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金より大事な物

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レオが結構な出血だったようで顔色が悪く、具合も悪そうだったので、鉄分の多い食事を摂らせてさっさと寝かして、ポーションを使わなかった理由は翌朝問い詰めることになった。

翌日はレオもユーリも私もお仕事お休みにした。

「それで、お兄ちゃん、どうしちゃったの?」

まだ体が重そうにしているレオは、言いにくそうにしていた。

「心配したよ?冒険者として、怪我したらすぐにポーション使うのが常識だよね?ポーションがなかった?」

・・・・・・まだしゃべらない。
早く吐け、楽になるぞ。

「昨日の、ポーション使わない治療は痛かったでしょ?」

ゆっくりと頷いたレオ。

「痛いことしてごめんね」

「違う!エラは何も悪くない、謝るな。・・・・・・いや、ごめん、俺の方こそ、悪かった。あんなことさせちゃって・・・・・・」

それからレオはゆっくりと想いを話してくれた。


もっと稼ぎたかった。
ポーション使ったら稼ぎが減ると思った。
商業ギルドでエラが大金稼いでるのをみて、焦った。
俺たちがもっと稼がなきゃって思った。


「お兄ちゃん達は魔物を倒して、どんどん稼ぎが増えてきてるよ。
 でも私は戦えない。大きくなっても戦えないの。
 あのいつもの場所で、ずっと薬草採取しかできないの。
 私の稼ぎは何年経ってもお兄ちゃんたちの稼ぎの足元にも及ばないんだよ。
 商業ギルドに売ったのは、ルドのため、私たちのために作ったものだよ。
 それがあんなに大金になるとは思わなくて驚いたけど、私もお兄ちゃんたちくらい稼げた気がして、嬉しかった。
 私も役に立ちたかったから」

「・・・・・・いや、かなりの大金だったよな」

「お兄ちゃん達は、お金だけでなく、お肉や果物も持って帰ってきてくるでしょ?お金にかえることだってできるのに。
 お兄ちゃん達が毎回持って帰ってきてくれるお土産は、すっごく楽しみにしてるの。
 その気持ちって、お金では買えないよね?
 命も、お金では買えないよね? 
 私たち家族でしょ?稼ぎが多い少ないなんて、気にするところはそこじゃないよ。
 私だって、たまにはお兄ちゃんたちとおもちゃで遊びたいし、一緒にお買い物にも行きたい。
 でも、怪我しちゃったり、具合悪くしたり・・・・・・死んじゃったら、何もできなくなっちゃうじゃん」

ここで出てもいない鼻水をすすってみる。
涙が出たらいいんだけど、流石に演技でも涙が出ない。
兄ズが狼狽える。

反省してくれ。

「お金より、命が大事だよ。冒険者ってそうでしょ?
 お金より、家族の時間も大事だと思う。
 私は、お金より、お兄ちゃん達が大事だよ。
 エラをひとりにしないで」

正確には、エラとルドのふたりにしないで。

お金より大事なかけがえのない物、見失わないでよ。

まだエラは5才、ルドは0才。
ひとりでも欠けたらダメなんだよ。
わかってくれよ。

涙が出ないので、鼻をすすってさらに目を隠して泣き真似。

「ごめん・・・・・・ごめん、エラ・・・俺が間違ってたよ。ユーリも、ごめん。悪かった」

泣いている声で謝ると、ふわっと暖かな腕がエラを包んだ。

兄ズが私を抱きしめて泣いている。
反省してくれたようで何よりだ。

兄ズに合わせて、レオ…ユーリ…と言ってみたけど、私も抱きしめ返してるけど、兄ズよ、ごめん。

私の心は動かず、涙でませんでした。
こんな感動的な場面でも、心は凪で、びくともしなかったよ・・・・・・

最後はみんなで笑い合っておこう!
きっと気づかれてないはず!
誤魔化せたと思う!

蟠りがなくなった私たちは、またレオをカートに乗せて。みんなで美味しい物を買いに行った。
後日、雑貨屋さんや可愛い服を見に行こうと約束もした。
美味しいものを食べたら、私が作ったおもちゃで飽きるまで遊んだ。

こんなふうにしてじっくり兄弟で遊んだのってもしかして初めてかも。


それからしばらくは、レオは怪我が治るまで家に缶詰。
もう治った!と外に行きたがるレオに妥協して、薬草採取だけ許可した。
一緒に行って、採取しながら護衛もさせた。
抜糸して、完治宣言。

反省したからポーションで治すって言ったけど、これは罰だから、完治するまでポーション禁止は譲らなかった。
抜糸の時にヒーヒー泣いてたよ。
もう2度とあんな真似はしないだろう。
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