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【番外編】シスコン王太子は女性騎士と結婚したい
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フレイアが嫁いだ後のアルゴンで、サイラスの周辺は俄かに騒がしくなった。
第一王女はすでに嫁ぎ、第二王女も嫁いだのだから、今度こそ王太子の番であると。
もちろん今までも縁談はあったのだが、余計に、周辺国の王族や自国の貴族から続々と縁談が持ち込まれるようになった。
血を繋いでいかなくてはいけない次期国王としての使命も、また、期待する国民の声もわかっている。
持ち込まれる縁談の王女や令嬢たちも、会ってみればそれぞれ素晴らしい女性たちなのかもしれない。
だが、どうしても縁談を受け入れる気持ちが湧いてこないのだ。
ところがそんな中、聞こえてきたのは、愛する妹フレイアが、夫セレンから冷遇されているという報告だった。
ソラリスの実家カスター伯爵家は武で聞こえた一族であり、当然優秀な諜報部隊もある。
ソラリスはその諜報部隊を駆使してサイラスにフレイアの近況を知らせていた。
もちろんテルルに到着直後からのセレンの態度や、『白い結婚』のことも。
最初の頃は「両親や兄に心配をかけたくない」とフレイアに口止めされていたようだが、それも半年も過ぎればソラリスは我慢できなくなった。
あんなに結婚に夢見ていたフレイアが、今はすっかり結婚生活を諦め、冷め切った目で夫を見ている。
しかし王太子妃としての矜持は持って、務めは果たしたいと言うのだ。
結局ソラリスは成婚後からの事実を事細かに伝えるに至る。
サイラスは愛する妹を取り戻すことを考えるようになった。
だがまずは、敵の様子を知らねばなるまい。
「フレイアの結婚はどうやらうまくいってないらしい。
様子見に、一度、テルルを訪ねてみようと思う」
そうハロルドに告げると、彼はサイラスに、自分もテルルへ行きたいと言ってきた。
タンタルの王子であることは伏せたまま、サイラスの護衛騎士の1人として一行に加えろと言うのだ。
しかも、そのままフレイアの護衛騎士としてテルルに残して欲しいとまで言う。
正直、危険な賭けである。
タンタルの第五王子であるハロルドはテルルの人間と全く面識はないそうだが、それでも身元がバレない保証はない。
それに、本当にフレイアが不幸だったら。
サイラスはフレイアを取り戻すためにあらゆる手立てを講じるつもりだが、その前に下手にハロルドに動かれても困る。
だが、サイラス自身が最も信頼し、フレイアも兄と慕うハロルドが彼女の側にいてくれるなら…、こんな心強いことはないとも思う。
ソラリスと共に、きっとフレイアを守ってくれることだろうと。
フレイアの成婚から8ヶ月後。
サイラスは表敬訪問と称して隣国テルルへ向かった。
愛する妹が肩身の狭い思いをしているなら思い切り抱きしめてやりたい。
そしてそんなフレイアを守るソラリスを労ってやりたい。
そんな思いを秘めながら。
ついでに言えば、サイラスの護衛カイトも浮き足立っている。
久しぶりに母ケティと妹メアリに会えるからだろう。
テルルに着いて久しぶりに見るフレイアは相変わらず美しく愛らしかったが、サイラスの目には、アルゴンにいた時よりだいぶ大人びて見えた。
再会を喜んで抱きついてくる様は以前の可愛らしい妹の姿と変わりはないが、抱きしめた体は幾分細っそりとしたように思う。
そして、夫セレンを見る諦めきったような瞳。
サイラスは未だかつて妹のこんな目は見たことがなかった。
剣を持ったり馬に乗ったりお転婆な彼女ではあるが、その反面恋に恋するような恋愛脳なところがある。
いつも好奇心に瞳を輝かせ、楽しそうに笑っていた可愛い妹。
セレンの肖像画を見ながらうっとりと夢を語る乙女チックな妹。
あの、恋に夢見る少女はどこへ行ってしまったのか。
ソラリスから報告を受けて夫婦仲はある程度察してはいたが、この8ヶ月余りであまりにも変わってしまった妹に、サイラスは戸惑いを隠せなかった。
そして大事な妹をそんな風に変えたセレンに、サイラスは憎悪さえ覚えていた。
アルゴン王太子の手前、セレンもフレイアを優雅にエスコートしてはいる。
だが、2人の間に甘やかな雰囲気など皆無なのは、一見してわかる。
歓迎セレモニーや視察の合間に兄妹水入らずで過ごす時間は僅かながらあった。
サイラスはフレイアから一言でも「アルゴンに帰りたい」と言う言葉があれば即座に動くつもりだったが、とうとう妹からその言葉は聞けなかった。
どこにテルル側の耳があるかわからないから迂闊に助けを求められないのかもしれない。
