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第2章 学院都市と黒龍の姫君
第59話 悪意の塊
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ティナは遺跡の前にいた。
「ルチア、リント、みんな、疲れているのなら無理しなくても大丈夫だよ。ここから先は僕の問題だから」
ティナはエル配下のマギアマキナから受け取った替えの剣を鞘に戻していく。
リントの極大砲撃によって遺跡にはびこっていた異形の魔物はほとんど壊滅、一見すでに安全に思える。
だが、この遺跡にはエルの言ったように古代エルトリア帝国の至宝にして帝権の象徴、そして戦略兵器である帝国宝器が眠り、それを守る番人がいる。
そしてティナの黄金の瞳、帝眼には、遺跡に居座る禍々しい悪意の塊が見える。
自分を待っているのだとティナは見た。
臆病な魔物たちを邪悪な異形へと変貌させ、その暴威の嵐でもって、多くの冒険者たちの心胆を寒からしめたのはまず間違いなくその悪意の塊。
その正体をティナは確かめねばならない。
「ここまで付き合わせておいて、今更、水臭いわよ」
ルチアは|靴ひもをぎゅっと締める。
確かにルチアは、古代エルトリア帝国は直接には、何のかかわりもない。だが、ティナが古代の継承者としての新たな運命へと導いたのはルチアにほかならない。
ティナとルチアはここまで濃厚に接触を持ってしまった以上、もはや他人とはいいがたい。
「ティナさんと私は一心同体。それにティナさんの英雄としての道に私の力は必要不可欠。一緒に行くわ」
リントはその手に持つ神器、砲槍カズィクールをけたたましく回転させ、龍眼でティナの黄金の瞳を見る。
接した期間はごく短期間に過ぎないが、リントにとってティナは初めての友人であり、すでに莫逆の友となっている。
それに英雄譚好きのリントを新しい刺激的な物語から遠ざけることは不可能だろう。
「ティナ様の敵は我らの敵、地の果てまでお供いたします」
ティナの近衛たるフローラとアウローラには是非もない。
同じくリントの従者イオンも同様である。
「ありがとう。よし、みんな、行こう」
ティナは微笑を浮かべると静かに怒りをたたえたその瞳を遺跡の奥へと向けた。
一行は、ティナの案内に従って迷いなく遺跡の最奥へと向かっていく。
「もう、なんなのこれ、暗いし、狭い」
ルチアは慎重に歩く。
「ほんとうに一体どこにあんなに魔物がいたんだろう」
ティナは不思議に思う。
ティナを護衛すべく密かについてきていたマギアマキナの軍団兵たちやリントの座乗艦に乗る水兵たちを動員することもできたが、政治的な理由とこの狭隘な遺跡の構造から断念せざるを得なかった。
リントによる砲撃の余波のためかところどころ炎上し、その炎が灯りの役割果たしているがあまりに暗い。
「明かりをつけるね」
ティナが電気を帯びた光の玉を作り出し、まわり照らし出してなお暗い。
「焦げ臭い」
リントは鼻をつまむ。
砲槍カズィクールの最大級の砲撃は、遺跡の内部をことごとく焼き払い、壁面は黒焦げ、その強烈な熱で、ところどころ融解している。
「けれど、さすがは私のカズィクール、ネズミ一匹出てこないわ」
リントは鼻声で誇る。
本来なら魔物がいる遺跡だが、ティナたち一行は驚くほど簡単に遺跡を進んでいった。
だいぶ進んだところでティナが足を止める。
「みんな、止まって」
片腕を上げて、みんなを制止し、黄金の瞳で暗闇を睥睨する。
「そこにいるのは誰?」
ティナが問いかけると不気味な笑い声が聞こえてくる。
