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【番外編】シスコン王太子は女性騎士と結婚したい
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フレイアの兄サイラスの小話です。
不定期更新です。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
アルゴン国の王太子サイラスは、幼い頃より文武両道に秀で、性格も豪放快活であった。
幼少期からすでに将来の国王としての風格、カリスマ性があり、父国王をはじめとする親族、側近、貴族、国民に至るまで、王太子の成長を楽しみに見守っていたものだ。
しかし…、そんな神童と誉れ高いサイラスにも、弁慶の泣き所とも言うべく弱点がある。
妹を溺愛する、重度のシスコンであったのだ。
もちろん弟ライリーも可愛がってはいたが、妹に対するそれは度を越していた。
そしてそれは、妹フレイアがこの世に生を受けた日からすでに始まっていたのである。
ー天使だ!ー
それが、サイラスのフレイアに対する第一印象である。
生まれたての赤ん坊はしわくちゃで猿にさえ例えられるというのに、サイラスはその猿を『天使』のようだと思ったのだ。
そして生涯、この小さく愛らしい生き物を守っていこうと心に誓う。
サイラスとフレイアは母親が違う。
フレイアを産んだアルゴン王妃アデルは後妻であり、サイラスにとっては継母だ。
だがアデルはサイラスにも、その姉ベリンダにも、自らが産んだフレイアとライリーとかわりなく、惜しみない愛情を注いでくれた。
だからサイラスも、実母のように彼女を慕う。
国王である父も側妃や愛妾をもつことはなく、アルゴン王家は国民の模範になるべく愛情溢れる一家であった。
自由な気風のアルゴン王室で家族に見守られながら、サイラスは妹に全力で学び、遊ぶことを教えた。
何かあった時は自分で自分の身を守れるようにと剣や弓の武芸も仕込み、兄を慕う妹はよくそれに応えた。
そうしてあの強くも賢くもある愛らしいフレイアが出来上がったのだが、彼女が成長するにつれ、サイラスには不満も募っていった。
こんなにも溺愛している兄を差し置いて、フレイアの可愛らしい唇が紡ぐのは会ったこともない許婚の『セレン様』なのだから。
祖父同士…、テルルとアルゴンの国王同士の繋いだ縁らしいが、正直、そんなものは壊れてしまえ、とサイラスは思う。
聞いたところ、テルルは男尊女卑の思考を持つ男が多く、また王宮には未だに後宮が存在し、王の側妃や寵妃が住まうという。
一方アルゴンは普通に女性が社会で活躍する国であり、貴族にも庶民にも一夫一婦制が確立されている。
自由闊達に育ったフレイアがそんなテルルに嫁いでは、さぞかし窮屈だろうと思うのだ。
(でもまぁしょうがないか。
フレイア自身がノリノリなんだから)
フレイアはセレン王子に嫁ぐ日を本当に楽しみにしている。
サイラスが誘っても部屋に引きこもって出て来ない日などは、だいたいテルルから届いたセレン王子の肖像画を見つめて想いを募らせている時だ。
王女としての気品にもあふれ、強く賢く成長したはずなのに、フレイアの頭の中は普通の女の子と変わらぬ…、いやそれよりもっと、恋愛脳らしい。
(つまんないな…。
だいたいどこがいいんだよ。
金髪に青い目の、あんな青っちょろいヤツ)
本当に、つまらないことだと思う。
こんなにも側で愛してくれる兄がいるというのに、勝手に許婚と決められた、会ったこともない男に夢中になるなんて。
だいたい、政略結婚というのもサイラスには気に入らない。
いくら王族とは言え、生涯を共にする相手を自分の意思で決められないなんて。
幸運にも、サイラス自身は物心つく前に婚約者を決められることはなかった。
当然アルゴンの王太子になることが約束されている第一王子サイラスに続々と縁談は持ち込まれている。
アルゴンと繋がりたい他国の王族しかり、外戚になって権力を手に入れたい自国の貴族しかり。
それに王国一の優良物件であるサイラスを早いうちに手に入れようと擦り寄る令嬢たちもしかり。
正直サイラスは、そんな周囲に嫌気がさしていたのも事実。
だから彼は、両親が強硬に出ないのをいいことに縁談は全て断っている。
そう、サイラスはー。
押し付けられる妃などいらない。
妹フレイアより愛せる女性など、この世に存在するとは思えないのだから。
ところが人生とはわからないもの。
