングラス。口髭に顎髭、細い葉巻を咥えて拳銃を、ーー馬鹿でかいリボルバーを磨いていた。
個性的すぎるぅ!
何でリボルバー磨いてんだよ
グラス磨けよ。
こぇーよ。いきなりこれかよ。
「あ、サーセンお忙しいみたいですので、また今度にしま…」
ドゴォン‼︎キュイーーン
こちらが言い終わるか否かでいきなりリボルバーの凄まじい爆音と跳弾の音が響き渡った。
「いいから座れ…」
“『スミス&ウェッソン モデル.500』一般流通では世界最強拳銃の一角だったこともあります。当たったら頭どころか、身体が吹き飛びます”
でしょうね。あの人今それを片手で撃ったよ?
「そ、それでは、失礼します」
と、端っこの席に座ろうとすると、リボルバーで、くいっと真ん中に座る様指示される。
リボルバーこっちに向けんなや!
こんな店なのに先客いるよ!しかも女だよ!マスターの女か⁉︎聞けねーけど。
暗がりでわかりづらいが、女性の先客がいた。黒いワンピースに茶色のショートカットが背景に溶け込んでいた。
「何飲む」
と言って出された酒はバーボンだった。片手で栓を開け、金属製のショットグラスを出す。その間もリボルバーからは手を離さない。
何するって聞いてるけど、ブッカーズ出して来てんじゃん!選択させる気ないっしょ!グラスに注いでるし!ドブドブ注いでるし!ってか、リボルバーを置け!リボルバーを!
スッと出されたブッカーズは金属製のでかいショットグラスに並々注がれていた。
違うから、グラスでかい時点でショットグラスじゃねーんだよ。しかもこのグラス、砲弾の薬莢を切り詰めたモンじゃねーか。このセンスは嫌いじゃ無いよ、でもね、量が多いんだよ量が。これ200mlは入ってるよな~、何口径の砲弾だよ。
ブッカーズは好きだよ好き。それは本当。でもね、60度以上もあるお酒を、こんなアクエリアスみたいには飲みたく無いなぁ。でも、そんな事言えないけどね!
ブッカーズはバーボンウイスキーだが強い酒だ。通常のウイスキーやウォッカが40度に対して、ブッカーズは62~63度ある。現代でも、一般的に流通しているバーボンでは最も強い酒だ。
「サービスだ…初客に出してる…」
ありがた迷惑サービスぅ!
「ありがとうございます!頂きます!」
と叫んで、持ち前のど根性で一気した。
こーーーーー!喉が焼ける!腹が滲みるぅ!!
だが!みろや、コレが俺の実力よ。ブッカーズなんて恐るるに足らず。もう無理っすけどな!
「別に一気しなくていい…」
先に言えーー!
「チェ、チェイサーを…」
「先に飲み物を決めてからだ。さっきのはサービスだからな…」
そう来たか。
だがな
俺が潜り抜けて来た酒の修羅場はこんなもんじゃなかったんだぜ。
リボルバーは管轄外だがな!
