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【番外編】Happy Wedding!! 〜隻眼王子は新妻とイチャイチャしたい〜
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「ハル!」
純白のドレスに身を包まれ、満面の笑みであらわれたフレイアを見た時は、思わず泣きそうになった。
焦がれて、憧れて、それでも絶対に自分のものにはならないと思っていた彼女が今、自分だけに真っ直ぐな笑顔を向けてくれていたからー。
◇ ◇ ◇
ここは、テルル国とアルゴン国に挟まれた小さな領地ビスマス。
国に属さず、独立した自治領であるビスマスは、近隣の国との友好を保ち、優秀な領主によって治められている。
そんなビスマス領の外れにある小さな教会で、タンタル国王の末弟ハロルドは、今から結婚式を挙げる。
長々と拗らせた初恋相手であり、ここビスマスの若き女領主である、最愛の人フレイアと。
花嫁の仕度が整うのを教会の外で待っていたハロルドは、晴れ晴れとした気持ちで空を見上げていた。
今日という日を無事迎えられたことに感謝し、そして、感慨深くこれまでのことに思いを馳せる。
そう、僅か半年前まで、こんな日が訪れるとは夢にも思わなかったのだから。
なかなか想いを告げられず、墓場まで持っていくつもりだった初恋。
よその男に嫁ぎ、絶対手が届かないはずだった想い人。
夫を救けるために闘う彼女を、命をかけて守り通した自分。
何度も手を差し伸べては躱され、そのたびに諦め、絶望を味わってきた。
それなのにーー。
どんな運命の悪戯か、恋い焦がれた彼女が、もうすぐ永遠に自分のものになるのだ。
ハロルドはしばし瞑想するように目を閉じ、そして瞼を開けると、再び空を見上げた。
片目を失っている彼は片方の目でしかその美しい空も見られない。
だが、彼の長い初恋が成就したことを天も祝福しているように、見渡す限り青空が広がっている。
ハロルドは今、この青い空にも、優しく降り注ぐ太陽にも、頬を撫でる心地よい風にも、この世の全てに、感謝したい気持ちだった。
支度が整って侍女メアリに手を引かれて現れたフレイアは、ハロルドが想像していたよりはるかに眩しかった。
「…フレイア、すごく綺麗だ…」
一瞬言葉を失ったハロルドがそう告げると、花嫁は頬を染め、嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、ハル」
その花の綻ぶような笑顔に、またハロルドは目を奪われる。
「フレイア」
ハロルドはメアリからフレイアの手を引き取ると、そのままその指先に恭しく口付けを落とす。
そしてまた花嫁を見つめると、
「本当に綺麗だ」
ともう一度囁いた。
周りには侍女や護衛騎士たちが大勢いるのに、ハロルドの目にはフレイアしか映っていない。
「えっと…、ありがとう?」
フレイアは恥ずかしそうに小さく笑ってドレスの裾を少し持ち上げると、クルリと回って見せた。
「デザインはね、もちろん私がしたのよ?もう薹が立ってるからあまり可愛すぎないように、少し大人っぽくしてね。色もね?私結婚が二度目だから烏滸がましいとも思ったんだけど、やっぱり白が着たいなって思って。だってやっぱり私ハルの色に染まりたいなって…。このレースのベールはね、桜模様の透かし織りになってるの。ほら、桜はハルと私の思い出の花だし…」
突然いつもの彼女らしくなく早口でペラペラと話し始めたフレイアを、ハロルドはきょとんと見下ろした。
「フレイア…、緊張してるの?」
「だって今日のハルはいつにも増してすごく素敵で、なんていうか、申し訳ない気持ちになっちゃったのよ。私出戻りだし、本当に私でよかったのかな、なんて…」
フレイアは少しばつが悪そうな顔で俯いた。
たしかに、いつも黒ばかり纏っているハロルドも今日ばかりは華やかだ。
元騎士のハロルドは濃紺に金の刺繍が施された華麗な騎士服姿。
片目こそ眼帯で覆われているが、それでも元々容姿端麗な彼の美貌を損なってはいない。
