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弟の名前
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いつの間にか弟は寝ていた。
私たちは空腹でお腹を鳴らしていた。
家探しのあと貧民街のボスに連絡すると、警備兵が来てヘンリーと名乗った。
兵士なだけあってガタイが大きく、強そうだった。
兄が言っていた通りに家宅捜査や近所への聞き込みをして、母の自死の確定をボスと私たちに告げ、ちょっと開けた場所で数名の警備兵が魔法で遺体を火葬し始めた。
アンデッド化防止のために骨も残さず焼くのだそうだ。
遺髪を残すか訊かれたが断った。
ヘンリーは私たちを心配して孤児院を紹介してくれた。
初めて他人から優しさを感じた。
でもやっぱり孤児院はお断りした。
母が居なくてもあまり生活が変わらないし、弟も自分らと同じ境遇だから見捨てることはできないと。
3人で協力して育てようと話し合って決めた。
でも多分兄ズは、喜怒哀楽がない私の心を揺さぶるための存在として弟を手元に残したんだと思う。
いつか、笑ってくれると信じてくれている。
こんな妹思いの兄たちが居てくれて良かった。
私たち兄弟はきっと幸せになれるだろう。
でも……
この世界での幸せって、一体なんだろうか。
もうすぐ火葬が終わると聞いて、お心付けを渡さねば!とピンときた。
タダより高いものはない。
「お兄ちゃん、警備兵のみなさんにこれを渡したらどうかな?」
ポケットに手を隠して、収納魔法で宝石を取り出す。へそくりアクセサリーに付いていた宝石をいくつか取ってみた。盗品ではない物で。
それで兄も理解したようだった。
「ヘンリーさん、これで足りるか?」
「これは?」
心配そうに訊いてくる。
「父が母に贈っていたものが少しあったんだ。母のために、受け取ってもらえないだろうか?」
私たちの母のために、と兄が言った。
「幼い君たちから受け取るつもりはなかったが……わかった、受け取ろう。君たちの母君のご冥福を祈ろう」
ヘンリーさんが受け取ってくれて、他の火葬してくれた警備兵たちも受け取ってくれた。
そして最後に母を荼毘に付した地へ向かって祈り始めると、そこを中心にいくつもの小さな光が蛍のように舞った。
あれはお心付けをした時にやってくれる鎮魂の祈りという魔法だそうだ。
母だけでなく、あのあたりに彷徨っていた可哀そうな魂も一緒に浄化してくれたのだと。
なんとなく、空気が軽くなった気がするのは浄化のお陰だろうね。
ついでに家の中も浄化してキレイにしてくれたヘンリーさん。
「何か困ったことがあったらいつでも訪ねてきてくれ。元気でな」
そう言って去っていった。
そのあと私たちはボスに挨拶をしに行き、ボスにもお心付けを渡した。
あのへそくりの魔石だ。
中くらいの大きさといっても貧民街に住む人にとってはとても高価なもの。
何かの魔獣の戦利品でもある。
しばらく飾ってから売ったり魔道具に使用したりするだろう。
ボスは喜んでいた。
「あと、金目のものはこれしかなかったよ、おじさん」
追加で盗品ではないアクセサリーも渡した。
「手間賃を払わなかったらお前たちを奴隷にしようと思ってたんだがな。これならいいだろう。魔石には魔力も込められているようだ。今後もあそこに住むことを許可する」
奴隷にされるところだった。
危なかった……
その日の夕飯は、近所の人が少し食べ物を分けてくれた。
ありがとう。
夕飯をいただきながら明日からのことを話し合う。
弟の授乳はどうしたらいいか。
もう6カ月だからそろそろ離乳食だし。
近所に授乳中の人がいるから相談してみることになった。
「ところで兄さんたち……弟の名前知ってる?」
「「え?」」
一瞬、時が止まった。
私たちは空腹でお腹を鳴らしていた。
家探しのあと貧民街のボスに連絡すると、警備兵が来てヘンリーと名乗った。
兵士なだけあってガタイが大きく、強そうだった。
兄が言っていた通りに家宅捜査や近所への聞き込みをして、母の自死の確定をボスと私たちに告げ、ちょっと開けた場所で数名の警備兵が魔法で遺体を火葬し始めた。
アンデッド化防止のために骨も残さず焼くのだそうだ。
遺髪を残すか訊かれたが断った。
ヘンリーは私たちを心配して孤児院を紹介してくれた。
初めて他人から優しさを感じた。
でもやっぱり孤児院はお断りした。
母が居なくてもあまり生活が変わらないし、弟も自分らと同じ境遇だから見捨てることはできないと。
3人で協力して育てようと話し合って決めた。
でも多分兄ズは、喜怒哀楽がない私の心を揺さぶるための存在として弟を手元に残したんだと思う。
いつか、笑ってくれると信じてくれている。
こんな妹思いの兄たちが居てくれて良かった。
私たち兄弟はきっと幸せになれるだろう。
でも……
この世界での幸せって、一体なんだろうか。
もうすぐ火葬が終わると聞いて、お心付けを渡さねば!とピンときた。
タダより高いものはない。
「お兄ちゃん、警備兵のみなさんにこれを渡したらどうかな?」
ポケットに手を隠して、収納魔法で宝石を取り出す。へそくりアクセサリーに付いていた宝石をいくつか取ってみた。盗品ではない物で。
それで兄も理解したようだった。
「ヘンリーさん、これで足りるか?」
「これは?」
心配そうに訊いてくる。
「父が母に贈っていたものが少しあったんだ。母のために、受け取ってもらえないだろうか?」
私たちの母のために、と兄が言った。
「幼い君たちから受け取るつもりはなかったが……わかった、受け取ろう。君たちの母君のご冥福を祈ろう」
ヘンリーさんが受け取ってくれて、他の火葬してくれた警備兵たちも受け取ってくれた。
そして最後に母を荼毘に付した地へ向かって祈り始めると、そこを中心にいくつもの小さな光が蛍のように舞った。
あれはお心付けをした時にやってくれる鎮魂の祈りという魔法だそうだ。
母だけでなく、あのあたりに彷徨っていた可哀そうな魂も一緒に浄化してくれたのだと。
なんとなく、空気が軽くなった気がするのは浄化のお陰だろうね。
ついでに家の中も浄化してキレイにしてくれたヘンリーさん。
「何か困ったことがあったらいつでも訪ねてきてくれ。元気でな」
そう言って去っていった。
そのあと私たちはボスに挨拶をしに行き、ボスにもお心付けを渡した。
あのへそくりの魔石だ。
中くらいの大きさといっても貧民街に住む人にとってはとても高価なもの。
何かの魔獣の戦利品でもある。
しばらく飾ってから売ったり魔道具に使用したりするだろう。
ボスは喜んでいた。
「あと、金目のものはこれしかなかったよ、おじさん」
追加で盗品ではないアクセサリーも渡した。
「手間賃を払わなかったらお前たちを奴隷にしようと思ってたんだがな。これならいいだろう。魔石には魔力も込められているようだ。今後もあそこに住むことを許可する」
奴隷にされるところだった。
危なかった……
その日の夕飯は、近所の人が少し食べ物を分けてくれた。
ありがとう。
夕飯をいただきながら明日からのことを話し合う。
弟の授乳はどうしたらいいか。
もう6カ月だからそろそろ離乳食だし。
近所に授乳中の人がいるから相談してみることになった。
「ところで兄さんたち……弟の名前知ってる?」
「「え?」」
一瞬、時が止まった。
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