俺はグッと腹に力を入れ、押し出す様に口を開いた。
「ブッカーズもう一杯くれ今度はロックで、ソーダ水をチェイサーにな」
マスターの眉がピクリと動く。するとようやくリボルバーをカウンターに置いた。
今度はまともなロックグラスを出すと、氷を出し、木の桶の中で割り始めた。銃床以外でまともに木を見たの初めてかもしれない。
ものの1分で丸氷を作ると、ロックグラスに入れ、バースプーンでステアしグラスを冷やす。一旦中の水を捨てる。ブッカーズを注ぎ、数周ステアをすると、スッとこちらに出した。追いかける様にソーダ水が、薬莢グラスに入って出て来る。
バーテンダーとしての腕は間違いなくプロだ。プロの手付きだ。まぁ問題点はそう言うとこじゃ無いけどな!ナビの注告を聞いておくんだった。
「おい、この男ならどうだ?肝は座ってるぞ」
と言って奥に座っていた女性に声をかける。すっとこちらに向けた顔は良く見る顔だった。
「ふぅ、良い男いたら紹介してとは言ったけど、錫乃介じゃあねぇ」
「なんとなくそうじゃねぇかと思っていたけど、やっぱりエミリンか」
こちらに頬杖を突きながら、呆れた様な、詰まらなさそうな顔で一瞥してくる。
「なんだ知り合い同士か?」
「うちに登録してるハンターよ。新入りの」
「そうそう、まだまだ4ヶ月の新入りだ。手荒い歓迎ありがとうよ」
「これがうちの流儀でな。つまらん奴は帰って貰ってるんだ」
「おっそろしぃ会員資格だこと。少しはお眼鏡に叶ったかな?」
「思ったよりはな。エミリンの知り合いみたいだしな」
「エミリンのホームかここは?」
「仕事終わりに、1人で飲みたいときは良く来てる。変な男も来ないし」
「はは、女性1人で飲んでるとナンパもされやすいだろうからな」
と言ったのが運の尽きだったか、エミリンの琴線にふれたのか、俺はナビの注告を無視した事を再び後悔した。
「そーなの、わかる?こっちは純粋にお酒を飲みたいだけなのに、すーぐに寄ってきてさ、どっか行こうよとか、相手しようか?こっちで飲みなよとか、言ってくるだけでもウザイのに、いきなり腕掴まれる事もしょっちゅうなの。アンちゃんとかウララちゃんとかいると、そういう男のあしらいが上手いから、あの2人どこでそう言うの覚えてくるんだろ?それで安心できるんだけど、私だけだとどうも流されやすくて、なかなか断れなくて、あ、着いてっちゃう訳じゃ無いから勘違いしないでね、そんな軽い女じゃないからね。んで、1人の時間を中々楽しむ事が出来ないの。ほら、女の子同士は勿論楽しいし、何時間でも話せるけど、やっぱり1人でお酒飲みながら物思いに更けたい時だってあるじゃない?そんな時にね、このお店を知ったの。入ったらさぁ、マスターは優しいし、お酒は美味しいし、なにより入店許可がいるから、変な男に声をかけられるどころか、そもそも居ないし、入って来ようとしても撃退してくれるし。だからね、このお店私のお気に入りなの。週5は来るかな?あ、でも錫乃介も許可がでたから、これから来るのか~、いくら私と一緒に飲みたいからって、いちいち声かけてこないでね。知らない仲じゃないから、偶には相手してあげるけど、基本的にはそっちから声をかけるのはNGね。あ、でも安心して、だからと言って、錫乃介が入って来た時に無視して淡々とお酒飲むことができる程、私クールには徹せないから、多分声掛けちゃう。その時はちゃんとお話ししてね。無視しないでね。それで、この前ねマスターに良い男居ないかなぁって呟いたの。でも勘違いしないでね、いつもそんな事言ってるみたいだけど、BARによくいるじゃないそう言う寂しそうな女って。いつも良い男はいない?ってそればっかり言ってる女。そうじゃなくて、話の流れでたまたまそう言う話題になって、つい良い男いないかな?ってちょっとだけ、本当にちょっとだけ呟いたの。そしたらマスターね、ちゃんと聞いててくれたみたいでね、さっき錫乃介を、“この男ならどうだ?”って言ってくれたの。いつもそんな事してるわけじゃなくて、本当に錫乃介が初めてだったんだからね。ねぇ、聞いてる?」
「あぁもちろん聞いてるよ。わかるよ。エミリンも大変だな」
「え~わかってくれるの!錫乃介の癖に!でもでも、聞いてこの前ね朝起きたときね、顔洗って歯を磨いて、髪を整えててから着替えて、あ、着替えてから髪セットだった。それから、アンちゃん達に会って…
俺はエミリンの話を聞き流しながら、マスターをチラリと見る。
細い葉巻を吹かすマスターと目が合う。
サングラスで視線はわからないが確実に目が合っている。
俺はエミリンにチョイと目をやりマスターに戻す目配せをする(いつもこうか?)
マスターの葉巻を咥えている方の右口角が上がる(まあな)
俺は軽く頷く(あんたも大変だな)
エミリンに気付かれ無いよう、マスターは葉巻を口からとると、煙と共に深いため息を吐いた(コレも仕事だ)
葉巻はフィリーズのコニャックか、シガリロの定番だな。
「ね、聞いてる錫乃介?」
「あぁ、もちろん聞いてるよ。エミリンも大変だな。頑張っててえらいよ」
「ありがとう!私の事わかってくれるの錫乃介だけかも!」
マズィ!俺だけに矛先が!
