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第四章 アメリア その二
デート、その後
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街デートの後、セドリックはアメリアを部屋に送り届けるとすぐ本邸に戻って行った。
気まずくて逃げたようにも見えたが、急ぎの仕事があったのは本当だったらしい。
晩餐の時間に合わせて再びセドリックが離れを訪れたと、カリナが伝えに来たから。
しかし、逃げたのはアメリアの方だった。
疲労を理由に晩餐を拒み、様子を見に来たというセドリックをハンナに追い返させたのだ。
実際、疲れ切っているのは本当だ。
食堂での出来事も、馬車でのセドリックとの会話も、あらゆるものがアメリアの神経を疲弊させていた。
今アメリアは食事もとらずベッドに横たわったまま。
(だいたい…)
アメリアは枕に顔を埋めて突っ伏した。
馬車の中であんなやり取りがあったばかりなのに、一体どんな顔をしてセドリックと向かい合い、食事をとればいいというのだろう。
嫌な言葉を使えば、アメリアは自ら「抱いてほしい」と誘ったのだ。
そしてそれを、拒否された。
女性として、こんな恥ずかしいことがあるだろうか。
ベッドの上でごろごろしていると、時々隣の部屋から物音が聞こえてくる。
彼は今晩も離れに泊まるつもりらしい。
そう、彼はアメリアと寝室を共にしようとはしないくせに、離れで寝泊まりはするのだ。
恥をかかせ、それでも頑なに受け入れてくれないセドリックを、アメリアは本気で憎らしいと思った。
翌朝、アメリアは美味しそうな香りで目を覚ました。
昨夜はどうやらあのまま眠ってしまったらしい。
カーテンの隙間から感じられる陽はもう高く、珍しく寝坊したようでもある。
「お目覚めですか?お嬢様」
ぼんやりと傍らを見れば、侍女のハンナがお盆を持って立っている。
お盆からは良い匂いと湯気が立ち上り、それにつられるようにアメリアのお腹がグーッと鳴った。
どんなに嫌な思いをしても、お腹は空くらしい。
健康な証拠である。
そのお腹の音を聞いて、ハンナが呆れたように笑う。
「昨夜も食べてらっしゃらないから、胃に優しいものを用意しました。食べられますか?」
「ええ、いただくわ」
アメリアはハンナが用意してくれたお粥を食べ始めた。
美味しいお粥が、胃にスッと入っていく。
「美味しい」
「そうでしょうとも。お嬢様が食事を抜くなんて滅多にありませんもの」
セドリックは昨夜二回と、そして今朝も部屋を訪ねて来たそうだ。
晩餐にも朝食にも顔を出さないアメリアを心配し、誘いに来たのだろう。
だがハンナが眠っていると伝えたため、そのまま仕事に向かったらしい。
「申し訳ないことしたわ…」
アメリアはぽつりと呟いた。
「お嬢様が気になさることなど一つもございません。だって悪いのは…」
憤るハンナに笑って見せ、アメリアは首を横に振った。
だって申し訳ないと思ったのはセドリックに対してではない、料理人たちに対してだ。
昨夜も今朝も、料理人たちはきっとセドリックとアメリアのために美味しい食事を用意していただろう。
それをアメリアのせいで無駄にしてしまったのだ。
健康な体と、楽天的な性格はアメリアの長所であるはず。
くよくよ悩んでいたせいで食事を抜くなど、およそ自分らしくない。
「今夜の晩餐はきちんと閣下ととるわ」
そう言うとアメリアはハンナに笑って見せた。
そして普段通りに身支度を整え畑に向かおうとしていたアメリアに、驚くような知らせがあった。
義母の侍女だという女性が離れを訪れ、伝言を伝えに来たと言うのだ。
それは、『今日の午後、お茶に招待したい』という義母からの誘いだった。
アメリアが義母に会ったのは領地に入ってすぐに挨拶したあの一度きり。
三ヶ月間全く接触がなかった義母の、しかも突然の誘いに、ハンナもカリナも眉を顰めた。
本当はセドリックに話してから行くべきなのかもしれないが、今日彼は視察で朝から外出していて、しかも明後日まで戻らないらしい。
嫁としては義母からの誘いを断るわけにもいかず、アメリアは誘いに応じると答えた。
