さげわたし

凛江

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第一章 セドリック

二度目の晩餐②

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「お待たせして申し訳ありません、閣下」
セドリックより少し遅れてダイニングルームにやってきたアメリアは丁寧に頭を下げて謝った。

「いや、私が早く来過ぎたのだ」
そう言うとセドリックはアメリアの姿をしげしげと眺めた。
晩餐のために淡い黄色のドレスに着替えさせられた彼女は、清楚で可憐な美少女だ。
貴婦人らしく唇には礼儀的に微笑を浮かべ、仕草も優雅で美しい。
その姿は昨日今日とセドリックが陰から盗み見た、畑にいる彼女とは別人のようだ。

それに、二ヶ月前の晩餐の時のような、あの恥ずかしそうな、はにかんだ表情は今日の彼女からは感じとれない。
いかにも取り繕ったような微笑みに、セドリックは何故か苛立ちを覚えた。

それに席も、とにかく遠いのだ。
相変わらず二人の席は長テーブルの端と端で、かなりの距離がある。
最初の晩餐の時はもちろんセドリックの指示と使用人らの配慮であのような配置になったのだが、使用人らがアメリアと打ち解けている今、ここでこそ配慮するべきだろうとセドリックは舌打ちした。

「王女殿下、こちらでの暮らしはいかがですか?」
二ヶ月間も放置しておいておかしな質問だとは思うが、セドリックの口から出たのはそんなつまらない言葉だった。
しかしアメリアは気にする風もなく、「気に入っております」とだけ答えた。

たしかにアメリアは毎日楽しそうに過ごしていると報告にもあるし、実際昨日今日とセドリック自身もそんな彼女を目にしている。

「とりあえず、食べましょうか」
二人の目の前に並べられた前菜には、先程収穫したラディッシュやレタスも並べられている。
セドリックはラディッシュを一つ、口に入れてみた。
カリリと良い音が響いて、みずみずしさが口の中に広がる。

「…美味しいですね」
「そうでしょう?新鮮ですもの」
アメリアの目が微かに細められ、口の端が少しだけ上がる。

やはりセドリックには、アメリアという女性がわからない。
こんな清楚ななりをして、本当に国王の愛人だったのだろうか。
そして、平気でセドリックに下げ渡されてきたのだろうか。

でも噂が真実でないなら、何故それを正そうとしないのか。
国王の愛人でなかったのだとしたら、何故セドリックにそれを伝えないのか。
まさか…、そう、もしかしたら、彼女の耳には噂が入っていないのだろうか。
こんな、国境近くの領地の、領民まで知っているという噂を。


※今回短くてすみません。
セドリックのターンはあと三回ですが、胸糞展開かもです(>_<)。ご注意を!
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