「そんな事言ったらマスターに失礼だろ」
マスターのコメカミがピクリと動く
「そーだった!マスターごめんね!」
「…かまわない」
マスターがチラリと俺を睨んだ(貴様!)
そうはいくか(生贄にすんな!)
それでね…あ、マスター!バラン30年水割り!それでね…
そうか、エミリンも大変だな
でしょ、だから…あ、マスター!マッカラン30年リミテッドヴィンテージロックで!だから…
そうだね、エミリン頑張ってじゃん
優しい!錫乃介!そんでこの前…あ、マスター!ボウモア1974のやつ、トゥワイスアップで。そんでこの前…
ああ、エミリンは悪く無いよ
だよね!私ね…あ、マスター!アルマニャックのラフォンタン、1940年のやつクラッシュアイスで。それで、私ね…
そして、錫乃介は酔うこともできず
エミリンの会話は朝まで続いた。
こころを無にしていた錫乃介は、ユニオンまでエミリンを送り、ゲルに戻って就寝するまで気付かなかった。
あれ?なんで俺の奢りなの?
残金7,150
次の日ハンターユニオンのバックヤードでは、3人のアンドロイド達がいた。
「ねぇ、この前ね錫乃介にご飯奢らせたの。『酒と銃と男と肉』で偶然会ってさあ、ちょっとしをらしくしたら、コロッとしてさ、調子にのって口説いてきてウザかったけど、結構沢山食べさせて貰っちゃった」
「え~実は私も屋台市場で偶然合って、案内してくれって言うからさ、10軒以上も廻らせて、ぜーんぶ奢って貰っちゃった!どっかに連れて行きたかったみたいだけど、そんな事させずにね」
「2人とも?私も昨日良く行くBARでアイツが入ってきてさ、一緒飲みたいって言うから、付き合ってあげたんだけど、良いお酒飲ませて貰って全部奢らせたわ。朝まで付き合わされたけど」
「ちょっとエミリン錫乃介と朝帰り~?」
「やめてよアンちゃん、そんなんじゃ無いし、どうしてもって言うから、可哀想だから付き合ってあげただけ。代わりにちょっとだけ高いお酒注文したけどね~」
「ってことは皆んなアイツに奢らせたのね~かっわいそ、錫乃介く~ん」
「そんな事思って無い癖にウララちゃん」
「そう言うエミリンだって、アンちゃんもでしょ~」
「みんなのメッシーね!」
「「「キャハハハハ!!!」」」
「「「………」」」
突如と3人の間を沈黙が支配する。
最初に口を開いたのはエミリンだった。
「何かちょっと」
次にアンシャテ
「うん、本当にちょっとだけだけど」
そしてウララ
「みんなも?私も」
「「「なんかムカつくわね、錫乃介!」」」
火のない所に、煙が立ち上がっていたことを、錫乃介は知る由もなかった。
そんなある日の夜、ドンキーホームの一室で2人の男が世間話の様に気さくな感じで会話をしていた。
「やぁ、矢破部。また密偵が出たみたいだね」
「あぁ、最近執拗にこの辺りを探っていたのが丸分かりの末端だろうから、始末したがな。3ヶ月前のスカウトの件からきな臭くなると思っていたが、その後動きなし。だがここ数日チョロチョロ目につく。またぞろ動き出したようだな。隣町、コンクレットの様子は?」
「うん、デイビッドによると完全に落ちているようだね。あそこは元々受電量は少なかったし、防衛力も弱かったから、仕方ないところはあるけど」
「とは言え、このままにしておく訳にはいかないだろう?」
「当然。だけど、まずはこの街の防衛配備の強化だ。面倒だなぁ」
「倦まず弛まずコツコツ兵器や物資を揃えて置いてよく言う」
「これらは商品なんだけなぁ」
「一国を落とすだけのな」
「扱う人が足りないけどね」
「輜重・兵站・情報統括担当のヘッドでも人材は手が回らないか。だが、1人薹は立ってるが活きがいいのがいるな」
「錫乃介か。頭は悪いがメンタルは強い。兵器の扱いも慣れているし、最近身体も鍛えているようで、ガタイも良くなってきた」
「最適じゃ無いか」
「彼、2,020年の人間でね。何の因果か知らないが、この時代に飛ばされてきたらしい。そんな人間を闘いに巻き込むのはどうも哀れでね」
