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16歳、やり直し
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さらに1ヶ月が過ぎた。
少し落ち着いて前を向けるようになってきたコンスタンスは、家族や使用人たちとも日常的に話すようになった。
いつまでも引きずっていても仕方がないと、最近では自分から王太子の話題を振ることもある。
皆平静を心がけているのか、気まずそうにはせずに答えてくれる。
そんなところにまで気を使ってもらっていたのかと、なんだか申し訳ないくらいだ。
とにかく、話によると王太子は隣国の王女と睦まじい様子をあちこちでアピールしているらしい。
「内情はわからないが、殿下も頑張っているんだろう」
とは、父の言である。
頑張っている…、か。
そう、フィリップだって、国の被害者だったのだ。
コンスタンスは自分ばかり悲しんでいると思っていたことに気づいて恥ずかしくなった。
ここは国民の1人として、王太子の成婚を喜ぶべきところなのに。
オレリアンとも、そろそろ会って先の話をしなくてはいけないと思う。
彼には「落ち着いたら連絡する」とエリアスを通して伝えてもらっていたが、それでも彼はコンスタンスに花を贈り続けてくる。
オレリアンとしては、自分の存在をコンスタンスに知ってもらっただけで、彼女から伝言があっただけで、嬉しかったのだ。
最近のコンスタンスの変化を見てとった兄エリアスは、ある日、久しぶりに外に出ないかと声をかけてきた。
たまには街に、買い物にでも行こうと。
コンスタンスは快諾した。
いつまでも引きこもっているわけにはいかない。
それに今は、両親や兄、使用人の気遣いが素直に嬉しいと思えた。
「お嬢様、こちらのドレスはいかがですか?」
主人の久しぶりの外出に喜んでいるのはリアだ。
あれだこれだと外出用のドレスを引っ張り出している。
「そうね。あら、こんなドレスあったかしら。あら、これも。
ああ、そうか、16歳以降に作ったのね」
コンスタンスが手にとったのは、オレリアンとの結婚が決まってから公爵家が作ったドレスだ。
「そうね、これにするわ」
コンスタンスが選んだのは、青いドレスだった。
「お飾りはどうされますか?」
「街に出かけるだけだから、最小限でいいわ」
コンスタンスは久しぶりに宝飾品の入った引き出しを開けた。
そして、ため息をついた。
コンスタンスは今までこの引き出しを開けるのを躊躇っていた。
想像していたことではあるが、今まで王太子に贈られたきたものが全く無かったからだ。
王太子に贈られたプレゼントは、婚約が解消された時にコンスタンス自身が処分していた。
宝石など高価なものは送り返し、それ以外のものは目につかない場所にしまいこんでいた。
もちろん今のコンスタンスにそんな記憶は無いが、自分ならそうするであろうと想像はしていた。
だから今ここにあるものは、両親や祖父母に贈られたものばかりのはずである。
(16歳の誕生日…、殿下は何をくださったのかしら)
何をもらったとしても、当然ここにはもう無いであろうが、それを思うとコンスタンスは切なくなった。
「…あら?これは見覚えのないブローチね」
コンスタンスが引き出しの中からブローチを1つ手に取った。
「これは…、何の石かしら。
宝石ではないようだけど。
まさか、殿下にいただいたものではないわよね?」
片付け忘れたということもあるかもしれないが、そもそも王太子に贈られるものは全て王家御用達の宝飾店で作らせたものである。
どう見ても安物のブローチが、王太子に贈られたものとは思えない。
それによく見れば他にも見慣れないブレスレットやネックレスがあり、どれも可愛らしくはあるが高価なものではないようだ。
「あ、それは…」
ブローチを見たリアが声をあげた。
だが、気まずそうにすぐに口を噤んだ。
「なあに?教えて、リア」
「それはその…、コニーお嬢様がお倒れになった日…、王太子殿下の成婚パレードの日に付けていらしたもので…」
「私が?」
「それは旦那様…、いえ、ヒース侯爵様がコニーお嬢様に贈られたものなのです」
「侯爵様が?誕生日などにかしら?」
「いえ、ヒース領でお2人は毎日のようにお出かけになっておりまして、お出かけになるたびに侯爵様はお嬢様に何かプレゼントされていました」
「そうなの」
コンスタンスは少し驚いたようだった。
2人で出かけていたことに対してだろうか。
それとも侯爵が妻に安物ばかり贈っていたことに対してだろうか。
リアはオレリアンが気の毒になった。
だから、少し付け加えてしまった。
「お嬢様…、お嬢様はとても侯爵様を慕っておいででした。
侯爵様の青い目が大好きだと…、だから特に、青い物をいただくととても喜ばれておりました」
「私が、侯爵様を慕っていた?」
俄かには信じられなかった。
