29 / 42
三章
28、草むしれない庭
しおりを挟む
その日はぴっかぴかの晴天でありました。
ある学園の庭で膝を付き嘆き悲しむ天使がおりました。
「庭があるのにむしれる草が無いなんてっ!!詐欺だっ!!!」
「泣くなよセドリック」
学園での勉強が始まり暫く日にちが経過した。
朝の1時間が座学、2時間は基礎の発声練習や簡単な筋トレのレクチャーを受ける。
晴れた今日は、ちょっと休憩にと庭にゾッファと行ってみた。
それはもう楽しみにしていたのだ。
「草は草でも辺り一面天然のジバブ草にしているなんて!酷い!!酷すぎるよ!!天然のジバブ草はむしると家主さんに怒られるんだっ!」
「まあ天然のジバブ草は敷くの高いからな⋯こらっ!学園の庭を勝手にむしるな。いや勝手じゃなくてもむしるなよセドリック」
「ああどうしよう!この手が草を、土を欲している!」
芝生に膝をついて嘆き悲しむセドリックを、
よいしょ
と立たせたゾッファは、制服についたジバブ草の葉を払うと言った。
「セドリック、残念なお知らせだ。レーベルの街は海上都市でな、要所要所に使われている資材の土はな、土じゃなくて海砂(うみずな)なんだ」
「?だから??」
「海砂に含まれる塩分に強い草はジバブ草だけで、この街にはジバブ草以外の雑草に近いセドリックが抜いても良くて、量的に満足する雑草は⋯」
「雑草は⋯」
「無いっ!!」
「うわぁ~ん!!そんな、飲水は普通じゃない!特に制限とか無かったよ!」
「この街の水は海水を汲み上げて、水の魔石でろ過しているんだ。それを街の至る所に巡らして生活しているんだ」
「それじゃあ水道代高くなるんじゃない?作物だって高くなるよね?」
「そうだ、普通の街なら高くなる。だけどここの魔石は特別でな、幾らでも大量の海水をろ過出来るんだ。魔石のお陰以外にも、汲み上げる費用、巡らす為にかかったインフラ費用、これらを払い、維持管理費用を込みにしても、この街が生み出す利益は大きいんだよ。たがら還元され結果的に高くないんだ」
「⋯うん、後半から意味が分からなかった」
「ああ、理解してほしくて話して無かったからな」
「酷いや!⋯作物はどうして?」
「今俺達は王様の好意で飲食宿代とか払って貰ってるから実感が湧かないかもしれなちが、普通に泊まると一泊二日で、月の丘亭の宿泊代で3年は余裕だろうな」
セドリックはあまりのことに頭が沈黙した。
「⋯⋯⋯⋯」
「ああ、言い忘れた、二人分で3年、だ」
「っ!!!」
「そんな中の食事代金、さらにその食材費。サービス料金込みでも高いの分かるだろ?」
「そんなにかかっていたなんて⋯」
「あと、さっきも言ったが海砂では含まれる塩気で特定の作物しか育たない。だから食材は基本外部からの輸入に頼るしかない」
「その割には街の入り口の道は空いてたよ。輸入ならもっと沢山荷馬車がいてもよさそうだけど」
セドリックは来る時に渡った橋と入り口の門の様子を思い出す。
「良いところに目を向けたな!実はレーベルへは基本馬車ではなく船で入るのが一般的なんだ。陸の人間にしたら海の船旅は魅力的だからな。作物などの食料品類、日用品類など全て海上から運搬されていて、当然船代、燃料、忘れちゃいけない人件費がもろもろ掛かり高値なんだ」
「ゾッファって物知りだね!凄いや!」
「はははっ、休憩ももう良いだろ?戻ろうか」
「うん」
セドリックは何か忘れている様な気がしたがゾッファの誘導で学園長室へと向かった。
ゾッファの背中側、後ろ手には「ららぶ・はじめてのレーベル案内」が握られていた。
※注
全部適当に想像しています。
海砂やインフラ整備などについてしっかり知りたい方は社会科の先生に聞いてください。
ある学園の庭で膝を付き嘆き悲しむ天使がおりました。
「庭があるのにむしれる草が無いなんてっ!!詐欺だっ!!!」
「泣くなよセドリック」
学園での勉強が始まり暫く日にちが経過した。
朝の1時間が座学、2時間は基礎の発声練習や簡単な筋トレのレクチャーを受ける。
晴れた今日は、ちょっと休憩にと庭にゾッファと行ってみた。
