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【番外編】シスコン王太子は女性騎士と結婚したい
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少年たちが去ると、少女はサイラスに向かって跪き、頭を垂れた。
「…いい。顔を上げろ。
女性騎士団の者か?」
サイラスに促され、少女は顔を上げた。
「女性騎士団に所属しております、カスター伯が次女ソラリスと申します」
「そうか、団長の」
カスター伯爵の家は代々優れた武人を輩出している家門で、現当主は近衛騎士団の騎士団長を務めている。
またアルゴンには女性騎士団が存在し、将来は王妃や王女付きの護衛騎士になるべく、研鑽を積んでいるのだ。
「絡まれていたようだったが、このようなことはよくあるのか?」
サイラスにたずねられ、ソラリスと名乗った少女は僅かに目を見開いた。
てっきり、木刀に手をかけ私闘に及びそうになったのを咎められると思ったのだ。
だが、返答には少々窮した。
いくら理不尽に絡まれたからと言って、王子に言いつけるようなことはしたくない。
「大したことではございません。
私が未熟なために殿下を巻き込んでしまいました。
申し訳もございません」
再び深々と頭を垂れるソラリスに、サイラスはまた顔を上げるように言う。
サイラスが見た限り、ソラリスが一方的に罵られているようだった。
アルゴンは周辺国の中でも男女平等で考え方の進んだ国だが、それでも中には先程のような平気で「女のくせに」などと言う男性もいる。
身も心も鍛えられている騎士団の中においても、あのような軟弱発言をする輩がいるのである。
「きっかけは何だ?」
「本当に大したことではございません。
ちょっとした言いがかりと言うか…」
「何を言われた?」
彼の見逃してはくれなそうな雰囲気に、ソラリスは覚悟を決めたように顔を上げ、サイラスを見据えた。
「卑怯と言われたのです」
「…卑怯?」
「剣の手合わせで私が勝ったのですが…、女の戦法は卑怯だと。
黙って去ろうとしたところ、その態度も気に入らなかったようで…」
つまり。
稽古の一環で、見習い騎士たちと女性騎士たちが剣の手合わせをした。
それにソラリスが勝ったため、言いがかりを付けて来たと。
「私は体が軽いため、真っ向から行けば弾き飛ばされます。
だからまず相手を撹乱させるように走ったり飛んだりするのですが…」
「なるほど、それを卑怯とな。
負け犬の遠吠えだな」
「…負け犬…?」
「先程、俺も同様の戦法で女性騎士に叩きのめされた。
実に鮮やかな負けっぷりだったぞ」
そう言うとサイラスは豪快に笑った。
班が一緒ではなかったのだろうが、サイラスたち見習い騎士も女性騎士たちと剣の手合わせをしていた。
女性はどうしても身体的に不利なため、力より技術を磨いてくるのだろう。
上下左右に撹乱され、鮮やかな戦法に完敗した。
まぁ、サイラスが対戦したのは女性騎士の中でもトップクラスの副団長だったが。
第一王子が年端もいかない少女に負けては立つ瀬がないと、向こうも考えてくれての対戦だったのだろう。
カラカラと笑うサイラスに、ソラリスは目を丸くした。
「殿下は…、腹が立たないのですか?」
「何が?」
「その…、女性に負けたことも。
そもそも、女性が剣を持つことも」
ソラリスにたずねられ、サイラスは笑うのをやめ、真顔になった。
そして、彼女の顔を真っ直ぐに見て答えた。
「俺の中に、男だから女だからと区別する考え方はない。
俺の相手になった彼女の腕は見事であり、彼女に負けたのは俺の修練が足りないため。
だから、次の手合わせの時には勝てるよう、修練に励むのみだ。
そして、貴女が勝ったのも、技術も、心も、貴女の方が奴らよりも優っていたからだ」
ハッと衝かれたように、ソラリスも真っ直ぐにサイラスを見上げた。
サイラスはそんな彼女を見てにこやかに笑う。
「理不尽に罵られても、貴女は黙って耐えた。
剣を構えはしたが、振り下ろしたりもしなかった。
よく、我慢したな」
サイラスにそう言われ、ソラリスは僅かに口元を綻ばせた。
目を見開いたサイラスを見て、さらに微笑む。
それは、やっと彼女が見せた、少女らしい微笑みだった。
「…いい。顔を上げろ。
女性騎士団の者か?」
サイラスに促され、少女は顔を上げた。
「女性騎士団に所属しております、カスター伯が次女ソラリスと申します」
「そうか、団長の」
カスター伯爵の家は代々優れた武人を輩出している家門で、現当主は近衛騎士団の騎士団長を務めている。
またアルゴンには女性騎士団が存在し、将来は王妃や王女付きの護衛騎士になるべく、研鑽を積んでいるのだ。
「絡まれていたようだったが、このようなことはよくあるのか?」
サイラスにたずねられ、ソラリスと名乗った少女は僅かに目を見開いた。
てっきり、木刀に手をかけ私闘に及びそうになったのを咎められると思ったのだ。
だが、返答には少々窮した。
いくら理不尽に絡まれたからと言って、王子に言いつけるようなことはしたくない。
「大したことではございません。
私が未熟なために殿下を巻き込んでしまいました。
申し訳もございません」
再び深々と頭を垂れるソラリスに、サイラスはまた顔を上げるように言う。
サイラスが見た限り、ソラリスが一方的に罵られているようだった。
アルゴンは周辺国の中でも男女平等で考え方の進んだ国だが、それでも中には先程のような平気で「女のくせに」などと言う男性もいる。
身も心も鍛えられている騎士団の中においても、あのような軟弱発言をする輩がいるのである。
「きっかけは何だ?」
「本当に大したことではございません。
ちょっとした言いがかりと言うか…」
「何を言われた?」
彼の見逃してはくれなそうな雰囲気に、ソラリスは覚悟を決めたように顔を上げ、サイラスを見据えた。
「卑怯と言われたのです」
「…卑怯?」
「剣の手合わせで私が勝ったのですが…、女の戦法は卑怯だと。
黙って去ろうとしたところ、その態度も気に入らなかったようで…」
つまり。
稽古の一環で、見習い騎士たちと女性騎士たちが剣の手合わせをした。
それにソラリスが勝ったため、言いがかりを付けて来たと。
「私は体が軽いため、真っ向から行けば弾き飛ばされます。
だからまず相手を撹乱させるように走ったり飛んだりするのですが…」
「なるほど、それを卑怯とな。
負け犬の遠吠えだな」
「…負け犬…?」
「先程、俺も同様の戦法で女性騎士に叩きのめされた。
実に鮮やかな負けっぷりだったぞ」
そう言うとサイラスは豪快に笑った。
班が一緒ではなかったのだろうが、サイラスたち見習い騎士も女性騎士たちと剣の手合わせをしていた。
女性はどうしても身体的に不利なため、力より技術を磨いてくるのだろう。
上下左右に撹乱され、鮮やかな戦法に完敗した。
まぁ、サイラスが対戦したのは女性騎士の中でもトップクラスの副団長だったが。
第一王子が年端もいかない少女に負けては立つ瀬がないと、向こうも考えてくれての対戦だったのだろう。
カラカラと笑うサイラスに、ソラリスは目を丸くした。
「殿下は…、腹が立たないのですか?」
「何が?」
「その…、女性に負けたことも。
そもそも、女性が剣を持つことも」
ソラリスにたずねられ、サイラスは笑うのをやめ、真顔になった。
そして、彼女の顔を真っ直ぐに見て答えた。
「俺の中に、男だから女だからと区別する考え方はない。
俺の相手になった彼女の腕は見事であり、彼女に負けたのは俺の修練が足りないため。
だから、次の手合わせの時には勝てるよう、修練に励むのみだ。
そして、貴女が勝ったのも、技術も、心も、貴女の方が奴らよりも優っていたからだ」
ハッと衝かれたように、ソラリスも真っ直ぐにサイラスを見上げた。
サイラスはそんな彼女を見てにこやかに笑う。
「理不尽に罵られても、貴女は黙って耐えた。
剣を構えはしたが、振り下ろしたりもしなかった。
よく、我慢したな」
サイラスにそう言われ、ソラリスは僅かに口元を綻ばせた。
目を見開いたサイラスを見て、さらに微笑む。
それは、やっと彼女が見せた、少女らしい微笑みだった。
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