上 下
22 / 39

オペはいります

しおりを挟む
□ちょっと痛い表現あり□


午前中少しシートでお昼寝していたルドが、昼近くになってぐずりだした。

授乳か。

そういえば、私も喉乾いたな。
ルドも喉乾いたよね。

ルドに飲ませるものがなかったから一旦帰ることになった。

ギルドへも買い取りをお願いしに行ってバケツを空にする。
鑑定してみると採取した薬草の鮮度は落ちてなかったので、ほんの気持ち買取額が上乗せされてて、半日でこれまでの1日分の稼ぎになっていた。
午後もやれば2日分の稼ぎになるだろう。

バケツは今後も採用で。

私の収納魔法に入れてしまえば持ち運びもしなくて済むんだけど、人の目があるから便利だけど気軽に使えないのだ。

授乳をお願いしにおばちゃんの所まで行って、また東へ行くとなるとちょっと採取時間が短くなってしまうから、なるべくなら丸一日東に行っていたいと思う。

でもルドの飲み物の問題を解決せねばならない。
私は水筒持って行けばいいし、無くても自分で水を魔法で出せるから困らない。
ルドはまだコップ使えないし、スプーンしかないかな?

前世で子育てした記憶を懸命に思い出す。


閃きました!!!


マグがこの世界にもあれば・・・・・・

どんな形にするか頭の中で模索しながら、倒木でマグを切り抜く。


ちょうど良い大きさに。

両手で持てる取手。

パッキンがないので蓋はできないから、コップの口半分をマグの口に作る。

半分は飲み物を注げるように開けておく。

マグを倒しすぎると中身が溢れちゃうけど、そばにいれば良いし、クリーン魔法で一瞬で綺麗になるから大丈夫だ。

これなら水分補給ができる。

そんで、ヤギミルクでも収納魔法に入れておけばいいよね。

完成!

このマグも商業ギルドに持っていこう。


商業ギルド用にまたいくつか作る。
さっきは考えながら作ったから時間がかかったけど、次からはあっという間に出来上がっていった。


授乳の後、また東へ行くつもりがマグの製作に集中してしまったので、採取の時間が微妙になったので今日はもうやめることにした。

そのかわり、商業ギルドへ売り込みに行ったよ。
1番最初の商品販売も、ある程度数が揃ったから、そろそろ店頭に出すということを聞いた。
発売日は後日連絡してくれるって。



それからは、マグとヤギミルクを持って東へ1日採取に行って、買取額がいつもの2.5倍になり、まともに稼げるようになったかなと、充実した日々を送っていたんだけど・・・・・・

ある日、いつものようにギルドで買い取りをお願いしている時に、ちょっと騒がしくなって、振り向いたら、兄ズたちだった。

レオが上腕を抑えながらギルドに入ってきた。
抑えてるところは包帯が巻かれて血で真っ赤になり、止血ができていないようだった。

「これくらい自然治癒でいいんだって!」

「せめて低級ポーションは使えよ!」

「にーちゃん・・・・・・」

どうやら怪我をしてポーションを使わずに治したいらしいレオ。

いつもなら低級ポーションは使うのに、なぜ今回は頑なに使わないと言っているのだろうか。

せめて止血できてから自然治癒にすると言ってくれ。

まだピークを迎えていない時間だけどザワザワするギルド。
スタッフさんもみんなで説得しているが駄々をこねてる。
ギルマスも出てきそうな雰囲気である。

もう誰かポーションぶっかけちまえよ!って思うところだが、本人の意思がないと使ってはいけないと言われているのだ。

みんなの説得もきかない・・・・・・一体レオはどうしちゃったのか?
うん?
ユーリが事情を知っていそうな悲痛な顔をしている。

あとでゆっくり事情聴取だ。


私はこの場を収めるべく兄ズの元へ行った。

偉そうに片手を腰にあて、兄ズのパテメンを指さした。

「あなた!このギルドで1番度数の高い酒をコップ一杯もらってきて!」

幼い5才児が急に偉そうに人を指差して叫ぶので、周りは圧倒されて周囲も静かになった。
指示されたパテメンは急いで走っていった。

「床に座らせて、腕を椅子に乗せて!」

「お、おう」

何が始まるのかわからないまま動いてくれるスタッフさんたち。

私は収納魔法に入れていた糸と針を出して、みんなに見えないように隠しながら針を釣り針のように魔法で曲げた。

「酒だ!」

「ありがと!」

コップを持っただけでアルコール臭がすごい。

包帯を解いて、傷の上あたりでキツく縛ってもらうと、少し出血が弱まった。

そして躊躇いなく傷に酒をかけた。

「うわぁああああああ!」

指示しなくてもみんなが気をきかせて暴れるレオを抑えてくれていた。

「ポーション使わないんでしょ。これくらい我慢してね」

それからクリーン魔法でさらに除菌して、いざ!

糸を通した釣り針、いや、縫い針で寸分の狂いも迷いもなく傷口を縫っていく。
サクサクチクチク縫っていく。

かわいい悲鳴が聞こえた気がした。
誰かが倒れたかも。

レオはわーわー叫んでいる。
男なら堪えろよ。

心がないからこそ迷いなく恐れることなくチクチクできる・・・・・・

前世の私だったら泣いてただろうな。

周囲は私を、エラを、化け物だと思っているだろうか。

まあ、どうでもいいけど。


傷口の端から端まで縫い終わり、未だ完璧ではないヒールも数回かけてやって、やっと完全に止血できた。

包帯も解いて全部クリーン。
血で汚れた包帯も服も、床や手を貸してくれたみんなの汚れも綺麗さっぱり。

綺麗な布を押し当てて丁寧に包帯を巻いて、三角巾で腕を吊って終了。

コップに残ったお酒はいつの間にか来ていたギルマスに進呈した。

「レオに飲ませたら良いのに」

痛みを誤魔化すために飲酒する人が多いようだけど、飲酒は血液循環が良くなってさらに出血しちゃうからね。
ダメですよ。

大量出血と過ぎ去った痛みにほっとしてか、ぐったりした様子で静かにボーとしたレオ。
周囲の人も力が抜けたのか、緊急オペ室となっていたギルドに拍手が。
不思議な一体感に包まれていた。


その後、ギルマスにこっそり金貨を渡して、お酒の支払いと、ギルド内にいたみんなに一杯奢るようにお願いして、私たちは帰ることにした。

カートには、ルドと荷物置き場の仕切りを外して、ルドとレオを寝かせて運んだ。
ルドがいつも乗らない人が乗ってきて何やら嬉しかったのかキャッキャ喜び、レオの青い顔をペシペシ容赦なく叩いていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

処理中です...