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S田の願望

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―ガチャ。ドン。


「ん……んちょ、ちょっと」

―ドン。

「ちょっと、タンマ、ここ玄関」




「待てない」
「いや待て」




「っておいおい、S田犬、盛るなよっ!」





「や、やだってば、あ……」



「あ……んくぅ……」


―ガチャ。

!!!!!



「………」


―カツン、カツン、カツン、カツン……。



 お隣さんが、お出かけみたい。
 ドアのすぐ向こうに日常があると意識すると、たちまちは恥ずかしい。
 さすがのS田も動きを止め、二人はドア越しの足音が遠く消えるまで息を潜めていた。

 普段、せっかちなのはMくん。S田の息はまだ荒い。

 電気も付けないで薄暗がりの中で目と目が合った瞬間――。


ーボカッ!

「あいてっ、Mくん……」






~~~~~~~


「……ということを、やりたいのです」
 と、S田が言った。
「は? イヤだよ」
 Mくんは断るでしょうね。

「だいたい、S田ってそういうキャラじゃないじゃん」


「……そだね」




「そもそも、お隣さんいないし」



「……そだね」







「……って終わりかよっ」






 相変わらずマイペースなS田でした。






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