それはもう楽しみにしていたのだ。
「草は草でも辺り一面天然のジバブ草にしているなんて!酷い!!酷すぎるよ!!天然のジバブ草はむしると家主さんに怒られるんだっ!」
「まあ天然のジバブ草は敷くの高いからな⋯こらっ!学園の庭を勝手にむしるな。いや勝手じゃなくてもむしるなよセドリック」
「ああどうしよう!この手が草を、土を欲している!」
芝生に膝をついて嘆き悲しむセドリックを、
よいしょ
と立たせたゾッファは、制服についたジバブ草の葉を払うと言った。
「セドリック、残念なお知らせだ。レーベルの街は海上都市でな、要所要所に使われている資材の土はな、土じゃなくて海砂(うみずな)なんだ」
「?だから??」
「海砂に含まれる塩分に強い草はジバブ草だけで、この街にはジバブ草以外の雑草に近いセドリックが抜いても良くて、量的に満足する雑草は⋯」
「雑草は⋯」
「無いっ!!」
「うわぁ~ん!!そんな、飲水は普通じゃない!特に制限とか無かったよ!」
「この街の水は海水を汲み上げて、水の魔石でろ過しているんだ。それを街の至る所に巡らして生活しているんだ」
「それじゃあ水道代高くなるんじゃない?作物だって高くなるよね?」
「そうだ、普通の街なら高くなる。だけどここの魔石は特別でな、幾らでも大量の海水をろ過出来るんだ。魔石のお陰以外にも、汲み上げる費用、巡らす為にかかったインフラ費用、これらを払い、維持管理費用を込みにしても、この街が生み出す利益は大きいんだよ。たがら還元され結果的に高くないんだ」
「⋯うん、後半から意味が分からなかった」
「ああ、理解してほしくて話して無かったからな」
「酷いや!⋯作物はどうして?」
「今俺達は王様の好意で飲食宿代とか払って貰ってるから実感が湧かないかもしれなちが、普通に泊まると一泊二日で、月の丘亭の宿泊代で3年は余裕だろうな」
セドリックはあまりのことに頭が沈黙した。
「⋯⋯⋯⋯」
「ああ、言い忘れた、二人分で3年、だ」
「っ!!!」
「そんな中の食事代金、さらにその食材費。サービス料金込みでも高いの分かるだろ?」
「そんなにかかっていたなんて⋯」
「あと、さっきも言ったが海砂では含まれる塩気で特定の作物しか育たない。だから食材は基本外部からの輸入に頼るしかない」
「その割には街の入り口の道は空いてたよ。輸入ならもっと沢山荷馬車がいてもよさそうだけど」
セドリックは来る時に渡った橋と入り口の門の様子を思い出す。
「良いところに目を向けたな!実はレーベルへは基本馬車ではなく船で入るのが一般的なんだ。陸の人間にしたら海の船旅は魅力的だからな。作物などの食料品類、日用品類など全て海上から運搬されていて、当然船代、燃料、忘れちゃいけない人件費がもろもろ掛かり高値なんだ」
「ゾッファって物知りだね!凄いや!」
「はははっ、休憩ももう良いだろ?戻ろうか」
「うん」
セドリックは何か忘れている様な気がしたがゾッファの誘導で学園長室へと向かった。
ゾッファの背中側、後ろ手には「ららぶ・はじめてのレーベル案内」が握られていた。
※注
全部適当に想像しています。
海砂やインフラ整備などについてしっかり知りたい方は社会科の先生に聞いてください。
38
あなたにおすすめの小説
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら
たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生
海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。
そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…?
※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。
※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる