上 下
48 / 78
始まり〜シイ村

桃源郷か遊園地

しおりを挟む
ギルマス御一行は村の入り口に呆然と立ち尽くしていた。

「いったいここは・・・・・・」

王都でしかみたことないような高い聳え立つ建物。
敷き詰められた石畳と芝。そして噴水。
どこからでも村を一望できるような理路整然と配置された全ての建造物、植物。
果たしてこれらを村と言って良いのか判断がつかない。
人口としては村と言える少人数ではあるのだが、村と言ったら見窄らしい様子で小汚い印象があるのが普通なのだ。しかしこの村は何もかもが綺麗で、どこかの貴族の避暑地。もしくは隠れ家。といっても過言ではない、綺麗すぎる村だった。

更には見たことがないカラフルな鉄の建造物。
あれは一体何なのか。説明がなければ彼らにはわからない。
辛うじてブランコは知っていた。




さてさてシイ村のおもてなし。
村人みんなー!頑張ってー!
私も頑張って口出しあまりしないように黙って見守ってるー!


「ギルマス殿、私が長老のシイ村にようこそ。本日はお越しくださいまして有難うございます。
 存分に楽しんでいってください。 
 お時間がございましたら是非お泊まりも体験ください」

待機していた長老ジョルドがちゃんと挨拶できました!
さすが長老。
いや、お飾りの長老だったんだけど、役職与えたらしっかりするタイプだったのか、敬語もうまく使いこなして働いていて、ジョルド偉い。

今すぐ褒めてあげたいけど客の前ではダメ!とガマン。
その代わり、ニコニコ笑顔と首を縦に振ることで合格であることを伝えるということになっている。

ついつい口を出したくなっちゃう私、妖精シイちゃん。
「黙る」ことを頑張ります。
最後まで頑張れたら褒めて欲しいです。


さて、まずは噴水広場でちょっと休憩していただいて、一服。

「なんでこんな村で貴族が飲むお紅茶が出てくるんだー!」

おもてなしされている誰かが絶叫して、誰かは青ざめ、誰かは幸せそうな表情をしていた。

「美味しい!」
「甘い!」
「柔らかい!」
「初めて食べた・・・・・・」
「パン?」
「・・・・・・」

お茶菓子は一口サイズのプチケーキ。
3センチX3センチの大きさのスーパーでよく売ってるアレ。
旅立ってしまったソーマからもらったレシピにマフィンがあったので、それを一口サイズに作ってもらったよ。

確か、柔らかいパンがやっと貴族で浸透して、そろそろ市井にもおりてきそうなんだったよね。
この一口サイズの柔らかパン、みたいなプチケーキならそろそろ出しても大丈夫かな?と思って出すことにしたよ。

「レシピは・・・・・・」
「考案者は・・・・・・」

全員がニコニコ顔のシイを凝視した。

シイは頑張って黙ってるから、喋らないよ!
みなさんご満足いただいているようで、嬉しい限りですよ!

「はぁ~・・・・・・」

ギルマスが大きなため息をついた。
吐いた息と共に魂が抜けてしまいそうな大きなため息でしたが、良かった、ギルマスの魂は体に留まっていた。
ギルマス御一行みなさんは想像していなかった村訪問に、もう疲れていた。
驚き疲れ、みたいな。

「それでは皆様、本日の皆様のお部屋にご案内いたしますので、大きなお荷物はお部屋に置き、ロックをかけてください。
 ご案内いたします。こちらです」

案内役の彼がちょっとギクシャクした所作で案内を始める。

「おお、わざわざ部屋を用意してくれたのか。すまんな。
 大きな荷物は俺は無いのだが・・・・・・みんなで行くとするか」

ギルマスは手ぶらだったけど、商会長さんたちは何かしら荷物を持っていたのでみんなで大人しくついていくことにする。

来客用の宿泊施設。
さすがに貴族のようなお部屋ではなかったけれど、街の宿より綺麗で置かれていた家具がちょっと高級そうな感じがした。
部屋の窓際にはロッキングチェアがあり、疲れを癒せそうだった。

ギルマス御一行は話し合ってなどいないのだけれど、「村じゃない」とみんなの思考が一致していた。

「お荷物をお部屋に置きましたらドアの前に立ち、ドアノブに手をかざしてください」

廊下に出てドアを閉めて手をかざすと、ガチャリ・・・・・・カチ!と音がした。
部屋の中では開いていた窓が魔法で閉まり、ドアのロックがされたのだった。

「これは魔道具か・・・・・・!!!」

(村じゃない。秘密結社か何かの隠れ家なのか?)

ギルマス達がシイを凝視する。
シイは何も喋らない。
ニコニコ顔で視線を受け止めた。

「ロックされましたので、同一の魔力をお持ちのご本人でないとロックは解除されませんので盗難のご心配は無用です。
 では、一通り施設のご案内をしてからまた外をご案内いたします。
 質問等ありましたがお気軽にどうぞ。
 では出発します」





ギルマス御一行はみんな同じことを考えていた。
ここは村だけど村じゃない。
シイという妖精が作った村だから、村っぽい何かなんだろう。
秘密結社か隠れ里か・・・・・・
そうでないなら桃源郷か?遊園地か?はたまた、夢の国なのか?

桃源郷
遊園地
夢の国

そんな言葉がこの異世界に存在するのかどうかわからない。
きっとうまい具合に都合よく翻訳されるだろう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

神々の仲間入りしました。

ラキレスト
ファンタジー
 日本の一般家庭に生まれ平凡に暮らしていた神田えいみ。これからも普通に平凡に暮らしていくと思っていたが、突然巻き込まれたトラブルによって世界は一変する。そこから始まる物語。 「私の娘として生まれ変わりませんか?」 「………、はいぃ!?」 女神の娘になり、兄弟姉妹達、周りの神達に溺愛されながら一人前の神になるべく学び、成長していく。 (ご都合主義展開が多々あります……それでも良ければ読んで下さい) カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しています。

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

処理中です...