草むしりクエスト【BL】

佐々木猫八

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三章

28、草むしれない庭

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その日はぴっかぴかの晴天でありました。
ある学園の庭で膝を付き嘆き悲しむ天使がおりました。


「庭があるのにむしれる草が無いなんてっ!!詐欺だっ!!!」


「泣くなよセドリック」


学園での勉強が始まり暫く日にちが経過した。
朝の1時間が座学、2時間は基礎の発声練習や簡単な筋トレのレクチャーを受ける。
晴れた今日は、ちょっと休憩にと庭にゾッファと行ってみた。
それはもう楽しみにしていたのだ。

「草は草でも辺り一面天然のジバブ草にしているなんて!酷い!!酷すぎるよ!!天然のジバブ草はむしると家主さんに怒られるんだっ!」

「まあ天然のジバブ草は敷くの高いからな⋯こらっ!学園の庭を勝手にむしるな。いや勝手じゃなくてもむしるなよセドリック」

「ああどうしよう!この手が草を、土を欲している!」

芝生に膝をついて嘆き悲しむセドリックを、

よいしょ

と立たせたゾッファは、制服についたジバブ草の葉を払うと言った。

「セドリック、残念なお知らせだ。レーベルの街は海上都市でな、要所要所に使われている資材の土はな、土じゃなくて海砂(うみずな)なんだ」

「?だから??」

「海砂に含まれる塩分に強い草はジバブ草だけで、この街にはジバブ草以外の雑草に近いセドリックが抜いても良くて、量的に満足する雑草は⋯」

「雑草は⋯」

「無いっ!!」

「うわぁ~ん!!そんな、飲水は普通じゃない!特に制限とか無かったよ!」

「この街の水は海水を汲み上げて、水の魔石でろ過しているんだ。それを街の至る所に巡らして生活しているんだ」

「それじゃあ水道代高くなるんじゃない?作物だって高くなるよね?」

「そうだ、普通の街なら高くなる。だけどここの魔石は特別でな、幾らでも大量の海水をろ過出来るんだ。魔石のお陰以外にも、汲み上げる費用、巡らす為にかかったインフラ費用、これらを払い、維持管理費用を込みにしても、この街が生み出す利益は大きいんだよ。たがら還元され結果的に高くないんだ」

「⋯うん、後半から意味が分からなかった」

「ああ、理解してほしくて話して無かったからな」

「酷いや!⋯作物はどうして?」

「今俺達は王様の好意で飲食宿代とか払って貰ってるから実感が湧かないかもしれなちが、普通に泊まると一泊二日で、月の丘亭の宿泊代で3年は余裕だろうな」

セドリックはあまりのことに頭が沈黙した。

「⋯⋯⋯⋯」

「ああ、言い忘れた、二人分で3年、だ」

「っ!!!」

「そんな中の食事代金、さらにその食材費。サービス料金込みでも高いの分かるだろ?」

「そんなにかかっていたなんて⋯」

「あと、さっきも言ったが海砂では含まれる塩気で特定の作物しか育たない。だから食材は基本外部からの輸入に頼るしかない」

「その割には街の入り口の道は空いてたよ。輸入ならもっと沢山荷馬車がいてもよさそうだけど」

セドリックは来る時に渡った橋と入り口の門の様子を思い出す。

「良いところに目を向けたな!実はレーベルへは基本馬車ではなく船で入るのが一般的なんだ。陸の人間にしたら海の船旅は魅力的だからな。作物などの食料品類、日用品類など全て海上から運搬されていて、当然船代、燃料、忘れちゃいけない人件費がもろもろ掛かり高値なんだ」

「ゾッファって物知りだね!凄いや!」

「はははっ、休憩ももう良いだろ?戻ろうか」

「うん」

セドリックは何か忘れている様な気がしたがゾッファの誘導で学園長室へと向かった。

ゾッファの背中側、後ろ手には「ららぶ・はじめてのレーベル案内」が握られていた。




※注
全部適当に想像しています。
海砂やインフラ整備などについてしっかり知りたい方は社会科の先生に聞いてください。
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