新米女神の運命の赤い糸

りんご飴

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望んだ結果

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 リアが生まれ落ちたのは、アストロン王国の小高い丘の大木の下だ。
 他に何もない場所だけど、ついフラリと訪れてしまう。
 今日もリアが姿を現したのは、この場所だった。

 大木のすぐ側の何もない空間が歪んで二つに割れ、中から光りを纏ったリアがスポンと出てくる。
 以前、夢の神ウニが、同じようにニョキリ出て来たのを真似たのだけど、なかなか難しい。

「う~~ん、髪が引っ掛かりやすくてダメね。いっそ短くしちゃおうかしら」

 樹皮に引っ掛かった髪を軽く引っ張った。

「引っ張っては駄目です」

 リアの後ろからフワリと腕が回され、片手で引っ掛かった髪に手をかけた。

 振り向かなくても分かる。

「アレクシス」

「はい。綺麗な髪が痛んでしまいますから、私に任せて下さい」

 左手はリアの腰にまわしたまま、器用に右手だけで絡まった髪をといていく。さほど時間がかからずにほどけたにもかかわらず、アレクシスの手はミルクティー色の髪を指先で弄び、そっと髪に口付けた。

「あぁ、食べてしまいたいくらい可愛くて仕方ない」

 驚いて上を向くと、薄い水色の瞳とかち合った。
 白金色の髪に薄い色の
瞳は、黙っていると冷たい印象をうける。けれどリアを見つめる彼の目元は微妙に赤く染まり、蕩けるような笑みを浮かべる様子は可愛らしい。

「ねぇ、アレクシス……」

 彼の指先がリアの唇に触れた。
 胸がキュッと締め付けられて痛いくらいだ。

(認めるわ。私はアレクシスが欲しい。たとえ赤い糸が繋がらなくても)

 近いうち、リアは別な男との子を生むことになる。だけど一度だけでも……心惹かれて仕方のない彼と、ただ思うままに抱き合いたい。

 自然と近付いて来る彼の顔を眺めながら、雰囲気に呑まれて目を閉じる。

 アレクシスを受け入れよう。自分の気持ちを受け入れようーーとして、違和感に顔を背けた。

(あら?)

 アレクシスがいつもと違う。

(ああ……お姉様のお怒りが消えたのね)

 ということは、アレクシスはリアにこだわらなくてもいい。愛がなくても、政略結婚でも、行きずりの女とでも、子供ができる。人間は弱く何があるか分からないから、王族ならたくさん子がいる方がいいだろう。
 
「ふふ。お姉様の怒りが解けたみたいね。あなたの愛に疑うわけじゃないけど、それでも私を選ぶ?」

 一瞬目を見開いたところを見ると、自身にかかった呪いが解けたことを今初めて知ったようだ。
 
「リア様しか欲しくありません」

 少しも迷いなく言うアレクシスに、リアの胸がしびれたように熱を持つ。

「たとえ一時の愛でも?」

「未来永劫、リア様から離れる気はありません。
 リア様が俺を捨てようとしても無駄ですよ。リア様が他の男に目を向ける暇がないくらい、俺の愛を溢れるまで注ぎましょうか」

「ふふ、何それ。お手柔らかに、ね」

 その瞬間、リアの身体はアレクシスに抱き上げられる。
 そのまま足早にどこかへ向かう彼の顔は、あまりに必死な表情だ。

(ああ、人間って押してダメなら押し続ける生き物なんだっけ)

 彼の中の妙なスイッチを押してしまったかもしれない。
 どこに行くのかも、どうするつもりなのかも、リアには分からない。だけど聞くつもりもない。アレクシスの望むようにして欲しいから。
 ずいぶん早く脈打つ彼の胸の音を聞きながら、そっと目を瞑る。

「俺の都合のいいように解釈してしまいますよ」

「どうぞ。アレクシスのお好きなように」

 若干彼の体温があがった気がした。




(ヤバい、ヤバい! いろいろとヤバい!)

 アレクシスは胸の中で叫んだ。

 これは夢か。
 腕の中には焦がれてやまない女神がいる。抱き寄せながら、こっそりと彼女の頭に鼻を寄せ、彼女から香るほのかに甘い香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

 主に下半身がヤバい。

 女神を抱きながら、ほとんど走るほどのスピードで王城までやって来た。
 すれ違う誰もが二度見する状況なのは、仕方がない。
 誰も皇太子の下半身に注目しなかったことは、幸運だった。






ーーーーーーーーーー

次回、ヤリます。ふふ。
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