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始まり〜シイ村

初めてのお遣い

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小さな子どもがひとりもしくは弟妹と一緒に馴染みのお店に子どもだけで買い物に行くというテレビ番組があったっけ。
自分ら子どもだけで外に行くって、親から離れて不安でギャーギャー泣いて、でも頑張ってて。
実際には大勢のスタッフさんが隠しカメラを持って至る所で見守っているんだけど。

この世界では体が小さいまるで子どもの私が小猫のエンと街へやってきた。
今頃ギャーギャー騒いでるのは村人の方だろう。
私はまた街に来られて嬉しいよ。楽しいよ。
アレとは立場が逆転してるだろう状況を想像してなんだかおかしかった。

門を通過するときはエンはすでに小猫になっていて、透明のプレートを門番に見せびらかして行った。
そんなことをするから子ども扱い、妖精扱いされるんだろうな。
わかっちゃいるけど、やめられない。
前世87才だったけど、もしかすると精神年齢5才かもしれない・・・・・・なーんて。

まずはギルドへ行って買取してもらった。
私はSランクということもあるけど、外見が弱そうだから変な奴に目をつけられないように、という理由で毎回別室を使うことになってる。
自分で全部対処するからお気遣いなくって言ったら、私を守るというより、街や国を妖精の強大な力から守るためだと言われたよ。

わからなくもないけど、私はそんな暴走するようなことはしないよ。




・・・・・・たぶん。




トレーに買取してもらう素材を出す。
植物、魔物の素材、魔石。
あんまり出すとギルドのお金がなくなりそうな気がする。
ちょっと遠慮気味に昨日より少なめに出してみた。
でもそんな私の気遣いは無用だったらしくて、依頼が出ていた素材があったから結構な大金を手にすることができた。

それはAランク以上向けの依頼で、塩漬け寸前のものだったみたい。
それでここぞとばかりに塩漬け死蔵在庫のクエストを全部持ってきて説明が始まってしまった。
ギルマスとスタッフ長のふたりで必死に説明というかお願いというか説得をしているのを、私は優雅に出されたお茶をいただいてカップを置いてふたりを止めた。

「おわかりかと思いますが、そんなに必死になっても妖精相手には無駄ですよ。
 妖精は自由きままな生き物なんですから」

とたんに肩をおとすふたり。

「クエストはこれで全部ですか?」

「はい・・・・・・」

創造魔法を発動する。
パソコンで作成したかのようなキレイな書体で書式を統一し、イラストも縮小して載せると1ページにふたつのクエストが収まって、裏にもふたつ。
ちょっと分厚いノート冊子が出来上がった。

「これは写しです。暇な時に目を通します。
 気が向いたら観光がてら採取に行きます。
 私も現金が欲しいですから。
 でも今は村が大事なので。あ、シイ村といいまして、私が興した村ですよ。
 良かったら遊びに来てくださいね。
 うどんという麺料理が名物です。
 村の発展に尽力しているところなので、期待はしないでくださいね!」

「・・・・・・ありがとうございます!」

ふたりは私の魔法に驚きつつ、気が向いたら、期待はしないでと言われたけれど、断られなかったことに安堵していた。

チラッと依頼票を見たけど、結構な金額だったよ!
1、2個は絶対やる!



ギルドの次は屋台。
村に迎えたい孤児を釣るための食べ物をたくさん買っておこう。
村人へのお土産は、屋台の食べ物ではなくて、今日はお花の苗や種を買って行こうかな。

子ども達は何が好きかな?
お肉?
甘いお菓子?
お野菜もたくさん食べて欲しいなぁ

汁物以外の食べ物を全種類ゲットして、屋台の人にまた来るねって予告しといた。

さっそく孤児を発見。
屋台のそばにはお腹空かせた幼い子どもが集まりやすいようだった。
大きめの皿にたくさんの買ったばかりの食べ物を乗せて渡した。

「私とシイ村においでよ。シイ村で暮らせば暖かいおうち、暖かいご飯がいつでも食べられるよ」

やってることが誘拐紛いのようだと自分自身を嫌悪しちゃったりなんかして、若干胸が痛んだ。
今日も言葉をかけるだけ。
おいでよって言ったところで、彼らは門で引き止められてしまうだろう。
外に出たら確実に死ぬからね。
ちゃんと私に声を向こうから掛けてこないとダメだよね。

彼らはもらったそばからまず自分の分をお腹いっぱい食べた。
残したものは持ち帰り、他の孤児に渡すのだろう。
その場から走り去っていった。

そんな様子を遠目に見ながら私はソーマの元へ。
千里眼でみたとおりの場所にいた。

「ソーマー!!!」

昨日ぶりの再会だったけど、満面の笑みで手を振ってくれた。


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