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病院じゃないよ
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□再び、痛いの□
どこからかオペの噂を聞いた町医者が、ギルドに私を訪ねてきたということで、処置の方法を教えて、縫合針もあげた。
針は釣り針のように曲げればいいだけなので見本という体で渡した。
お金を払うと言っていたけど、少しでも早く怪我人が処置を受けられるように、私と同じように無償で他の医者にも教えてほしいとお願いした。
この処置を教えるときは、ずっと他の医者も無償で教えるように、と。
レオは私のヒールもあって、かなりの傷だったけど1週間ほどですっかり元気になって、パーティと合流してお仕事へ意気揚々と行った。
低級ポーションなら、瞬時に切り傷を半分くらい治して、治りきっていないところは包帯して自然治癒に任せるのだが、それが1週間くらいで完治する。
ポーションなしでも1週間で治したことはギルマスも他の冒険者達も驚いていた。
しばらくして、ゲガをした冒険者を、兄ズが連れて帰ってきた。
パテメンもみんな来てたけど、怪我人はパテメンじゃないな。
「エラ、悪いんだけど、コイツ、ポーションなしの治療を受けてみたいっていうんだけど、やってもらえるかな?」
「俺、ルーイっていうんだ。よろしくね、エラちゃん。
ポーションなしの治療を見てたんだけど、レオがすっごく叫んでただろ?
俺なら針なんか痛くねーよって言ったらさ、体験してみろってことになってさ~。へへへ」
「そんで、少しでも声出したら、俺たちの勝ち。出さなければルーイの勝ちってことで、賭けてんだよ」
兄ズのパテメンがぞろぞろうちに入室して、各々の好きな場所に腰掛けながら、賭けの話をしてきた。
勝った方がポーションもらえるんだって。
「エラちゃんにはクッキー買ってきたから、これで頼むよ。どうかな?」
甘いクッキーか。
ふむふむ。
「じゃぁー、私からも条件あるよ!私の治療を受けるなら、完治するまで私の言うことに従うこと。
完治するまではうちの空き部屋に宿泊して、食事は私が用意したものをしっかり食べること。
宿泊費と食事代は自己負担だよ。
それで、今回はお兄ちゃんたちの友人ってことなんで、もしルーイが、声出さなかったら、完治するまでの宿泊費と食費代は貰わないよ。
もし声が出ちゃったら、宿泊費と食事代はきっちり支払ってね。
現金払いでも良いし、品物でも良いよ。私のお手伝いでも良いよ」
「よし、わかった!ぜってー痛くない!声でねーから!さあ、やってくれ!」
ドカッと豪快に床に座ったルーイ。
自信満々のご様子。
本当に痛みに強い人なのかな?
「念のため、ルーイをおさえてね、みんな」
早速オペに入るよ。
レオの時より傷が浅めなのか、止血はちゃんとできてた。
包帯を解いて、クリーン。
「はい」
右からお酒の入ったコップが差し出された。
用意が良すぎるよ、パテメンの人よ。
遠慮なくお酒を傷にぶっかけた。
ルーイさんよ・・・・・・めちゃくちゃ顔が引き攣ってるけど、気絶して声でないパターンになったらルーイの勝ちになりそうだな。
「ルーイが気絶したら、ルーイの負けね!」
一応言っておこう。
またクリーンかけて、いよいよ縫っていくよー。
指示しなくてもパテメンがルーイをおさえてくれた。
レオが悪い顔してるのは気のせいか?
針にもクリーンして、いざ。
ちく
「!!!」
ルーイの体が跳ねたようだ。
ちく
「ひぃっ・・・・・・」
声出てるな、これ。
3針目、刺す寸前、
「うわぁああああ!」
まだ刺してないのに耐えきれずに先に叫んでしまったようだ。
「いえーい!俺たちの勝ち!」
兄ズとパテメンの皆様が笑いながら喜んでいた。
では3針目、ちく。
「あああ!」
ちく
「ぎゃぁああ!」
ちく
「助けてー!」
ちく
「かーちゃーん!!!涙」
ルーイは完全なる負け犬となり、涙を流して泣いていた。
「エラちゃんは容赦ないね・・・・・・あれ、5才だっけ?」
「うん。痛いことは短時間で済ましたほうが体力消耗を抑えられるからね」
針は痛いんだよ。
地味に痛いんだよ。
しかもこの縫合針って、医療用に細くしてないただの裁縫針を曲げただけだからね、太いよね。
かーちゃーんシクシクシクとルーイはまだ泣いていた。
淡々と包帯を巻いて処置を終わらせる。
「処置はこれで終わりです。よく頑張りました」
それから完治までうちに宿泊してもらって、食事は栄養考えたものを食べてもらった。
支払いは私のお手伝いと、完治後1週間食材を納めることとなった。
レオのように出血多量ではなかったので、次の日から私の薬草採取に付き合ってもらい、片手で護衛してもらった。
ルドのカートもひいてもらった。
食事の準備中はルドの相手をしてもらって、すっかり慣れたマグでミルクを与えたりもしてもらったよ。
ルーイはレオより早く5日目で完治したのだが、抜糸でもかーちゃーんと泣いた。
その後1週間日替わりでいろいろ食材を届けてくれたが、期間が過ぎても時々果物を届けてくれたルーイ。
ギルドではエラに治してもらったと得意気に語っていたという。
うちは病院ではないので、町医者へ行ってくださいねって思うんだけど、家にまで来られたら追い返せなくて、結局病院になっちゃった。
でも、一度経験した人は2度と来なくなった。
廃業する日も近いだろうね。
どこからかオペの噂を聞いた町医者が、ギルドに私を訪ねてきたということで、処置の方法を教えて、縫合針もあげた。
針は釣り針のように曲げればいいだけなので見本という体で渡した。
お金を払うと言っていたけど、少しでも早く怪我人が処置を受けられるように、私と同じように無償で他の医者にも教えてほしいとお願いした。
この処置を教えるときは、ずっと他の医者も無償で教えるように、と。
レオは私のヒールもあって、かなりの傷だったけど1週間ほどですっかり元気になって、パーティと合流してお仕事へ意気揚々と行った。
低級ポーションなら、瞬時に切り傷を半分くらい治して、治りきっていないところは包帯して自然治癒に任せるのだが、それが1週間くらいで完治する。
ポーションなしでも1週間で治したことはギルマスも他の冒険者達も驚いていた。
しばらくして、ゲガをした冒険者を、兄ズが連れて帰ってきた。
パテメンもみんな来てたけど、怪我人はパテメンじゃないな。
「エラ、悪いんだけど、コイツ、ポーションなしの治療を受けてみたいっていうんだけど、やってもらえるかな?」
「俺、ルーイっていうんだ。よろしくね、エラちゃん。
ポーションなしの治療を見てたんだけど、レオがすっごく叫んでただろ?
俺なら針なんか痛くねーよって言ったらさ、体験してみろってことになってさ~。へへへ」
「そんで、少しでも声出したら、俺たちの勝ち。出さなければルーイの勝ちってことで、賭けてんだよ」
兄ズのパテメンがぞろぞろうちに入室して、各々の好きな場所に腰掛けながら、賭けの話をしてきた。
勝った方がポーションもらえるんだって。
「エラちゃんにはクッキー買ってきたから、これで頼むよ。どうかな?」
甘いクッキーか。
ふむふむ。
「じゃぁー、私からも条件あるよ!私の治療を受けるなら、完治するまで私の言うことに従うこと。
完治するまではうちの空き部屋に宿泊して、食事は私が用意したものをしっかり食べること。
宿泊費と食事代は自己負担だよ。
それで、今回はお兄ちゃんたちの友人ってことなんで、もしルーイが、声出さなかったら、完治するまでの宿泊費と食費代は貰わないよ。
もし声が出ちゃったら、宿泊費と食事代はきっちり支払ってね。
現金払いでも良いし、品物でも良いよ。私のお手伝いでも良いよ」
「よし、わかった!ぜってー痛くない!声でねーから!さあ、やってくれ!」
ドカッと豪快に床に座ったルーイ。
自信満々のご様子。
本当に痛みに強い人なのかな?
「念のため、ルーイをおさえてね、みんな」
早速オペに入るよ。
レオの時より傷が浅めなのか、止血はちゃんとできてた。
包帯を解いて、クリーン。
「はい」
右からお酒の入ったコップが差し出された。
用意が良すぎるよ、パテメンの人よ。
遠慮なくお酒を傷にぶっかけた。
ルーイさんよ・・・・・・めちゃくちゃ顔が引き攣ってるけど、気絶して声でないパターンになったらルーイの勝ちになりそうだな。
「ルーイが気絶したら、ルーイの負けね!」
一応言っておこう。
またクリーンかけて、いよいよ縫っていくよー。
指示しなくてもパテメンがルーイをおさえてくれた。
レオが悪い顔してるのは気のせいか?
針にもクリーンして、いざ。
ちく
「!!!」
ルーイの体が跳ねたようだ。
ちく
「ひぃっ・・・・・・」
声出てるな、これ。
3針目、刺す寸前、
「うわぁああああ!」
まだ刺してないのに耐えきれずに先に叫んでしまったようだ。
「いえーい!俺たちの勝ち!」
兄ズとパテメンの皆様が笑いながら喜んでいた。
では3針目、ちく。
「あああ!」
ちく
「ぎゃぁああ!」
ちく
「助けてー!」
ちく
「かーちゃーん!!!涙」
ルーイは完全なる負け犬となり、涙を流して泣いていた。
「エラちゃんは容赦ないね・・・・・・あれ、5才だっけ?」
「うん。痛いことは短時間で済ましたほうが体力消耗を抑えられるからね」
針は痛いんだよ。
地味に痛いんだよ。
しかもこの縫合針って、医療用に細くしてないただの裁縫針を曲げただけだからね、太いよね。
かーちゃーんシクシクシクとルーイはまだ泣いていた。
淡々と包帯を巻いて処置を終わらせる。
「処置はこれで終わりです。よく頑張りました」
それから完治までうちに宿泊してもらって、食事は栄養考えたものを食べてもらった。
支払いは私のお手伝いと、完治後1週間食材を納めることとなった。
レオのように出血多量ではなかったので、次の日から私の薬草採取に付き合ってもらい、片手で護衛してもらった。
ルドのカートもひいてもらった。
食事の準備中はルドの相手をしてもらって、すっかり慣れたマグでミルクを与えたりもしてもらったよ。
ルーイはレオより早く5日目で完治したのだが、抜糸でもかーちゃーんと泣いた。
その後1週間日替わりでいろいろ食材を届けてくれたが、期間が過ぎても時々果物を届けてくれたルーイ。
ギルドではエラに治してもらったと得意気に語っていたという。
うちは病院ではないので、町医者へ行ってくださいねって思うんだけど、家にまで来られたら追い返せなくて、結局病院になっちゃった。
でも、一度経験した人は2度と来なくなった。
廃業する日も近いだろうね。
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