そしてその日の午後、アメリアは実に三ヶ月ぶりに、本邸に足を踏み入れることになった。
気まずくて逃げたようにも見えたが、急ぎの仕事があったのは本当だったらしい。
晩餐の時間に合わせて再びセドリックが離れを訪れたと、カリナが伝えに来たから。
しかし、逃げたのはアメリアの方だった。
疲労を理由に晩餐を拒み、様子を見に来たというセドリックをハンナに追い返させたのだ。
実際、疲れ切っているのは本当だ。
食堂での出来事も、馬車でのセドリックとの会話も、あらゆるものがアメリアの神経を疲弊させていた。
今アメリアは食事もとらずベッドに横たわったまま。
(だいたい…)
アメリアは枕に顔を埋めて突っ伏した。
馬車の中であんなやり取りがあったばかりなのに、一体どんな顔をしてセドリックと向かい合い、食事をとればいいというのだろう。
嫌な言葉を使えば、アメリアは自ら「抱いてほしい」と誘ったのだ。
そしてそれを、拒否された。
女性として、こんな恥ずかしいことがあるだろうか。
ベッドの上でごろごろしていると、時々隣の部屋から物音が聞こえてくる。
彼は今晩も離れに泊まるつもりらしい。
そう、彼はアメリアと寝室を共にしようとはしないくせに、離れで寝泊まりはするのだ。
恥をかかせ、それでも頑なに受け入れてくれないセドリックを、アメリアは本気で憎らしいと思った。
翌朝、アメリアは美味しそうな香りで目を覚ました。
昨夜はどうやらあのまま眠ってしまったらしい。
カーテンの隙間から感じられる陽はもう高く、珍しく寝坊したようでもある。
「お目覚めですか?お嬢様」
ぼんやりと傍らを見れば、侍女のハンナがお盆を持って立っている。
お盆からは良い匂いと湯気が立ち上り、それにつられるようにアメリアのお腹がグーッと鳴った。
どんなに嫌な思いをしても、お腹は空くらしい。
健康な証拠である。
そのお腹の音を聞いて、ハンナが呆れたように笑う。
「昨夜も食べてらっしゃらないから、胃に優しいものを用意しました。食べられますか?」
「ええ、いただくわ」
アメリアはハンナが用意してくれたお粥を食べ始めた。
美味しいお粥が、胃にスッと入っていく。
「美味しい」
「そうでしょうとも。お嬢様が食事を抜くなんて滅多にありませんもの」
セドリックは昨夜二回と、そして今朝も部屋を訪ねて来たそうだ。
晩餐にも朝食にも顔を出さないアメリアを心配し、誘いに来たのだろう。
だがハンナが眠っていると伝えたため、そのまま仕事に向かったらしい。
「申し訳ないことしたわ…」
アメリアはぽつりと呟いた。
「お嬢様が気になさることなど一つもございません。だって悪いのは…」
憤るハンナに笑って見せ、アメリアは首を横に振った。
だって申し訳ないと思ったのはセドリックに対してではない、料理人たちに対してだ。
昨夜も今朝も、料理人たちはきっとセドリックとアメリアのために美味しい食事を用意していただろう。
それをアメリアのせいで無駄にしてしまったのだ。
健康な体と、楽天的な性格はアメリアの長所であるはず。
くよくよ悩んでいたせいで食事を抜くなど、およそ自分らしくない。
「今夜の晩餐はきちんと閣下ととるわ」
そう言うとアメリアはハンナに笑って見せた。
そして普段通りに身支度を整え畑に向かおうとしていたアメリアに、驚くような知らせがあった。
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それは、『今日の午後、お茶に招待したい』という義母からの誘いだった。
アメリアが義母に会ったのは領地に入ってすぐに挨拶したあの一度きり。
三ヶ月間全く接触がなかった義母の、しかも突然の誘いに、ハンナもカリナも眉を顰めた。
本当はセドリックに話してから行くべきなのかもしれないが、今日彼は視察で朝から外出していて、しかも明後日まで戻らないらしい。
嫁としては義母からの誘いを断るわけにもいかず、アメリアは誘いに応じると答えた。
そしてその日の午後、アメリアは実に三ヶ月ぶりに、本邸に足を踏み入れることになった。
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