王太子妃は離婚したい

凛江

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【番外編】ラストダンス〜元公爵夫人も離縁したい〜

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 なけなしのお金をはたいてクリーニング(新品みたい夢加工)をした。俺のスーツの半分の値段に泣きそうだった。



 どうしよう。夢加工した風早のスーツが俺のロッカーに2日間眠っている。



 仕事は秒で終わるから毎日暇なのに。風早に会いに行けない。犯されそうで怖くて行けない。



 ロッカーの中の風早のスーツを見つめ、ため息をつくとパタンと扉を閉めた。



 「たーなか君。今日も早ぅいねぇ」



 「ぎゃーー。」



 俺ぇ? オールっしょ。



 聞いてもない事を言いながら手を内側に入れパリピポーズをする風早。



 「な、ななな」



 「ななな? たなーか君。今日、遊び行こう?」



 「いいい、いや」



 「うっし。じゃぁ、6時にむーかえにくーるね」



 何でどうしていやだいやだ……朝の風早の無体で仕事は散々だった。それでも昼前には終わったけど。毎日する事を見つけるのも大変なんだ。今日は現実逃避したくて特に仕事に飢えていた。先輩の仕事も頼み込んでさせて貰った。透けさんから大変喜ばれたからよしとしよう。



 大丈夫だ。風早はパリピα。6時の約束なんて忘れてるはずだ。ちなみに俺は山田だ。





 「ーーたーなかくーん。あーそびま、しょー」



 オーマイガッ。



 就業時間修了ピッタリに席を立った俺。ダッシュでフロアを出る。しかし、パリピのくせに時間前行動の風早が現れ捕まった哀れな俺は馴れ馴れしく肩を組まれ夜の町に連れ去られてしまった。



 くたびれた大きめのスーツに身を包んだモサい俺と、パリピαの人気者風早は目立った。



 「ウェーイ。かぜはやー。昨日も来たのに元気だねー。それ何?」



 トン、トン、トントトン、バチ、バチ。



 「ウェーイ。友達っしょ」



 肘や腕を交差しながらパリピ挨拶をする風早とパリピダチ。



 大変だ。いつの間にか友達になっている。パリピは人類みな兄弟なのか。



 「ウケるー。お兄さん背ぇ高いねー」



 何がウケるのか。俺は全くウケていない。



 俺は背筋を丸めて甘いだけの酒をチビチビと流し込んだ。勝手に出されてきたがこれはいくらなんだろうか。給料日前とクリーニング代で懐が厳しいんだ。おい、止めろまだ飲んでる途中で次を出して来るんじゃない。



 風早は俺を無理矢理連れてきて遊ぼうと言った癖に、パリピ仲間に囲まれて俺には見向きもしない。



 「お兄さん。楽しんでる? 風早、人気者だから寂しいね?」



 「い、いえ、お構いなく」



 近い。パリピは何故こんなに近いのか。



 ピタリと隣につかれて俺が体ごとそっぽを向けばガシッと肩を組まれて無理矢理男の方を向かされる。



 「でも、今日ラッキーだよ。姫が来るから」



 姫? 姫と言えば皇族の……いやまさかあの方がこんな片田舎に。もしそうなら子供の頃に遊んだ以来か。



 ムワッ。


 俺が男にベタベタと触られながら思案していると嗅いだ事のある甘ったるい匂いが店中に充満した。



 ドクンッ。



 「うっ」



 「うっへぇ。姫、最初から飛ばしてるぅ。風早ロックオンじゃん」



 男が見ている方を見れば姫と思わしき女性が頬を赤らめ風早の方へゆっくりと歩んでいた。



 はっはっ、フワフワと雲の上を歩くように進む姫からはΩのヒート特有の匂いが放たれている。



 ドクンッ。ドクンッ……



 あんな匂いを垂れ流して危険すぎる。 



 好きなαを自分の物にするための捨て身の誘惑。αが鋼の精神で拒否すればΩである彼女は店中の人間の慰め物になる未来が待っている。



 ――おかしい。息があがる。体が熱い。顔をあげられない。



 「ひゅうっ、風早も年貢の納め時ってやつかぁ」



 朦朧となりながら顔を机に縫い付けられる中、女からの熱烈なキスを受ける風早が見えた。



 









 「――はぁ、はぁ、はぁ……」



 気が付けば風早の背中があった。背負られた体が熱くてヒートを起こしたのだと知る。



 「い、いや、だ。下ろし、て」



 「んー? 山田君のお家行こーね。近くて最高だねぇ。」



 いやだ。どうして俺の幽霊アパートを知ってるんだ。お家行って何をする気だ。俺のお尻に入れるのか。αはΩのヒートには抗えない。まてよ。姫はどうした。俺の知ってるおひい様とは程遠かったが。あの姫もヒートを起こしていただろう。風早はそんなに俺のお尻に入れたいのか。まさか、運命の番ってやつなのか。男と運命の番なんて御愁傷様だな。



 「カギカギっとぉ」



 「んんっ」



 バカ。ポケットなんかに鍵を入れるか。股間が破裂する。



 「うはっ。随分古風な鍵だねぇ。俺、好き」



 風早はニコニコと鍵を鍵穴に入れグルグルと回すと家主の前で不法侵入をはかる暴挙に出た。



 「うはっ。紐でつける電気初めて見た」



 不法侵入者である風早はカチカチと紐を引っ張り電気をつけた。



 「……何て顔してぇんの」



 「はぁ、はぁ、はぁ……」



 何ってヒートだし、と恨みがましく風早を睨むと頬を挟まれた。熱を含んだ垂れ目が俺の目の前に迫ってくる。やばい。俺のヒートにあてられた風早に犯される。



 「や、やだ。お尻に突っ込まないでっ」



 俺の言葉をうけ、迫っていた風早の顔が止まった。



 俺はヒートの熱と犯される恐怖に泣き出していた。



 「……はぁ。入れないよ。俺、言ったよね?」



 風早は怒ったように俺に言うと、コツンと額をくっつけた。



 こ、この格好は。



 「けど、このままじゃ辛いでしょ?」



 風早はカチャカチャと俺のベルトを外すとギンギンの俺のそれを取り出した。



 「や、やめて」


 俺は力の入らない体で風早の体を押したがびくともしない。クチャネチャと俺の大事な所を扱う風早。



 「あっ、あっ、んんっ……い、いやっ、だ。かぜ、はやっ、入れないでっ」



 必死に首をふりヒート中の快楽に抗う俺の首の裏を掴んだ風早は自身に引き寄せるとお互いがお互いの肩に顎を乗せるほど密着した。



 「入れないって。……けど、一緒に気持ちよく、なろ?」



 耳元で囁きながら風早は俺の耳に噛みつくと耳穴に舌を入れた。

 

 「ああっ、だ、だめっ……」



 いつの間にか取り出した風早のと俺のが一緒に擦り合わされ、足は上に下にと絡み合った。



 気持ちいい。こんなのΩのヒートにあてられた時以来だ。あの時はボディガードがΩと無理矢理離してくれたから大事にはいたらなかった。



 けど、ここにはボディガードはいない。俺はヒート中のΩ。



 「んあっ、ああっ、んんっ……」



 耳になめ回されながら下半身はなぶられ、あまつさえ僅かに突き上げられている。風早の腰の動きが卑猥だ。俺は性交でこんな動きしたことがない。



 「イく? イきそう? イく時教えて、ね」



 綺麗な顔がイく顔見たいから。



 「――イ、くっ」



 体に力が入り足先が伸び顎を上げた。目を閉じて過ぎた快感に脳天が突き抜けた。



 真っ白な世界の中、薄目を開けると風早の恋する乙女のような惚けた顔に絶望した。

 

 だめだ。掘られる。



 

 いや、結果は掘られなかったけどな。風早は思ったより自制心のきくパリピαらしい。
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