「ひはは、ようやく来た。遅いよ。もう待ちくたびれちゃった」
岩の上に座っていた少女が立ち上がる。
「なにあれ。教会のシスター?」
ルチアが首をかしげる。
「あの気味の悪い髑髏の鎌を見なさい」
リントは黒衣の少女を指さす。
「どう見ても敵よ」
「……魔物たちをあんな姿に変えて、冒険者たちを襲わせたのは君?」
「単刀直入に聞くね。それで、もしそうだとしたら、私をどうするつもり?」
「もしそうなら、君に、どうしてこんなことをしたのか聞きたい」
「ふーん、聞いてどうするの」
「罪を償ってほしい」
黒衣の少女は武器をひねり、臨戦態勢に入っているというのに、ティナは戦うそぶりを見せず、ただ冷静に説得を試みる。
「罪を償ってほしい? ひはははは! どんな奴かと思っていたけど、本当に面白い」
黒衣の少女は腹を抱えて笑う。
「そう。今回のことをやったのは全部、私。魔物にほんのちょっと力を貸して、冒険者を倒す手助けをしてあげたの」
「どうしてそんなこと」
「そんなの決まっているじゃない。とーっても、楽しいからよ」
「楽しい? 多くの人がひどい目にあったのに、そんなの間違っている」
「それじゃ、どっちが正しいのか、この場で決めたらいい」
黒衣の少女はティナたちに大鎌を向ける。
「力でねじ伏せようだなんて思わない。僕はただ君に」
「あーあ、きれいごとにも、もう聞き飽きちゃった。もしかして私に勝てるつもり? なら、殺し合おうよ!」
黒衣の少女は問答無用でティナに斬りかかる。
(早い!)
ティナは自分の身を守るために剣を抜いて、少女の斬撃を防ぐ、
この少女、大口をたたくだけあって強い。その斬撃には今までティナが感じたことがないほど強い殺意が込められている。
「ティナ様! 加勢を」
フローラとアウローラは剣を抜こうとするが、それよりも前に黒衣の少女が叫ぶ。
「邪魔はさせないよ。おいで、かわいい下僕たち!」
暗がりからティナたちを囲い込むように、異形の魔物の群れが姿を現す。
フローラとアウローラは異形の魔物たちとの交戦を余儀なくされる。
「げ、まだ、あんなにいたの」
ルチアはあまりの数の多さにげんなりする。
「泣き言言ってないで、早く片付けるわよ。イオン!」
「はい、お嬢様」
リントはイオンとともに異形の魔物の群れと戦う。
「絶対そんなことないでしょうけど、これっきりよ」
ルチアはこれからティナと自分に待ち受ける多くの戦いを予見しながら、異形の魔物に挑む。
一方、一対一の勝負となったティナは防戦一方だった。あくま
でティナは黒衣の少女との戦いを避けようとしている。
「ほらほらほら、そんなもんじゃないでしょう。もっと楽しもうよ!」
そんなことお構いなしに黒衣の少女はティナの首を刈り取ろうと大鎌を振り回しては振り回す。
それをティナは長剣でもってなんとか防いでいく。
「こんなこと楽しくない」
「嘘。あなたも本当は戦いが好きで好きでしょうがないはず。英雄ってそういうものなんだから」
「違う。これは戦いなんかじゃない。ただの殺し合いだよ。そんなの僕は楽しいと思わない」
「馬鹿ね。なら教えてあげる。命の奪い合いこそが最高だってことを!」
黒衣の少女は口が裂けたかと思うほどの異様な笑みを浮かべて、猛烈にティナを攻め立てる。
「言って聞かないんだったら、少し痛い目を見てもらうよ!」
たまりかねたティナも雷光を纏い応戦する。
数えきれないほどの剣戟の応酬の後、二人はいったん後ろに退いて体制を立て直す。
「形勢逆転だね」
ティナは左右を見る。
すでにルチやリントたちは異形の魔物をすべて倒し終えている。
戦力的には黒衣の少女が圧倒的に不利な形勢だ。
