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【番外編】シスコン王太子は女性騎士と結婚したい
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「………は?」
ソラリスは淑女らしからぬ呆けた顔でサイラスを見上げた。
そんなソラリスに畳み掛けるように、サイラスはズイッと距離を詰める。
「結婚しよう、ソラリス。
私の妃になって欲しい」
サイラスは唐突に、何の準備も無く、そして妹を迎えに来たはずの他国で、あろうことかプロポーズをしていた。
今ではない…、今ではないと、もう1人の自分も警告している。
だが、口から出てしまったものは仕方がない。
戦疲れと、ソラリスに久しぶりに会えた喜びに、ハイになっているに違いない。
「…おっしゃる意味が、わからないのですが」
ソラリスが心底困惑した顔で見上げてくる。
それはそうだ。
当たり前だ。
何の前振りもなく突然プロポーズされたのだから。
サイラスは一つ深呼吸をすると、ソラリスの手を握りなおした。
「ソラリス、結婚してくれ。
私の妻となり、生涯、私のそばにいて欲しい」
「…酔っておられるのですか?殿下」
「いや、酔っていない」
祝勝の宴で酒は飲んだが、ハロルド失踪の騒ぎで酒などすっかり抜けてしまっている。
「でも…、私はフレイア様の侍女で…」
「悪いが、フレイアの侍女はやめて王太子妃になってくれ」
「王太子妃⁈無理です、無理です!
私は伯爵家の娘で、とてもお妃様になど…!」
「今までにも伯爵家出身の王妃はいる。
大丈夫だ、ソラリス」
「王妃⁈ いえ、無理です!
殿下はどうかどこかのお姫様をお迎えくださいませ!」
ソラリスはなんとか手を引き抜こうとするが、サイラスは絶対に離さない。
そして真剣な、懇願するような目で、ソラリスを見つめた。
「ソラリスは…、それで良いのか?
本当に、私がどこかの姫を迎えることを望むのか?」
「だって…、私は生涯フレイア様にお仕えするつもりで…」
サイラスを見上げるソラリスの瞳が揺れる。
フレイアに心酔している彼女は、優雅な王族の姫でありながら女性騎士であり、そして一流ブランドの経営者でもあるフレイアと、常に共にありたいと願っている。
ソラリスの生きる意味は全てフレイアであり、彼女から離れることはあり得ない。
今回籠城戦に向かうフレイアから離れサイラスの元に向かったのも、もちろんフレイアの命令だったからだ。
だが…。
瞳を揺らし、唇を噛むソラリスに、サイラスが優しくたずねる。
「ではあの時…、何故私について来た?」と。
「…いつのことでございますか?」
突然のサイラスの問いに、ソラリスは首を傾げた。
「ハルをフレイアに託した後のことだ」
「…それは…」
ソラリスは気まずそうに口ごもった。
「いつもの貴女ならフレイアの側を離れなかっただろう。それにあの時は、フレイアについていてやるべきであった」
「…それは…」
サイラスが言っているのは、戦の最中、傷ついたハロルドを安全な場所におろし、再び戦場にとって返した時のことである。
あの時、サイラスを東の砦まで案内するというソラリスの任務は完了していた。
本来なら主であるフレイアの側を離れるべきではない。
それなのにソラリスは、止まれと言うサイラスの言葉も無視して彼についてきた。
そして戦場ではサイラスの側を離れず、彼を守るように戦っていた。
「あの時は…、姫様は安全な場所におりましたから、私は殿下をお守りしなければと…」
「でも貴女はフレイアの侍女だろう?
私を守る義務はないはずだ」
その言葉を聞いたソラリスの目から、ボロボロッと大粒の涙がこぼれ出した。
初めて見るソラリスの涙に、サイラスはギョッとする。
「ソラリス…?」
サイラスが顔を覗きこもうとするのを避け、ソラリスは俯いた。
「私が…、殿下をお守りしようと思ったのは、未来の国王陛下への尊敬と、お仕えする姫様の兄上としての信頼以上のものはございません。
貴方様を失えば、姫様が悲しまれるからです。
今までも、これからも、この気持ちが変わることは未来永劫ございません」
まるで自分に言い聞かせるように話すソラリスに、サイラスは優しく諭すように語りかける。
「あの時貴女が私について来たのは、少しでも私を慕ってくれる気持ちがあるからではないかと思っていた。
私の思い過ごしだろうか?」
ソラリスは黙ったまま俯いている。
「私は貴女が好きだ。
どうか、私の妃になってはくれないだろうか」
「いいえ、私のような者にもったいないお言葉です。
私の幼い頃よりの願いはフレイア様のお側で盾になること。
私の一番は、生涯フレイア様なのです」
「本当に?」
「はい」
「貴女の一番がフレイアでも、それでも私は構わない」
「いいえ、そんな気持ちで貴方様にお仕えすることは出来ません」
どこまでも頑ななソラリスにサイラスは苦笑した。
しかし初めて見る彼女の涙が、サイラスの気持ちを強くしてもいた。
「私は貴女が愛おしいんだ、ソラリス。
本当は、生涯伝えるつもりはなかった。
貴女はフレイアと共に生涯テルルに暮らすものと諦めていたから。
だが、フレイアを取り戻そうと決意した時から欲が出た」
ボタンのかけ違いですれ違った兄弟、そして夫婦がいる。
サイラスは決してかけ違えたくはないと思う。
ソラリスは淑女らしからぬ呆けた顔でサイラスを見上げた。
そんなソラリスに畳み掛けるように、サイラスはズイッと距離を詰める。
「結婚しよう、ソラリス。
私の妃になって欲しい」
サイラスは唐突に、何の準備も無く、そして妹を迎えに来たはずの他国で、あろうことかプロポーズをしていた。
今ではない…、今ではないと、もう1人の自分も警告している。
だが、口から出てしまったものは仕方がない。
戦疲れと、ソラリスに久しぶりに会えた喜びに、ハイになっているに違いない。
「…おっしゃる意味が、わからないのですが」
ソラリスが心底困惑した顔で見上げてくる。
それはそうだ。
当たり前だ。
何の前振りもなく突然プロポーズされたのだから。
サイラスは一つ深呼吸をすると、ソラリスの手を握りなおした。
「ソラリス、結婚してくれ。
私の妻となり、生涯、私のそばにいて欲しい」
「…酔っておられるのですか?殿下」
「いや、酔っていない」
祝勝の宴で酒は飲んだが、ハロルド失踪の騒ぎで酒などすっかり抜けてしまっている。
「でも…、私はフレイア様の侍女で…」
「悪いが、フレイアの侍女はやめて王太子妃になってくれ」
「王太子妃⁈無理です、無理です!
私は伯爵家の娘で、とてもお妃様になど…!」
「今までにも伯爵家出身の王妃はいる。
大丈夫だ、ソラリス」
「王妃⁈ いえ、無理です!
殿下はどうかどこかのお姫様をお迎えくださいませ!」
ソラリスはなんとか手を引き抜こうとするが、サイラスは絶対に離さない。
そして真剣な、懇願するような目で、ソラリスを見つめた。
「ソラリスは…、それで良いのか?
本当に、私がどこかの姫を迎えることを望むのか?」
「だって…、私は生涯フレイア様にお仕えするつもりで…」
サイラスを見上げるソラリスの瞳が揺れる。
フレイアに心酔している彼女は、優雅な王族の姫でありながら女性騎士であり、そして一流ブランドの経営者でもあるフレイアと、常に共にありたいと願っている。
ソラリスの生きる意味は全てフレイアであり、彼女から離れることはあり得ない。
今回籠城戦に向かうフレイアから離れサイラスの元に向かったのも、もちろんフレイアの命令だったからだ。
だが…。
瞳を揺らし、唇を噛むソラリスに、サイラスが優しくたずねる。
「ではあの時…、何故私について来た?」と。
「…いつのことでございますか?」
突然のサイラスの問いに、ソラリスは首を傾げた。
「ハルをフレイアに託した後のことだ」
「…それは…」
ソラリスは気まずそうに口ごもった。
「いつもの貴女ならフレイアの側を離れなかっただろう。それにあの時は、フレイアについていてやるべきであった」
「…それは…」
サイラスが言っているのは、戦の最中、傷ついたハロルドを安全な場所におろし、再び戦場にとって返した時のことである。
あの時、サイラスを東の砦まで案内するというソラリスの任務は完了していた。
本来なら主であるフレイアの側を離れるべきではない。
それなのにソラリスは、止まれと言うサイラスの言葉も無視して彼についてきた。
そして戦場ではサイラスの側を離れず、彼を守るように戦っていた。
「あの時は…、姫様は安全な場所におりましたから、私は殿下をお守りしなければと…」
「でも貴女はフレイアの侍女だろう?
私を守る義務はないはずだ」
その言葉を聞いたソラリスの目から、ボロボロッと大粒の涙がこぼれ出した。
初めて見るソラリスの涙に、サイラスはギョッとする。
「ソラリス…?」
サイラスが顔を覗きこもうとするのを避け、ソラリスは俯いた。
「私が…、殿下をお守りしようと思ったのは、未来の国王陛下への尊敬と、お仕えする姫様の兄上としての信頼以上のものはございません。
貴方様を失えば、姫様が悲しまれるからです。
今までも、これからも、この気持ちが変わることは未来永劫ございません」
まるで自分に言い聞かせるように話すソラリスに、サイラスは優しく諭すように語りかける。
「あの時貴女が私について来たのは、少しでも私を慕ってくれる気持ちがあるからではないかと思っていた。
私の思い過ごしだろうか?」
ソラリスは黙ったまま俯いている。
「私は貴女が好きだ。
どうか、私の妃になってはくれないだろうか」
「いいえ、私のような者にもったいないお言葉です。
私の幼い頃よりの願いはフレイア様のお側で盾になること。
私の一番は、生涯フレイア様なのです」
「本当に?」
「はい」
「貴女の一番がフレイアでも、それでも私は構わない」
「いいえ、そんな気持ちで貴方様にお仕えすることは出来ません」
どこまでも頑ななソラリスにサイラスは苦笑した。
しかし初めて見る彼女の涙が、サイラスの気持ちを強くしてもいた。
「私は貴女が愛おしいんだ、ソラリス。
本当は、生涯伝えるつもりはなかった。
貴女はフレイアと共に生涯テルルに暮らすものと諦めていたから。
だが、フレイアを取り戻そうと決意した時から欲が出た」
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