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始まり〜シイ村

『麗しき花園』

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次の日はしっかり飲食不要な妖精だと伝えて、部屋に閉じこもった。

現在、草木も眠る深夜。
ソーマも彼女も寝ついている。

昨日と今日、たった2日で全てを知ってしまった私って、なんて恐ろしい存在なんだろう!
ストーカー!

ストークする妖精!

こわい!

きもい!



自分で自分が怖いとかキモいとか初めて思ったよ。
妖精だからしょうかない、なんてそんなことはないはず。
元は人間だし、心は人間だ。

いや、待て待て待て。
神様だって私たちを見ているんだった。
神に近い妖精が人間を見ていたっておかしくはないし、人間同士で情報収集のために調査と称して監視やストーキングしているんだ。
うん、きっとそれと同じだ。

きっと犯罪じゃない。

証拠はないし捕まらないし!



・・・・・・


一所懸命自分の行ないを正当化させようと考えたけど、結局この罪悪感は消えないのだった。




気を取り直して、ストーキングの成果をまとめた。

ソーマはひとりで貸店舗の2階に住んでいる。
ソーマの彼女は5ブロック離れた先の集合住宅のひと部屋に住んでいる。

彼女の名前はローズ。
『麗しき花園』という女性が7割を占める犯罪組織の末端だった。
優しい母親のような笑顔で孤児を攫って奴隷商に売ったり、バカな男を騙して財産を搾り取ったり、女の武器を最大限に使って、金のために自由奔放に犯罪を犯す集団だ。

ローズが犯罪組織の一員であることは鑑定ですぐにわかっていたけれど、組織の末端だったから彼女の善意を信じてみたんだよね。
でも彼女は黒だった。
末端だからこそ実行犯で、すでに大勢の人を餌食にしていて、ソーマが今ターゲットとなっていた。

親密な関係になって、ソーマがアイテムボックスというスキル持ちであることを知っている。
そのアイテムボックスにたくさんのお宝が収納されていることも。

『麗しき花園』はソーマを隷属させてアイテムボックスを自由に使いたいと思っていて、先日、隷属の魔導具を入手したのだという。

魔法契約書でソーマを隷属させることも可能だったけど、ソーマだからね、書類の不備をあれやこれや指摘されて信用なくして相手にされなくなったんだって。
だから隷属の魔導具を入手せざるを得なくなったのだと。

この国では奴隷はいるけれども隷属の魔導具は禁止されている。
使うと思考がジャミングされて、長期間の使用で人形のようになり、魔導具を外しても元の人格に戻らなくなってしまうのだそうだ。

人は誰しも間違いを犯す。
だが人は間違いに気づき、反省し、改善することもできる。
誰にでも更生の機会を与えるべきだ。

ずっと昔、この国に居た賢者のお言葉。
更生の機会を与えるならば、人格を壊してしまう隷属の魔導具は使ってはならないのだ。

でも一応この国でもそれは取り扱っている。
厳重な警備の中に。
どうしても更生できない犯罪者に使って、過酷な労働を強いられる鉱山へ送られる。
はっきりと見てわかるようにゴテゴテの首輪だ。

この国から遠い他国では隷属の魔導具は認可されていて、小型の物もたくさんある。
一般市民が奴隷を購入することもよくある。
善良な市民が犯罪に巻き込まれて奴隷にされることもよくある。

『麗しき花園』はそういった国から小型の隷属の魔導具を裏ルートで入手したのだ。
今いる国では一般市民の隷属は認められていないから、魔導具を隠せるように。
もしくは不自然ではないように。
そう、結婚指輪のようにみせかけることもできる。

ソーマと結婚したらソーマが死ぬまでお店の売り上げ金全部『麗しき花園』へと入る計画だ。

ソーマからのプロポーズを催促して、一緒に結婚指輪を買いに行って、結婚式をして、はい、終了!となる計画。

今、プロポーズは済んで今度結婚指輪を買いに行く約束をしたところ。



ソーマーああああああああ!!!!!



本当にそんな女で良いのかぁ!?

元日本男児ともあろうソーマが、そんな女にいとも簡単にひっかっかってしまうんかー!!!!



もー!
私にどうしろっていうのさ!
隷属の魔導具を使ったってすぐには脳に影響は出ないけれども。

んー!
私はどうしたらいいんだろう!
いや、違うな。どうしたいのか、だな。

ひとりで頭を抱えてたってしょうがない。
エンに相談してみよう。
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