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第一章 セドリック
初めての晩餐
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サラトガ公爵邸に到着すると、エントランス前にはずらりと使用人たちが並んで待っていた。
アメリアが王宮を旅立つ時に見送りに出た人々よりよっぽど多いくらいだ。
アメリアは馬車の下で手を差し出したセドリックにエスコートされ、優雅に馬車を降りた。
皆口々にセドリックに向かって笑顔で「おかえりなさいませ」と言っている。
セドリックはそんな使用人たちに「公爵夫人だ」と紹介し、彼らは主人の隣に立つアメリアを見た。
アメリアも並んだ使用人を見回すため、首を左右に往復させる。
そして一人一人としっかり目を合わせ、最後の一人を見終わるとにっこり微笑んだ。
「アメリアです。よろしくお願いします」
使用人たちも深々と頭を下げて歓迎の意を示したが、そのどの顔も表情は固いままだ。
それはそうであろう。
公爵夫人としてアメリアを歓迎している者など、誰一人としていないのだから。
あからさまにセドリックを迎える表情とは違うが、それでも態度だけは公爵夫人を迎えるそれである。
そんな使用人たちを見てもアメリアは表情を変えず、セドリックにエスコートされるまま邸の中に足を踏み入れた。
邸内に入るとセドリックはすぐに手を離し、あとは侍女に案内させるとばかりに背を向けた。
そして背中を向けたまま、エントランスに飾られている絵を眺めていたアメリアにこう言った。
「ここは離れで、義母と弟妹たちは本邸に住んでいます」
「まぁ、ではご挨拶を、」
「明日顔合わせをする時間を作ります。では、後ほど」
そう言い残すとセドリックは足早にその場を去った。
残されたアメリアは侍女に案内されて領主夫人の部屋とやらに通された。
夕方になり、アメリアは晩餐のためダイニングルームにやってきた。
もうすでにセドリックは席に着いており、ものすごく細長いテーブルの端と端に向かい合った席に案内される。
アメリアは「遅れてごめんなさい」とセドリックに向かって丁寧に謝った。
顔を上げると真っ直ぐな視線をセドリックに向けてくる。
そして目が合うと、はにかむように小さく笑った。
セドリックは黙って目を逸らした。
夫婦として初めての晩餐なのだ。
旅の間はほとんど接することもなかったが、もしかしたら彼女はあたたかい対応を期待しているのかもしれない。
もちろん晩餐に遅れたのはアメリアのせいではなく、侍女に案内されるままに来たのだということはセドリックもわかっている。
しかしセドリックはそれには答えず、アメリアが席に着くと待っていたように口を開いた。
「明日、義母と弟妹と顔合わせする時間を作ります。そうですね、昼過ぎに迎えに行きますので、準備しておいてもらえますか?」
セドリックは事務的にそう言うと、ちらりとアメリアの方を見た。
アメリアはセドリックを見つめ、小さく頷いている。
「基本的に、貴女には離れで暮らしてもらいます。本邸には義母と弟妹が暮らしていますが、明日顔合わせした後は関わらなくて結構です」
「はい…、わかりました」
アメリアが返事をするとセドリックはこれ以上話すことはないとばかりに料理に手をつけ始めた。
アメリアは彼がまだ何か話すのかと待っていたようだが、セドリックの態度はもうアメリアがいない者として扱っている。
結局アメリアも食事に手をつけ、そのまま領地での初めての晩餐は、沈黙の晩餐となったのだった。
アメリアが王宮を旅立つ時に見送りに出た人々よりよっぽど多いくらいだ。
アメリアは馬車の下で手を差し出したセドリックにエスコートされ、優雅に馬車を降りた。
皆口々にセドリックに向かって笑顔で「おかえりなさいませ」と言っている。
セドリックはそんな使用人たちに「公爵夫人だ」と紹介し、彼らは主人の隣に立つアメリアを見た。
アメリアも並んだ使用人を見回すため、首を左右に往復させる。
そして一人一人としっかり目を合わせ、最後の一人を見終わるとにっこり微笑んだ。
「アメリアです。よろしくお願いします」
使用人たちも深々と頭を下げて歓迎の意を示したが、そのどの顔も表情は固いままだ。
それはそうであろう。
公爵夫人としてアメリアを歓迎している者など、誰一人としていないのだから。
あからさまにセドリックを迎える表情とは違うが、それでも態度だけは公爵夫人を迎えるそれである。
そんな使用人たちを見てもアメリアは表情を変えず、セドリックにエスコートされるまま邸の中に足を踏み入れた。
邸内に入るとセドリックはすぐに手を離し、あとは侍女に案内させるとばかりに背を向けた。
そして背中を向けたまま、エントランスに飾られている絵を眺めていたアメリアにこう言った。
「ここは離れで、義母と弟妹たちは本邸に住んでいます」
「まぁ、ではご挨拶を、」
「明日顔合わせをする時間を作ります。では、後ほど」
そう言い残すとセドリックは足早にその場を去った。
残されたアメリアは侍女に案内されて領主夫人の部屋とやらに通された。
夕方になり、アメリアは晩餐のためダイニングルームにやってきた。
もうすでにセドリックは席に着いており、ものすごく細長いテーブルの端と端に向かい合った席に案内される。
アメリアは「遅れてごめんなさい」とセドリックに向かって丁寧に謝った。
顔を上げると真っ直ぐな視線をセドリックに向けてくる。
そして目が合うと、はにかむように小さく笑った。
セドリックは黙って目を逸らした。
夫婦として初めての晩餐なのだ。
旅の間はほとんど接することもなかったが、もしかしたら彼女はあたたかい対応を期待しているのかもしれない。
もちろん晩餐に遅れたのはアメリアのせいではなく、侍女に案内されるままに来たのだということはセドリックもわかっている。
しかしセドリックはそれには答えず、アメリアが席に着くと待っていたように口を開いた。
「明日、義母と弟妹と顔合わせする時間を作ります。そうですね、昼過ぎに迎えに行きますので、準備しておいてもらえますか?」
セドリックは事務的にそう言うと、ちらりとアメリアの方を見た。
アメリアはセドリックを見つめ、小さく頷いている。
「基本的に、貴女には離れで暮らしてもらいます。本邸には義母と弟妹が暮らしていますが、明日顔合わせした後は関わらなくて結構です」
「はい…、わかりました」
アメリアが返事をするとセドリックはこれ以上話すことはないとばかりに料理に手をつけ始めた。
アメリアは彼がまだ何か話すのかと待っていたようだが、セドリックの態度はもうアメリアがいない者として扱っている。
結局アメリアも食事に手をつけ、そのまま領地での初めての晩餐は、沈黙の晩餐となったのだった。
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