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【番外編】Happy Wedding!! 〜隻眼王子は新妻とイチャイチャしたい〜
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「………ん?体?体がどうした?」
「だから!体にさわるだろ?今は大事な時期なんだから」
「大事な時期?なんのことだ?」
「だから!お腹の子に……っ!……って、……あ………っ」
「ハル!!」
「どういう意味だ!」
サイラスがハロルドの胸元に摑みかかる。
「殿下!」
「殿下!」
そこに、サイラスの側近カイトとハロルドの側近イヴォンが止めに入る。
カイトはサイラスを、イヴォンはハロルドをそれぞれ後ろから羽交い締めにするが、サイラスはハロルドからはなれない。
「どういうことかな?フレイア」
サイラスはハロルドの襟首をつかんだまま、笑顔でフレイアを振り返った。
だが目は全く笑っていないし、その唇から紡ぎ出される言葉は絶対零度の響きを持つ。
「あの…、お兄様…。落ち着いて?ハルをはなしてあげて?」
「だからねフレイア。俺は、どういう意味かって聞いてるんだけど?」
「お兄様…」
フレイアは気まずそうに目を泳がせたあと、覚悟を決めたようにサイラスを真っ直ぐに見た。
「…ごめんなさい、お兄様。まだね?わかったばかりなの。この半年間、ハルは何度もビスマスに会いに来てくれて…。それで、あの…、隠すつもりはなかったのよ?式が終わったら、お兄様には一番に報告しようと…」
フレイアは頬を真っ赤に染め、恥ずかしそうに俯いた。
(何度も、会いに来て…?)
サイラスはその言葉を反芻した。
たしかに婚約してからの半年間、タンタル国のハロルドとビスマス領のフレイアはいわゆる遠距離恋愛状態だった。
ハロルドは忙しい公務の合間を縫って時間を作り、頻繁にビスマス領へ通っていたと聞く。
とても日帰りするのは難しい距離だから、当然ビスマス領へ行けば領主邸に泊まってもいっただろう。
結婚すれば二人は互いの邸を行き来するため、ビスマス領主邸には当然ハロルド用の部屋も、夫婦の部屋も準備されている。
つまり…、まさかハロルドは、婚約中も自室ではなくフレイアと寝室を共にしていたと…?!
婚約中ではある、婚約中ではある………が!!
王族たるもの、例え婚約していようとも初夜の晩まで婚約者に手を出すなど許されない。
もちろんそんな法律はないが、サイラスが、(今)、決めたのである。
「つまり…、俺の妹に手を出したのか?ああ?なぁハル。結婚もしてないのに、俺の可愛いフレイアに手を出したのか?」
サイラスはハロルドの襟をつかんで揺さぶっていて、ハロルドはされるがままになっている。
しかし揺さぶられながらも彼はキッとサイラスを見返した。
「手を出した…とか、そんな汚い言葉を使うな。俺たちは真剣に、」
「黙れ!」
胸元も襟もグイグイ引かれ、せっかく華麗な婚礼衣装を身に纏い髪も整えてあったのに、すでにかなり乱れている。
「お兄様ハルをはなして!私たち結婚するのよ?!」
「フレイアは黙ってろ!おまえ!王族のくせに!」
サイラスはハロルドの首を締め上げんばかりに引っ張った。
結婚自体ニ度目である妹の貞操を気にするのは可笑しなことなのかもしれない。
だが、一度目の結婚は他国に嫁ぐもので、心情的に遠い結婚だった。
でも今回の結婚はサイラスの信頼する親友と可愛い妹のもので、言うなれば自分のテリトリー内の結婚である。
「俺の、目が届くところで…!」
「待ってお兄様!ハルは悪くないの!私が!」
「………………は?」
(私が?)
フレイアの叫びに、サイラスの手が一瞬止まる。
ギギギ…っと首から音が聞こえてきそうなほどぎこちなくフレイアを振り返ったサイラスは、真っ赤になった妹の顔を見て絶句する。
「…フレイア?」
(まさか、フレイアの方から誘ったってことか⁈俺の⁈可愛い妹が⁈)
「だから!体にさわるだろ?今は大事な時期なんだから」
「大事な時期?なんのことだ?」
「だから!お腹の子に……っ!……って、……あ………っ」
「ハル!!」
「どういう意味だ!」
サイラスがハロルドの胸元に摑みかかる。
「殿下!」
「殿下!」
そこに、サイラスの側近カイトとハロルドの側近イヴォンが止めに入る。
カイトはサイラスを、イヴォンはハロルドをそれぞれ後ろから羽交い締めにするが、サイラスはハロルドからはなれない。
「どういうことかな?フレイア」
サイラスはハロルドの襟首をつかんだまま、笑顔でフレイアを振り返った。
だが目は全く笑っていないし、その唇から紡ぎ出される言葉は絶対零度の響きを持つ。
「あの…、お兄様…。落ち着いて?ハルをはなしてあげて?」
「だからねフレイア。俺は、どういう意味かって聞いてるんだけど?」
「お兄様…」
フレイアは気まずそうに目を泳がせたあと、覚悟を決めたようにサイラスを真っ直ぐに見た。
「…ごめんなさい、お兄様。まだね?わかったばかりなの。この半年間、ハルは何度もビスマスに会いに来てくれて…。それで、あの…、隠すつもりはなかったのよ?式が終わったら、お兄様には一番に報告しようと…」
フレイアは頬を真っ赤に染め、恥ずかしそうに俯いた。
(何度も、会いに来て…?)
サイラスはその言葉を反芻した。
たしかに婚約してからの半年間、タンタル国のハロルドとビスマス領のフレイアはいわゆる遠距離恋愛状態だった。
ハロルドは忙しい公務の合間を縫って時間を作り、頻繁にビスマス領へ通っていたと聞く。
とても日帰りするのは難しい距離だから、当然ビスマス領へ行けば領主邸に泊まってもいっただろう。
結婚すれば二人は互いの邸を行き来するため、ビスマス領主邸には当然ハロルド用の部屋も、夫婦の部屋も準備されている。
つまり…、まさかハロルドは、婚約中も自室ではなくフレイアと寝室を共にしていたと…?!
婚約中ではある、婚約中ではある………が!!
王族たるもの、例え婚約していようとも初夜の晩まで婚約者に手を出すなど許されない。
もちろんそんな法律はないが、サイラスが、(今)、決めたのである。
「つまり…、俺の妹に手を出したのか?ああ?なぁハル。結婚もしてないのに、俺の可愛いフレイアに手を出したのか?」
サイラスはハロルドの襟をつかんで揺さぶっていて、ハロルドはされるがままになっている。
しかし揺さぶられながらも彼はキッとサイラスを見返した。
「手を出した…とか、そんな汚い言葉を使うな。俺たちは真剣に、」
「黙れ!」
胸元も襟もグイグイ引かれ、せっかく華麗な婚礼衣装を身に纏い髪も整えてあったのに、すでにかなり乱れている。
「お兄様ハルをはなして!私たち結婚するのよ?!」
「フレイアは黙ってろ!おまえ!王族のくせに!」
サイラスはハロルドの首を締め上げんばかりに引っ張った。
結婚自体ニ度目である妹の貞操を気にするのは可笑しなことなのかもしれない。
だが、一度目の結婚は他国に嫁ぐもので、心情的に遠い結婚だった。
でも今回の結婚はサイラスの信頼する親友と可愛い妹のもので、言うなれば自分のテリトリー内の結婚である。
「俺の、目が届くところで…!」
「待ってお兄様!ハルは悪くないの!私が!」
「………………は?」
(私が?)
フレイアの叫びに、サイラスの手が一瞬止まる。
ギギギ…っと首から音が聞こえてきそうなほどぎこちなくフレイアを振り返ったサイラスは、真っ赤になった妹の顔を見て絶句する。
「…フレイア?」
(まさか、フレイアの方から誘ったってことか⁈俺の⁈可愛い妹が⁈)
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