王太子妃は離婚したい

凛江

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【番外編】もう一度

セレンの朝

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※この話は書籍化の時カットしたエピソードです。
わりと気に入っていたので、書き直して再投稿します!

◇◇◇

「良く来てくれた、フレイア姫。長旅疲れただろう?」
馬車から降りてくる婚約者を笑顔で迎えるセレンに、フレイアは満面の笑みで応える。

「いえ、ちっとも。セレン様にお会い出来るのが嬉し過ぎて、疲れなんて全く感じませんでしたわ」
「ああ。私も今日という日を待ちわびたよ」

そう言うと、セレンはフレイアの前に左手を差し出す。
フレイアはさらに嬉しそうに笑って、その手に自分の右手を乗せる。
空は抜けるような青空で、二人の前途を祝福しているかのようだ。

「それにしても、流暢なテルル語だね」
「いっぱい練習しましたの。だって、セレン様とたくさんお話ししたかったんですもの!」
「それは嬉しいな。早速話すとしよう」

花のように綻ぶフレイアの口元に、セレンはそっと指を伸ばすー。



(……夢か……)
目覚めると、伸ばした指先を目が追った。
いつも、もう少しで彼女に触れられそうなところで目が覚める。
こんな夢を、あれから何度見たことだろうか。

「陛下、お目覚めですか?そろそろお支度を」
「ああ」
マルクスの呼びかけに、セレンはベッドから起き上がった。

今日は、クロムの王女エリザベットがセレンの元に輿入れしてくる日。
彼女は幼い頃からの許婚を数年前に亡くしたらしい。

彼女とは何度か顔合わせをした上で、セレンは結婚を決めた。
目立った美女ではないが、ハキハキと物を言って気が強く…そして大らかな女性である。
再婚である自分にはもったいないような花嫁だ。
今度こそ、大事にしたいとセレンは誓う。


窓から外を見下ろすと、騎士たちが早朝稽古に励んでいる。
そこに、小さな体で一際元気に動き回る元妃の姿はもうない。

外は、あの日と同じ澄み渡る青空ー。

多分今日は、良い日になることだろう。

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