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初恋、やり直し
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しばらく窓から外の様子をうかがっていると、門の前に馬に乗った騎士が2人現れた。
(旦那様だわ!)
コンスタンスは部屋を走り出て、エントランスからも素足のまま飛び出した。
「旦那様!いらっしゃい!」
門に向かって走って来るコンスタンスに、オレリアンは驚いて目を丸くする。
コンスタンスは息を切らしてたどり着くと、門の中から、オレリアンを見上げた。
陽の光を背に浴びて馬上から彼女を見下ろす夫の姿は、とても凛々しく、美しく見える。
最初は妻の行動に驚いていたオレリアンも、コンスタンスと目を合わせると、目尻を下げ、柔らかな笑顔を見せた。
…トクッ…。
コンスタンスの胸の奥で、大きな音が鳴った。
(やっぱり…、私、旦那様が好きなんだわ)
オレリアンは馬から降りると、
「今日はこれを…」
と懐から小さな袋を取り出した。
門の柵の間から差し入れられ、コンスタンスも手を出して受け取る。
開けてみると、色とりどりの可愛らしいリボンが何本も入っていた。
「うわーっ、可愛い。
旦那様が選んでくれたの?」
目を輝かせ、キラキラした笑顔で見上げてくるコンスタンスに、オレリアンは思わず片手で口を覆った。
「その…、おさげが、似合っていたから…」
真っ赤になって口元を隠す夫に、コンスタンスは小首を傾げ、少しだけ唇を尖らせる。
「ダメよ旦那様。
とても綺麗なお顔なんだから、隠しちゃダメ」
それを聞いたオレリアンは、ますます赤くなる。
でも彼の背後から『ぷっ』と吹き出す声が聞こえて、コンスタンスはそちらを覗きこんだ。
「……どちら様?」
「…失礼致しました、奥様。
私は侯爵様の護衛でダレルと申します」
オレリアンの後ろからひょこっと現れた男は、人好きのする笑顔でそう挨拶した。
「旦那様の…、護衛?」
「まぁ…、護衛兼側近兼…、親友かな?」
「親友…?
そう、親友…。
私はコンスタンスよ。
よろしくね、ダレルさん」
ニッコリ笑うコンスタンスに、ダレルが目を見張る。
オレリアンにあらかた聞いては来たが、素足で走ってくる侯爵夫人の様子も、弾けるような笑顔も、先程からの主人とのやり取りも、全てが新鮮過ぎて、ダレルは少々面食らっていた。
また、主人の照れ顔も、ダレルには新鮮だった。
ダレルはオレリアンの乳兄弟で、実家である子爵邸で一緒に育った幼馴染だ。
オレリアンが騎士で身を立てようと思い立った時ダレルもついてきて一緒に入団し、オレリアンが侯爵に叙された時は、自ら進んで彼の護衛に志願した。
現ヒース侯爵家に仕えている使用人たちは元々は伯父である伯爵家に仕えていた者たちであるから、子爵家から養子に入ったオレリアンにとっては浅い付き合いの者ばかりである。
だが、ダレルは違う。
唯一、昔からオレリアンを知っている男なのだ。
ダレルは平民だが、オレリアンにとっては護衛であり、側近であり、共に育った兄弟であり、腹を割って何でも話せる親友であった。
もちろん記憶を失う前のコンスタンスとも会ってはいるが、基本的にコンスタンスは侯爵領、オレリアンは王都で暮らしていたため、オレリアン付きのダレルが彼女に会ったのはほんの数回だ。
ただ、その数回のコンスタンスへの印象も、当然完璧な貴婦人でしかなかったが。
オレリアンは笑顔で自分を見上げる妻を、眩しそうに見つめた。
今日も輝く銀色の髪を緩く結んでいるコンスタンスはとても可愛らしく、オレリアンは柵の間から手を伸ばしてその髪先に触れた。
オレリアン自身、どうしてこんなに妻との面会に拘り、拒まれても拒まれても通い続けていたのか説明がつかなかった。
だが、今わかった。
あの、侯爵邸を出る時に彼女が小さく手を振った日から…、多分自分は、彼女のこの目に自分を映して欲しかったのだ。
眩しそうにオレリアンを見上げていたコンスタンスだが、彼女に笑顔を向けていた夫の顔が急に険しくなったので、彼女はその目線を辿って後ろを振り返った。
すると、彼女の後ろには息を切らせている兄エリアスが立っている。
エリアスは
「…どういうことだ…」
と言ってオレリアンを睨んだ。
だって、おかしいではないか。
ずっと面会を拒んでいたはずなのに、何故妹はこの男にこんなに懐いているのだ?
何故2人とも、こんなに甘い雰囲気を漂わせているのだ?
エリアスに睨まれたオレリアンは、居住まいを正し、軽く頭を下げた。
「義兄上、今日はどうしても聞いていただきたいことがございます」
オレリアンは頭を上げると、真っ直ぐにエリアスを見つめた。
(旦那様だわ!)
