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いざ、王宮へ
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2日間、オレリアンはコンスタンスのベッドの傍らに椅子を置き、そこでずっと過ごした。
ずっと彼女の手を握り、頬を撫で、話しかけた。
エリアスたちが交代して横になるようにと言っても、オレリアンは断固として妻の側を離れなかった。
そして3日目の朝、オレリアンに握られているコンスタンスの右手の指が、微かに動いた。
「コニー?」
コンスタンスの目が、薄っすらと開かれる。
「コニー?ああ、気がついたんだね?」
オレリアンが妻の顔を覗きこむ。
コンスタンスはゆっくりとそちらに目を向け、オレリアンをその瞳に映した。
「良かった…。コニー、本当に良かった…」
オレリアンは両手でコンスタンスの右手を握り、その甲に自分の頬を寄せた。
「オレリアン…、様…?」
コンスタンスはオレリアンを見つめ、弱々しくも、はっきりとその名前を呼んだ。
たちまちオレリアンの瞳が喜びに見開かれる。
「コニー!俺がわかるんだね?」
それだけ言うと、胸がいっぱいで言葉が出ない。
目には熱いものが込み上げてきて、オレリアンはみっともないと思いながらも流れ出る涙を止められない。
侍医に、薬の副作用があるかもしれないと聞いた時から、覚悟はしていた。
すでに2回も夫としての存在を忘れられていたオレリアンは、またそういうことがあるかもしれないと。
だからたとえコンスタンスが自分の存在を忘れていても、どんな彼女でも、何歳の彼女でも、受け入れるつもりでいた。
でも、彼女はオレリアンを覚えていた。
彼女が自分の名前を口にした時、どうしようもなく嬉しかった。
自分の存在を認識してくれていたことが、途轍もなく嬉しかったのだ。
「オレリアン様…」
コンスタンスはもう一度はっきりとオレリアンを呼んだ。
そして、涙をこぼす夫を見上げ、安心させるように小さく笑った。
「ご心配をおかけして…、申し訳ありませんでした」
そう言うと、包帯の巻かれた自分の左手に視線を落とす。
オレリアンはその白い包帯にそっと触れ、
「痛かったね…」
と呟いた。
血だらけのコンスタンスを見た時は、一瞬意識が遠のいた。
もう、あんな思いは二度としたくない。
「ここは…、王宮ですか?
私はどのくらい眠っていたのでしょう?」
コンスタンスは部屋を見回し、オレリアンにたずねた。
「2日間だよ。
今、義母上も隣の部屋で休んでいらっしゃるから呼んでこよう。きっと喜ばれるよ」
オレリアンが立ち上がって妻の手を離そうとすると、コンスタンスは夫の手を離さず、そのままクイッと引いた。
「コニー?」
「オレリアン様」
妻が真剣な顔で見つめてくるから、オレリアンはもう一度傍らに腰を下ろした。
「どうした?」
再び妻の右手を両手で包みこみ、優しくたずねる。
コンスタンスはそんな夫を見上げ、意を決したように口を開いた。
「私…、全部、思い出したんです」
「…全部?」
「フィリップ殿下と婚約を解消したことも、オレリアン様と結婚したことも、結婚してすぐ、ヒース領に行っていたことも」
「そう…、か…」
オレリアンは目を見開き、言葉を失った。
とうとう、コンスタンスは全て思い出してしまった。
こんなに、突然に。
結婚以来オレリアンが彼女にしてきた冷たい仕打ちも、全て思い出してしまったのだ。
「私は…、あの日、あの場所で、事故に遭ったんですね。
そしてあれから、記憶を失っていた…」
「コニー、すまない、それは…」
全て、自分のせいだ。
そうオレリアンは言おうとした。
だが、コンスタンスは寂しそうに小さく笑った。
そして、呟いた。
「私、思い出したんです。
あの事故に遭う前、私は、貴方に離縁を申し出ていたんですね」
ずっと彼女の手を握り、頬を撫で、話しかけた。
エリアスたちが交代して横になるようにと言っても、オレリアンは断固として妻の側を離れなかった。
そして3日目の朝、オレリアンに握られているコンスタンスの右手の指が、微かに動いた。
「コニー?」
コンスタンスの目が、薄っすらと開かれる。
「コニー?ああ、気がついたんだね?」
オレリアンが妻の顔を覗きこむ。
コンスタンスはゆっくりとそちらに目を向け、オレリアンをその瞳に映した。
「良かった…。コニー、本当に良かった…」
オレリアンは両手でコンスタンスの右手を握り、その甲に自分の頬を寄せた。
「オレリアン…、様…?」
コンスタンスはオレリアンを見つめ、弱々しくも、はっきりとその名前を呼んだ。
たちまちオレリアンの瞳が喜びに見開かれる。
「コニー!俺がわかるんだね?」
それだけ言うと、胸がいっぱいで言葉が出ない。
目には熱いものが込み上げてきて、オレリアンはみっともないと思いながらも流れ出る涙を止められない。
侍医に、薬の副作用があるかもしれないと聞いた時から、覚悟はしていた。
すでに2回も夫としての存在を忘れられていたオレリアンは、またそういうことがあるかもしれないと。
だからたとえコンスタンスが自分の存在を忘れていても、どんな彼女でも、何歳の彼女でも、受け入れるつもりでいた。
でも、彼女はオレリアンを覚えていた。
彼女が自分の名前を口にした時、どうしようもなく嬉しかった。
自分の存在を認識してくれていたことが、途轍もなく嬉しかったのだ。
「オレリアン様…」
コンスタンスはもう一度はっきりとオレリアンを呼んだ。
そして、涙をこぼす夫を見上げ、安心させるように小さく笑った。
「ご心配をおかけして…、申し訳ありませんでした」
そう言うと、包帯の巻かれた自分の左手に視線を落とす。
オレリアンはその白い包帯にそっと触れ、
「痛かったね…」
と呟いた。
血だらけのコンスタンスを見た時は、一瞬意識が遠のいた。
もう、あんな思いは二度としたくない。
「ここは…、王宮ですか?
私はどのくらい眠っていたのでしょう?」
コンスタンスは部屋を見回し、オレリアンにたずねた。
「2日間だよ。
今、義母上も隣の部屋で休んでいらっしゃるから呼んでこよう。きっと喜ばれるよ」
オレリアンが立ち上がって妻の手を離そうとすると、コンスタンスは夫の手を離さず、そのままクイッと引いた。
「コニー?」
「オレリアン様」
妻が真剣な顔で見つめてくるから、オレリアンはもう一度傍らに腰を下ろした。
「どうした?」
再び妻の右手を両手で包みこみ、優しくたずねる。
コンスタンスはそんな夫を見上げ、意を決したように口を開いた。
「私…、全部、思い出したんです」
「…全部?」
「フィリップ殿下と婚約を解消したことも、オレリアン様と結婚したことも、結婚してすぐ、ヒース領に行っていたことも」
「そう…、か…」
オレリアンは目を見開き、言葉を失った。
とうとう、コンスタンスは全て思い出してしまった。
こんなに、突然に。
結婚以来オレリアンが彼女にしてきた冷たい仕打ちも、全て思い出してしまったのだ。
「私は…、あの日、あの場所で、事故に遭ったんですね。
そしてあれから、記憶を失っていた…」
「コニー、すまない、それは…」
全て、自分のせいだ。
そうオレリアンは言おうとした。
だが、コンスタンスは寂しそうに小さく笑った。
そして、呟いた。
「私、思い出したんです。
あの事故に遭う前、私は、貴方に離縁を申し出ていたんですね」
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