「人道的な内容の話に聞こえるが、突拍子も無い事言ったな。どういうことだ?」
「言葉のままだよ。錫乃介は過去から、ーーグラウンドスクラッチ以前、彼曰く2,020年の日本から、この時代この街に飛ばされて来てるんだ」
「確かなのか?」
「見なよ、この古銭と財布」
と言ってショーケースに並べられているコインと財布は、とても130年以上の前の物とは思えない良い保存状態だ。特に財布は先程まで使っていたかの様な質感だ。
「コレクターでも無い人間が、さも日常的に使ってますという手付きで、ケツのポケットからこれを取り出して、文無しだから買ってくれって言ってきたんた。
拾ったとは言ってたけど、そんな訳無いだろう?どこの品質保全倉庫からこれだけ盗んで来たんだ?どこの、普段から130年以上も前の物を日常的に、使えもしないコインを入れた財布を使用しているコレクターから奪って来たんだ?どう考えても、過去から持って来たとしか思えない状態なんだよ。その時の言動も含めてね」
「ふむ謎の男だな」
「そう謎なんだ。でもそれだけだ。彼自身はまだ短い付き合いだが裏表ない人間だよ」
「随分と買ってるな」
「ごめん訂正する。裏表とかそんな立ち回りができるほど器用でも、頭が良いわけでも、計算高い訳でも無い。何でもかんでも言い値で買ったり売ったりしてる。交渉の“こ”の字も知らない、実直といえば聞こえが良い馬鹿だ」
「随分と貶すな」
「話を戻すと、そんな馬鹿を巻き込むのは可哀想だなって思ってるのさ」
「その言われようの方が可哀想だ」
そんなこんなで4連勤最終日、給与を貰って明日はトレーニングもリクエストも休む完全フリーの日と決めた錫乃介は、懐も温かい今晩はとことん食って飲むぞと夜の街に繰り出した。
軍資金9,010
まずは飯と屋台市場でアレコレ食べる。ピロシキ、唐揚げ、ピザ、焼鳥、タコス、ビーフン、餃子にハンバーグ。最近トレーニングで身体はデカくなり、食べる量もどんどん増えている。代謝が落ちる年頃なのに、健康的にコレで良いのか?
腹が膨れたら、節約の為に手を出していなかったBARに繰り出す。
錫乃介はBARが好きだ。色んな酒を飲みながら、そこで見知った人と飲み友達になり、次から次の店へとハシゴ酒はしょっちゅうしたものだった。
だが、この世界に来てからは、金も無いし生きていくだけで精一杯だった。何とか金銭的にはようやく余裕ができ、食事以外にも娯楽を1つ増やしても罰は当たるまい。
そんな事で歩き回って目に付いた一軒のBAR。店名は『雨炎火先処(うえんかせきしょ)』勿論バラック小屋だ。
物々しいネーミングセンスだな。こーいうヤバそうな名前の店って良くも悪くも個性的なんだよな。入ってみよう。
“いいんですか?雨炎火先処って、旅人に酒を飲ませ酔わせて金品を盗んだ者、象に酒を飲ませて暴れさせて、多くの人間を殺傷した者が落ちる地獄の事ですよ”
……地獄の名前なのはわかった。そして前者な、これはわかる。旅人に酒飲まして盗むってな。介抱ドロみたいな。これはよくいるやつだ。だが後者は何だ?象に酒飲まして人殺す?レア過ぎだろ!そんな人材の受け皿も地獄はあるのかよ!日本に何人いるんだよ!インド、アフリカだってそうはいねーよ。
“昔はいたんでしょうね”
いや、いねーだろ。
ちなみにどんな地獄なんだ?
“Wikiより説明しますね。
赤く焼けて炎を発する石の雨が罪人たちを撃ち殺す。また、溶けた銅とハンダと血が混ざった河が流れており、罪人たちを押し流しながら焼く。全身から炎を発して燃え盛る巨大象がいて罪人を押しつぶす。
だそうです”
だからなんで象なんだよ。象じゃ無くても良いだろ閻魔様。
ともかく俄然興味もったわ。入ろ。
分厚い鋼板の扉を開け中に入ると、様々なお酒のボトルが並び、そのバックから青白い鈍い光りが照らす。マスターらしき男は見上げる様な大男で白シャツにベスト、スキンヘッドにティアドロップのサングラス。口髭に顎髭、細い葉巻を咥えて拳銃を、ーー馬鹿でかいリボルバーを磨いていた。
個性的すぎるぅ!