(いつにも増して素敵…)
あまりフレイアに容姿を褒められた覚えがないハロルドは、思わず照れた。
元夫セレンと言い、兄サイラスと言い、フレイアの周りにはいい男が多かったので、その彼女に「素敵」と言われるのは悪い気はしない。
だが、彼女の今の言葉は少々聞き捨てならなかった。
フレイアが、自分自身を卑下するような言葉を使ったからだ。
シルクブランドの事業主でもありデザイナーでもあるフレイアは、もちろん自分のウェディングドレスも自分でデザインした。
そのことはもちろんハロルドも知っていたし、当日までお披露目しないと言うから、今日見られるのを楽しみにもしていた。
思った通り、というか彼の想像をはるかに上回り、ウェディングドレス姿のフレイアは本当に美しい。
スッキリしたプリンセスラインで光沢を放つシルクのドレスは彼女の美しさを引き立てている。
何を着ても可愛く美しいフレイアなのだが、今日、自分のためにウェディングドレスを纏った彼女は今まで見た中でも最高に美しい。
その緩く結い上げられたストロベリーブロンドの髪も、潤んだ琥珀色の瞳も、桜色の唇も、全部全部いつも以上に輝いて見える。
出来ることなら今すぐこの場から連れ去ってしまいたいほどだ。
教会の中にはハロルドとフレイアの身内が待っているし、周辺には領主夫妻を祝福しようという民が集まっている。
そんな人たちに美しい花嫁を見せびらかしたい気持ちと、誰の目にも触れさせず自分だけで独占したい気持ちがせめぎ合っているのだ。
それなのに…。
彼女はハロルドに、ただお手製のドレスを褒められたと思っている?
しかもなんだ?
薹が立ってるとか、結婚が二度目だとか?
「フレイア」
ハロルドが名前を呼ぶと、フレイアはピクリと肩を揺らした。
ハロルドを見上げる瞳はどこか不安そうだ。
ハロルドが知るフレイアはいつだって正しく、自信に満ち溢れていた。
1度目の結婚相手に冷遇されようと絶対自分を見失うことはない女性だった。
それなのにこの不安気な態度と自信のない発言はなんなのだろうか。
ハロルドはフレイアの指先をキュッと握った。
「後悔してるの?俺と結婚すること」
純白のドレスに身を包まれ、満面の笑みであらわれたフレイアを見た時は、思わず泣きそうになった。
焦がれて、憧れて、それでも絶対に自分のものにはならないと思っていた彼女が今、自分だけに真っ直ぐな笑顔を向けてくれていたからー。
◇ ◇ ◇
ここは、テルル国とアルゴン国に挟まれた小さな領地ビスマス。
国に属さず、独立した自治領であるビスマスは、近隣の国との友好を保ち、優秀な領主によって治められている。
そんなビスマス領の外れにある小さな教会で、タンタル国王の末弟ハロルドは、今から結婚式を挙げる。
長々と拗らせた初恋相手であり、ここビスマスの若き女領主である、最愛の人フレイアと。
花嫁の仕度が整うのを教会の外で待っていたハロルドは、晴れ晴れとした気持ちで空を見上げていた。
今日という日を無事迎えられたことに感謝し、そして、感慨深くこれまでのことに思いを馳せる。
そう、僅か半年前まで、こんな日が訪れるとは夢にも思わなかったのだから。
なかなか想いを告げられず、墓場まで持っていくつもりだった初恋。
よその男に嫁ぎ、絶対手が届かないはずだった想い人。
夫を救けるために闘う彼女を、命をかけて守り通した自分。
何度も手を差し伸べては躱され、そのたびに諦め、絶望を味わってきた。
それなのにーー。
どんな運命の悪戯か、恋い焦がれた彼女が、もうすぐ永遠に自分のものになるのだ。
ハロルドはしばし瞑想するように目を閉じ、そして瞼を開けると、再び空を見上げた。
片目を失っている彼は片方の目でしかその美しい空も見られない。
だが、彼の長い初恋が成就したことを天も祝福しているように、見渡す限り青空が広がっている。
ハロルドは今、この青い空にも、優しく降り注ぐ太陽にも、頬を撫でる心地よい風にも、この世の全てに、感謝したい気持ちだった。
支度が整って侍女メアリに手を引かれて現れたフレイアは、ハロルドが想像していたよりはるかに眩しかった。
