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【番外編】20年後のダンス
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(宴の後:拗らせハロルドにご注意!)
「まだ拗ねてるの?ハル」
宴が終わって部屋へ戻ると、フレイアは夫ハロルドを見上げて首を傾げた。
そんなフレイアの仕草はものすごくものすごく可愛いのだが、今のハロルドは騙されない。
「あんな、これ見よがしにクルクル回りやがって…」
などと、いつもの冷徹宰相らしからぬ言葉を呟いている。
セレンが、フレイアをダンスに誘った。
ハロルドは快く妻の手を彼に預けた。
そう、快く。
妻の、元夫に。
セレンの洗練されたダンスにリードされ、フレイアはとても輝いて見えた。
いや、いつも綺麗で可愛い妻なのだが、着飾った今日はさらに輝いていたのだ。
特にフワリと舞った時なんて、ドレスの裾が広がって、なんていうか、こう、妖精みたいな…。
……いやいや、舞う必要なんかあったか?
でも、いや…、今日はセレンが主役だったからな。
花を持たせるのは仕方がない。
だいたい、ドレスの裾が広がったからってなんだ?
そのドレスを脱がせられるのは俺だけだし。
何やらどんどん違う方向に向かっていくハロルドの思考回路を知ってか知らずか、フレイアは呆れたようにため息をついた。
「だいたいダンスなんて嫌いじゃない、ハル」
たしかに。
ハロルドは武術の鍛錬で体を動かすのは好きだが、ダンスは正直不得意だ。
今までもフレイア以外の女性と踊ったことはない。
「でもハル、あれは好きよね?お祭りのダンス」
「うん」
お祭りというのは庶民の祭りで、今も時々お忍びで街に出かける二人は、踊りの輪に入ったりもする。
「来月ビスマスでお蚕様に感謝する祭りがあるわ。そこでまた一緒に踊りましょ?」
「うん。君を360°回してやる。
さっきは180°くらいだったから」
「ハル…、一体何と競ってるの?」
「君を輝かせるのはいつも俺でありたいと思って」
言ってしまって照れ臭くなったのか、ハロルドは頬を赤らめて明後日の方を向いた。
フレイアは両腕を伸ばして夫の頬に両手をやる。
そしてグイッと顔をこちらに向けた。
結婚して17年も経つのに、相変わらずハロルドはフレイアにべた惚れだ。
元騎士としても、また政治家としても有能で辣腕宰相と恐れられているこの人は、しかし愛妻家で子煩悩な父親であることを周囲に隠そうともしない。
そして小さなことに嫉妬するし、すぐに拗ねる。
仕事はさくさく熟すくせに、フレイアが絡むと途端に面倒臭い男になるのだ。
「そんなにまだ安心できないの?」
「…安心してるし信頼もしてる。
でもだから、そういうのじゃなくて、」
「ホント、可愛い人」
フレイアは爪先立ちをすると、グイッとハロルドの首を下に引いた。
自然、ハロルドは少し体を屈めたようになる。
フレイアは彼の眼帯の上にふわりと優しいキスをした。
「好きよ、ハル。何度だって言うわ。私には貴方だけよ」
「…俺も」
ハロルドはフレイアを抱きしめ、吸い寄せられるように口付けた。
もう慣れ親しんでいる唇だが、妻の唇は何度味わっても甘いと思う。
ハロルドは角度を変え、啄むようなキスを繰り返す。
家にいるとたいていこの辺で子どもたちの邪魔が入るのだが、今日は部屋に2人きりだ。
調子に乗ったハロルドはヒョイッとフレイアを抱き上げるとクルリと一回転した。
そして、トスンとベッドの上におろした。
「ちょっと、ハル⁈」
睨むように見上げる妻に覆いかぶさった夫は、満面の笑みで見下ろす。
「では俺への愛を確かめさせて?フレイア」
「なっ…!ここ、テルル王宮…!」
「うん。なんか燃えるよね」
「燃えるって…!それに、色々準備が…!(避妊とか避妊とか避妊とか…!)」
「いいだろ?別に。俺、もう1人欲しいと思ってたし」
「…バカハル…ッ!」
抗議の言葉はハロルドの唇に吸い込まれた。
その後タンタル宰相とビスマス領主の間には、年の離れた四人目の子供が生まれた……、らしい(笑)。
おしまい
またコメディになってしまいました。
ハロルドのキャラがどんどん崩壊していくような…?
