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始まり〜シイ村

行って来ます!

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前世、若い頃はいろんなことがあったなぁと、夜通しエンにお話していたよ。
ちょっと苦労して体調崩したこともあったけど、でも子どものために頑張ったことは胸を張れるし、幸せだったと思う。

エンには子どもが居ないんだって。
もともとドラゴンという生き物は長生きだから、子作りの必要性をあまり感じていないのだそうだ。
でも番うと相手に一途なんだって。
唯一を愛するってやつっすね!

私もそんなふうに愛されたいなーなんて言ってたら、朝になってて、御一行が村の門に向かっていた。
私たちも駆けつけて、お見送りの村人に混じった。

「あ、シイ様!おはようございます。
 この度はご招待有難うございました。
 素晴らしいおもてなしの数々、感謝の念に堪えません。
 また必ず宿泊させていただきます」

商会長さんがお土産のバッグを大事そうに抱えて声をかけてくれた。

「シイ様、有難うございました!
 すっごく良い村だって宣伝しますね!」

他のみんなも幸せそうなオーラを発してお礼を言ってくれた。

「こちらこそ来てくれてありがとう!
 宣伝頼むね!」

私たちのおもてなしにご満足いただいて、幸せになってご帰宅いただく。
これぞ!おもてなしの醍醐味だね。
みんなの幸せそうな笑顔に、私も幸せな気分になったよ。
感謝の気持ちを込めて叫んだ。

「ありがとー!!!」

動き出した馬車から身を乗り出して手を振ってくれる御一行に、私も負けじと大きく手を振った。

もう危ないから引っ込んでいいよー!?

若い子は無茶をするねぇ

馬車が見えなくなるまで手を振った。

これ、お客様をお見送りする常識ね!
見えなくなるまでね!
みんなしっかり頼むよ!

いやー良かった良かった。
村人みんなもしっかりおもてなし出来てたと思う!

「みんなお疲れー!
 初めてにしてはすっごく良かったよ!
 とても素晴らしいおもてなしでした!」

お見送りもしっかり最後まで出来て、ここまでは100点満点!

さ、次のおもてなしのために片付け掃除、備品の補充や点検など、後始末も頑張ってくれたまえ!

「じゃ、私は出稼ぎに行ってくるね。
 不在の間よろしくね。2、3日で一度帰ろうかな。
 何かあったら連絡して!
 あと、悪いことする人は敷地から弾き出されて、悪いことを企む人は敷地に入れないように結界を施してあるから、安心してね。
 もしごちゃごちゃ言う人がいたら、私の帰りを待つように言って良いからね」

なんとなく不安そうな村人たちと全然平気そうな子ども達。
大人がこれで大丈夫なのかちょっと心配になってきたよ。
不在の間、子ども達の方がしっかりしてそう。

でもきっと大丈夫!

「シイ様、お気をつけて。
 お帰りをお待ちしております。
 なるべく早めに帰ってきてください」

「お気をつけて!」
「いってらっしゃいませ!」

すっかり私の息子達になってしまったみんなに見送られて、私も村を出発だ。

この世界に、私の帰りを待つ人が出来て嬉しいよ。
もう家族だね。
みんな大事な大事な家族だよ。

「うん、ありがとう!
 早く帰るね!
 村を頼むね!」

みんなに大きく手を振り、タイミングよく体を大きくしたエンの背に乗った。

エンは地面を強く蹴り、森をひとっ飛びで越えてしまった。

後ろから歓声が聞こえた気がしたけど、本当にあっという間に街の門に着いてしまった。
先に出発していた御一行の馬車をさらっと追い越してしまった。

一応ギルドに寄って声をかけてから塩漬けクエストに行こうと思ってやって来た。

ギルマスには昨日村に来てくれたお礼と、数日村を離れるからちょっと気にしてやってくれとお願いした。
それと、お待ちかねの塩漬けクエストを消化してくると伝えたんだけど、おもてなしが良かったようで、ギルマスはずっとご機嫌だった。

それから屋台でたくさんの食べ物を買って、孤児たちに与えるというルーティンをこなして、私たちは街の外に出てからしばらくはエンに乗って道を走った。

「そろそろ良いかな?」

猫のもふもふより敵う物はないけど、目的地は遠い。
エンにドラゴンに戻ってもらって、乗せてもらうんだ!

「ドラゴンの背に乗せてくださいな」

「おお、そうするか」

「お願いします」

本当は採取しながら旅をしたいのだけれど、今回はお供無しのお出かけだから早く帰ってやんないとね、息子達が心配だわ。

猫のエンから降りて、名残惜しそうに背をなでなで。
あー気持ちいー!!!

エンが私のサイズに合わせた大きさのドラゴンになってくれた。
ほんと気が利きますね!

鞍とか何もないので、以前どっかで採取してた何かの植物の蔓を長く結んでひとつの輪にし、自分の体を通した。
蔓を背もたれがわりにして、両サイドを握って手綱にした。
手綱といっても、私が落ちないようにバランスを取るだけのもので、どこへ飛ぶのかは全部エンにお任せだ。

エンとは1年以上の付き合いだけど、背中に乗せてもらうのはこれが初めてだ。

楽しみ!
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