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気の強い女は好きですか?

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耳強化での情報収集は毎日欠かせない。

こないだ、貧民街に集団がやってきたらしい。
大人の男性5人くらい。
犯罪の匂いがぷんぷんするよ。
貧民街は犯罪者の寝床だからね。

そんでもって、遠くから強化した目で彼らの顔を確認した時だった。
奴らは値踏みをするような目つきで幼女を見てた。
立ち止まって、それはそれはじっくりと。

子どもと女性の失踪は特に多い。
子どもを含めた誰かの葬儀は毎月あるし、借金や犯罪からの奴隷落ちや親に売られた子どもの話も多い。
犯罪に加担している子ども、利用されている子ども、自ら犯罪を犯している子どもも多い。

どこかで泣いている人がいても証拠がないので、この人が犯人ですなんて言えない。

とにかく自分の身は自分で守れ、が基本。
私が5才で冒険者登録するようお願いした時も、耳にタコができるくらい兄ズに言われたっけ。
明るいうちに帰宅して、絶対にひとりにならないって。

あとは自衛のためにサーチ魔法で、人物も感知できないかやってみようと思う。
きっと防犯にもなるだろう。

人物サーチを訓練しながら薬草採取へ行く。
午後から採取の私は、他の子どもが採取し残したところを取り尽くさないように、満遍なく少しずつ採取。
周りの子どもの位置を確認しつつ、人物サーチしてみるとなんとなくコツが掴めたような気がした。

子どもを見ていたら気づいた。
みんな小さいナイフを持っている。
ナイフ?短剣?
どこで手に入れたんだろう?
私は素手だ。
汚れはすぐにクリーンするから問題ないけど、ナイフがあれば5才児の手が痛むことはないだろう。

あ、ナイフはダメなんだよ。
ナイフだと違う薬草を切り取るときに、他の薬草の成分が悪さしてしまって買取額が下がってしまうって聞いて、ずっと手で採取してたんだっけ。

忘れてた。
ナイフはだめだめ。

っていうか
風魔法使えばいいじゃんか。

ナイフじゃなければ魔法でいいよね。
気づくの遅すぎ。
手が汚れない、痛まない、しかも早いだろうな。

そんなことを考えていたら人物サーチで近寄ってくる人を感じた。
この辺の女の子を取りまとめているリーダー的存在の女の子だ。

「ちょっとあんた!」

私の前で両腕を組んで偉そうに立っている。
なんで怒っているんだろうか。

「あんたが来てから薬草が少なくなって稼ぎが減ったよ!こっちに来ないでくれる?」

「・・・・・・」

さてどうするか。
言われた通りここへは二度と来なくてもいっか?

「ガン飛ばしてんじゃねーよ!何とか言えよ!」

考えてただけでガン飛ばしてません。
女の子なんだからそんな言葉使っちゃダメだよ。

「こいつ、ビビってんじゃん?」
「もしかしてちびってるとか?」

取り巻きがわらわらと集まってきた。
縄張りとかあるんすか?
ギルドのねーちゃんに確認してみないとな。
つか、もうそろそろ図書館の本読み終わるし、明日から行きたかった東へ行こうか。
残りの本は採取の後とか天気の悪い日に読もう。

「帰れよ!」

取り巻きの誰かが私の肩を強く押してきて、5才児の体はいとも容易く後ろへ倒れて尻もちついた。
咄嗟に出した手のひらが擦りむけてしまった。
痛い。

冒険者同士の喧嘩は処罰されるのを知らないのかな?

前世の私なら子どものやることだからと許してしまっていたけど、今の私は違う。
優しいわけでも厳しいわけでもない。
感情が湧かない人間なんで。
異世界とは厳しい世界なのだと子どものうちからしっかり教えてやらねば。

「もう帰る。ここにも二度とこない。私はエラ。あなたの名前は?」

ここで名乗る馬鹿はいないが、相手はお子様だ。

「ふん、やっとわかったんだね。私はマリーだよ。覚えときな!」

はい、マリーさん。しっかり覚えましたよー。

私は汚れたであろうお尻を払いもせずにそのままでギルドに戻った。
受付のお姉さんに、汚れたままのお尻と手のひらをみせて一部始終を説明すると、代わりに謝罪し出した。

「マリーのお兄さんがゴブリンを討伐するようになってね、ゴブリンのナイフを戦利品だって持ち帰ってきたのを、あの子たちが採取に使ってるのよ。汚れたナイフで採取した薬草は質が悪くなるし、別の種類の薬草が変に作用してしまうから買取額が減るって説明したんだけど・・・・・・それに、縄張りなんて存在しないわ。根こそぎ取らなければ誰がどこで採取したっていいのよ」

そうだよねーと思いながら相槌をうつ。

「マリーたちは冒険者登録しているから、今回は冒険者同士の喧嘩となり、処罰されるわ。ギルド側としては双方の話を聞かなくちゃいけないし、やってないって言い張ったら第三者が見ていなかったか調査もしなくちゃいけないのよ。だからすぐには結論を出せないんだけど、いいかな?」

「はい、もちろん。今日はお兄ちゃんと帰るから、図書館で待ってるって伝言お願いしていい?」

「うん、わかった。本当にごめんね。結果が決まったらちゃんと伝えるからね」

というわけで、少ない薬草を買い取ってもらって、図書館で読書をして待つことにした。

読書してるふりして人物サーチの訓練だ。

集中してサーチの範囲を広げていく。
そう、いちゃもんつけられたあの場所まで。
膨大な魔力量で無理やりサーチ。

これまで他人を気にすることがなかったけど、人物鑑定も常にやるようにもした方がいいな。
貧民街は危険なところだし。

「わからない言葉があったかな?」

しばらくページを捲らないでいたら、親切な図書委員さんに声をかけられた。

「ううん、考え事してただけなんだ」
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