「まだ拗ねてるの?ハル」
宴が終わって部屋へ戻ると、フレイアは夫ハロルドを見上げて首を傾げた。
そんなフレイアの仕草はものすごくものすごく可愛いのだが、今のハロルドは騙されない。
「あんな、これ見よがしにクルクル回りやがって…」
などと、いつもの冷徹宰相らしからぬ言葉を呟いている。
セレンが、フレイアをダンスに誘った。
ハロルドは快く妻の手を彼に預けた。
そう、快く。
妻の、元夫に。
セレンの洗練されたダンスにリードされ、フレイアはとても輝いて見えた。
いや、いつも綺麗で可愛い妻なのだが、着飾った今日はさらに輝いていたのだ。
特にフワリと舞った時なんて、ドレスの裾が広がって、なんていうか、こう、妖精みたいな…。
……いやいや、舞う必要なんかあったか?
でも、いや…、今日はセレンが主役だったからな。
花を持たせるのは仕方がない。
だいたい、ドレスの裾が広がったからってなんだ?
そのドレスを脱がせられるのは俺だけだし。
何やらどんどん違う方向に向かっていくハロルドの思考回路を知ってか知らずか、フレイアは呆れたようにため息をついた。
「だいたいダンスなんて嫌いじゃない、ハル」
たしかに。
ハロルドは武術の鍛錬で体を動かすのは好きだが、ダンスは正直不得意だ。
今までもフレイア以外の女性と踊ったことはない。
「でもハル、あれは好きよね?お祭りのダンス」
「うん」
お祭りというのは庶民の祭りで、今も時々お忍びで街に出かける二人は、踊りの輪に入ったりもする。
「来月ビスマスでお蚕様に感謝する祭りがあるわ。そこでまた一緒に踊りましょ?」
「うん。君を360°回してやる。
さっきは180°くらいだったから」
「ハル…、一体何と競ってるの?」
「君を輝かせるのはいつも俺でありたいと思って」
言ってしまって照れ臭くなったのか、ハロルドは頬を赤らめて明後日の方を向いた。
フレイアは両腕を伸ばして夫の頬に両手をやる。
そしてグイッと顔をこちらに向けた。
結婚して17年も経つのに、相変わらずハロルドはフレイアにべた惚れだ。
元騎士としても、また政治家としても有能で辣腕宰相と恐れられているこの人は、しかし愛妻家で子煩悩な父親であることを周囲に隠そうともしない。
そして小さなことに嫉妬するし、すぐに拗ねる。
仕事はさくさく熟すくせに、フレイアが絡むと途端に面倒臭い男になるのだ。
「そんなにまだ安心できないの?」
「…安心してるし信頼もしてる。
でもだから、そういうのじゃなくて、」
「ホント、可愛い人」
フレイアは爪先立ちをすると、グイッとハロルドの首を下に引いた。
自然、ハロルドは少し体を屈めたようになる。
フレイアは彼の眼帯の上にふわりと優しいキスをした。
「好きよ、ハル。何度だって言うわ。私には貴方だけよ」
「…俺も」
ハロルドはフレイアを抱きしめ、吸い寄せられるように口付けた。
もう慣れ親しんでいる唇だが、妻の唇は何度味わっても甘いと思う。
ハロルドは角度を変え、啄むようなキスを繰り返す。
家にいるとたいていこの辺で子どもたちの邪魔が入るのだが、今日は部屋に2人きりだ。
調子に乗ったハロルドはヒョイッとフレイアを抱き上げるとクルリと一回転した。
そして、トスンとベッドの上におろした。
「ちょっと、ハル⁈」
睨むように見上げる妻に覆いかぶさった夫は、満面の笑みで見下ろす。
「では俺への愛を確かめさせて?フレイア」
「なっ…!ここ、テルル王宮…!」
「うん。なんか燃えるよね」
「燃えるって…!それに、色々準備が…!(避妊とか避妊とか避妊とか…!)」
「いいだろ?別に。俺、もう1人欲しいと思ってたし」
「…バカハル…ッ!」
抗議の言葉はハロルドの唇に吸い込まれた。
その後タンタル宰相とビスマス領主の間には、年の離れた四人目の子供が生まれた……、らしい(笑)。
おしまい
またコメディになってしまいました。
ハロルドのキャラがどんどん崩壊していくような…?
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