9 / 39
商業ギルドにて①
しおりを挟む
昨夜作った木のおもちゃを収納魔法で持ち運んでいる。
商業ギルドに行くからだ。
朝イチで商業ギルドへ行って午後商談お願いしますと受付のお姉さんに言ってきた。
もちろんギルドマスターとの面談で。
言ってきたっていうけど、返事はもらっていない。
相手にされないだろうと思って言うだけ言ってすぐ回れ右して出てきたんだ。
今日のギルマスの午後の予定は耳強化で把握済み。
昼食後すぐのほんの短い時間だけ手が空いていると。
つまりそれは、彼の休憩時間。
一応アポ取らないとダメかなと思って伝言頼んでみたけど、子ども相手にまともに対応してくれるのか、わからない。
薬草採取を切りのいいところでいつもより早めに終わりにする。
カートの中のルドはおとなしくおもちゃをにぎにぎむしゃむしゃしていた。
よし。
良い子には治癒魔法をもっとかけてあげよう。
カートはなかなか使い勝手が良かった。
薬草の買取りをしてもらってから母乳をもらいに行って、いざ、商業ギルドへ。
ちょうど立ち上がった今朝のお姉さんを捕まえることができた。
「今朝ギルドマスターへ伝言をお願いしましたエラと申します。ほんの少しで構いません、ギルドマスターとお話させてください」
お姉さんはこれから休憩に入るところだったらしい。
一瞬イヤな顔していた。
「んー、ちょっと待っててね」
子どもを追い払うか、丁寧な対応をすべきか少し逡巡していたようだったが、おんぶ紐を見て一度ギルマスに掛け合ってくれるようだ。
そう、今はルドをおんぶしている。
昨日は長時間おんぶして歩く体力がないことがわかったんだけど、魔法でルドを軽くすればいいことに気付いたんだよね。
耳強化で私は知っている。
昨日このおんぶ紐を見た人の話が、この商業ギルドの人間の耳にも入って、興味を持ったということを。
お姉さんが戻ってきて、応接室に通された。
「お会いしてくださるって。良かったね」
優しいお姉さんだった。
お礼を言ってソファに静かに座って待つ。
耳強化でギルマスの情報はすでに得ている。
だがここで1番大事なのは、子ども相手に契約を交わしてくれるかどうかだ。
いくら前世おばあちゃんの私といえども貴族相手に交渉ができるような頭のいい人間ではなかったので、慎重に話をしなければならない。
この5才児を囲った方がいいと思わせる。
でも攫うのは得策ではない、とも。
ガチャ
ドアが開いた音がしたのでソファから立ち上がる。
「待たせたね。今日は昼の時間しか開けられないんだ。食事しながらでいいかい?」
そう言いながら入室してきた紳士は素敵な英国紳士風だった。
さすが貴族、顔がいい。
前世の面食いの私だったらときめいていたと思う。
返事を待たずに給仕係がテーブルに食事を並べていった。
「はい、どうぞ。お忙しい中、貴重な休憩時間をいただいてしまって申し訳ありません。初めまして、エラと申します。よろしくお願いします」
「初めまして、エラ。私が商業ギルドマスターのサミュエル・フォーディアンだ。エラも一緒に食事しよう」
素敵な笑顔でそう言うと給仕係に耳打ちする。
あれよあれよと私のカトラリーセットが目の前に並べられた。
いきなり貴族と食事ですか。
「おんぶしているのは君の弟さんかな?」
「はい、弟のルドです。生後6ヶ月です」
「弟さんは大人しいね。人見知りしなければメイドに預けてもいいかな?」
それはありがたい。
おんぶしながらだと食事しずらいからね。
ゆっくりおろすとルドは寝ていた。
寝る子は育つ!
お姉ちゃん想いの良い弟だ。
余っているソファの端に寝かせてもらうことに。
メイドさんが肌掛けをかけてくれた。
「さあ、まずは食事にしよう。好きなだけどうぞ」
ギルマスは絶やさぬ笑顔でカトラリーを手にして食事を始めた。
「ありがとうございます。いただきます」
ここは子どもらしく遠慮しないでいただくことに。
マナーはちょっと自信ないよ。外側から使えば良いんだよね?
いやでも、テーブルに並べられているものを子どもの私にどうしろというのだ。
困った時のどれにしようかな作戦。
どれも美味しそうだなウフフフフという顔をしてテーブル全体を見渡す。
すると、給仕のお兄さんが適当に選んでお皿をくれたよ。
ありがとう。
次は子どもサイズのスープが置かれた。
またまたありがとう。
大丈夫、スープ用のスプーンはわかるよ。
窪みの深いやつね!
ああこれは!