コンスタンスは部屋を走り出て、エントランスからも素足のまま飛び出した。
「旦那様!いらっしゃい!」
門に向かって走って来るコンスタンスに、オレリアンは驚いて目を丸くする。
コンスタンスは息を切らしてたどり着くと、門の中から、オレリアンを見上げた。
陽の光を背に浴びて馬上から彼女を見下ろす夫の姿は、とても凛々しく、美しく見える。
最初は妻の行動に驚いていたオレリアンも、コンスタンスと目を合わせると、目尻を下げ、柔らかな笑顔を見せた。
…トクッ…。
コンスタンスの胸の奥で、大きな音が鳴った。
(やっぱり…、私、旦那様が好きなんだわ)
オレリアンは馬から降りると、
「今日はこれを…」
と懐から小さな袋を取り出した。
門の柵の間から差し入れられ、コンスタンスも手を出して受け取る。
開けてみると、色とりどりの可愛らしいリボンが何本も入っていた。
「うわーっ、可愛い。
旦那様が選んでくれたの?」
目を輝かせ、キラキラした笑顔で見上げてくるコンスタンスに、オレリアンは思わず片手で口を覆った。
「その…、おさげが、似合っていたから…」
真っ赤になって口元を隠す夫に、コンスタンスは小首を傾げ、少しだけ唇を尖らせる。
「ダメよ旦那様。
とても綺麗なお顔なんだから、隠しちゃダメ」
それを聞いたオレリアンは、ますます赤くなる。
でも彼の背後から『ぷっ』と吹き出す声が聞こえて、コンスタンスはそちらを覗きこんだ。
「……どちら様?」
「…失礼致しました、奥様。
私は侯爵様の護衛でダレルと申します」
オレリアンの後ろからひょこっと現れた男は、人好きのする笑顔でそう挨拶した。
「旦那様の…、護衛?」
「まぁ…、護衛兼側近兼…、親友かな?」
「親友…?
そう、親友…。
私はコンスタンスよ。
よろしくね、ダレルさん」
ニッコリ笑うコンスタンスに、ダレルが目を見張る。
オレリアンにあらかた聞いては来たが、素足で走ってくる侯爵夫人の様子も、弾けるような笑顔も、先程からの主人とのやり取りも、全てが新鮮過ぎて、ダレルは少々面食らっていた。
また、主人の照れ顔も、ダレルには新鮮だった。
ダレルはオレリアンの乳兄弟で、実家である子爵邸で一緒に育った幼馴染だ。
オレリアンが騎士で身を立てようと思い立った時ダレルもついてきて一緒に入団し、オレリアンが侯爵に叙された時は、自ら進んで彼の護衛に志願した。
現ヒース侯爵家に仕えている使用人たちは元々は伯父である伯爵家に仕えていた者たちであるから、子爵家から養子に入ったオレリアンにとっては浅い付き合いの者ばかりである。
だが、ダレルは違う。
唯一、昔からオレリアンを知っている男なのだ。
ダレルは平民だが、オレリアンにとっては護衛であり、側近であり、共に育った兄弟であり、腹を割って何でも話せる親友であった。
もちろん記憶を失う前のコンスタンスとも会ってはいるが、基本的にコンスタンスは侯爵領、オレリアンは王都で暮らしていたため、オレリアン付きのダレルが彼女に会ったのはほんの数回だ。
ただ、その数回のコンスタンスへの印象も、当然完璧な貴婦人でしかなかったが。
オレリアンは笑顔で自分を見上げる妻を、眩しそうに見つめた。
今日も輝く銀色の髪を緩く結んでいるコンスタンスはとても可愛らしく、オレリアンは柵の間から手を伸ばしてその髪先に触れた。
オレリアン自身、どうしてこんなに妻との面会に拘り、拒まれても拒まれても通い続けていたのか説明がつかなかった。
だが、今わかった。
あの、侯爵邸を出る時に彼女が小さく手を振った日から…、多分自分は、彼女のこの目に自分を映して欲しかったのだ。
眩しそうにオレリアンを見上げていたコンスタンスだが、彼女に笑顔を向けていた夫の顔が急に険しくなったので、彼女はその目線を辿って後ろを振り返った。
すると、彼女の後ろには息を切らせている兄エリアスが立っている。
エリアスは
「…どういうことだ…」
と言ってオレリアンを睨んだ。
だって、おかしいではないか。
ずっと面会を拒んでいたはずなのに、何故妹はこの男にこんなに懐いているのだ?
何故2人とも、こんなに甘い雰囲気を漂わせているのだ?
エリアスに睨まれたオレリアンは、居住まいを正し、軽く頭を下げた。
「義兄上、今日はどうしても聞いていただきたいことがございます」
オレリアンは頭を上げると、真っ直ぐにエリアスを見つめた。
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