異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる

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至れり尽くせり

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男爵家に軟禁されて数日が経つ。
これが貴族の生活なのかと、至れり尽くせりされるがままの私とルド。

ルドは男性に少し人見知りしているようだが、女性にはあまりしない。
でも女性の顔をジッと見て、警戒しているのか?抱っこされているその体はかたそうだった。



毎日入浴させてくれる。
良い匂いのする石鹸で頭のてっぺんから足の先まで全部メイドさんが洗ってくれる。
クリーン魔法で充分なんだけどね。

食事もそこそこ美味しいものが出てきて毎回苺のショートケーキが食べられる。
馬鹿の一つ覚えみたいな気もするが。
ルドの食事介助はメイドさんがやってくれるから、私はゆっくり味わって食事ができている。

着替えもメイドさんがやってくれるんだけど、服が決まるまでに時間がかかる。
前もって決めておいたら良いと思うんだけど。
部屋が暖かいからいいけどさ。

庭へ散歩に出るのにもメイドさんがついてくる。
ひとりじゃなく、複数人。
まるで要人扱い?
それとも監視?
貴族に逆らったら死、あるのみだから、逃げたりしないよ?

時間になると呼ばれて、サラとお勉強。
算術はテキスト解るところやってたら全部終わってしまった。
教師は驚いていたけど、算術のレベルが低いのだよ。
試しにと出された次のテキストは日本でいうと中学校レベルの問題で、久々すぎてちょっと苦戦したけど、それでも教師を驚かせるには十分な出来だった。
なんと貴族の子息令嬢が通う学園の卒業レベルのテキストだったらしい。
「さすが妖精ですね」
そんな一言で片付けられてしまった。

算術に関してはもう教えることはないと言われて、サラが算術の時間、私は読み書きをすることになった。
孤児院で学んだ以上のことを教わっている。
さすがに自由にたくさん紙とインクを使って良いよとはならなくて、貴族の子どもは蝋板を使って何度も書いて覚えるようだ。
エコだな。

マナー講習もサラと一緒に受けたけど、私に必要ない気がする。

自由時間には本を借りてたくさん読む。
いつまでここに軟禁されるのかわからないけど、できれば男爵家にある本を全部制覇したいと思う。
わからない単語はメイドに教えてもらい、書けない単語は蝋板で書き取り練習。

お金をもらって自由に好きなだけ勉強していいなんて後にも先にもこれが最後だろう。
こんなに美味しい仕事は他にはない。
好きなだけ甘えて良いよね?

夜はルドを先に寝かせないといけない。
サラが一緒に寝たいと駄々こねてたけど、ルドの寝かしつけは私じゃないとダメなんで!夜泣きしたら私じゃないとダメなんで!って断固拒否して、妥協して隣の部屋になった。

ルドと離れ離れになって人質にされたりしたら困るよね。
兄ズにルドをよろしくって言われてるし。
慎重に行動しよう。



マグでミルクをルドに与えていると、男爵が気づいて声をかけてきたっけ。

「そのコップはなんだね?」

「マグといって、コップをまだ上手に使えない赤ちゃん用のコップだよ。マグノリア商会で売ってるよ」

「そうか・・・・・・商会ですでに取り扱ってるのか。他に何か持ってるのかね?」

「他にってなんだろう?わかりませーん。あ、商会にあったおもちゃで遊びたいな!このおうちにある?」

全部買って私に金をくれ。

「よしよし、買ってやろう。そのかわり何か良い物思いついたら教えてくれ」

なんだこの男爵。
私のアイデアが、いや、前世の商品が欲しいのか?
マグノリア商会で取り扱ってる商品の一部が私の商品だってバレてるのかな?
男爵のくせになかなかやるなぁ。

その日のうちにおもちゃが手元に届いて、サラと自由時間に遊んでやった。

兄ズは冒険者のお仕事の後に、外が真っ暗でも毎日会いに来てくれた。
今日一日何をしたのか兄ズに報告。
もちろん今日の男爵との会話も。
案の定、兄ズの顔が曇ったよ。

「でももう何もアイデア浮かばないから大丈夫だよ」

あれ、その顔は信じてくれてないな?

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