コンスタンスが慕っていたのは、ずっとフィリップただ1人だったはずである。
少し落ち着いて前を向けるようになってきたコンスタンスは、家族や使用人たちとも日常的に話すようになった。
いつまでも引きずっていても仕方がないと、最近では自分から王太子の話題を振ることもある。
皆平静を心がけているのか、気まずそうにはせずに答えてくれる。
そんなところにまで気を使ってもらっていたのかと、なんだか申し訳ないくらいだ。
とにかく、話によると王太子は隣国の王女と睦まじい様子をあちこちでアピールしているらしい。
「内情はわからないが、殿下も頑張っているんだろう」
とは、父の言である。
頑張っている…、か。
そう、フィリップだって、国の被害者だったのだ。
コンスタンスは自分ばかり悲しんでいると思っていたことに気づいて恥ずかしくなった。
ここは国民の1人として、王太子の成婚を喜ぶべきところなのに。
オレリアンとも、そろそろ会って先の話をしなくてはいけないと思う。
彼には「落ち着いたら連絡する」とエリアスを通して伝えてもらっていたが、それでも彼はコンスタンスに花を贈り続けてくる。
オレリアンとしては、自分の存在をコンスタンスに知ってもらっただけで、彼女から伝言があっただけで、嬉しかったのだ。
最近のコンスタンスの変化を見てとった兄エリアスは、ある日、久しぶりに外に出ないかと声をかけてきた。
たまには街に、買い物にでも行こうと。
コンスタンスは快諾した。
いつまでも引きこもっているわけにはいかない。
それに今は、両親や兄、使用人の気遣いが素直に嬉しいと思えた。
「お嬢様、こちらのドレスはいかがですか?」
主人の久しぶりの外出に喜んでいるのはリアだ。
あれだこれだと外出用のドレスを引っ張り出している。
「そうね。あら、こんなドレスあったかしら。あら、これも。
ああ、そうか、16歳以降に作ったのね」
コンスタンスが手にとったのは、オレリアンとの結婚が決まってから公爵家が作ったドレスだ。
「そうね、これにするわ」
コンスタンスが選んだのは、青いドレスだった。
「お飾りはどうされますか?」
「街に出かけるだけだから、最小限でいいわ」
コンスタンスは久しぶりに宝飾品の入った引き出しを開けた。
そして、ため息をついた。
コンスタンスは今までこの引き出しを開けるのを躊躇っていた。
想像していたことではあるが、今まで王太子に贈られたきたものが全く無かったからだ。
王太子に贈られたプレゼントは、婚約が解消された時にコンスタンス自身が処分していた。
宝石など高価なものは送り返し、それ以外のものは目につかない場所にしまいこんでいた。
もちろん今のコンスタンスにそんな記憶は無いが、自分ならそうするであろうと想像はしていた。
だから今ここにあるものは、両親や祖父母に贈られたものばかりのはずである。
(16歳の誕生日…、殿下は何をくださったのかしら)
何をもらったとしても、当然ここにはもう無いであろうが、それを思うとコンスタンスは切なくなった。
「…あら?これは見覚えのないブローチね」
コンスタンスが引き出しの中からブローチを1つ手に取った。
「これは…、何の石かしら。
宝石ではないようだけど。
まさか、殿下にいただいたものではないわよね?」
片付け忘れたということもあるかもしれないが、そもそも王太子に贈られるものは全て王家御用達の宝飾店で作らせたものである。
どう見ても安物のブローチが、王太子に贈られたものとは思えない。
それによく見れば他にも見慣れないブレスレットやネックレスがあり、どれも可愛らしくはあるが高価なものではないようだ。
「あ、それは…」
ブローチを見たリアが声をあげた。
だが、気まずそうにすぐに口を噤んだ。
「なあに?教えて、リア」
「それはその…、コニーお嬢様がお倒れになった日…、王太子殿下の成婚パレードの日に付けていらしたもので…」
「私が?」
「それは旦那様…、いえ、ヒース侯爵様がコニーお嬢様に贈られたものなのです」
「侯爵様が?誕生日などにかしら?」
「いえ、ヒース領でお2人は毎日のようにお出かけになっておりまして、お出かけになるたびに侯爵様はお嬢様に何かプレゼントされていました」
「そうなの」
コンスタンスは少し驚いたようだった。
2人で出かけていたことに対してだろうか。
それとも侯爵が妻に安物ばかり贈っていたことに対してだろうか。
リアはオレリアンが気の毒になった。
だから、少し付け加えてしまった。
「お嬢様…、お嬢様はとても侯爵様を慕っておいででした。
侯爵様の青い目が大好きだと…、だから特に、青い物をいただくととても喜ばれておりました」
「私が、侯爵様を慕っていた?」
俄かには信じられなかった。
コンスタンスが慕っていたのは、ずっとフィリップただ1人だったはずである。
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