そして何より、成婚で一層親密になった両国の関係を壊すようなことをするのは、彼女の本意ではないのだろう。
第一王女はすでに嫁ぎ、第二王女も嫁いだのだから、今度こそ王太子の番であると。
もちろん今までも縁談はあったのだが、余計に、周辺国の王族や自国の貴族から続々と縁談が持ち込まれるようになった。
血を繋いでいかなくてはいけない次期国王としての使命も、また、期待する国民の声もわかっている。
持ち込まれる縁談の王女や令嬢たちも、会ってみればそれぞれ素晴らしい女性たちなのかもしれない。
だが、どうしても縁談を受け入れる気持ちが湧いてこないのだ。
ところがそんな中、聞こえてきたのは、愛する妹フレイアが、夫セレンから冷遇されているという報告だった。
ソラリスの実家カスター伯爵家は武で聞こえた一族であり、当然優秀な諜報部隊もある。
ソラリスはその諜報部隊を駆使してサイラスにフレイアの近況を知らせていた。
もちろんテルルに到着直後からのセレンの態度や、『白い結婚』のことも。
最初の頃は「両親や兄に心配をかけたくない」とフレイアに口止めされていたようだが、それも半年も過ぎればソラリスは我慢できなくなった。
あんなに結婚に夢見ていたフレイアが、今はすっかり結婚生活を諦め、冷め切った目で夫を見ている。
しかし王太子妃としての矜持は持って、務めは果たしたいと言うのだ。
結局ソラリスは成婚後からの事実を事細かに伝えるに至る。
サイラスは愛する妹を取り戻すことを考えるようになった。
だがまずは、敵の様子を知らねばなるまい。
「フレイアの結婚はどうやらうまくいってないらしい。
様子見に、一度、テルルを訪ねてみようと思う」
そうハロルドに告げると、彼はサイラスに、自分もテルルへ行きたいと言ってきた。
タンタルの王子であることは伏せたまま、サイラスの護衛騎士の1人として一行に加えろと言うのだ。
しかも、そのままフレイアの護衛騎士としてテルルに残して欲しいとまで言う。
正直、危険な賭けである。
タンタルの第五王子であるハロルドはテルルの人間と全く面識はないそうだが、それでも身元がバレない保証はない。
それに、本当にフレイアが不幸だったら。
サイラスはフレイアを取り戻すためにあらゆる手立てを講じるつもりだが、その前に下手にハロルドに動かれても困る。
だが、サイラス自身が最も信頼し、フレイアも兄と慕うハロルドが彼女の側にいてくれるなら…、こんな心強いことはないとも思う。
ソラリスと共に、きっとフレイアを守ってくれることだろうと。
フレイアの成婚から8ヶ月後。
サイラスは表敬訪問と称して隣国テルルへ向かった。
愛する妹が肩身の狭い思いをしているなら思い切り抱きしめてやりたい。
そしてそんなフレイアを守るソラリスを労ってやりたい。
そんな思いを秘めながら。
ついでに言えば、サイラスの護衛カイトも浮き足立っている。
久しぶりに母ケティと妹メアリに会えるからだろう。
テルルに着いて久しぶりに見るフレイアは相変わらず美しく愛らしかったが、サイラスの目には、アルゴンにいた時よりだいぶ大人びて見えた。
再会を喜んで抱きついてくる様は以前の可愛らしい妹の姿と変わりはないが、抱きしめた体は幾分細っそりとしたように思う。
そして、夫セレンを見る諦めきったような瞳。
サイラスは未だかつて妹のこんな目は見たことがなかった。
剣を持ったり馬に乗ったりお転婆な彼女ではあるが、その反面恋に恋するような恋愛脳なところがある。
いつも好奇心に瞳を輝かせ、楽しそうに笑っていた可愛い妹。
セレンの肖像画を見ながらうっとりと夢を語る乙女チックな妹。
あの、恋に夢見る少女はどこへ行ってしまったのか。
ソラリスから報告を受けて夫婦仲はある程度察してはいたが、この8ヶ月余りであまりにも変わってしまった妹に、サイラスは戸惑いを隠せなかった。
そして大事な妹をそんな風に変えたセレンに、サイラスは憎悪さえ覚えていた。
アルゴン王太子の手前、セレンもフレイアを優雅にエスコートしてはいる。
だが、2人の間に甘やかな雰囲気など皆無なのは、一見してわかる。
歓迎セレモニーや視察の合間に兄妹水入らずで過ごす時間は僅かながらあった。
サイラスはフレイアから一言でも「アルゴンに帰りたい」と言う言葉があれば即座に動くつもりだったが、とうとう妹からその言葉は聞けなかった。
どこにテルル側の耳があるかわからないから迂闊に助けを求められないのかもしれない。
そして何より、成婚で一層親密になった両国の関係を壊すようなことをするのは、彼女の本意ではないのだろう。
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