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第一章 セドリック
初収穫①
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翌朝、セドリックはあの夜以来、初めて離れを訪れた。
実に二ヶ月ぶりである。
ソニアやカリナの報告を聞いてずっと気にはなっていたのだが、どうしても足が向かなかったのだ。
カリナを通して知るアメリアはあまりにも自分が思っていた彼女と違いすぎて、正直信じたくなかった。
いや、彼女の本来の姿を知るのが怖い気がすると言った方がいいだろう。
セドリックは自分なりに作り上げたアメリア像があり、今更それを覆されても面倒だと思ったのだ。
なぜならば、彼女が本当は素朴で気さくな人柄だと今更知ったところで、それでどうなるというのだ。
国王の発言から彼女が『王家の醜聞の種』であることは明らかだし、それはどうしたって覆らない。
国民の目を欺き国王に囲われてきた事実も、その尻拭いのためにセドリックがアメリアを押し付けられた事実も、彼女の性格が良かろうと悪かろうと何も変わらないのだから。
その朝セドリックは家令のトマスを伴い、離れの庭側に回った。
アメリアは朝食を済ませたらすぐ畑に出ると聞いていたからだ。
建物の陰からこっそり様子を伺うと、和気藹々と作業を行なっている皆が目に入ってくる。
それにしても…、と、セドリックは訝しく思った。
何故か人数が多い気がするのだ。
見れば、カリナやソニアだけではなく、密かにつけたはずの護衛バートとエイベルもいるし、離れの厨房で働く料理長や料理人の姿もある。
「料理長、ラディッシュももう食べごろだわ!食べてみましょうよ!」
アメリアの明るい声が聞こえてきた。
「洗わないとダメですよ奥様」
「拭けば平気よ!」
周りからも笑い声が聞こえ、なんだかとても楽しそうだ。
なんとなく出て行きづらく、セドリックはそのまま様子を伺い続けた。
「お声をかけないのですか?旦那様」
「しっ、静かにしろ、トマス」
見つからないように口に指を当てる主人に、トマスは呆れ顔でため息をついた。
「こんなところでコソコソと、国の英雄が聞いて呆れます。そんなに奥様が気になるなら、離れで一緒に過ごされれば良いではありませんか」
「うるさいぞ、トマス」
痛いところを突かれ、セドリックは眉間に皺を寄せる。
「うわぁ、色鮮やかね!今日の食事も楽しみだわ!」
こちらに背中を向けているためアメリアの表情はわからないが、きっと楽しげに笑っているのだろう。
アメリアに向ける使用人たちの笑顔を見ればそれはわかる。
その晩、いつものように本邸の執務室で食事をとったセドリックの食卓に、当然ながら豆もラディッシュも上がることはなかった。
実に二ヶ月ぶりである。
ソニアやカリナの報告を聞いてずっと気にはなっていたのだが、どうしても足が向かなかったのだ。
カリナを通して知るアメリアはあまりにも自分が思っていた彼女と違いすぎて、正直信じたくなかった。
いや、彼女の本来の姿を知るのが怖い気がすると言った方がいいだろう。
セドリックは自分なりに作り上げたアメリア像があり、今更それを覆されても面倒だと思ったのだ。
なぜならば、彼女が本当は素朴で気さくな人柄だと今更知ったところで、それでどうなるというのだ。
国王の発言から彼女が『王家の醜聞の種』であることは明らかだし、それはどうしたって覆らない。
国民の目を欺き国王に囲われてきた事実も、その尻拭いのためにセドリックがアメリアを押し付けられた事実も、彼女の性格が良かろうと悪かろうと何も変わらないのだから。
その朝セドリックは家令のトマスを伴い、離れの庭側に回った。
アメリアは朝食を済ませたらすぐ畑に出ると聞いていたからだ。
建物の陰からこっそり様子を伺うと、和気藹々と作業を行なっている皆が目に入ってくる。
それにしても…、と、セドリックは訝しく思った。
何故か人数が多い気がするのだ。
見れば、カリナやソニアだけではなく、密かにつけたはずの護衛バートとエイベルもいるし、離れの厨房で働く料理長や料理人の姿もある。
「料理長、ラディッシュももう食べごろだわ!食べてみましょうよ!」
アメリアの明るい声が聞こえてきた。
「洗わないとダメですよ奥様」
「拭けば平気よ!」
周りからも笑い声が聞こえ、なんだかとても楽しそうだ。
なんとなく出て行きづらく、セドリックはそのまま様子を伺い続けた。
「お声をかけないのですか?旦那様」
「しっ、静かにしろ、トマス」
見つからないように口に指を当てる主人に、トマスは呆れ顔でため息をついた。
「こんなところでコソコソと、国の英雄が聞いて呆れます。そんなに奥様が気になるなら、離れで一緒に過ごされれば良いではありませんか」
「うるさいぞ、トマス」
痛いところを突かれ、セドリックは眉間に皺を寄せる。
「うわぁ、色鮮やかね!今日の食事も楽しみだわ!」
こちらに背中を向けているためアメリアの表情はわからないが、きっと楽しげに笑っているのだろう。
アメリアに向ける使用人たちの笑顔を見ればそれはわかる。
その晩、いつものように本邸の執務室で食事をとったセドリックの食卓に、当然ながら豆もラディッシュも上がることはなかった。
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