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始まり〜シイ村

星降る夜に想う

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止める間もなくとんでもない魔道具を作ってしまうシイに対して、村人とエンは最早言葉を発せられなくなっていた。

とんでもない物のはずなのだが、表向きにの用途がお店の来客対応ってだけなので、客にはその魔道具の真の性能、価値が全くわからない。
一般客には所謂、庶民の魔道具と同等だと思われてしまうだろう。

一見すると庶民の魔道具。
しかし中身は自動計算してしまうようなとんでもないシロモノ。

そんな物が店先にポンとおいてあるんだ。
見た目も猫のオブジェっぽい形の魔道具。
つい拝んでしまうのは致し方ないのかもしれない。



残った御一行は明日の朝はいつもと変わらない生活リズムを送るようで、朝早くに起きて、食事をして、すぐに帰るので馬車をお願いしますということだった。

森の通過は電車か馬車か今回だけ選べるのだが、頼れるギルマスが居ないので、馬車が良いそうです。
森から街への行き来は馬車しかないので、明日からは馬車を待機させるようにしないとあかーん!

基本、馬車1台は森側で待機して、街に待機しているもう1台の馬車が森に来たら、森で待機していた馬車が街に移動して待機する。そして街で待機している馬車が満員になったか、ある程度の時間になったら森へ移動する。の繰り返しにするんだ。

行ったり来たり。
大変だけど頑張ってくれ。
人員確保できるまで、村人で交代して頑張ってくれ。
ちゃんと運賃取るからね!

どれくらいの客が来るか全くわからない。
1日の収益がどれくらいになるのかも全くわからない。
とにかく、軌道に乗るまでは、村人以外の人件費は私のポケットマネーから出すしかない。

ちなみに、村人には今のところ賃金はない。
お腹いっぱいになっていれば人って結構文句言わないんだよ。
でも村のみで収益が見込めるようになったらちゃんと君たちにもお給料あげるからね。



色々と村の未来を考えてたらいつの間にか村が寝静まっていた。
灯りひとつもない、真っ暗な夜に、月がひとつと、たくさんの輝く星。

私とエンは建物の屋上に寝そべって空を見上げていた。

木々のほんの少しのざわざわとしたざわめきと、遠い何かの鳴き声がする。

いよいよ明日、塩漬けクエストを消化しに行ってくる。
ほんの数日間の留守だ。
私がいない間にきっとまた孤児が増えてるだろうね。
そう思うと、先に子ども部屋改造をやっておくべきだなと気づいた。



あ、流れ星。

一条ひとすじの光の線が夜空に描かれ、すぐに消えた。

この世界にも流れ星ってあるんだね。
寒くもなんともないからずっと見ていられる天体ショー。
初めのひとつを見てから次々と流れていく星々。
まるで降ってくるような勢い。
こんな流れ星は前世の世界では見られないだろう。

前世の世界では冬の季節が一番夜空がキレイで、流星群が見られますという情報があれば、10分くらいは寒さに耐えながらじっと見上げていたっけ。
娘が6個も見たのにタイミングが悪くて私はひとつも見れなかった。

ああ、あの冷たく澄んだ空気も好きだったな。

この今の体は、温度を知ることができても、感じることがないから寒い!とか、暑い!とか、思ったことが一度もない。

それが良いのか悪いのかわからないけど、少なくとも、体が異常状態にならないので、好きなだけ長時間、夜空を楽しむことができるって、幸せだと思う。

何者にも邪魔されない。
なんのしがらみもない。
今の私は自由で、ひとりで好き勝手できちゃうんだ。

エンがいるけどね!

基本的に私の自由を尊重してくれるから、良い子だよね。



そういえば、流れ星といえば願い事だよね!
流れ星が消えるまでに3回願うことが出来たら願いが叶うっていうやつ。
誰も願いが叶うなんて思ってもいないけどついチャレンジしちゃうんだよね。
本当に一瞬しか流れ星は見れないので、いかに願い事を短くシンプルにできるかもよく考えてたっけな。

今は、叶えたい願いがないから必死に短い文を考えたりはしない。

ああ、この世界の星座は、少なくとも日本と同じではないようだ。

知ってる星座を見つけるだけでワクワクしたものだけれど、この星空には知ってるものが見つからない。
どこかでこの世界の星座の本があれば、探してみるのも良いかもしれないな。
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