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商業ギルドにて②
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遠慮なくいただきました。
静かに音を立てないように注意しながら。
もっと食べたかったけど、小さな体ではすぐにお腹いっぱいになってしまった。
ナイフとフォークを刃先を左に向けて揃えて静かに置いた。
目の前の彼はきっと驚いている。
顔には出してないけど、驚いているはずだ。
貧民街の5才児が礼儀正しくて、言葉遣いも食事のマナーも完璧ではないけどここまでできるなんて、あり得ないからね。
素敵な笑顔で食事中の彼の視線は、ずっと私をみていた。
彼も食事を終えるとあっという間にテーブルの上が片付けられる。
さすがだなぁ。
「ふむ、君は一体何者なのかな?まさか本当に妖精のチェンジリングかい?そうとしか考えられない。貴族の5才でも王族の5才でもここまで出来ない。ふふふ、私にどんな悪戯をしにきたのかな?妖精さん?」
私が5才だなんて言っていない。
それなのに知っていると言うことは、貧民街に妖精がいるという噂を知っていたのか、昨日のおんぶ紐の話を聞いた時点で全て調べ上げたのか、もしくはどちらも、なのかな。
先日母親が亡くなったこともきっと知っているだろうな。
「いいえ、悪戯ではなく、契約をお願いしにきました」
この世界に生まれてからルドの育児を始めるまで使わなかった表情筋を使って笑顔を作る。
「妖精さんと契約か。それは慎重に決めないといけないね。どんな契約かな?」
食後の紅茶をいただきながら話をすすめる。
「私のアイデアを商品化して、売上の一部をください。売上の何%にするかはそちらにお任せする代わりに、発案者が私であることを秘匿してください」
要点だけを言ってバッグからおもちゃを出してテーブルに並べていく。左から右へ。
右端まできたらおもちゃを出すふりをして出すのを止める。
まだあるよってところを思わせるためだ。
「ふふふ、妖精さんのバッグはとても魅力的だね」
左から
けん玉
積み木
輪投げ
五目並べ
3×3まるばつゲーム
の5個を出した。
左から説明していく。
「これは剣と玉で、けん玉です。このようにして遊びます」
また魔法を使って一発で成功させる。
「さすが妖精さん、魔法もお手のものだね。けん玉、それかな?今朝門番に見せていたのは」
「あ!そうです、このけん玉とカートは私が作ったと門で言ってしまいました」
秘匿できないじゃん。
ミスったー!
「その辺りは私の方でなんとかしよう。カートについても次回見せてほしいな」
「はい、ありがとうございます」
良かった。
秘匿、なんとかお願いしまーす。
次いこ、次。
「こちらは積み木といって、組み合わせて形をつくる子どものおもちゃです。こうしておうちを作ったり、動物の形を作ったりします」
次は輪投げ。
棒を部屋の端に持っていき、離れたところから輪を投げて、魔法で一発で入れる。
テーブルの物全ての説明が終わって、まだ時間に余裕があるのかギルドマスターが実際におもちゃに触ってみる。
「これは誰が作ったんだい?」
「すべて私が作りました」
ここで仮面のように張り付いていた彼の笑顔が一瞬固まった。
兄に作ってもらったとでも思っていたのだろう。
彼は気を取り直してけん玉を振り、魔法を使って玉の穴にさした。
「説明不足で申し訳ありません。けん玉は子どものおもちゃです。魔法を使ってはいけません」
お前は魔法を使ったではないか!と言いたげな目を向けられたが、魔法を使わずに再度けん玉を始めた。
今度は成功しなかった。
ムキになって何度か繰り返していたギルドマスター。
時間大丈夫かな?
剣術に触れた経験がある人にとっても、けん玉は良いおもちゃになりそうだった。
赤ちゃん向け、子ども向け、全年齢向けのおもちゃを一通り堪能して彼が腰を落ち着けると、給仕係のお兄さんが書類を持ってきた。
あれ、給仕係じゃなかったみたい。
側近か。
書類はいつの間にか完成されていて、あとはサインだけになっていた。
お兄さんとギルマスが話し合っていた様子はなかったのに。
これが貴族なのか。
主人の意を読み取って指示される前に仕事をこなす。
優秀通り越してエスパーなのかと思う。
「あいにく時間がないのでね、このように契約書を作らせたよ。私のマグノリア商会との契約になる。読めるかな?」
しまった。
文字の勉強はまだしてなかった。
でも大丈夫だろう。
耳強化で情報収集した限りでは、彼は信用できる貴族。
信じよう。
一応指差ししながら読み上げてもらい、私がお願いした内容に相違なかったので承諾した。
文字が読めなければ書けるはずもないので、サインは血判だ。
あいたたた
最後にギルドカードを渡すと、商業ギルド共有化して返ってきた。
売上の振込はこのギルドカードに月末に入れられるそうだ。
「商品化するためにこれらは見本として納めるように。そのおんぶ紐とカートについても後日で構わないから、ひとつずつ納めてね。売れ行きをみてそのバッグにまだ入っているおもちゃも是非売りに出そう。いつか見せてね」
最後に握手をして彼は退室していった。
優秀な信用できる貴族と契約できて良かった。
商品を生産して販売、売上がでるまでふた月だろうか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読んでくださってありがとうございます^_^
