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始まり〜シイ村

遭遇するの早い

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異世界メーカーだった頃、あらすじが決まってたのに、登場人物の暴走で脱線したりあらすじを多少変更しなくちゃいけない事態になるって事は、たまにあった。
少々なら大丈夫だけど、多々変更するとなるとかなり大変だしちょっと不本意だったりした。
でもなんとか完結させれば達成感で安堵するのだ。
次は暴走を許さないと決意して、それからまた次から次へとまた新しく異世界を生んでいく。
ま、素人だから、その辺のいろいろも自由ってことで良いよね!
自由をこよなく愛する私は余生にいくつ異世界を生んだんだったかな。
猫が大好きで、猫の獣人の異世界もあった。
それが今、自分が見た目だけ猫の獣人になって歩いてるなんて、感無量。
尻尾が絡まって繋がって、猫の愛を感じ、私の猫への愛も溢れる。




いや、まて。

そうじゃなくて。

「ねえ、街はまだ?」

「もう少しだ」

それって、ずっと前にも言ってたよね。

疲れないから平気ではあるけど、森を出たのは朝、多分今は夕方かも。
空があかいからねぇ

「あなたの少しって、何分?」

森から出てすぐの道を歩いて行った。
街までどれくらいか聞かなかったけど、高速移動用の猫姿を解除したから歩いて行ける距離だと思うじゃん。
全然街が見えなくて異世界メーカーだった時の前世を思い出しちゃったよ。
エンは終始ニコニコしているだけだった。

前方に人の気配。
馬車と馬と数名、少し離れたところにひとり。
鑑定で人間だとわかった。
さらに少し離れたところにいるひとりは、10人のうちのひとりだった。

ソーマ・サトー
男性 25才 ヒト種
スキル 鑑定 アイテムボックス 図書館

スキル図書館ってなんだろう?面白そう。
さとうそうまさん、か。
うん、害はなさそうだ。
この人によって国が滅びるとか世界が滅びるとかなさそう。

私たちの方が危険人物だったわ。

「エン、あそこの男性、私と同じく神々の娯楽で落とされた人だよ。挨拶するね」

「うむ」

森から出たら早速10人のうちのひとりに遭遇するなんてビックリだな。

段々と近づくと様子が見えてきた。
ここは野営地のようで道の左側に広場ができていた。
馬車の人たちは商人さんで、冒険者の護衛付き。
テントを張って食事の支度をしていた。

男性も1人用のテントを張って、テントが視界に入る辺りで何やら採取していた。

彼より馬車の人たちの方が距離的に近い。
男性だけに挨拶するのは変だし、普通なら馬車の人たちにも挨拶するよね。
でも私って、ちょっとコミュ障だったんだよね。
しかも第一異世界人遭遇だし。
彼らがどんな人間かさっぱりわからないから怖いな。

足を止めてどうしたものかと考えていると、あちらから近づいてきてくれた。
ラッキー!

「こんにちは、君たち2人で旅をしてるの?」

声をかけてくれたのは護衛中の冒険者だった。
良い色にこんがり焼けた肌に筋肉質な全身。
装備品についての鑑定はできるけど私にそれらの価値はわからない。
大きな体にサイズの合った装備品を使いこなしているようだった。
ちょっと伸ばした薄い茶の髪を紐でキツく束ねていた。
うん、カッコいいい!

アレン
男性 18才 ヒト種 
スキル 火魔法 雷魔法 剣術 他
冒険者ランクB「風見鶏」リーダー

冒険者ランクBなら信用できそう。

「こんにちは、私はシイ、こちらはエンよ。
 見ての通り2人旅。みんなここで一泊するの?」

「ああ、街はまだ先だからね、この時間ならここで一泊すれば安全だ。
俺はアレン。パーティ風見鶏のリーダーだ。よろしく」

そう言って手を出してきた。
握手の習慣があるのか。
サッとエンが手を伸ばして彼と握手した。
彼の笑顔と手は私に向いていたけど、生憎私の右手は塞がっている。
しょうがないと思う。ごめんね。

「君たちもここで一泊した方がいい」

親切に助言をくれてありがとう。

「考えてみる。ありがとう」

「ああ。何か困ったことがあったら言ってくれ」

深入りしてこない心地よい距離感。
彼は片手を上げてテントに戻っていった。

野営、する?

とりあえずあの男性に声をかけてみるか。
彼は採取をやめてテントに戻っていた。

「こんにちは、神々の娯楽に巻き込まれた人。
 私は日本人です」

男性は驚き慌てて立ち上がった。

焦茶の髪と瞳。
ひょろっとしてるけどバランスよくついた筋肉。
姿形はまさに日本人。

「わぁ、驚いた。初めまして、私も日本人です」

不思議な自己紹介にふふふと笑ってしまった。

「私は妖精のシイ、こちらは旅の仲間、ドラゴンのエンよ。少しお話ししてもいいですか?」

一応馬車の人たちには聞こえないように防音の結界を周囲に張った。

「ええ、もちろんです、なにもお構いできませんがどうぞ。私はソーマ・サトーです」

彼の近くに2人用のふかふかソファを出して寛ぐ。
座っても繋がった手は離れなかった。

前世では恋愛小説を書くのはちょっと苦手だったなぁ
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