何でリボルバー磨いてんだよ
グラス磨けよ。
こぇーよ。いきなりこれかよ。
「あ、サーセンお忙しいみたいですので、また今度にしま…」
ドゴォン‼︎キュイーーン
こちらが言い終わるか否かでいきなりリボルバーの凄まじい爆音と跳弾の音が響き渡った。
「いいから座れ…」
“『スミス&ウェッソン モデル.500』一般流通では世界最強拳銃の一角だったこともあります。当たったら頭どころか、身体が吹き飛びます”
でしょうね。あの人今それを片手で撃ったよ?
「そ、それでは、失礼します」
と、端っこの席に座ろうとすると、リボルバーで、くいっと真ん中に座る様指示される。
リボルバーこっちに向けんなや!
こんな店なのに先客いるよ!しかも女だよ!マスターの女か⁉︎聞けねーけど。
暗がりでわかりづらいが、女性の先客がいた。黒いワンピースに茶色のショートカットが背景に溶け込んでいた。
「何飲む」
と言って出された酒はバーボンだった。片手で栓を開け、金属製のショットグラスを出す。その間もリボルバーからは手を離さない。
何するって聞いてるけど、ブッカーズ出して来てんじゃん!選択させる気ないっしょ!グラスに注いでるし!ドブドブ注いでるし!ってか、リボルバーを置け!リボルバーを!
スッと出されたブッカーズは金属製のでかいショットグラスに並々注がれていた。
違うから、グラスでかい時点でショットグラスじゃねーんだよ。しかもこのグラス、砲弾の薬莢を切り詰めたモンじゃねーか。このセンスは嫌いじゃ無いよ、でもね、量が多いんだよ量が。これ200mlは入ってるよな~、何口径の砲弾だよ。
ブッカーズは好きだよ好き。それは本当。でもね、60度以上もあるお酒を、こんなアクエリアスみたいには飲みたく無いなぁ。でも、そんな事言えないけどね!
ブッカーズはバーボンウイスキーだが強い酒だ。通常のウイスキーやウォッカが40度に対して、ブッカーズは62~63度ある。現代でも、一般的に流通しているバーボンでは最も強い酒だ。
「サービスだ…初客に出してる…」
ありがた迷惑サービスぅ!
「ありがとうございます!頂きます!」
と叫んで、持ち前のど根性で一気した。
こーーーーー!喉が焼ける!腹が滲みるぅ!!
だが!みろや、コレが俺の実力よ。ブッカーズなんて恐るるに足らず。もう無理っすけどな!
「別に一気しなくていい…」
先に言えーー!
「チェ、チェイサーを…」
「先に飲み物を決めてからだ。さっきのはサービスだからな…」
そう来たか。
だがな
俺が潜り抜けて来た酒の修羅場はこんなもんじゃなかったんだぜ。
リボルバーは管轄外だがな!