お気に入り&しおり、とても嬉しいです。
しっかり完結させるよう頑張ります。
静かに音を立てないように注意しながら。
もっと食べたかったけど、小さな体ではすぐにお腹いっぱいになってしまった。
ナイフとフォークを刃先を左に向けて揃えて静かに置いた。
目の前の彼はきっと驚いている。
顔には出してないけど、驚いているはずだ。
貧民街の5才児が礼儀正しくて、言葉遣いも食事のマナーも完璧ではないけどここまでできるなんて、あり得ないからね。
素敵な笑顔で食事中の彼の視線は、ずっと私をみていた。
彼も食事を終えるとあっという間にテーブルの上が片付けられる。
さすがだなぁ。
「ふむ、君は一体何者なのかな?まさか本当に妖精のチェンジリングかい?そうとしか考えられない。貴族の5才でも王族の5才でもここまで出来ない。ふふふ、私にどんな悪戯をしにきたのかな?妖精さん?」
私が5才だなんて言っていない。
それなのに知っていると言うことは、貧民街に妖精がいるという噂を知っていたのか、昨日のおんぶ紐の話を聞いた時点で全て調べ上げたのか、もしくはどちらも、なのかな。
先日母親が亡くなったこともきっと知っているだろうな。
「いいえ、悪戯ではなく、契約をお願いしにきました」
この世界に生まれてからルドの育児を始めるまで使わなかった表情筋を使って笑顔を作る。
「妖精さんと契約か。それは慎重に決めないといけないね。どんな契約かな?」
食後の紅茶をいただきながら話をすすめる。
「私のアイデアを商品化して、売上の一部をください。売上の何%にするかはそちらにお任せする代わりに、発案者が私であることを秘匿してください」
要点だけを言ってバッグからおもちゃを出してテーブルに並べていく。左から右へ。
右端まできたらおもちゃを出すふりをして出すのを止める。
まだあるよってところを思わせるためだ。
「ふふふ、妖精さんのバッグはとても魅力的だね」
左から
けん玉
積み木
輪投げ
五目並べ
3×3まるばつゲーム
の5個を出した。
左から説明していく。
「これは剣と玉で、けん玉です。このようにして遊びます」
また魔法を使って一発で成功させる。
「さすが妖精さん、魔法もお手のものだね。けん玉、それかな?今朝門番に見せていたのは」
「あ!そうです、このけん玉とカートは私が作ったと門で言ってしまいました」
秘匿できないじゃん。
ミスったー!
「その辺りは私の方でなんとかしよう。カートについても次回見せてほしいな」
「はい、ありがとうございます」
良かった。
秘匿、なんとかお願いしまーす。
次いこ、次。
「こちらは積み木といって、組み合わせて形をつくる子どものおもちゃです。こうしておうちを作ったり、動物の形を作ったりします」
次は輪投げ。
棒を部屋の端に持っていき、離れたところから輪を投げて、魔法で一発で入れる。
テーブルの物全ての説明が終わって、まだ時間に余裕があるのかギルドマスターが実際におもちゃに触ってみる。
「これは誰が作ったんだい?」
「すべて私が作りました」
ここで仮面のように張り付いていた彼の笑顔が一瞬固まった。
兄に作ってもらったとでも思っていたのだろう。
彼は気を取り直してけん玉を振り、魔法を使って玉の穴にさした。
「説明不足で申し訳ありません。けん玉は子どものおもちゃです。魔法を使ってはいけません」
お前は魔法を使ったではないか!と言いたげな目を向けられたが、魔法を使わずに再度けん玉を始めた。
今度は成功しなかった。
ムキになって何度か繰り返していたギルドマスター。
時間大丈夫かな?
剣術に触れた経験がある人にとっても、けん玉は良いおもちゃになりそうだった。
赤ちゃん向け、子ども向け、全年齢向けのおもちゃを一通り堪能して彼が腰を落ち着けると、給仕係のお兄さんが書類を持ってきた。
あれ、給仕係じゃなかったみたい。
側近か。
書類はいつの間にか完成されていて、あとはサインだけになっていた。
お兄さんとギルマスが話し合っていた様子はなかったのに。
これが貴族なのか。
主人の意を読み取って指示される前に仕事をこなす。
優秀通り越してエスパーなのかと思う。
「あいにく時間がないのでね、このように契約書を作らせたよ。私のマグノリア商会との契約になる。読めるかな?」
しまった。
文字の勉強はまだしてなかった。
でも大丈夫だろう。
耳強化で情報収集した限りでは、彼は信用できる貴族。
信じよう。
一応指差ししながら読み上げてもらい、私がお願いした内容に相違なかったので承諾した。
文字が読めなければ書けるはずもないので、サインは血判だ。
あいたたた
最後にギルドカードを渡すと、商業ギルド共有化して返ってきた。
売上の振込はこのギルドカードに月末に入れられるそうだ。
「商品化するためにこれらは見本として納めるように。そのおんぶ紐とカートについても後日で構わないから、ひとつずつ納めてね。売れ行きをみてそのバッグにまだ入っているおもちゃも是非売りに出そう。いつか見せてね」
最後に握手をして彼は退室していった。
優秀な信用できる貴族と契約できて良かった。
商品を生産して販売、売上がでるまでふた月だろうか?
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読んでくださってありがとうございます^_^
お気に入り&しおり、とても嬉しいです。
しっかり完結させるよう頑張ります。
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