9 / 13
失恋から立ち直る方法
しおりを挟む
寮に着いた頃、私は燃え尽きた。
リズが駆け寄ってくるが、私の顔を見てギョッとして目を見開く。
「マリアナ? ……美少女感、全部消えてるわよ?」
生きる屍と変した私に近づいてくる強者は、リズしかいない。他の生徒は完全に見て見ぬふりだ。いや、チラチラこっちを見ているな。
「……リズ。私、失恋した」
「えっ? 告白したの!? 当たって砕けたの!?」
「当たる前に……砕け散って粉々だよ。ふぇ~~ん」
リズのボインボインの胸でどれくらい泣いただろうか。泣くとみぞおちの痛みも軽減していくから不思議だ。
涙が落ち着いても、嗚咽が落ち着いても、リズのボインボインの感触から離れられない。
「落ち着いた?」
リズの声に、胸に顔を押し付けたままで頷いた。
「お茶でも飲みながら話聞かせて。取っておきのクッキーがあるんだ。マリアナの部屋に行くから、目を冷やして待ってて」
リズの私物のお菓子はいつもとても美味しい。取っておきと言う事は……こんな気持ちなのに、ヨダレがでそう。
好きなだけ泣いた効果か、クッキーはいくらでも食べられそうだ。
「美味しい! 何これすごい美味しい!」
「でしょう。貰い物だけど、マリアナの好みだろうなって思ってた」
リズが持って来たクッキーはサクサクホロホロで、ナッツが香ばしくて、まさに極上だった。
「普通失恋した時ってさ……胸が苦しくて食事も喉を通りませんってなるものじゃないの?」
呆れ顔で笑うリズに私は頷いた。
さっきまでは確かにそうだった。唾液を飲むのもみぞおちが痛くて、とても食事が出来る状態じゃなかった。
「泣いたら大丈夫になったみたい」
恋も失恋もどちらも初体験だから、普通はどうなのか分からない。
「何か……いくらでも食べられそうなの」
「ああ、やけ食いか。お腹壊すからほどほどにね。
……でも、ルーカス先生がガストン先生に……ねぇ。それ本人が言ったの?」
「そうだよ。顔赤くして、ガストン先生と親しくなりたいって」
「マリアナはどうするつもり?」
ルーカス先生の赤くなった顔を思い出すと、また少しみぞおちが痛む。あんなに可愛い顔を見せておいて、ルーカス先生は悪い男だ。もう小悪魔だ。
いつも表情の薄いルーカス先生にあんな顔をさせたのは、私じゃなくてガストン先生だ。
それなら……。
「……ルーカス先生を応援したいです」
「……美人で意外と男前なルーカス先生と、男らしい体格で乙女なガストン先生か。相性的にはピッタリな気がするね。
ルーカス先生を惚れさせる作戦が使えないなら……うん。マリアナに勝ち目はない! クッキーどんどん食べて、吹っ切りなさい!」
さすがリズ。ヘタな慰めを言われるよりずっと気が楽だ。
ひたすらクッキーを食べて、夕食も大盛食べて、お腹が苦しくて今夜は失恋の痛みを忘れられそうだ。
ベッドの上で泣いたのは、お腹が苦しいのが原因であって、決してルーカス先生を思ってではない。
「……で? これはどういうことかしら? コールマン」
私とガストン先生は放課後の薬草園で草むしりをしている。
薬草園に誘ったものの、やることと言ったら草むしりしかない。
「……昨日はどうだったのよ」
昨日はガストン先生のお膳立てで、ルーカス先生に会うことが出来たのだ。今日の呼びかけに応じたのも、昨日のことが気になったいたからに違いない。
「……玉砕しましたよ。先生には思い人がいるんです」
「あら……そう。
まぁ、あんたなら男なんて選り取りみどりよ。次の恋を見つけなさい。
生徒会長なんかどう? あの子、すっかりいい子になったわ。私のお墨付きよ」
「私、モテないですよ」
「何それ、嫌味?」
「今まで、好きって告白された事、一度もありませんし」
マリアナに言い寄る男は、マリアナの容姿を誉め、手込めにしようとするだけで、好きとは言われたことはない。
ガストン先生は哀れな者を見るような目を私にむけて、雑草の汁で汚れた手を私の頭にのせた。
「あんたも不憫な子ねぇ」
そう言った声は、とても優しかった。
リズが駆け寄ってくるが、私の顔を見てギョッとして目を見開く。
「マリアナ? ……美少女感、全部消えてるわよ?」
生きる屍と変した私に近づいてくる強者は、リズしかいない。他の生徒は完全に見て見ぬふりだ。いや、チラチラこっちを見ているな。
「……リズ。私、失恋した」
「えっ? 告白したの!? 当たって砕けたの!?」
「当たる前に……砕け散って粉々だよ。ふぇ~~ん」