俺はグッと腹に力を入れ、押し出す様に口を開いた。
「ブッカーズもう一杯くれ今度はロックで、ソーダ水をチェイサーにな」
マスターの眉がピクリと動く。するとようやくリボルバーをカウンターに置いた。
今度はまともなロックグラスを出すと、氷を出し、木の桶の中で割り始めた。銃床以外でまともに木を見たの初めてかもしれない。
ものの1分で丸氷を作ると、ロックグラスに入れ、バースプーンでステアしグラスを冷やす。一旦中の水を捨てる。ブッカーズを注ぎ、数周ステアをすると、スッとこちらに出した。追いかける様にソーダ水が、薬莢グラスに入って出て来る。
バーテンダーとしての腕は間違いなくプロだ。プロの手付きだ。まぁ問題点はそう言うとこじゃ無いけどな!ナビの注告を聞いておくんだった。
「おい、この男ならどうだ?肝は座ってるぞ」
と言って奥に座っていた女性に声をかける。すっとこちらに向けた顔は良く見る顔だった。
「ふぅ、良い男いたら紹介してとは言ったけど、錫乃介じゃあねぇ」
「なんとなくそうじゃねぇかと思っていたけど、やっぱりエミリンか」
こちらに頬杖を突きながら、呆れた様な、詰まらなさそうな顔で一瞥してくる。
「なんだ知り合い同士か?」
「うちに登録してるハンターよ。新入りの」
「そうそう、まだまだ4ヶ月の新入りだ。手荒い歓迎ありがとうよ」
「これがうちの流儀でな。つまらん奴は帰って貰ってるんだ」
「おっそろしぃ会員資格だこと。少しはお眼鏡に叶ったかな?」
「思ったよりはな。エミリンの知り合いみたいだしな」
「エミリンのホームかここは?」
「仕事終わりに、1人で飲みたいときは良く来てる。変な男も来ないし」
「はは、女性1人で飲んでるとナンパもされやすいだろうからな」
と言ったのが運の尽きだったか、エミリンの琴線にふれたのか、俺はナビの注告を無視した事を再び後悔した。
「そーなの、わかる?こっちは純粋にお酒を飲みたいだけなのに、すーぐに寄ってきてさ、どっか行こうよとか、相手しようか?こっちで飲みなよとか、言ってくるだけでもウザイのに、いきなり腕掴まれる事もしょっちゅうなの。アンちゃんとかウララちゃんとかいると、そういう男のあしらいが上手いから、あの2人どこでそう言うの覚えてくるんだろ?それで安心できるんだけど、私だけだとどうも流されやすくて、なかなか断れなくて、あ、着いてっちゃう訳じゃ無いから勘違いしないでね、そんな軽い女じゃないからね。んで、1人の時間を中々楽しむ事が出来ないの。ほら、女の子同士は勿論楽しいし、何時間でも話せるけど、やっぱり1人でお酒飲みながら物思いに更けたい時だってあるじゃない?そんな時にね、このお店を知ったの。入ったらさぁ、マスターは優しいし、お酒は美味しいし、なにより入店許可がいるから、変な男に声をかけられるどころか、そもそも居ないし、入って来ようとしても撃退してくれるし。だからね、このお店私のお気に入りなの。週5は来るかな?あ、でも錫乃介も許可がでたから、これから来るのか~、いくら私と一緒に飲みたいからって、いちいち声かけてこないでね。知らない仲じゃないから、偶には相手してあげるけど、基本的にはそっちから声をかけるのはNGね。あ、でも安心して、だからと言って、錫乃介が入って来た時に無視して淡々とお酒飲むことができる程、私クールには徹せないから、多分声掛けちゃう。その時はちゃんとお話ししてね。無視しないでね。それで、この前ねマスターに良い男居ないかなぁって呟いたの。でも勘違いしないでね、いつもそんな事言ってるみたいだけど、BARによくいるじゃないそう言う寂しそうな女って。いつも良い男はいない?ってそればっかり言ってる女。そうじゃなくて、話の流れでたまたまそう言う話題になって、つい良い男いないかな?ってちょっとだけ、本当にちょっとだけ呟いたの。そしたらマスターね、ちゃんと聞いててくれたみたいでね、さっき錫乃介を、“この男ならどうだ?”って言ってくれたの。いつもそんな事してるわけじゃなくて、本当に錫乃介が初めてだったんだからね。ねぇ、聞いてる?」
「あぁもちろん聞いてるよ。わかるよ。エミリンも大変だな」
「え~わかってくれるの!錫乃介の癖に!でもでも、聞いてこの前ね朝起きたときね、顔洗って歯を磨いて、髪を整えててから着替えて、あ、着替えてから髪セットだった。それから、アンちゃん達に会って…
俺はエミリンの話を聞き流しながら、マスターをチラリと見る。
細い葉巻を吹かすマスターと目が合う。
サングラスで視線はわからないが確実に目が合っている。
俺はエミリンにチョイと目をやりマスターに戻す目配せをする(いつもこうか?)
マスターの葉巻を咥えている方の右口角が上がる(まあな)
俺は軽く頷く(あんたも大変だな)
エミリンに気付かれ無いよう、マスターは葉巻を口からとると、煙と共に深いため息を吐いた(コレも仕事だ)
葉巻はフィリーズのコニャックか、シガリロの定番だな。
「ね、聞いてる錫乃介?」
「あぁ、もちろん聞いてるよ。エミリンも大変だな。頑張っててえらいよ」
「ありがとう!私の事わかってくれるの錫乃介だけかも!」
マズィ!俺だけに矛先が!
