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始まり〜シイ村

ギルマスとお話

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冒険者ギルドに入ると人が少なくて静かだった。
ギルドのピークは朝いち。
クエストの争奪戦が繰り広げられ、ゲットした者からはけていく。
私たちが街に着いたのはもうおはようではなく、こんにちはの時間だった。
それでも数人いる冒険者らしき人達から奇異の目を向けられ、あのリヤカーまた来たのかと呟いてる人もいた。
でも絡んではこなかった。

ギルドの建物は2階建の煉瓦造りで、とても広く、そして掃除が行き届いていた。
南側の大きなガラス窓はステンドグラスで、キレイだった。
教会みたいだな、なんて思ったら、出入り口の上の方に女神様のような美人の像があった。
鑑定してみたら、やっぱり女神様だった。
冒険者の女神様。
冒険者に対して。無事にギルドへ帰還する祝福をしてくれるんだって。
なんだか優しいな




受付のおねえさんにマルコが話をすると、おねえさんは隣りのスタッフに指示を出した。
スタッフのおねえさんは急いでどこかへ向かっていった。
ギルマスの所だろう。
村人は受付で冒険者登録をする。
私はギルマスに会って、登録と買取を合わせてやってもらうことになっていた。

リヤカーから降りると、マルコが来た。

「マルコ、私が遅かったらお茶を飲んで待っててね。
 私はエンと一緒に行ってくるよ」

「わかった…です」

手を伸ばして銀貨を10枚渡す。
銀貨10枚で金貨1枚だ。
これで5人分のお茶飲んでオヤツも食べても十分足りると思う。

「シイ様、お待たせいたしました。
 ギルマスのお部屋へご案内いたします」

「はい、よろしく」

ちゃんと教育の行き届いたギルドのようだ。
子どものように体の小さい私を侮ることをせずに、ひとりの対等の人間として対応してくれているのがよくわかった。
ギルマスもきっと良い人だろうな。

「ギルマス、シイ様をお連れしました」

「ああ、入れ」

ギルド出入り口正面の2階の大きな扉。
そこがギルマス室だった。
静かに開いた扉から入室すると、男性が机からこちらへ向かって歩いている所だった。

「こちらがシイ様です」

「ありがとう、茶を頼む」

案内してくれたおねえさんは首肯して下がった。

「俺がこの街の、ソーニャ冒険者ギルドのギルマスだ。
 アレクだ。よろしく、シイ。
 よく来てくれた。
 今日登録することと買取することはマルコから話を聞いている。
 少し話もしたい。 
 さ、かけてくれ」

私でも楽に座れるくらいの低さのソファで、意外にもふかふかだった。

「私はシイです。よろしくね。
 登録時に簡易人物鑑定をすると聞きました。
 特に隠すつもりはありませんが、周囲の方が驚かれるかも。
 先ほどのおねえさんがお茶を持ってきて、下がってから鑑定をした方がいいと思います」

「そうか、では先に買取を済ませようか。
 このトレーに乗せてくれ」

アレクのソファーの脇から大きめのトレーが出てきた。
私はそこに乗るだけのレア素材をボンボン出していく。
アレクの顔が驚きと喜びに満ちていた。

「これだけのものをよく・・・・・・
 あの森の奥にしか咲かない花もある。
 ランクの高い冒険者しか行けない森の奥だからな、シイの実力がよくわかる。
 買取はこれで全部か?」

「いいえ、トレーがあと2枚必要です」

そういうとレア素材を乗せたトレーを扉の近くへ移動させ、別のトレーを出してくれた。
そしてまたレア素材を出す。
今度は道中倒して回収してきた魔物の部位や食べられる肉、そして魔石も出した。

「これは!」

アレクは元高ランク冒険者だったので、目の前に出てきた魔物が希少であり、そして討伐が難しいことをよく知っていた。
だからこそ、シイの冒険者登録では飛び級が必要だなと、冒険者登録を後回しにして良かったと思っていた。

そして3枚目のトレーにもさまざまなレア素材を出して、アレクが扉の近くへトレーを移動したところで、ちょうどお茶がきた。
おねえさんはすぐに去っていった。
今はテーブルの上にはギルマス室の備え付けの鑑定石とお茶とお菓子だ。
鑑定石は占い師さんが使ってる透明の水晶玉の、バスケットボールサイズの物だった。
重そうだ。

「では、鑑定もしよう。
 軽く石に触れてくれ」

言われた通りに石に触ると、石がほんのり光って、大きな鑑定石の中央に文字が浮かび上がった。



名前 シイ・ルック・クリスチアーヌ・ル・フェ
種族 妖精
年齢 16(不老)
魔力 無限大
魔法 創造魔法
他  睡眠不要、飲食不要、隷属不可



「は?」

アレクは口が開きっぱなしになったまま、しばしフリーズしていた。




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