リズのボインボインの胸でどれくらい泣いただろうか。泣くとみぞおちの痛みも軽減していくから不思議だ。
涙が落ち着いても、嗚咽が落ち着いても、リズのボインボインの感触から離れられない。
「落ち着いた?」
リズの声に、胸に顔を押し付けたままで頷いた。
「お茶でも飲みながら話聞かせて。取っておきのクッキーがあるんだ。マリアナの部屋に行くから、目を冷やして待ってて」
リズの私物のお菓子はいつもとても美味しい。取っておきと言う事は……こんな気持ちなのに、ヨダレがでそう。
好きなだけ泣いた効果か、クッキーはいくらでも食べられそうだ。
「美味しい! 何これすごい美味しい!」
「でしょう。貰い物だけど、マリアナの好みだろうなって思ってた」
リズが持って来たクッキーはサクサクホロホロで、ナッツが香ばしくて、まさに極上だった。
「普通失恋した時ってさ……胸が苦しくて食事も喉を通りませんってなるものじゃないの?」
呆れ顔で笑うリズに私は頷いた。
さっきまでは確かにそうだった。唾液を飲むのもみぞおちが痛くて、とても食事が出来る状態じゃなかった。
「泣いたら大丈夫になったみたい」
恋も失恋もどちらも初体験だから、普通はどうなのか分からない。
「何か……いくらでも食べられそうなの」
「ああ、やけ食いか。お腹壊すからほどほどにね。
……でも、ルーカス先生がガストン先生に……ねぇ。それ本人が言ったの?」
「そうだよ。顔赤くして、ガストン先生と親しくなりたいって」
「マリアナはどうするつもり?」
ルーカス先生の赤くなった顔を思い出すと、また少しみぞおちが痛む。あんなに可愛い顔を見せておいて、ルーカス先生は悪い男だ。もう小悪魔だ。
いつも表情の薄いルーカス先生にあんな顔をさせたのは、私じゃなくてガストン先生だ。
それなら……。
「……ルーカス先生を応援したいです」
「……美人で意外と男前なルーカス先生と、男らしい体格で乙女なガストン先生か。相性的にはピッタリな気がするね。
ルーカス先生を惚れさせる作戦が使えないなら……うん。マリアナに勝ち目はない! クッキーどんどん食べて、吹っ切りなさい!」
さすがリズ。ヘタな慰めを言われるよりずっと気が楽だ。
ひたすらクッキーを食べて、夕食も大盛食べて、お腹が苦しくて今夜は失恋の痛みを忘れられそうだ。
ベッドの上で泣いたのは、お腹が苦しいのが原因であって、決してルーカス先生を思ってではない。
「……で? これはどういうことかしら? コールマン」
私とガストン先生は放課後の薬草園で草むしりをしている。
薬草園に誘ったものの、やることと言ったら草むしりしかない。
「……昨日はどうだったのよ」
昨日はガストン先生のお膳立てで、ルーカス先生に会うことが出来たのだ。今日の呼びかけに応じたのも、昨日のことが気になったいたからに違いない。
「……玉砕しましたよ。先生には思い人がいるんです」
「あら……そう。
まぁ、あんたなら男なんて選り取りみどりよ。次の恋を見つけなさい。
生徒会長なんかどう? あの子、すっかりいい子になったわ。私のお墨付きよ」
「私、モテないですよ」
「何それ、嫌味?」
「今まで、好きって告白された事、一度もありませんし」
マリアナに言い寄る男は、マリアナの容姿を誉め、手込めにしようとするだけで、好きとは言われたことはない。
ガストン先生は哀れな者を見るような目を私にむけて、雑草の汁で汚れた手を私の頭にのせた。
「あんたも不憫な子ねぇ」
そう言った声は、とても優しかった。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
JC💋フェラ
山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
憧れの童顔巨乳家庭教師といちゃいちゃラブラブにセックスするのは最高に気持ちいい
suna
恋愛
僕の家庭教師は完璧なひとだ。
かわいいと美しいだったらかわいい寄り。
美女か美少女だったら美少女寄り。
明るく元気と知的で真面目だったら後者。
お嬢様という言葉が彼女以上に似合う人間を僕はこれまて見たことがないような女性。
そのうえ、服の上からでもわかる圧倒的な巨乳。
そんな憧れの家庭教師・・・遠野栞といちゃいちゃラブラブにセックスをするだけの話。
ヒロインは丁寧語・敬語、年上家庭教師、お嬢様、ドMなどの属性・要素があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる