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俺の財産どこだ

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隠し財産の魔石が移動した。

定期的に確認している隠し財産の魔石の俺の魔力。
街から出ていないようだが、わずかに動いたことに俺は気づいた。

なんてったって俺はBランクの冒険者。
実力はそこそこあるからな。

あちこちの街にオツムの弱い女を恋人にして愛を囁き、逃げないように子どもを作る。
多すぎず少なすぎない金銭を渡して、冒険者であること口実に長期不在を了承させ、帰宅した時には小さな贈り物をする。
女が俺にぞっこんでしっかり帰りを待つようになれば、ただの恋人から隠し財産の番人に格上げだ。

俺の財産を女の家の壁や床に隠す。
盗難防止用に俺の魔力を込めた魔石を一緒に入れるんだ。

この方法を思いついてから魔力操作の訓練をめちゃくちゃやったんだぜ?
剣だけでなく魔法も巧みに操る魔法剣士になったんだ。
だが目立っちゃいけねえ。
得意の隠蔽と認識阻害で極力人の目につかないようにずっと気をつけている。

何のために金を貯めてるかって?
俺の幼馴染であり、貴族の娘を手に入れるためだ。
すでに婚姻し嫁いでいってしまったが、今は未亡人。
ひとり息子が成人して爵位を継ぐまでは今のままこっそり逢瀬を重ねるしかないが、息子が成人したら晴れて堂々と別宅で同居もできる。

貴族とは面倒なことが多い。
幼馴染は俺を養うと言っているが、男は養われたくない、愛する女を養いたいのだ。
だがお互いプライドをぶつけていてもしょうがない。
生活は彼女に任せて、贈り物は自分の手で手に入れよう。

というわけで、稼いだお金は宝石やアクセサリーに変え、たまには貴族からいただいて、方々に分散して隠しておいたんだ。

魔石が移動した街はあそこだ、妖精が生まれた街。
先祖返りだとか妖精だとか言ってたが、俺にも女にも無い色を持って生まれた子どもの気味の悪さ。
ゼッテー俺の子じゃねー。
赤ん坊のくせに泣きもしない、全てを知っているかのような目。
妖精なんて信じちゃいないが、泣かない赤ん坊なんていないからな、触らぬ神に祟りなし、だ。
いつもと同じ、慎重に行動するんだ。

とはいえ、あそこの街はいつも春に滞在するところだ。
こんな真冬に移動することになるとは。
キツいぜ。

今回は隠蔽で姿を隠して街へ入る。
門から入るとたまに有能な奴に見つかる恐れがあるから、夜に壁を越える。
隠し財産を取りにきただけだからな。
俺の存在は誰にも認知されてはならない。

確か番人の家はこっちだったか。
隠蔽魔法で体を消したまま夜の貧民街を進んでいく。
やはり魔石が移動しているようで、記憶とわずかな月の光を頼りに家を見つけ、中に入った。

驚愕した。
ベッドひとつ何もない。
一体何があったのだろうか。
子どもを連れてどこかへ行ったとしても、でかいベッドまで持っていけないだろう。
何もかもがなかった。
これが本当のもぬけの殻というやつか。
ここまで綺麗さっぱりにしていったら、隠し空間も見つけられるだろう。だから俺の財産持ってかれちまったんだろうな。

そんでここが俺の分岐点だった。
ベッドがないこの部屋の異常さに、俺は即刻ここから去るべきだったんだ。
そんなことに気づきもせずに、財産を取り返す方向に突き進んでしまった。



俺の魔力を発している魔石はこの貧民街にあった。
貧民街には似つかわしくない、小さいがちょっと立派な家の中。
屋内にはひとりしかいないことを確認して空いている窓から中へ入る。
豪快にイビキをかいて寝ている男がいた。
ガタイは良さそうだが、俺がここにいる時点で起きないコイツは弱い。
起きるまでほっといて、俺の魔石と財産を回収してやろう。

魔石の発する魔力であっさりと隠し場所を見つけた。
少しのお金と、数点のアクセサリーがあった。
足りない。
まったく足りない。

俺の財産をどこにやった!!!!



男の手足を拘束して尋問という名の拷問をする。
大の男が泣いて顔をぐしゃぐしゃにして、殺さないでくれと懇願してきた。

あそこの家の女は自死。
魔石とアクセサリーは死んだ女の子ども達からもらったと白状した。
そして平民街に引っ越していった、場所までは知らないと。

俺は心から礼を言って、男を楽にしてやった。




子どもか。

あいつらが俺の財産を持っているのか。

確か、ガキ共が冒険者やってたな。
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