「ひはは、私の可愛い下僕たちと遊んだおかげでもうボロボロでしょ。雑魚は数に入らない」
黒衣の少女はまだ余裕の表情を浮かべている。
「強がりを言って! あなたは終わりよ」
リントは苛立って砲槍カズィクールの砲口を向けるが、黒衣の少女は、まるで動じたよう数を見せない。
「うーん、でも、イマイチ、つまらない。まだ戦いに身が入ってないの?」
そうだと再び黒衣の少女は顔をゆがめる。
「少し本気になってもらっちゃおう」
少女は突然、黒衣を脱ぎ捨てる。
ビキニのような下着だけの姿となり、ほとんど裸のようになっ
てしまった。
「突然なんなのよ。露出狂?」
少女のなまめかしい裸体にルチアは目を覆う。
だが、それ以上に目を引いたのは、少女のあらわになった腹部に彫られた入れ墨である。
「骸骨にカラスの入れ墨、あれはヴァレンタイン傭兵団の紋章」
大陸全土にその悪名をとどろかす最強の傭兵団ヴァレンタイン傭兵団。その名とその紋章は王族であるリントもよく聞き及んでいる。
「――――っ!」
その名にティナとルチアは戦慄する。
ティナのお供であるフローラとアウローラも瞬時に感情が沸騰した。
「そうよ。私はヴァレンタイン様の配下、レヴィア。以後よろしく」
ビキニ姿の少女レヴィアは、ティナたちをおちょくるように手を振る。
「あなたがティナでしょ。ずっと探していたよ。あなたを殺すためにね。ヴァレンタイン様が気に入っていたから、どんな奴かと思ったかけど、やっぱり殺しちゃってもよさそうかも」
「……僕の村を襲ったのは、ヴァレンタインなの?」
口をついてそんな質問が出た。
自由都市ディエルナの事件にヴァレンタインが関与していたことから自分の故郷は自分を狙ってヴァレンタインが起こしたものと考えていた。
だが、確証はない。
「ああ。あなたの村を焼いたのは私たち。でも、あなたは逃がしちゃうし、殺しがいのない老人ばっかりでつまらなかったな~」
レヴィアはあまりにもあっさりと認め、まるで玩具の良し悪しを語るかのように言った。そこにはまるで罪悪感とかそういう道徳らしい感情は一切ない。
彼女にとっては、ティナの大切なものを破壊することは、娯楽に過ぎない。相手の絶望も恐怖も悲しみもレヴィアにとっては刺激的なスパイスに過ぎない。
「……」
ルチアや最後の軍団、それにリントたち学院のみんなによって、癒すとまではいかずとも、痛みの引いてきたその深い傷口にレヴィアは非情にも塩をすり込んだ。
「ルチア、リント、みんな、疲れているのなら無理しなくても大丈夫だよ。ここから先は僕の問題だから」
ティナはエル配下のマギアマキナから受け取った替えの剣を鞘に戻していく。
リントの極大砲撃によって遺跡にはびこっていた異形の魔物はほとんど壊滅、一見すでに安全に思える。
だが、この遺跡にはエルの言ったように古代エルトリア帝国の至宝にして帝権の象徴、そして戦略兵器である帝国宝器が眠り、それを守る番人がいる。
そしてティナの黄金の瞳、帝眼には、遺跡に居座る禍々しい悪意の塊が見える。
自分を待っているのだとティナは見た。
臆病な魔物たちを邪悪な異形へと変貌させ、その暴威の嵐でもって、多くの冒険者たちの心胆を寒からしめたのはまず間違いなくその悪意の塊。
その正体をティナは確かめねばならない。
「ここまで付き合わせておいて、今更、水臭いわよ」
ルチアは|靴ひもをぎゅっと締める。
確かにルチアは、古代エルトリア帝国は直接には、何のかかわりもない。だが、ティナが古代の継承者としての新たな運命へと導いたのはルチアにほかならない。
ティナとルチアはここまで濃厚に接触を持ってしまった以上、もはや他人とはいいがたい。