「そんな事言ったらマスターに失礼だろ」
マスターのコメカミがピクリと動く
「そーだった!マスターごめんね!」
「…かまわない」
マスターがチラリと俺を睨んだ(貴様!)
そうはいくか(生贄にすんな!)
それでね…あ、マスター!バラン30年水割り!それでね…
そうか、エミリンも大変だな
でしょ、だから…あ、マスター!マッカラン30年リミテッドヴィンテージロックで!だから…
そうだね、エミリン頑張ってじゃん
優しい!錫乃介!そんでこの前…あ、マスター!ボウモア1974のやつ、トゥワイスアップで。そんでこの前…
ああ、エミリンは悪く無いよ
だよね!私ね…あ、マスター!アルマニャックのラフォンタン、1940年のやつクラッシュアイスで。それで、私ね…
そして、錫乃介は酔うこともできず
エミリンの会話は朝まで続いた。
こころを無にしていた錫乃介は、ユニオンまでエミリンを送り、ゲルに戻って就寝するまで気付かなかった。
あれ?なんで俺の奢りなの?
残金7,150
次の日ハンターユニオンのバックヤードでは、3人のアンドロイド達がいた。
「ねぇ、この前ね錫乃介にご飯奢らせたの。『酒と銃と男と肉』で偶然会ってさあ、ちょっとしをらしくしたら、コロッとしてさ、調子にのって口説いてきてウザかったけど、結構沢山食べさせて貰っちゃった」
「え~実は私も屋台市場で偶然合って、案内してくれって言うからさ、10軒以上も廻らせて、ぜーんぶ奢って貰っちゃった!どっかに連れて行きたかったみたいだけど、そんな事させずにね」
「2人とも?私も昨日良く行くBARでアイツが入ってきてさ、一緒飲みたいって言うから、付き合ってあげたんだけど、良いお酒飲ませて貰って全部奢らせたわ。朝まで付き合わされたけど」
「ちょっとエミリン錫乃介と朝帰り~?」
「やめてよアンちゃん、そんなんじゃ無いし、どうしてもって言うから、可哀想だから付き合ってあげただけ。代わりにちょっとだけ高いお酒注文したけどね~」
「ってことは皆んなアイツに奢らせたのね~かっわいそ、錫乃介く~ん」
「そんな事思って無い癖にウララちゃん」
「そう言うエミリンだって、アンちゃんもでしょ~」
「みんなのメッシーね!」
「「「キャハハハハ!!!」」」
「「「………」」」
突如と3人の間を沈黙が支配する。
最初に口を開いたのはエミリンだった。
「何かちょっと」
次にアンシャテ
「うん、本当にちょっとだけだけど」
そしてウララ
「みんなも?私も」
「「「なんかムカつくわね、錫乃介!」」」
火のない所に、煙が立ち上がっていたことを、錫乃介は知る由もなかった。
1
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
絶世のディプロマット
一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。
レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。
レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。
※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。
異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~
ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。
対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。
これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。
防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。
損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。
派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。
其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。
海上自衛隊版、出しました
→https://ncode.syosetu.com/n3744fn/
※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。
「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。
→https://ncode.syosetu.com/n3570fj/
「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。
→https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
蒼海の碧血録
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年六月、ミッドウェー海戦において日本海軍は赤城、加賀、蒼龍を失うという大敗を喫した。
そして、その二ヶ月後の八月、アメリカ軍海兵隊が南太平洋ガダルカナル島へと上陸し、日米の新たな死闘の幕が切って落とされた。
熾烈なるガダルカナル攻防戦に、ついに日本海軍はある決断を下す。
戦艦大和。
日本海軍最強の戦艦が今、ガダルカナルへと向けて出撃する。
だが、対するアメリカ海軍もまたガダルカナルの日本軍飛行場を破壊すべく、最新鋭戦艦を出撃させていた。
ここに、ついに日米最強戦艦同士による砲撃戦の火蓋が切られることとなる。
(本作は「小説家になろう」様にて連載中の「蒼海決戦」シリーズを加筆修正したものです。予め、ご承知おき下さい。)
※表紙画像は、筆者が呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)にて撮影したものです。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる