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やっと帰宅する
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突然出かけた男爵一家。
彼らに何があったのか、時は2話前に遡る。
エラが男爵に「他に何か持っているのか」「良い物思いついたら教えてくれ」と言われたことを兄弟に話した事で、全てが動いてしまったのだ。
冒険者ギルドのマスターは貴族のために若い冒険者が潰されるのを黙ってみていたくなかった。
兄弟がエラ達に会いに男爵邸へ行く時だけ、密かに信用のおける冒険者に護衛をさせていた。
商業ギルドのマスターは以前から男爵家を監視していて、エラ達が軟禁されてからは兄弟の細かい様子も報告するようにと指示が増えた。
エラから男爵の話を聞いて、不機嫌な様子で男爵邸を出てきた兄弟に、密かに護衛をしていた冒険者が何食わぬ顔で事情を聞いてきた。
兄弟とは顔見知りだったし、高ランクの冒険者であったから、信用があった。
親しい冒険者は皆エラ達が男爵家に軟禁されていることも知っている。
つい先ほどエラから聞いた話を、感情をぶつけるように兄弟は話した。
話を聞いて気持ちを受け止めた冒険者は兄弟を家まで送り、明日朝一番にギルマスに報告するように言って別れた。
彼は本日の任務終了、と、ギルマスに兄弟の話を含めて報告を済ませた。
商業ギルドの監視者は、その話を耳強化で聞いていた。
そっくりそのまま商業ギルドのマスターであるサミュエルに伝える。
するとサミュエルは、領主から指示があった通り即座に動き出した。
サミュエルから連絡を受けた領主は、部下と共に夜通し馬を走らせ街へ入る。
早朝男爵邸に押し入り、断罪劇を始める。
エラに気づかれないように騒がず、エラの動線から外れた部屋を使った。
エラ達のそばには領主が忍ばせていた者たちで固められ、エラに何一つ不審に思わせなかった。
エラが読書好きであったことも幸いして、いつも通りすんなりと図書室に入室させると、特定の人物を拒否する結界を張った。
この結界から外の音は耳強化しても聞こえない、ということをエラは知らなかった。
男爵一家が朝早くに叩き起こされて集められた一室で見たのはにこやかな領主。
年に数回報告のため領主邸に行くのだが、一度も領主の笑顔など見たことがないので、奇妙な恐怖感が沸いてくる男爵と、ただただ困惑する妻と娘。
「お前たちが手を出したお方が、どれほど高貴な存在であるか、わからなかったか?」
地の底を這うような低い声。
魔法を使った気配はないのに体が震えるほど寒いのは、暖炉の火がついたばかりだからか?いや、十分に部屋は暖まっていた。
「あのお方の逆鱗に触れた瞬間、この国はおろか、世界が荒野になっていたかもしれん」
領主は実際にそこまでは思っていなかったが、それくらいの扱いではないと囲みたいものもうまく囲めないとは思っていた。
男爵は領主の言葉に息を呑む。
まさか、そんな、と。
御伽噺にしか出てこない存在が現実に存在するとは。
だが、堂々たる領主の言葉を否定するなど、この男爵にはできなかった。
淡々と男爵の罪状を挙げていく領主の側近は、証拠も突き出して反論を許さない。
領主が目の前に来た時から最早逃げ道はなかった。
関係者を洗いざらい吐けと言われ、あっさりと妻の名前も出す男爵。
手元にある犯罪の証拠も全て差し出した。
妻は醜く叫びながら自分の関与を否定。
娘は両親の罪を知ってただただ呆然としていた。
男爵夫妻と、関与していた者たちは無期の鉱山労働へ送られ、娘は修道院へ即刻送られた。
男爵邸の使用人は全て領主の息のかかった者に代えられ、最低限の人数で屋敷の管理を行なうこととなった。
街の管理は、領主が選定した下位貴族の者がする事にすでに決まっており、彼は昼には到着した。
エラ達の処遇もすでに承知済みで、妖精のご機嫌を損なうなという領主の指示通り、図書室で生活したいと言えば、その通りに自由にさせる。
だが、男爵家については兄弟から説明させるからと、それまでは屋敷の者全員で隠していた。
そしてこの顛末は冒険者ギルドのマスターへも伝えられ、兄弟と兄弟達を心配していた冒険者達もみな知ることになり、エラとルドはまだ帰宅していないが、再び平穏な日々に戻っていった。
あれからおよそ2週間、やっと男爵邸から自宅へと帰ってきたエラは、熱烈に兄弟からの歓迎を受けた。
エラは兄弟からここまでの話を聞いて驚きもせず、「そうだったんだ」の一言でいつもの日常に戻っていった。
彼らに何があったのか、時は2話前に遡る。
エラが男爵に「他に何か持っているのか」「良い物思いついたら教えてくれ」と言われたことを兄弟に話した事で、全てが動いてしまったのだ。
冒険者ギルドのマスターは貴族のために若い冒険者が潰されるのを黙ってみていたくなかった。
兄弟がエラ達に会いに男爵邸へ行く時だけ、密かに信用のおける冒険者に護衛をさせていた。
商業ギルドのマスターは以前から男爵家を監視していて、エラ達が軟禁されてからは兄弟の細かい様子も報告するようにと指示が増えた。
エラから男爵の話を聞いて、不機嫌な様子で男爵邸を出てきた兄弟に、密かに護衛をしていた冒険者が何食わぬ顔で事情を聞いてきた。
兄弟とは顔見知りだったし、高ランクの冒険者であったから、信用があった。
親しい冒険者は皆エラ達が男爵家に軟禁されていることも知っている。
つい先ほどエラから聞いた話を、感情をぶつけるように兄弟は話した。
話を聞いて気持ちを受け止めた冒険者は兄弟を家まで送り、明日朝一番にギルマスに報告するように言って別れた。
彼は本日の任務終了、と、ギルマスに兄弟の話を含めて報告を済ませた。
商業ギルドの監視者は、その話を耳強化で聞いていた。
そっくりそのまま商業ギルドのマスターであるサミュエルに伝える。
するとサミュエルは、領主から指示があった通り即座に動き出した。
サミュエルから連絡を受けた領主は、部下と共に夜通し馬を走らせ街へ入る。
早朝男爵邸に押し入り、断罪劇を始める。
エラに気づかれないように騒がず、エラの動線から外れた部屋を使った。
エラ達のそばには領主が忍ばせていた者たちで固められ、エラに何一つ不審に思わせなかった。
エラが読書好きであったことも幸いして、いつも通りすんなりと図書室に入室させると、特定の人物を拒否する結界を張った。
この結界から外の音は耳強化しても聞こえない、ということをエラは知らなかった。
男爵一家が朝早くに叩き起こされて集められた一室で見たのはにこやかな領主。
年に数回報告のため領主邸に行くのだが、一度も領主の笑顔など見たことがないので、奇妙な恐怖感が沸いてくる男爵と、ただただ困惑する妻と娘。
「お前たちが手を出したお方が、どれほど高貴な存在であるか、わからなかったか?」
地の底を這うような低い声。
魔法を使った気配はないのに体が震えるほど寒いのは、暖炉の火がついたばかりだからか?いや、十分に部屋は暖まっていた。
「あのお方の逆鱗に触れた瞬間、この国はおろか、世界が荒野になっていたかもしれん」
領主は実際にそこまでは思っていなかったが、それくらいの扱いではないと囲みたいものもうまく囲めないとは思っていた。
男爵は領主の言葉に息を呑む。
まさか、そんな、と。
御伽噺にしか出てこない存在が現実に存在するとは。
だが、堂々たる領主の言葉を否定するなど、この男爵にはできなかった。
淡々と男爵の罪状を挙げていく領主の側近は、証拠も突き出して反論を許さない。
領主が目の前に来た時から最早逃げ道はなかった。
関係者を洗いざらい吐けと言われ、あっさりと妻の名前も出す男爵。
手元にある犯罪の証拠も全て差し出した。
妻は醜く叫びながら自分の関与を否定。
娘は両親の罪を知ってただただ呆然としていた。
男爵夫妻と、関与していた者たちは無期の鉱山労働へ送られ、娘は修道院へ即刻送られた。
男爵邸の使用人は全て領主の息のかかった者に代えられ、最低限の人数で屋敷の管理を行なうこととなった。
街の管理は、領主が選定した下位貴族の者がする事にすでに決まっており、彼は昼には到着した。
エラ達の処遇もすでに承知済みで、妖精のご機嫌を損なうなという領主の指示通り、図書室で生活したいと言えば、その通りに自由にさせる。
だが、男爵家については兄弟から説明させるからと、それまでは屋敷の者全員で隠していた。
そしてこの顛末は冒険者ギルドのマスターへも伝えられ、兄弟と兄弟達を心配していた冒険者達もみな知ることになり、エラとルドはまだ帰宅していないが、再び平穏な日々に戻っていった。
あれからおよそ2週間、やっと男爵邸から自宅へと帰ってきたエラは、熱烈に兄弟からの歓迎を受けた。
エラは兄弟からここまでの話を聞いて驚きもせず、「そうだったんだ」の一言でいつもの日常に戻っていった。
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