「ティナさんと私は一心同体。それにティナさんの英雄としての道に私の力は必要不可欠。一緒に行くわ」
リントはその手に持つ神器、砲槍カズィクールをけたたましく回転させ、龍眼でティナの黄金の瞳を見る。
接した期間はごく短期間に過ぎないが、リントにとってティナは初めての友人であり、すでに莫逆の友となっている。
それに英雄譚好きのリントを新しい刺激的な物語から遠ざけることは不可能だろう。
「ティナ様の敵は我らの敵、地の果てまでお供いたします」
ティナの近衛たるフローラとアウローラには是非もない。
同じくリントの従者イオンも同様である。
「ありがとう。よし、みんな、行こう」
ティナは微笑を浮かべると静かに怒りをたたえたその瞳を遺跡の奥へと向けた。
一行は、ティナの案内に従って迷いなく遺跡の最奥へと向かっていく。
「もう、なんなのこれ、暗いし、狭い」
ルチアは慎重に歩く。
「ほんとうに一体どこにあんなに魔物がいたんだろう」
ティナは不思議に思う。
ティナを護衛すべく密かについてきていたマギアマキナの軍団兵たちやリントの座乗艦に乗る水兵たちを動員することもできたが、政治的な理由とこの狭隘な遺跡の構造から断念せざるを得なかった。
リントによる砲撃の余波のためかところどころ炎上し、その炎が灯りの役割果たしているがあまりに暗い。
「明かりをつけるね」
ティナが電気を帯びた光の玉を作り出し、まわり照らし出してなお暗い。
「焦げ臭い」
リントは鼻をつまむ。
砲槍カズィクールの最大級の砲撃は、遺跡の内部をことごとく焼き払い、壁面は黒焦げ、その強烈な熱で、ところどころ融解している。
「けれど、さすがは私のカズィクール、ネズミ一匹出てこないわ」
リントは鼻声で誇る。
本来なら魔物がいる遺跡だが、ティナたち一行は驚くほど簡単に遺跡を進んでいった。
だいぶ進んだところでティナが足を止める。
「みんな、止まって」
片腕を上げて、みんなを制止し、黄金の瞳で暗闇を睥睨する。
「そこにいるのは誰?」
ティナが問いかけると不気味な笑い声が聞こえてくる。
「ひはは、ようやく来た。遅いよ。もう待ちくたびれちゃった」
岩の上に座っていた少女が立ち上がる。
「なにあれ。教会のシスター?」
ルチアが首をかしげる。
「あの気味の悪い髑髏の鎌を見なさい」
リントは黒衣の少女を指さす。
「どう見ても敵よ」
「……魔物たちをあんな姿に変えて、冒険者たちを襲わせたのは君?」
「単刀直入に聞くね。それで、もしそうだとしたら、私をどうするつもり?」
「もしそうなら、君に、どうしてこんなことをしたのか聞きたい」
「ふーん、聞いてどうするの」
「罪を償ってほしい」
黒衣の少女は武器をひねり、臨戦態勢に入っているというのに、ティナは戦うそぶりを見せず、ただ冷静に説得を試みる。
「罪を償ってほしい? ひはははは! どんな奴かと思っていたけど、本当に面白い」
黒衣の少女は腹を抱えて笑う。
「そう。今回のことをやったのは全部、私。魔物にほんのちょっと力を貸して、冒険者を倒す手助けをしてあげたの」
「どうしてそんなこと」
「そんなの決まっているじゃない。とーっても、楽しいからよ」
「楽しい? 多くの人がひどい目にあったのに、そんなの間違っている」
「それじゃ、どっちが正しいのか、この場で決めたらいい」
黒衣の少女はティナたちに大鎌を向ける。
「力でねじ伏せようだなんて思わない。僕はただ君に」
「あーあ、きれいごとにも、もう聞き飽きちゃった。もしかして私に勝てるつもり? なら、殺し合おうよ!」
黒衣の少女は問答無用でティナに斬りかかる。
(早い!)