妹フレイアより愛せる(かもしれない)女性と出会ったのは、彼が騎士団に入った13歳の時だ。
不定期更新です。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
アルゴン国の王太子サイラスは、幼い頃より文武両道に秀で、性格も豪放快活であった。
幼少期からすでに将来の国王としての風格、カリスマ性があり、父国王をはじめとする親族、側近、貴族、国民に至るまで、王太子の成長を楽しみに見守っていたものだ。
しかし…、そんな神童と誉れ高いサイラスにも、弁慶の泣き所とも言うべく弱点がある。
妹を溺愛する、重度のシスコンであったのだ。
もちろん弟ライリーも可愛がってはいたが、妹に対するそれは度を越していた。
そしてそれは、妹フレイアがこの世に生を受けた日からすでに始まっていたのである。
ー天使だ!ー
それが、サイラスのフレイアに対する第一印象である。
生まれたての赤ん坊はしわくちゃで猿にさえ例えられるというのに、サイラスはその猿を『天使』のようだと思ったのだ。
そして生涯、この小さく愛らしい生き物を守っていこうと心に誓う。
サイラスとフレイアは母親が違う。
フレイアを産んだアルゴン王妃アデルは後妻であり、サイラスにとっては継母だ。
だがアデルはサイラスにも、その姉ベリンダにも、自らが産んだフレイアとライリーとかわりなく、惜しみない愛情を注いでくれた。
だからサイラスも、実母のように彼女を慕う。
国王である父も側妃や愛妾をもつことはなく、アルゴン王家は国民の模範になるべく愛情溢れる一家であった。
自由な気風のアルゴン王室で家族に見守られながら、サイラスは妹に全力で学び、遊ぶことを教えた。
何かあった時は自分で自分の身を守れるようにと剣や弓の武芸も仕込み、兄を慕う妹はよくそれに応えた。
そうしてあの強くも賢くもある愛らしいフレイアが出来上がったのだが、彼女が成長するにつれ、サイラスには不満も募っていった。
こんなにも溺愛している兄を差し置いて、フレイアの可愛らしい唇が紡ぐのは会ったこともない許婚の『セレン様』なのだから。
祖父同士…、テルルとアルゴンの国王同士の繋いだ縁らしいが、正直、そんなものは壊れてしまえ、とサイラスは思う。
聞いたところ、テルルは男尊女卑の思考を持つ男が多く、また王宮には未だに後宮が存在し、王の側妃や寵妃が住まうという。
一方アルゴンは普通に女性が社会で活躍する国であり、貴族にも庶民にも一夫一婦制が確立されている。
自由闊達に育ったフレイアがそんなテルルに嫁いでは、さぞかし窮屈だろうと思うのだ。
(でもまぁしょうがないか。
フレイア自身がノリノリなんだから)
フレイアはセレン王子に嫁ぐ日を本当に楽しみにしている。
サイラスが誘っても部屋に引きこもって出て来ない日などは、だいたいテルルから届いたセレン王子の肖像画を見つめて想いを募らせている時だ。
王女としての気品にもあふれ、強く賢く成長したはずなのに、フレイアの頭の中は普通の女の子と変わらぬ…、いやそれよりもっと、恋愛脳らしい。
(つまんないな…。
だいたいどこがいいんだよ。
金髪に青い目の、あんな青っちょろいヤツ)
本当に、つまらないことだと思う。
こんなにも側で愛してくれる兄がいるというのに、勝手に許婚と決められた、会ったこともない男に夢中になるなんて。
だいたい、政略結婚というのもサイラスには気に入らない。
いくら王族とは言え、生涯を共にする相手を自分の意思で決められないなんて。
幸運にも、サイラス自身は物心つく前に婚約者を決められることはなかった。
当然アルゴンの王太子になることが約束されている第一王子サイラスに続々と縁談は持ち込まれている。
アルゴンと繋がりたい他国の王族しかり、外戚になって権力を手に入れたい自国の貴族しかり。
それに王国一の優良物件であるサイラスを早いうちに手に入れようと擦り寄る令嬢たちもしかり。
正直サイラスは、そんな周囲に嫌気がさしていたのも事実。
だから彼は、両親が強硬に出ないのをいいことに縁談は全て断っている。
そう、サイラスはー。
押し付けられる妃などいらない。
妹フレイアより愛せる女性など、この世に存在するとは思えないのだから。
ところが人生とはわからないもの。
妹フレイアより愛せる(かもしれない)女性と出会ったのは、彼が騎士団に入った13歳の時だ。
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