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始まり〜シイ村

どちらにする?

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「その指輪を外すのは今だけね。
 やつらの目を誤魔化すために必要だよ」

「・・・・・・」

ソーマはゆっくり頷いた。

クリーン魔法でソーマのすっごい顔をキレイにして飲み物を勧めると、ソーマは日本酒を一気飲みしちゃいました。
大丈夫?
私がいるから大丈夫だけれども。

「言いたいことはいっぱいあるけど、隷属ってどうだった?
 屈辱だよね!?
 心は拒否してるのに体の自由を奪われてね、最悪だったでしょ」

「うん、人生終わったと思った」

「ソーマの危機を神様から教えてもらったんだけど、痛い目みないと人間って学習しないでしょ?
 すぐに来なくってごめんね」

「ううん、来てくれてありがとう。
 もう学習したよ。こんなこと二度とごめんだ」

日本人は騙されやすいからなー。
こんなこと言ってるけどまた同じことするかもなー。

「うん、二度とごめんだし、次もソーマの危機を神様が知らせてくれるかどうかわからないからね。本当に気をつけてね」

ソーマは少し冷めたハーブティを飲み始めた。

「うん、シイ、本当にありがとう。
 でも、これからどうしたらいいんだろう・・・・・・」

「しっかりして!やることは決まってるの。
 『麗しの花園』を絶滅させるのよ。
 名付けて!ブラックキャップ作戦!」

というわけで、作戦を説明した。

大事なのは、どんな病気にするか。

重度のアレルギーにするか、重度の胃腸炎にするか。

どっちも重度だと死んでしまうかもしれないけど、悪さをしないようになれば症状は治っていくことにした。
辛い症状だと会話も難しくなるだろうから、きっと悪さを指示することも自然と減るだろうし。
悪さをしようとするとまた症状がぶり返すから、寝込んでしまって何も出来なくなるのだよ。
結果的に悪いことできませんわ。

「で、どっちがいいか、ソーマに選んでもらいたいわけ」

「え、選ぶの?」

「そうだよ。ソーマの逆襲だからね」

「え、逆襲なの?」

「え、じゃあ、ソーマの怨念にする?」

「え、怨念って・・・・・・」

「同じことよー。ソーマの救出のためにしなくちゃいけない作戦だからね。
 やつらを根絶しないと、この街、この国を出て行ってもずっと狙われるよ。
 結構、あいつらってどこにでも居るみたい。
 そんなでかい相手だよ。
 覚悟して。
 妖精としては、死を与えてもいいんだけどね」

にこっと笑うとソーマはまじか!って驚いた。
妖精とはなんぞやというお話をしてもいいんだけど、そんなにゆっくりする時間はないんだよ。

「さ、選んで。
 どちらがいい?」

ソーマは観念して腕を組んで考えた。

「胃腸炎は、汚くて周りに迷惑をかけるから、アレルギーにしようかな」

「へぇーなるほどね。
 オッケー!アレルギーね!
 元花粉症としてはほんとにヤダわ。
 1番辛い症状だわ~。
 くしゃみ、咳、頭痛、止まらない鼻水、目の痒み、全身の痒み、人によっては腹痛、下痢もあるし、呼吸困難にもなるかも。
 死なないように調整もできるように魔法を作るね」

決められなかったお仕置きの症状を決定できたのが嬉しくてまた微笑んだ。

「シイ、もう少し悪意のある笑顔をしてよ。
 純粋な笑顔でやることじゃないよ・・・・・・」

「妖精とはこういうものですから~ふふふ」

病原菌はこの隷属の指輪。
ソーマに近づく『麗しの花園』という組織に関わっていて悪いことをしようとしている相手が対象に、感染していく。
一度かかったら症状が軽いか重いかにかかわらず
病原菌は生涯保有していて、感染していない組織の人間が近寄るだけで感染してしまう。
どんどんどんどん感染していって、末端までいつか必ずたどり着く。

治す薬はない。
良い人間になることだけ。
痒くて痒くて掻き毟って、全身から出血して苦しむんだ。

「あとさ、治し方を教えるかどうかなんだけど、どうする?」

「救済かぁ」

「ふふふ、すっごく楽しいことになりそうなんだよね!
 しばらくはほっといて、どこからか噂を流すってどう?
 妖精の友人に悪さをした人間に与えられた罰で、悪いことをやめれば治る病気って」

「そうしたらシイが疑われる」

「じゃあ、ソーマに悪さしたやつらってことにする?」

「妖精の友人に、でお願いします」

「オッケー」

シイはサーチで知っている。
『麗しの花園』に加担しているたくさんの王侯貴族がいることを。
必ず原因解明のために動き出すだろう。
もしかしたら国が揺れるかもねー!

「で、指輪なんだけど、彼女とお別れするでしょ?
 それまでは身につけててもらうんだけど、隷属の効果を戻す?
 それとも演技する?」

「ううううーーーーーん・・・・・・」

「1番最初に彼女が感染するから。
 病気のあんたとは結婚許さないよって私がでしゃばるからさ、そしたら私がその指輪を外して、彼女に投げつけてあげるよ」

「投げつけはしなくていいよ。
 はぁ、また来てくれるの?」

「もちろんだよ!
 もしあれだったらさ、その日が来るまでこの街に滞在するよ。
 ソーマ、病気の彼女を切り捨てられるような人間じゃなさそうだし」

「・・・・・・ごめん」

「気にしないで!
 私は妖精だよ!
 家族だって、ソーマが言ってくれたし、任せてよ」

「ありがとう。
 そしたら、嫌だけど、不本意だけど、演技はできないだろうから、隷属の効果を戻してもらおうかな。
 本当に嫌だけど。すっごく嫌だけど」

「ふふふ、それはじゃぁ、罰ってことで、頑張って堪えてね。
 じゃ、指輪をまたはめて。
 効果を戻すのは、帰宅する前だよ。
 正確に言うと、『麗しの花園』に話しかけられる前ね。
 それまで束の間の天国を味わいなよ」

「・・・・・・うん。シイ、本当にありがとう」
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