ティナは自分の身を守るために剣を抜いて、少女の斬撃を防ぐ、
この少女、大口をたたくだけあって強い。その斬撃には今までティナが感じたことがないほど強い殺意が込められている。
「ティナ様! 加勢を」
フローラとアウローラは剣を抜こうとするが、それよりも前に黒衣の少女が叫ぶ。
「邪魔はさせないよ。おいで、かわいい下僕たち!」
暗がりからティナたちを囲い込むように、異形の魔物の群れが姿を現す。
フローラとアウローラは異形の魔物たちとの交戦を余儀なくされる。
「げ、まだ、あんなにいたの」
ルチアはあまりの数の多さにげんなりする。
「泣き言言ってないで、早く片付けるわよ。イオン!」
「はい、お嬢様」
リントはイオンとともに異形の魔物の群れと戦う。
「絶対そんなことないでしょうけど、これっきりよ」
ルチアはこれからティナと自分に待ち受ける多くの戦いを予見しながら、異形の魔物に挑む。
一方、一対一の勝負となったティナは防戦一方だった。あくま
でティナは黒衣の少女との戦いを避けようとしている。
「ほらほらほら、そんなもんじゃないでしょう。もっと楽しもうよ!」
そんなことお構いなしに黒衣の少女はティナの首を刈り取ろうと大鎌を振り回しては振り回す。
それをティナは長剣でもってなんとか防いでいく。
「こんなこと楽しくない」
「嘘。あなたも本当は戦いが好きで好きでしょうがないはず。英雄ってそういうものなんだから」
「違う。これは戦いなんかじゃない。ただの殺し合いだよ。そんなの僕は楽しいと思わない」
「馬鹿ね。なら教えてあげる。命の奪い合いこそが最高だってことを!」
黒衣の少女は口が裂けたかと思うほどの異様な笑みを浮かべて、猛烈にティナを攻め立てる。
「言って聞かないんだったら、少し痛い目を見てもらうよ!」
たまりかねたティナも雷光を纏い応戦する。
数えきれないほどの剣戟の応酬の後、二人はいったん後ろに退いて体制を立て直す。
「形勢逆転だね」
ティナは左右を見る。
すでにルチやリントたちは異形の魔物をすべて倒し終えている。
戦力的には黒衣の少女が圧倒的に不利な形勢だ。
「ひはは、私の可愛い下僕たちと遊んだおかげでもうボロボロでしょ。雑魚は数に入らない」
黒衣の少女はまだ余裕の表情を浮かべている。
「強がりを言って! あなたは終わりよ」
リントは苛立って砲槍カズィクールの砲口を向けるが、黒衣の少女は、まるで動じたよう数を見せない。
「うーん、でも、イマイチ、つまらない。まだ戦いに身が入ってないの?」
そうだと再び黒衣の少女は顔をゆがめる。
「少し本気になってもらっちゃおう」
少女は突然、黒衣を脱ぎ捨てる。
ビキニのような下着だけの姿となり、ほとんど裸のようになっ
てしまった。
「突然なんなのよ。露出狂?」
少女のなまめかしい裸体にルチアは目を覆う。
だが、それ以上に目を引いたのは、少女のあらわになった腹部に彫られた入れ墨である。
「骸骨にカラスの入れ墨、あれはヴァレンタイン傭兵団の紋章」
大陸全土にその悪名をとどろかす最強の傭兵団ヴァレンタイン傭兵団。その名とその紋章は王族であるリントもよく聞き及んでいる。
「――――っ!」
その名にティナとルチアは戦慄する。
ティナのお供であるフローラとアウローラも瞬時に感情が沸騰した。
「そうよ。私はヴァレンタイン様の配下、レヴィア。以後よろしく」
ビキニ姿の少女レヴィアは、ティナたちをおちょくるように手を振る。
「あなたがティナでしょ。ずっと探していたよ。あなたを殺すためにね。ヴァレンタイン様が気に入っていたから、どんな奴かと思ったかけど、やっぱり殺しちゃってもよさそうかも」
「……僕の村を襲ったのは、ヴァレンタインなの?」
口をついてそんな質問が出た。
自由都市ディエルナの事件にヴァレンタインが関与していたことから自分の故郷は自分を狙ってヴァレンタインが起こしたものと考えていた。
だが、確証はない。
「ああ。あなたの村を焼いたのは私たち。でも、あなたは逃がしちゃうし、殺しがいのない老人ばっかりでつまらなかったな~」
レヴィアはあまりにもあっさりと認め、まるで玩具の良し悪しを語るかのように言った。そこにはまるで罪悪感とかそういう道徳らしい感情は一切ない。
彼女にとっては、ティナの大切なものを破壊することは、娯楽に過ぎない。相手の絶望も恐怖も悲しみもレヴィアにとっては刺激的なスパイスに過ぎない。
「……」
ルチアや最後の軍団、それにリントたち学院のみんなによって、癒すとまではいかずとも、痛みの引いてきたその深い傷口にレヴィアは非情にも塩をすり込んだ。
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