「…フレイア、すごく綺麗だ…」
一瞬言葉を失ったハロルドがそう告げると、花嫁は頬を染め、嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、ハル」
その花の綻ぶような笑顔に、またハロルドは目を奪われる。
「フレイア」
ハロルドはメアリからフレイアの手を引き取ると、そのままその指先に恭しく口付けを落とす。
そしてまた花嫁を見つめると、
「本当に綺麗だ」
ともう一度囁いた。
周りには侍女や護衛騎士たちが大勢いるのに、ハロルドの目にはフレイアしか映っていない。
「えっと…、ありがとう?」
フレイアは恥ずかしそうに小さく笑ってドレスの裾を少し持ち上げると、クルリと回って見せた。
「デザインはね、もちろん私がしたのよ?もう薹が立ってるからあまり可愛すぎないように、少し大人っぽくしてね。色もね?私結婚が二度目だから烏滸がましいとも思ったんだけど、やっぱり白が着たいなって思って。だってやっぱり私ハルの色に染まりたいなって…。このレースのベールはね、桜模様の透かし織りになってるの。ほら、桜はハルと私の思い出の花だし…」
突然いつもの彼女らしくなく早口でペラペラと話し始めたフレイアを、ハロルドはきょとんと見下ろした。
「フレイア…、緊張してるの?」
「だって今日のハルはいつにも増してすごく素敵で、なんていうか、申し訳ない気持ちになっちゃったのよ。私出戻りだし、本当に私でよかったのかな、なんて…」
フレイアは少しばつが悪そうな顔で俯いた。
たしかに、いつも黒ばかり纏っているハロルドも今日ばかりは華やかだ。
元騎士のハロルドは濃紺に金の刺繍が施された華麗な騎士服姿。
片目こそ眼帯で覆われているが、それでも元々容姿端麗な彼の美貌を損なってはいない。
(いつにも増して素敵…)
あまりフレイアに容姿を褒められた覚えがないハロルドは、思わず照れた。
元夫セレンと言い、兄サイラスと言い、フレイアの周りにはいい男が多かったので、その彼女に「素敵」と言われるのは悪い気はしない。
だが、彼女の今の言葉は少々聞き捨てならなかった。
フレイアが、自分自身を卑下するような言葉を使ったからだ。
シルクブランドの事業主でもありデザイナーでもあるフレイアは、もちろん自分のウェディングドレスも自分でデザインした。
そのことはもちろんハロルドも知っていたし、当日までお披露目しないと言うから、今日見られるのを楽しみにもしていた。
思った通り、というか彼の想像をはるかに上回り、ウェディングドレス姿のフレイアは本当に美しい。
スッキリしたプリンセスラインで光沢を放つシルクのドレスは彼女の美しさを引き立てている。
何を着ても可愛く美しいフレイアなのだが、今日、自分のためにウェディングドレスを纏った彼女は今まで見た中でも最高に美しい。
その緩く結い上げられたストロベリーブロンドの髪も、潤んだ琥珀色の瞳も、桜色の唇も、全部全部いつも以上に輝いて見える。
出来ることなら今すぐこの場から連れ去ってしまいたいほどだ。
教会の中にはハロルドとフレイアの身内が待っているし、周辺には領主夫妻を祝福しようという民が集まっている。
そんな人たちに美しい花嫁を見せびらかしたい気持ちと、誰の目にも触れさせず自分だけで独占したい気持ちがせめぎ合っているのだ。
それなのに…。
彼女はハロルドに、ただお手製のドレスを褒められたと思っている?
しかもなんだ?
薹が立ってるとか、結婚が二度目だとか?
「フレイア」
ハロルドが名前を呼ぶと、フレイアはピクリと肩を揺らした。
ハロルドを見上げる瞳はどこか不安そうだ。
ハロルドが知るフレイアはいつだって正しく、自信に満ち溢れていた。
1度目の結婚相手に冷遇されようと絶対自分を見失うことはない女性だった。
それなのにこの不安気な態度と自信のない発言はなんなのだろうか。
ハロルドはフレイアの指先をキュッと握った。
「後悔してるの?俺と結婚すること」
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