この世界で初めて美味しいポタージュスープをいただきました。
なんとも久しぶりで懐かしい。
柔らかいパンも、ジューシーなステーキも、フレッシュなサラダも、体や脳みそが喜んでいるような、そんな気がした。
何しにきたのかちょっと忘れそうになっちゃった。
商業ギルドに行くからだ。
朝イチで商業ギルドへ行って午後商談お願いしますと受付のお姉さんに言ってきた。
もちろんギルドマスターとの面談で。
言ってきたっていうけど、返事はもらっていない。
相手にされないだろうと思って言うだけ言ってすぐ回れ右して出てきたんだ。
今日のギルマスの午後の予定は耳強化で把握済み。
昼食後すぐのほんの短い時間だけ手が空いていると。
つまりそれは、彼の休憩時間。
一応アポ取らないとダメかなと思って伝言頼んでみたけど、子ども相手にまともに対応してくれるのか、わからない。
薬草採取を切りのいいところでいつもより早めに終わりにする。
カートの中のルドはおとなしくおもちゃをにぎにぎむしゃむしゃしていた。
よし。
良い子には治癒魔法をもっとかけてあげよう。
カートはなかなか使い勝手が良かった。
薬草の買取りをしてもらってから母乳をもらいに行って、いざ、商業ギルドへ。
ちょうど立ち上がった今朝のお姉さんを捕まえることができた。
「今朝ギルドマスターへ伝言をお願いしましたエラと申します。ほんの少しで構いません、ギルドマスターとお話させてください」
お姉さんはこれから休憩に入るところだったらしい。
一瞬イヤな顔していた。
「んー、ちょっと待っててね」
子どもを追い払うか、丁寧な対応をすべきか少し逡巡していたようだったが、おんぶ紐を見て一度ギルマスに掛け合ってくれるようだ。
そう、今はルドをおんぶしている。
昨日は長時間おんぶして歩く体力がないことがわかったんだけど、魔法でルドを軽くすればいいことに気付いたんだよね。
耳強化で私は知っている。
昨日このおんぶ紐を見た人の話が、この商業ギルドの人間の耳にも入って、興味を持ったということを。
お姉さんが戻ってきて、応接室に通された。
「お会いしてくださるって。良かったね」
優しいお姉さんだった。
お礼を言ってソファに静かに座って待つ。
耳強化でギルマスの情報はすでに得ている。
だがここで1番大事なのは、子ども相手に契約を交わしてくれるかどうかだ。
いくら前世おばあちゃんの私といえども貴族相手に交渉ができるような頭のいい人間ではなかったので、慎重に話をしなければならない。
この5才児を囲った方がいいと思わせる。
でも攫うのは得策ではない、とも。
ガチャ
ドアが開いた音がしたのでソファから立ち上がる。
「待たせたね。今日は昼の時間しか開けられないんだ。食事しながらでいいかい?」
そう言いながら入室してきた紳士は素敵な英国紳士風だった。
さすが貴族、顔がいい。
前世の面食いの私だったらときめいていたと思う。
返事を待たずに給仕係がテーブルに食事を並べていった。
「はい、どうぞ。お忙しい中、貴重な休憩時間をいただいてしまって申し訳ありません。初めまして、エラと申します。よろしくお願いします」
「初めまして、エラ。私が商業ギルドマスターのサミュエル・フォーディアンだ。エラも一緒に食事しよう」
素敵な笑顔でそう言うと給仕係に耳打ちする。
あれよあれよと私のカトラリーセットが目の前に並べられた。
いきなり貴族と食事ですか。
「おんぶしているのは君の弟さんかな?」
「はい、弟のルドです。生後6ヶ月です」
「弟さんは大人しいね。人見知りしなければメイドに預けてもいいかな?」
それはありがたい。
おんぶしながらだと食事しずらいからね。
ゆっくりおろすとルドは寝ていた。
寝る子は育つ!
お姉ちゃん想いの良い弟だ。
余っているソファの端に寝かせてもらうことに。
メイドさんが肌掛けをかけてくれた。
「さあ、まずは食事にしよう。好きなだけどうぞ」
ギルマスは絶やさぬ笑顔でカトラリーを手にして食事を始めた。
「ありがとうございます。いただきます」
ここは子どもらしく遠慮しないでいただくことに。
マナーはちょっと自信ないよ。外側から使えば良いんだよね?
いやでも、テーブルに並べられているものを子どもの私にどうしろというのだ。
困った時のどれにしようかな作戦。
どれも美味しそうだなウフフフフという顔をしてテーブル全体を見渡す。
すると、給仕のお兄さんが適当に選んでお皿をくれたよ。
ありがとう。
次は子どもサイズのスープが置かれた。
またまたありがとう。
大丈夫、スープ用のスプーンはわかるよ。
窪みの深いやつね!
ああこれは!
この世界で初めて美味しいポタージュスープをいただきました。
なんとも久しぶりで懐かしい。
柔らかいパンも、ジューシーなステーキも、フレッシュなサラダも、体や脳みそが喜んでいるような、そんな気がした。
何しにきたのかちょっと忘れそうになっちゃった。
70
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる